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お散歩しました
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私とラビリオ君のお店がオープンして10日ほど。
お客さんは順調に来てくれるようになっていた。
最初に私が作ったローブを1着、ローラさんにあげていたんだけど、かなり気に入ってもらえた。それで、ローラさんが身に着けているのを見た冒険者さんが興味を持ってくれたのが大きかった。
他にも、ロシェ君の実家のお肉屋さんでチラシを配ってもらったり、アンジェラさんの知り合いの冒険者さんに声をかけてもらったり。そういう周囲の協力があって、店の存在が街の人々に広まっていった。
売れ行きは順調だ。
ただ、商品を補充するタイミングで問題が生じた。
織物屋さんで材料を揃えようとすると、布だけで私の販売していた服の値段を越えてしまったのだ。
「なるほど。材料が高いから、生産品の価格も高かったんだね。私の値付けが安すぎるって言われるわけだ」
王都の材料の相場を知った私が感心したように言うと、
「やっと気づいたか。金銭感覚は大事なんだから、店をよく見てまわって、相場を覚えたほうがいいぞ」
と、ロシェ君に呆れられた。
「うーん、でも、お値打ち価格で冒険者装備の販売は続けたいかなぁ」
こっちの世界の冒険者さんのレベルが上がりにくいのは、ヒーラー不足の他に、装備が高すぎることも原因だと思うんだ。
装備が丈夫なら、怪我する危険も減るもんね。
「けど、材料はどうするんだ?」
「自分で採集して機織りするよ」
王都付近の採集場所は、ゲームのスキル上げでお世話になったから覚えていた。
王都の東門からフィールドに出ると、広い草原が広がっていた。
「いい天気。ピクニック日和だね」
青空の下で伸びをする私に、不意打ちでプチスライムがタックルしてきた。
ポコッ!
ダンジョン以外のフィールドにも、ときどきモンスターが出現する。でも、フラネット王都周辺に出るのはレベル10以下の雑魚ばかりだ。ゲームでは弱い敵しか出ないから、プレイヤーたちが気軽にお洒落装備で出歩いていた。
しかし、レベル上げの難しいこの世界では、フィールドに出るのも危険という人が多い。それで、素材の値段が上がってしまってたらしい。
ポコッ、ポコポコッ!
何匹ものプチスライムが私を囲んで攻撃してきた。しかし、攻撃力が低すぎて私にダメージを通すことができない。
「“毒霧魔法”」
パタパタパタ……。
プチスライムたちはスリップダメージでも一瞬で倒せる弱さだった。
「相変わらず、変な倒し方をするねぇ」
付き添ってくれていたアンジェラさんが、呆れたように言った。
「スライム相手にアンジェラさんに剣を振るってもらうのも、大げさですからね」
今日はアンジェラさんともう一人、
「お、見えてきたぞ!」
ラビリオ君も一緒だ。
草原の先には赤い花の群生地があった。
布の染料になる花だ。
「この花、美味しいんだぞ」
ラビリオ君はお花をモシャモシャ食べ始めた。
さすがウサギさん、草食男子だ。
赤いお花を口にくわえて、めちゃカワイイ。
「全部食べるんじゃないよ。レナの生産材料を取りに来たんだからね」
「あはは。大丈夫ですよ、たくさん生えてますし」
ゲームと同じ採集素材は、採っても採ってもすぐに生えて翌日には元通りになる、ものすごい生命力だ。でも、人間が栽培することはできない、不思議な植物である。
モンスターのいるフィールドで、こうした素材を採集してくるのは、戦いの心得のある冒険者の仕事だった。
そういう需要で、冒険者ギルドとかクエストみたいなゲームと似た環境が維持されているみたいだ。
私はお花をモグモグ食べるラビリオ君の近くで、摘んだ花を次々にアイテム枠に入れていった。
「レナのアイテムボックスはいくらでも入るみたいだね」
と、言いながら、アンジェラさんは私を攻撃しようとするスライムを倒してくれていた。おかげで、邪魔されずに採集がはかどる。
「同じものならたくさん入るんですけど、種類が違うと入らないんですよ」
ゲームと同じアイテム枠は50だけど、同じ採集物は一つの枠に999個までストックすることができた。現実になると、変なバランスだよね。
「ふうむ。それでも、やっぱりとんでもない能力だね。アイテムを出すときも、あまり目立たないようにしな」
こんな感じでアンジェラさんに注意されるので、私はカモフラージュのカバンを持ち歩くようになった。ちょっとした小物はアイテム枠を使わずにカバンに入れた方が、枠の節約にもなってよかった。
「ありがとうございます。採集おわりました」
目的の物を集めおえると、付近の河原でラビリオ君が綺麗な石を探すのを少し手伝い、日が暮れる前に街へ戻った。
お客さんは順調に来てくれるようになっていた。
最初に私が作ったローブを1着、ローラさんにあげていたんだけど、かなり気に入ってもらえた。それで、ローラさんが身に着けているのを見た冒険者さんが興味を持ってくれたのが大きかった。
他にも、ロシェ君の実家のお肉屋さんでチラシを配ってもらったり、アンジェラさんの知り合いの冒険者さんに声をかけてもらったり。そういう周囲の協力があって、店の存在が街の人々に広まっていった。
売れ行きは順調だ。
ただ、商品を補充するタイミングで問題が生じた。
織物屋さんで材料を揃えようとすると、布だけで私の販売していた服の値段を越えてしまったのだ。
「なるほど。材料が高いから、生産品の価格も高かったんだね。私の値付けが安すぎるって言われるわけだ」
王都の材料の相場を知った私が感心したように言うと、
「やっと気づいたか。金銭感覚は大事なんだから、店をよく見てまわって、相場を覚えたほうがいいぞ」
と、ロシェ君に呆れられた。
「うーん、でも、お値打ち価格で冒険者装備の販売は続けたいかなぁ」
こっちの世界の冒険者さんのレベルが上がりにくいのは、ヒーラー不足の他に、装備が高すぎることも原因だと思うんだ。
装備が丈夫なら、怪我する危険も減るもんね。
「けど、材料はどうするんだ?」
「自分で採集して機織りするよ」
王都付近の採集場所は、ゲームのスキル上げでお世話になったから覚えていた。
王都の東門からフィールドに出ると、広い草原が広がっていた。
「いい天気。ピクニック日和だね」
青空の下で伸びをする私に、不意打ちでプチスライムがタックルしてきた。
ポコッ!
ダンジョン以外のフィールドにも、ときどきモンスターが出現する。でも、フラネット王都周辺に出るのはレベル10以下の雑魚ばかりだ。ゲームでは弱い敵しか出ないから、プレイヤーたちが気軽にお洒落装備で出歩いていた。
しかし、レベル上げの難しいこの世界では、フィールドに出るのも危険という人が多い。それで、素材の値段が上がってしまってたらしい。
ポコッ、ポコポコッ!
何匹ものプチスライムが私を囲んで攻撃してきた。しかし、攻撃力が低すぎて私にダメージを通すことができない。
「“毒霧魔法”」
パタパタパタ……。
プチスライムたちはスリップダメージでも一瞬で倒せる弱さだった。
「相変わらず、変な倒し方をするねぇ」
付き添ってくれていたアンジェラさんが、呆れたように言った。
「スライム相手にアンジェラさんに剣を振るってもらうのも、大げさですからね」
今日はアンジェラさんともう一人、
「お、見えてきたぞ!」
ラビリオ君も一緒だ。
草原の先には赤い花の群生地があった。
布の染料になる花だ。
「この花、美味しいんだぞ」
ラビリオ君はお花をモシャモシャ食べ始めた。
さすがウサギさん、草食男子だ。
赤いお花を口にくわえて、めちゃカワイイ。
「全部食べるんじゃないよ。レナの生産材料を取りに来たんだからね」
「あはは。大丈夫ですよ、たくさん生えてますし」
ゲームと同じ採集素材は、採っても採ってもすぐに生えて翌日には元通りになる、ものすごい生命力だ。でも、人間が栽培することはできない、不思議な植物である。
モンスターのいるフィールドで、こうした素材を採集してくるのは、戦いの心得のある冒険者の仕事だった。
そういう需要で、冒険者ギルドとかクエストみたいなゲームと似た環境が維持されているみたいだ。
私はお花をモグモグ食べるラビリオ君の近くで、摘んだ花を次々にアイテム枠に入れていった。
「レナのアイテムボックスはいくらでも入るみたいだね」
と、言いながら、アンジェラさんは私を攻撃しようとするスライムを倒してくれていた。おかげで、邪魔されずに採集がはかどる。
「同じものならたくさん入るんですけど、種類が違うと入らないんですよ」
ゲームと同じアイテム枠は50だけど、同じ採集物は一つの枠に999個までストックすることができた。現実になると、変なバランスだよね。
「ふうむ。それでも、やっぱりとんでもない能力だね。アイテムを出すときも、あまり目立たないようにしな」
こんな感じでアンジェラさんに注意されるので、私はカモフラージュのカバンを持ち歩くようになった。ちょっとした小物はアイテム枠を使わずにカバンに入れた方が、枠の節約にもなってよかった。
「ありがとうございます。採集おわりました」
目的の物を集めおえると、付近の河原でラビリオ君が綺麗な石を探すのを少し手伝い、日が暮れる前に街へ戻った。
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