冒険者ギルド受付の癒し枠~ネコ娘は追放系主人公が気になるようです

八華

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ネコ娘、アースドラゴンを殴る

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 こちらに来たワイバーンを全部倒して、ひとまず脅威になりそうな敵を排除できた。雑魚はまだいるけど、順調に片付けられている。

「……おいおい、エルザ。こりゃ、いくらなんでも強すぎねーか?」

 ワイバーンとの戦闘を終えたアタイたちを、地元の大先輩が出迎えてくれた。
 ツキノワさんだ。
 彼とは以前に、砂漠ダンジョンのボスを一緒に倒した。今回の作戦に参加している、もう1組のA級パーティーのリーダーだ。ワイバーンの出現を見て助けに来てくれたらしい。

「みんなの力がうまくかみ合って、ルイスの作戦がハマったおかげだよ」

 アタイはとなりに立つルイスに視線を向ける。手柄は彼のものだろう。

「ああ、ルイスがすごいのは知ってる。だが、エルザ、お前も大したもんだぞ。帰ったらすぐに、お前をA級に上げる推薦状、書いてやる」

 ツキノワさんはアタイとルイスの頭を左右の手でわしゃわしゃと撫でた。子どもみたいな扱いだが、ぜんぜん腹は立たない。ツキノワさんって大人を極めてる雰囲気の人だから。

「ツキノワさん、お久しぶりです」

 レトリー姉ちゃんがツキノワさんを見つけて挨拶しにきた。

「お、レトリーか。お前はすっかりA級冒険者って風格が出てきたな」
「ありがとうございます!」

 姉ちゃんの尻尾がブンブン揺れている。姉ちゃん、昔からツキノワさん好きだったもんなぁ。

「ワイバーンが最下層のモンスターですか?」
「多分な。だが、もう1種くらい、レアで強いのがいると思うぞ」

 そう言いながら、ツキノワさんは周囲を見回した。

「戦場が広い。A級が固まってるのは良くないな。俺らは北の方に行くから、こっちは任せた」
「「「はい」」」

 それからしばらく戦って、もう1度ワイバーンの群れが飛んできたが、安定して討伐を続けた。
 しかし……、

 ゴウッ……

 北で大きな魔法の放たれる音がした。
 強敵が現れたようだ。

「皆は音のした方へ向かえ。こっちは1人残れば大丈夫。拙者、ソロには慣れておる」

 アタイたちはシセンを残して、ツキノワさんたちの救援に走った。

 駆けつけた先にいたのは、

「アースドラゴン!?」

 バリバリのボスモンスターだった。
 見た目は大きな甲羅を持つ亀のようなドラゴンだ。それが、同時に2体出現していた。

「1匹頼む! さすがにこんなの2体はキツい」

 救援に来たアタイたちを見て、ツキノワさんが一瞬、ホッとした表情になった。
 危なかった。彼が凄腕の盾使いでなかったら、アタイたちが着く前に死者が出ていたかもしれない。

「引き受けたっス」

 ササミが片方のドラゴンのヘイトを取った。
 敵は大きな甲羅のせいで、攻撃が通りにくいようだ。

 アタイはさっきのワイバーンみたいに、ドラゴンの首に向けて飛び蹴りを食らわせる。だが、アースドラゴンの太い首はびくともしなかった。

「チッ、硬いね」

 首が弱点とは言えないようだが、甲羅から出ている頭か手足を狙うしかない。繰り返し同じ部分を攻撃していると、

「敵の頭と首の付け根あたりに、黒い斑点みたいなのがあるの、見えますか?」

 ルイスがアドバイスをくれるのが聞こえた。

「あの点を上から叩きつけるように狙ってみてください」
「分かった」

 アタイはドラゴンに飛びかかると、拳にマナを集中して、げんこつを落とすように言われた部分を殴った。

 ガンッ!!

 アタイに打たれた部分から、ドラゴンの顔が地面につく。

「今よ!」

 姉ちゃんとメリーの攻撃が頭部に集中し、アースドラゴンは消滅した。

「よっしゃー!」

 ほぼ同じタイミングで、ツキノワさんの方も勝利していた。

「お前らやるなぁ」
「へへへ……」

 ベテランに褒められると自信つくわ。

 そうして戦いを続け、周辺に侵攻していたモンスターを全て片付けた。

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