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子どもの頃(入学前)編
8歳、オールマイティーなヒロインがやってきました(後編)
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翌日、宣言通りセレスがやってきた。
なんか、普通にセレスが来ただけなんだけど、まるでセレスの下にレッドカーペットがあるんじゃ!? と思うくらい、華やかで美しく見える。
昨日と同じ庭にあるテラスへ行くと、さっそくセレスが話し始めた。
自分がどれだけすごいか……簡単に言うと、自慢話だ。
確かにセレスの話を聞いていると、この年齢で羨ましい事に《土の魔法》が使えるみたいだし、実際に魔法を使って大地を豊かにするなど、色々と社会貢献? もしているようだ。
私と同じ年齢なのに、一歩も二歩も先を行くセレスはすごいなぁって、純粋に思う。
すごいなぁとは思うけど……。
今日1日、セレスの話を聞いて終わるのもどうなんだろう……。
そんな事を思いながらセレスの話を聞いていると、申し訳なさそうな顔でエレがやってきた。
「お友達が来ていると聞いたけど、昨日はアリアと一緒に遊んでいないし、寂しくなって来ちゃった」
寂しくて来たって……なんて可愛いの!
そして、むしろ嬉しい! ありがとう、エレ!!
このままの状態がずっと続くのは苦痛だと思っていたので、喜びを隠しきれないままセレスに尋ねてみる。
「セレス、弟のエレです。エレもご一緒してよろしいですか?」
「もちろん。そういえば、弟が出来たってお父様から聞いていたけど、初めてお会いするわね。セレスよ。よろしくね。あら、とても可愛い顔をしているのね」
セレスはチラッと私とエレを見て、軽く微笑んだ。
「ありがとうございます」
エレはお礼を言って、にっこり笑ったけど……。
なんか、エレの笑い方がいつもと違うような? 気のせいかな??
ふとテーブルの上に目をやると、エレの分のお菓子がない!!
「お菓子が足りてないので、持ってきますね。エレは座って待ってて!」
私はそう言い残し、足早にお菓子を取りに行った。
---------------------------------------
アリアがお菓子を取りに行っている間、セレスとエレの間ではこんなやり取りがされていた。
セレスはお菓子を取りに行ったアリアを見て、あきれた顔で言った。
「ちょっと離れた所にいつでもメイドはいるんだから、メイドを呼んで頼めばいいのに……アリアは記憶がなくなる前より、さらに落ち着きがなくなった気がするわ。要領も悪いし、不器用だし、いまだに魔法も使えないみたいだし……困ったものね」
エレは『セレスのオーラを見なくても、なんとなくどんな人か分かるけど、一応見てみるか』と、ふぅっと息を吐いた。
張っていた気を抜き、セレスのオーラを見る。
笑っていたエレの顔つきが、一変、冷たい目に変わった。
予想通り、セレスはアリアを見下している。
『さっきも僕が挨拶をした時、アリアは気づいていなかったようだけど(そこがアリアの愛おしい所だけど)、分かりやすく僕とアリアの外見を見比べた。アリアに会いに来ているのだって、自分よりアリアは下だから、扱いやすいと思ってるんだ。アリアはこんな僕に“いい子”だって、何度も何度も言うくらい、優しいから僕がちゃんと守ってあげないと』
そう思ったエレは冷めた目つきのまま、セレスに言った。
「アリアはお前と違って優しいんだ」
セレスは予想もしていない言葉に驚き、パッとエレを見た。
「なっ」
エレは続けて言った。
「ブス、お前なんかアリアの友達と認めない」
セレスは驚いた後、すぐにしかめっ面になり、怒りで震えながら言った。
「ブスですって!? なんて失礼な! どんな教育を受けているの? 私に対してそんな事言う人なんていないわ!!」
エレは鼻で笑った。
「へぇ、みんな目が悪いんじゃない? ちなみに僕は《闇の魔法》が使えるから、態度には気を付けた方がいいよ」
セレスが「何ですってー!」と怒ったタイミングで、何も知らないアリアが戻ってきた。
---------------------------------------
私が戻るとセレスが遠くからでも分かるくらい、明らかに怒っていた。
「どうかしましたか?」
そう言うとセレスではなく、エレが可愛らしい涙目で答える。
「ごめんなさい。僕の言葉が足りなかったせいで、セレス様に失礼なことを言っちゃったみたいで……」
失礼な事、失礼な事……何を言ったんだろう?
『セレス様、話が長いですね』とかかな。
それはね。私も思っているよ……とか、思っている場合じゃない。
どんな事を言ったのかは分からないけど、エレが非を認めているという事は、そういった類の失礼な事を言ってしまったんだろう。
失礼な事を言ってしまった以上、姉である私も謝らなきゃ。
「そうだったの。ごめんなさい、セレス。エレの非礼をお許しください」
私が深々と頭を下げると、隣にいたエレも一緒に頭を下げた。
まさかその時、エレが下げた頭を少しだけ上げて、セレスに向かって“あっかんべえ”と舌を出してるとも知らず……。
頭を上げセレスを見ると、明らかに怒った顔はしているが、ぐっと怒りを抑えているようだった。
そして、一言。
「相当、失礼な弟君のようで……」
それ以上、セレスは何も言わなかった。
許してくれたのかな? でもまだ怒っているような雰囲気が漂っている。
この場の空気が悪い……。
どうにかして場の空気を変えないと。
んー、んー、そうだ!!
やっぱりこんな時は体を動かして遊ぶのが一番だろう。
「鬼ごっこをしましょう」
セレスの怒っていた顔がだんだんと「それは何?」と言わんばかりの不思議そうな表情に変わった。
「鬼ごっこ?」
私はセレスに“鬼ごっこ”の説明をした。
セレスは頭がいいから、理解も早い。
すぐに“鬼ごっこ”のルールを把握した。
「そんな遊び聞いた事がないわ。有名な遊びなの?」
いや、有名じゃないでしょう。
そもそも、この世界には“鬼ごっこ”に似たような遊びもないようだし。
私は“記憶喪失”の時に思いついた? 浮かんだ?? 浮かんできた??? とごまかした。
セレスは走る事に抵抗があるようで、明らかに乗り気ではなさそうだ。
そんなセレスを見て、エレはにっこり笑った。
「セレス様は遊ばないみたいだよ。僕とアリアで遊ぼうよ」
セレスは“鬼ごっこ”をした事がないから、実際に“鬼ごっこ”を見せてから遊んだ方が分かりやすいかな?
「そうだね」
私はエレに同意した。
その後『私とエレが遊ぶのを見てから、一緒に遊びましょう!』と言うつもりだったんだけど、仲間外れにされたと勘違いしたセレスがすぐに「やるわ!」と返事をした。
---------------------------------------
最初は私が鬼で“鬼ごっこ”スタート!!
運動神経がいいはずのセレスだけど、服装のせいなのか、今まで全速力で走った事がないからなのか、すぐに捕まえる事ができた。
「よしっ! 次はエレ!!」
私は元気よく、エレを追っかける。
エレもセレスと同じで運動神経がいいようだが、さすがに小さい頃の1歳差は大きい。
しばらくして、エレも捕まえる事ができた。
セレスは負けず嫌いな性格のようで、すぐに「もう一度やるわよ!」と言った。
捕まる度に「もう一度!」、「もう一度よ!」と何回も“鬼ごっこ”をした。
いつの間にかセレスは、服装なんて気にせず、髪が乱れるくらい全速力で走っていた。
みんなが疲れて倒れこむまで、何回も何回も遊んだ。
セレスは「はぁはぁ」と息を切らしながら「こんなに、疲れる、はぁ、遊びは初めてよ」とぐったりしながら言った。
「……だけど、とても楽しかったわ」
セレスは軽い微笑みではなく、表情を崩してにっこり笑った。
その姿を見た私は無意識に思ったままの気持ちをセレスに伝えていた。
「やっぱり、セレスはすっごく可愛いね」
セレスは「えっ」と驚き、誰にも聞こえないくらい小さい声でつぶやいた。
「髪もドレスも乱れて、スカートの裾なんて少し汚れているわ。そんな私を可愛い……なんて」
あっ、セレスに敬語を使うの忘れてた!
「あっ、可愛いですね」
焦って言い直したけど、焦っている私の姿が面白かったのか、遊び疲れて笑いのツボがおかしくなってしまったのか、セレスが大声で笑った。
大声で笑った後、少し照れたように言った。
「友達なんだもの、敬語を使わなくていいのよ。こんなに笑ったのは久しぶりだわ。……すっかり遅い時間になってしまったから、そろそろ帰るわね。先ほど話していた“かくれんぼ”? も今度やってみたいから、また遊びに来てもいいかしら? もしくはアリアが私の家に遊びに来るといいわ」
セレスはにっこり笑い、その後、チラッとエレを見た。
「……よければ、エレも遊びに来ていいわよ」
エレの方を見ると、ふぅっと息を吐いてセレスを見ている。
しばらくして、エレはセレスの近くまで行き、小さな声で何かつぶやいていた。
「やっぱり、失礼な弟ね」
セレスは、先ほどとは違う穏やかな口調で少し笑った。
なんか、普通にセレスが来ただけなんだけど、まるでセレスの下にレッドカーペットがあるんじゃ!? と思うくらい、華やかで美しく見える。
昨日と同じ庭にあるテラスへ行くと、さっそくセレスが話し始めた。
自分がどれだけすごいか……簡単に言うと、自慢話だ。
確かにセレスの話を聞いていると、この年齢で羨ましい事に《土の魔法》が使えるみたいだし、実際に魔法を使って大地を豊かにするなど、色々と社会貢献? もしているようだ。
私と同じ年齢なのに、一歩も二歩も先を行くセレスはすごいなぁって、純粋に思う。
すごいなぁとは思うけど……。
今日1日、セレスの話を聞いて終わるのもどうなんだろう……。
そんな事を思いながらセレスの話を聞いていると、申し訳なさそうな顔でエレがやってきた。
「お友達が来ていると聞いたけど、昨日はアリアと一緒に遊んでいないし、寂しくなって来ちゃった」
寂しくて来たって……なんて可愛いの!
そして、むしろ嬉しい! ありがとう、エレ!!
このままの状態がずっと続くのは苦痛だと思っていたので、喜びを隠しきれないままセレスに尋ねてみる。
「セレス、弟のエレです。エレもご一緒してよろしいですか?」
「もちろん。そういえば、弟が出来たってお父様から聞いていたけど、初めてお会いするわね。セレスよ。よろしくね。あら、とても可愛い顔をしているのね」
セレスはチラッと私とエレを見て、軽く微笑んだ。
「ありがとうございます」
エレはお礼を言って、にっこり笑ったけど……。
なんか、エレの笑い方がいつもと違うような? 気のせいかな??
ふとテーブルの上に目をやると、エレの分のお菓子がない!!
「お菓子が足りてないので、持ってきますね。エレは座って待ってて!」
私はそう言い残し、足早にお菓子を取りに行った。
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アリアがお菓子を取りに行っている間、セレスとエレの間ではこんなやり取りがされていた。
セレスはお菓子を取りに行ったアリアを見て、あきれた顔で言った。
「ちょっと離れた所にいつでもメイドはいるんだから、メイドを呼んで頼めばいいのに……アリアは記憶がなくなる前より、さらに落ち着きがなくなった気がするわ。要領も悪いし、不器用だし、いまだに魔法も使えないみたいだし……困ったものね」
エレは『セレスのオーラを見なくても、なんとなくどんな人か分かるけど、一応見てみるか』と、ふぅっと息を吐いた。
張っていた気を抜き、セレスのオーラを見る。
笑っていたエレの顔つきが、一変、冷たい目に変わった。
予想通り、セレスはアリアを見下している。
『さっきも僕が挨拶をした時、アリアは気づいていなかったようだけど(そこがアリアの愛おしい所だけど)、分かりやすく僕とアリアの外見を見比べた。アリアに会いに来ているのだって、自分よりアリアは下だから、扱いやすいと思ってるんだ。アリアはこんな僕に“いい子”だって、何度も何度も言うくらい、優しいから僕がちゃんと守ってあげないと』
そう思ったエレは冷めた目つきのまま、セレスに言った。
「アリアはお前と違って優しいんだ」
セレスは予想もしていない言葉に驚き、パッとエレを見た。
「なっ」
エレは続けて言った。
「ブス、お前なんかアリアの友達と認めない」
セレスは驚いた後、すぐにしかめっ面になり、怒りで震えながら言った。
「ブスですって!? なんて失礼な! どんな教育を受けているの? 私に対してそんな事言う人なんていないわ!!」
エレは鼻で笑った。
「へぇ、みんな目が悪いんじゃない? ちなみに僕は《闇の魔法》が使えるから、態度には気を付けた方がいいよ」
セレスが「何ですってー!」と怒ったタイミングで、何も知らないアリアが戻ってきた。
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私が戻るとセレスが遠くからでも分かるくらい、明らかに怒っていた。
「どうかしましたか?」
そう言うとセレスではなく、エレが可愛らしい涙目で答える。
「ごめんなさい。僕の言葉が足りなかったせいで、セレス様に失礼なことを言っちゃったみたいで……」
失礼な事、失礼な事……何を言ったんだろう?
『セレス様、話が長いですね』とかかな。
それはね。私も思っているよ……とか、思っている場合じゃない。
どんな事を言ったのかは分からないけど、エレが非を認めているという事は、そういった類の失礼な事を言ってしまったんだろう。
失礼な事を言ってしまった以上、姉である私も謝らなきゃ。
「そうだったの。ごめんなさい、セレス。エレの非礼をお許しください」
私が深々と頭を下げると、隣にいたエレも一緒に頭を下げた。
まさかその時、エレが下げた頭を少しだけ上げて、セレスに向かって“あっかんべえ”と舌を出してるとも知らず……。
頭を上げセレスを見ると、明らかに怒った顔はしているが、ぐっと怒りを抑えているようだった。
そして、一言。
「相当、失礼な弟君のようで……」
それ以上、セレスは何も言わなかった。
許してくれたのかな? でもまだ怒っているような雰囲気が漂っている。
この場の空気が悪い……。
どうにかして場の空気を変えないと。
んー、んー、そうだ!!
やっぱりこんな時は体を動かして遊ぶのが一番だろう。
「鬼ごっこをしましょう」
セレスの怒っていた顔がだんだんと「それは何?」と言わんばかりの不思議そうな表情に変わった。
「鬼ごっこ?」
私はセレスに“鬼ごっこ”の説明をした。
セレスは頭がいいから、理解も早い。
すぐに“鬼ごっこ”のルールを把握した。
「そんな遊び聞いた事がないわ。有名な遊びなの?」
いや、有名じゃないでしょう。
そもそも、この世界には“鬼ごっこ”に似たような遊びもないようだし。
私は“記憶喪失”の時に思いついた? 浮かんだ?? 浮かんできた??? とごまかした。
セレスは走る事に抵抗があるようで、明らかに乗り気ではなさそうだ。
そんなセレスを見て、エレはにっこり笑った。
「セレス様は遊ばないみたいだよ。僕とアリアで遊ぼうよ」
セレスは“鬼ごっこ”をした事がないから、実際に“鬼ごっこ”を見せてから遊んだ方が分かりやすいかな?
「そうだね」
私はエレに同意した。
その後『私とエレが遊ぶのを見てから、一緒に遊びましょう!』と言うつもりだったんだけど、仲間外れにされたと勘違いしたセレスがすぐに「やるわ!」と返事をした。
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最初は私が鬼で“鬼ごっこ”スタート!!
運動神経がいいはずのセレスだけど、服装のせいなのか、今まで全速力で走った事がないからなのか、すぐに捕まえる事ができた。
「よしっ! 次はエレ!!」
私は元気よく、エレを追っかける。
エレもセレスと同じで運動神経がいいようだが、さすがに小さい頃の1歳差は大きい。
しばらくして、エレも捕まえる事ができた。
セレスは負けず嫌いな性格のようで、すぐに「もう一度やるわよ!」と言った。
捕まる度に「もう一度!」、「もう一度よ!」と何回も“鬼ごっこ”をした。
いつの間にかセレスは、服装なんて気にせず、髪が乱れるくらい全速力で走っていた。
みんなが疲れて倒れこむまで、何回も何回も遊んだ。
セレスは「はぁはぁ」と息を切らしながら「こんなに、疲れる、はぁ、遊びは初めてよ」とぐったりしながら言った。
「……だけど、とても楽しかったわ」
セレスは軽い微笑みではなく、表情を崩してにっこり笑った。
その姿を見た私は無意識に思ったままの気持ちをセレスに伝えていた。
「やっぱり、セレスはすっごく可愛いね」
セレスは「えっ」と驚き、誰にも聞こえないくらい小さい声でつぶやいた。
「髪もドレスも乱れて、スカートの裾なんて少し汚れているわ。そんな私を可愛い……なんて」
あっ、セレスに敬語を使うの忘れてた!
「あっ、可愛いですね」
焦って言い直したけど、焦っている私の姿が面白かったのか、遊び疲れて笑いのツボがおかしくなってしまったのか、セレスが大声で笑った。
大声で笑った後、少し照れたように言った。
「友達なんだもの、敬語を使わなくていいのよ。こんなに笑ったのは久しぶりだわ。……すっかり遅い時間になってしまったから、そろそろ帰るわね。先ほど話していた“かくれんぼ”? も今度やってみたいから、また遊びに来てもいいかしら? もしくはアリアが私の家に遊びに来るといいわ」
セレスはにっこり笑い、その後、チラッとエレを見た。
「……よければ、エレも遊びに来ていいわよ」
エレの方を見ると、ふぅっと息を吐いてセレスを見ている。
しばらくして、エレはセレスの近くまで行き、小さな声で何かつぶやいていた。
「やっぱり、失礼な弟ね」
セレスは、先ほどとは違う穏やかな口調で少し笑った。
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