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ネコ娘、チーズで味変する
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「うむ、うまい。ルイス殿は良い腕をお持ちだ」
たこ焼きを食べながら、シセンが大きく頷いた。
小さい手で爪楊枝を持ってもぐもぐしてる。ちょっとかわいい。
「あら? この小さい子は見たことないね。誰?」
オンセンさんが首をかしげる。
「失礼な! 仙人剣術で容姿が変わらなくなっておるが、拙者、この場で一番の年上であるぞ!」
シセンが小さいという言葉に反応してキレた。
甲高い声ですぐ怒るから余計に子どもっぽいんだよ。
「ついでに言うと、シセンはA級冒険者。私より強いみたいよ」
レトリー姉ちゃんが補足する。
「マジ!? 何でそんなすごい人が私らにまじってたこ焼き食べてんの?」
「A級冒険者を間近に2人も見るなんて、スゲーわ」
オンセンさんとポコさんが驚いた顔でシセンを見る。シセンにはそれがちょっと快感だったみたいで、口角が上がっていた。
「ふふん。拙者はそこの小娘3名をA級に上げるのを手伝ってやっておる。天才剣士の拙者がいるのだ。小娘たちは大船に乗った気でいるがよい」
シセンは腕を組んで偉そうに言った。
「なるほど。メリーたちの協力者か。でも、それってマズくない?」
「何?」
「だって、アンタが強いA級で、強引にメリーたちの階級を引き上げちまったら、この子らは弱いままA級になるんだよ」
「その後にアンタが抜けて、この子らだけでボス討伐に失敗して死んじまうかもしれないじゃん」
「む…むむむ……」
シセンの眉間にしわが寄った。
「無理してA級に上げるなら、最後まで責任もって面倒をみてほしいよね」
「私たちより年上っていうなら、それくらいできる大人でないと」
何か、アタイたちをA級に上げる責任が全部シセンにあるような流れになってきた。
本来、シセンは旅の途中で、たまたまギルドに頼まれて手伝っているだけなのに。
「わ……わかった。小娘たちが一人前になるまで、拙者がパーティーを組んで面倒をみてやろう」
悲鳴のようにシセンは宣言してしまった。
「よっしゃ!」
「さすがだぜ、シセンさん」
オンセンさんとポコさんがシセンを持ち上げる。
姐さんたちは、無茶してA級に上げられるアタイらを心配して、シセンと交渉してくれたんだろう。
優しい姐さんたちだ。
でも、いつ見てもえげつないコミュ力なんだよなぁ……。
そんなわけで、アタイらのパーティーに正式にシセンが加わることが決まった。
レトリー姉ちゃんはいずれ師匠のところに戻るし、3人じゃボス戦できないから、ありがたいことだった。
「たこ焼きの追加ができましたよ~」
話している間にも、ルイスはどんどんたこ焼きを作ってくれていた。
「ごめんね、ルイス。作るの任せちゃって」
「いえいえ。僕も楽しんでやってるんで」
「ありがと」
ルイスは優しいなぁ。
「次はチーズを入れて焼いてみましょうか」
「チーズ! それも美味しそうだね」
姐さんたちはしばらく黙ってたこ焼きを咀嚼していた。そして、食べ終わると再びシセンに話しかけた。
「そいや、シセンさんは宿暮らし?」
「ああ、そうだな」
「宿だと費用かかるでしょ。メリーたちの面倒みてくれるんだったら、ここに越してこない?」
「何?」
「ここ、シェアハウス。空いてる部屋あるし」
オンセンさんが言うのを、ポコさんが止めた。
「いや、でも、空いてる残り1部屋って、エルザちゃん用じゃないっけ?」
へ? アタイ??
「あぁ~。エルザだけ1人暮らし始めたときに、念のため部屋をとっておいたんだよね。すぐにメリーと合流すると思ってたし」
アタイの知らないところで、そんな気遣いが生まれてたとは。
「すんません、姐さん。アタイは今のアパートで大丈夫ですんで、人、入れてください」
アタイは2人に向かって頭を下げた。
「そうみたいだねぇ。エルザちゃんが1人暮らしちゃんとできるとは、意外だったよぅ」
ポコさんがしみじみと言う。
「エルザって、昔から実は内向的というか、1人の時間がないとダメなタイプだったもんね」
「エルザ姐さんは見かけによらず空想好き乙女っス」
メリーとササミが言いたい放題言ってくる。
「ああ、そうだったね。小っちゃいときのエルザちゃん、絵本の王子様に憧れてて、可愛かった~」
オンセンさんとポコさんは、子どものころ昼間だけアザレア大姐さんのところに預けられていた。当時は夕方に家に連れて帰られる2人が羨ましかったけど、2人とも優しいお姉さんだった。
「わっかるわ~。エルザ、今はけっこうゴツくなっちゃったけど、幼いときはホント、お姫様みたいだったもん」
「『おうじちゃまとけっこんする~』とか言ってるのが、似合ってたよね」
やめて。思い出話で姐さんたちがアタイのメンタルをゴリゴリ削ってくる。
「まあでも、エルザは今もそんなに変わってないかもね」
オンセンさんがそう言うと、みんなの視線がたこ焼きをコロコロとひっくり返しているルイスに向かった。
「まさかリアル王子が現れるとはねぇ」
「やっばい。まつ毛なっがい」
姐さんたちがしみじみとルイスを見つめる。
「チーズ入りたこ焼き、もう少し待ってくださいね」
ルイスは首をかしげてニコッと笑っていた。
その後、タコが尽きるまでたこ焼きを食べ続けて、その日はお開きとなった。
たこ焼きを食べながら、シセンが大きく頷いた。
小さい手で爪楊枝を持ってもぐもぐしてる。ちょっとかわいい。
「あら? この小さい子は見たことないね。誰?」
オンセンさんが首をかしげる。
「失礼な! 仙人剣術で容姿が変わらなくなっておるが、拙者、この場で一番の年上であるぞ!」
シセンが小さいという言葉に反応してキレた。
甲高い声ですぐ怒るから余計に子どもっぽいんだよ。
「ついでに言うと、シセンはA級冒険者。私より強いみたいよ」
レトリー姉ちゃんが補足する。
「マジ!? 何でそんなすごい人が私らにまじってたこ焼き食べてんの?」
「A級冒険者を間近に2人も見るなんて、スゲーわ」
オンセンさんとポコさんが驚いた顔でシセンを見る。シセンにはそれがちょっと快感だったみたいで、口角が上がっていた。
「ふふん。拙者はそこの小娘3名をA級に上げるのを手伝ってやっておる。天才剣士の拙者がいるのだ。小娘たちは大船に乗った気でいるがよい」
シセンは腕を組んで偉そうに言った。
「なるほど。メリーたちの協力者か。でも、それってマズくない?」
「何?」
「だって、アンタが強いA級で、強引にメリーたちの階級を引き上げちまったら、この子らは弱いままA級になるんだよ」
「その後にアンタが抜けて、この子らだけでボス討伐に失敗して死んじまうかもしれないじゃん」
「む…むむむ……」
シセンの眉間にしわが寄った。
「無理してA級に上げるなら、最後まで責任もって面倒をみてほしいよね」
「私たちより年上っていうなら、それくらいできる大人でないと」
何か、アタイたちをA級に上げる責任が全部シセンにあるような流れになってきた。
本来、シセンは旅の途中で、たまたまギルドに頼まれて手伝っているだけなのに。
「わ……わかった。小娘たちが一人前になるまで、拙者がパーティーを組んで面倒をみてやろう」
悲鳴のようにシセンは宣言してしまった。
「よっしゃ!」
「さすがだぜ、シセンさん」
オンセンさんとポコさんがシセンを持ち上げる。
姐さんたちは、無茶してA級に上げられるアタイらを心配して、シセンと交渉してくれたんだろう。
優しい姐さんたちだ。
でも、いつ見てもえげつないコミュ力なんだよなぁ……。
そんなわけで、アタイらのパーティーに正式にシセンが加わることが決まった。
レトリー姉ちゃんはいずれ師匠のところに戻るし、3人じゃボス戦できないから、ありがたいことだった。
「たこ焼きの追加ができましたよ~」
話している間にも、ルイスはどんどんたこ焼きを作ってくれていた。
「ごめんね、ルイス。作るの任せちゃって」
「いえいえ。僕も楽しんでやってるんで」
「ありがと」
ルイスは優しいなぁ。
「次はチーズを入れて焼いてみましょうか」
「チーズ! それも美味しそうだね」
姐さんたちはしばらく黙ってたこ焼きを咀嚼していた。そして、食べ終わると再びシセンに話しかけた。
「そいや、シセンさんは宿暮らし?」
「ああ、そうだな」
「宿だと費用かかるでしょ。メリーたちの面倒みてくれるんだったら、ここに越してこない?」
「何?」
「ここ、シェアハウス。空いてる部屋あるし」
オンセンさんが言うのを、ポコさんが止めた。
「いや、でも、空いてる残り1部屋って、エルザちゃん用じゃないっけ?」
へ? アタイ??
「あぁ~。エルザだけ1人暮らし始めたときに、念のため部屋をとっておいたんだよね。すぐにメリーと合流すると思ってたし」
アタイの知らないところで、そんな気遣いが生まれてたとは。
「すんません、姐さん。アタイは今のアパートで大丈夫ですんで、人、入れてください」
アタイは2人に向かって頭を下げた。
「そうみたいだねぇ。エルザちゃんが1人暮らしちゃんとできるとは、意外だったよぅ」
ポコさんがしみじみと言う。
「エルザって、昔から実は内向的というか、1人の時間がないとダメなタイプだったもんね」
「エルザ姐さんは見かけによらず空想好き乙女っス」
メリーとササミが言いたい放題言ってくる。
「ああ、そうだったね。小っちゃいときのエルザちゃん、絵本の王子様に憧れてて、可愛かった~」
オンセンさんとポコさんは、子どものころ昼間だけアザレア大姐さんのところに預けられていた。当時は夕方に家に連れて帰られる2人が羨ましかったけど、2人とも優しいお姉さんだった。
「わっかるわ~。エルザ、今はけっこうゴツくなっちゃったけど、幼いときはホント、お姫様みたいだったもん」
「『おうじちゃまとけっこんする~』とか言ってるのが、似合ってたよね」
やめて。思い出話で姐さんたちがアタイのメンタルをゴリゴリ削ってくる。
「まあでも、エルザは今もそんなに変わってないかもね」
オンセンさんがそう言うと、みんなの視線がたこ焼きをコロコロとひっくり返しているルイスに向かった。
「まさかリアル王子が現れるとはねぇ」
「やっばい。まつ毛なっがい」
姐さんたちがしみじみとルイスを見つめる。
「チーズ入りたこ焼き、もう少し待ってくださいね」
ルイスは首をかしげてニコッと笑っていた。
その後、タコが尽きるまでたこ焼きを食べ続けて、その日はお開きとなった。
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