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お店を開きます

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「類は友を呼ぶんだねぇ。世間知らずのお友達は世間知らずか」

 お馴染みになりつつある家のテーブルを囲みながら、ラビリオ君の状況を説明すると、呆れた声でアンジェラさんが言った。
 むぅ。この件に関して、私は気づいていたんだけどなぁ。
 ラビリオ君はとても高額な宝石を使ったアクセサリーを、知らずに安く販売していた。そこを、強欲な商人に狙われていたのだ。

「でも、レナ。宝石の目利きなんてよく出来たな。俺には見てもさっぱり分からないや」

 テーブルの上に出されたラビリオ君のアクセサリを眺めながら、ロシェ君が首を傾げた。
 アンジェラさんも頷いて、

「普通に生活していたら、そうだろうね。私の知り合いに、こういう宝石を採って稼いでいる冒険者がいてね。羽振りの良い奴だったよ。私も試しに採りに行ってみたけど、私の能力とは相性が悪かったから、諦めた」

 と、説明してくれた。

「アンジェラさんが採れない宝石!?? それはスゲーや」

 ロシェ君のアンジェラさん信仰はすごい。すぐに価値のある宝石だと理解した。

「ウサギにとってはただの綺麗な石ころだぞ。人間はこんなものに馬鹿みたいな値段をつけるんだな」

 ラビリオ君は困惑していた。以前にラビットマンはアクセサリーに興味を持たないって言っていたから、こういう石に価値が生まれなかったんだろうな。

「特にこの赤い石がまずいね。レナはどう思う?」

 アンジェラさんがアクセサリーの1つ、大振りの赤い宝石がついたものを指して言った。

「そうですね。これは、貴族や大金持ちでないと手が出せない品です。こっちの青い宝石も相当な値がつきますよ。他は、裕福な市民なら買えるものでしょうか」

「そんなところだろうね」

「金属の方も、採掘の難しいダンジョン産ですが……」

「そっちは一度に持ち帰れる量が多いんだ。高いもんだけど、使っていてもおかしくはない」

「……なるほど」

「しかし、一度、分かるやつに知られてしまうと、そのまま露店で売るのは難しくなるだろうね。どこかしっかりした商店に適正価格でおろせるように、取引先を探すかい?」

 アンジェラさんの言葉に、ラビリオ君は首を横に振った。

「オレはオレが見立てて客に似合うと思うアクセサリしか売りたくない。誰が使うか分からないところには売らない」

 うーん。すごい芸術家肌だ。
 ラビリオ君にとって儲けはどうでもいいみたいだなぁ。

「……そうかい。なら、ここで店を開くか?」

「へ?」

「この家はもともと商店だったのを中古で買ったんだ。やろうと思えばすぐに店を開ける」

「確かに、そういう間取りですけど」

「レナも生産するだろ? あんたが作るものも、露店だといずれ似たようなトラブルを起こしそうじゃないか。だったらいっそここで店をやりな」

「えと、急に店を持てと言われても……」

 私は戸惑うが、ラビリオ君の方はすぐに、

「やる! 絶対やる! オレの店、オレの店だ!!!」

 大興奮だった。

「なら、決まりでいいね。私はレナに大きな恩を受けている。だから、貸店舗の金は取らない。ウサギ、あんたの商品を売るついでに、レナの服も売ってやれ。それで、タダで店が持てる」

「分かった」

「ちょっと、アンジェラさん。急に決めて、良いんですか?」

「ああ。あんた達みたいな世間知らずのお人よしは、目の届くところにいてくれた方が気が楽だ。Aランク冒険者の家で商売してるんだ。妙な奴に絡まれる可能性も下がるだろう」


 それから、その日の内にアンジェラさんの知り合いの大工さんに頼んで、出店のための簡単な改装をすることが決まった。
 役所への許可は、店主の名前をアンジェラさんにすると、問題なく通った。

 ラビリオ君のアクセサリーの内、特に高価な宝石2種類を使っていたものは、店頭には出さず、ラビリオ君がピンときたお客さんにこっそり売ることになった。価格は全体的に値上げしたが、一般の人の手が届かない値段にすることをラビリオ君が嫌がったので、品物を考えるとかなり安いままだ。
 私の作ったローブも、この店で販売される。
 お客さんを見て売りたいラビリオくんが店にいるときしか開店しないので、営業時間は短め。代金の計算や帳簿をつけるのは、日本で教育を受けていた私の方ができたので、ラビリオ君と私で協力して店を運営することになった。

「レナ達だけじゃ不安だからな。僕もときどき見にくるよ」

 と、ロシェ君も協力を申し出てくれた。

 こうして、私は迷い込んだ異世界で自分の店を持つことになった。
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