冒険者ギルド受付の癒し枠~ネコ娘は追放系主人公が気になるようです

八華

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ネコ娘、ホットプレートを入手する

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 次の日。
 今回のボス戦は、アタイたちのA級昇格の査定も含むので、ギルド職員のルイスが一緒に来ることになった。

「ボス戦に6人って、多いかな」

 ダンジョンで戦う場合、人数に制限がある。
 冒険者たちは体内のマナをもとに、身体強化をしたり、魔法を使ったりする。このとき、多人数だとマナが干渉し合って、コントロールできなくなるのだ。

「僕はほとんどマナを使いませんし、一番干渉しやすい魔法使いはメリーさんだけですから、大丈夫だと思いますよ」

 ルイスが言うならへっちゃらだ。


 ボスはクラーケンだった。
 巨大なタコに似た魔物だ。

「足が8本。全部盾で防ぐのはキツイっス」

 いつもはササミを壁役にして戦ってるが、このボスは攻撃の手数が多そうだ。

「分担ね。ササミが4本、私とシセンが2本ずつでどう?」

 姉ちゃんの提案に、

「拙者なら構わぬよ」
「了解っス」

 シセンとササミが同意した。

「それじゃあ、アタイは頭部を狙うよ」

 戦闘を開始した。
 敵は数の多い足をムチのように使って攻撃してくる。でも、あらかじめ分担を決めてさばいていたので、脅威にはならなかった。

「独特の弾力だ」

 タコの頭を殴るとぽよぽよんとした感触が返ってきた。肉がしっかりしてて美味しそう。倒すと消えちゃうのがもったいないな。
 しかし、しばらく攻撃を続けていると、

 ゾワリッ……

 嫌な予感がした。
 クラーケンの頭にある口のような突起部分から、黒い墨があふれ出ようとしていた。

「マズいっ。毒か!?」

 ヒヤリとした瞬間、ルイスが前に出た。
 その手には、クーラーボックス(大)。

 彼はフタを開けたクーラーボックスをタコの口に押し当てた。

「空間拡張してますから、巨大タコの墨も全部入りますよ。気にせず攻撃を続けてください」

 C級冒険者程度の力しかないはずのルイスは、巨大なクラーケンに触れるほど近づいても全く怖がっていなかった。

 その後も、クラーケンが墨を吐こうとするたびに、ルイスがクーラーボックスで止めていった。

 そのまま攻撃を続けて、無事にボスを倒すことができた。

「おっしゃ、勝った!」

 クラーケンが魔石に変わるのを見届けて、アタイは飛び跳ねてガッツポーズした。

「エルザ姐さんは3回目、ウチとメリー姐さんは2回目のボス勝利っス」
「みなさんうまく対処されていたので、あと1回くらいボス戦をこなされれば、A級に上がれると思いますよ」

 弟子入りに比べればかなり楽だけど、まだもう1戦は必要なのか。

 ボスのドロップアイテムは大判ホットプレートの魔道具だった。たこ焼き用の丸いくぼみのついたプレートもセットになっている。

「タコがたこ焼き用の道具を残して死んだっス」
「うーん、ドロップはハズレかぁ」

 ボスがドロップする魔道具は、ひと昔前までは高額で引き取ってもらえた。でも、最近は人間の魔道具制作技術が上がって、人の手でも作れるものがほとんどになってしまった。
 今はまだ金持ちしか買えない値段だけど、技術の進展に合わせてどんどん安くなってるから、そのうち色んな魔道具が庶民にも普及しそうだ。
 ホットプレートが安くなったら、家で気軽に焼肉とかしやすくなるんだろうなぁ。

 そんなことを思いながら、アタイは主のいなくなったダンジョンをあとにした。

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