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悪役令嬢と話し合いました3

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 私は意識の淵でヒステリックに泣き叫ぶレイナと再び対面した。

「許さない。アイツ、今すぐ殺す……」

 レイナは物騒なことを叫んでいる。
 デリカシー欠乏症の悠真君とガチ悪役令嬢のレイナに会話させるのは危険だな。

「落ち着いてって。さっきも言ったけど、おとなしく待つのが得策だよ」

 私はレイナをなだめようとするけれど、

「うるさい。もう我慢できない!」

 気の短いレイナの興奮はおさまらなかった。
 参ったな。
 この調子で戦闘中に何かやらかしたらシャレにならない。私は攻略メンバーから外れるべきかな。

 しかし、すでにレイナのレベルは56まで上がっている。このままの状態のレイナを残して、私たちが地球に帰ったら、どうなってしまうのだろう。……王族に恨みを持つ強力な魔導士なんて、危険すぎて殺されるかもしれない。
 それじゃあ、後味が悪すぎる。何とか彼女を改心させたい。

「……改心。それだ! 悪役令嬢改心モノだ!!」

 私は地球で見たことのあったアニメを思い出した。悪役令嬢が改心して善良な人間として人生をやり直すという内容だ。

「レイナ、これを見て!」

 私がレイナの記憶から必要な情報を読み取れたように、レイナにも私の記憶を見ることができる。私はできるだけ鮮明にアニメの記憶を引き出して、レイナが見られるようにした。

「何ですの、急に……。これは……」

 オープニングの主題歌が終わり、悪役令嬢が婚約破棄されるシーンが始まると、レイナはすぐにアニメに引き込まれていった。彼女の経験と酷似したシーン。レイナは無言になって、夢中でストーリーを追いかけはじめた。

 そのうちに、“スリープ”の効果時間が切れて、身体が目を覚まそうとする。

「……あなた、代わりに出ておいて」

 レイナはアニメを映した記憶のスクリーンに張り付いたまま離れなくなっていた。

「うん。行ってくるね」

 目覚めた私は、レイナの様子を説明して、その日は解散となった。



 それから1カ月。
 私のレベルは60になっていた。
 レイナは私から身体の主導権を奪うことなく、ずっと私の記憶を見ていた。
 最初は私が見ていた悪役令嬢モノのアニメや漫画、それから、他のジャンルのアニメも見るようになった。学園モノの漫画を読んで、私の世界に興味を持ち、私の学校での様子を探り、果ては授業の内容まで見て、地球の政治体制に驚いていた。

「あなたの世界を知るにつれて、何が正しいのか分からなくなってきましたわ」

「日本とこっちでは、身分制度とか、いろいろ違いがあるからねぇ」

 当初の怒りがおさまると、レイナはだんだん思慮深くなっていった。

「恨みがなくなるわけではないですけど。私の行動のせいで、全く関係のない人々を困らせたくはないですわ」

「権力者が派手に争うと、巻き込まれる人が出てきそうだもんね」

「そうですの」

 レイナは一度深くうなずいて、顔を上げると、私を正面からジッと見つめた。

「でも、このままでは、私やヴェネディクト家の犠牲が大きすぎます。そこは交渉させていただきたいの」


 攻略が休みの日、私は悠真君と英人君のいる王城の執務室を訪問した。
 2人の前に立つのは、私ではなくレイナだった。

「公爵令嬢の交渉か。本物の王子様を呼んだ方がいいか?」

「ええ。お願いしますわ」

 レイナは私たちが地球に帰った後のことについて、王宮の人々と話し合った。
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