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冒険者になりました3

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 翌日、目が覚めると昼を回っていた。

「嘘……。やっちゃった」

 まあ、突然異世界トリップして牢屋に入れられて、脱獄して夜中から翌日の昼まで歩き回ってたんだから、仕方ないといえば仕方ない。
 むしろ、これだけすぐに適応している方がすごいかも。

 知っているゲームに似た世界だっていうのが大きかったな。

「でも、何で悪役令嬢断罪パターンから始まったんだろう。私のやっていたゲームって、普通のファンタジー系オンラインゲームで、乙女ゲームとかじゃないんだけど。……ん? あ、そうか。もしかして……」

 一晩寝たことで、色んな記憶が戻ってきた。
 これは、ストーリークエストだ!

 私のやっていたオンラインゲームには、数々のクエストがあった。
 中には凝ったストーリーの連続クエストもあって、特別なNPCが出てくるものもあった。

「確かに、その中にあった。運営がふざけて作ったとしか思えない、悪役令嬢断罪イベント!」

 悪ふざけのくせに、しっかり作られた連続クエストだった。
 プレイヤーは、略奪愛をするヒロイン側か、断罪を回避しようとする公爵令嬢側か、どちらか選んだ方に協力してクエストを進める。
 ヒロイン側だと、ヒロインや王子に協力して、悪役令嬢の家の不正を暴く。公爵令嬢側だと、不当な理由での断罪に対し、逆転ざまあ展開に持っていく。

「私が牢に入った時点で、ヒロイン側のストーリーなのは確定ね」

 公爵令嬢側だったら、断罪の始まる卒業パーティーで反撃するから、牢に入らないのだ。

 で、このストーリーがあのオンラインゲームと同じだとすると、ここで終わらない。
 もとが、ファンタジーバトルゲームなのだ。ダンジョンとかボス戦とかがメインだ。

 牢に入れられた悪役令嬢一家は忽然こつぜんと姿を消す。彼らは悪魔と契約してしまうのだ。

 悪役一家自体は、契約後すぐに殺されて、悪魔の糧にされてしまう。そこからは、悪魔のダンジョンの攻略クエストになる。バトルに持っていくためのシナリオだったからね。

 ここまでは私もやっていた。でも、

「続きは難しすぎるんだよ……」

 私はゲームのライトユーザーだった。私のやっていたゲームは、このライト勢とガチ勢と呼ばれる戦闘本気プレイヤーの住み分けがよくされていると言われていた。
 通常のレベルは50で終わり、それより上は、ガチ勢が行く特殊エリアでしかレベル上げできない。
 特殊エリアの戦闘は、上限人数のパーティーを組んでいくのが必須で、死亡率が高かった。ゲームの死亡ペナルティは手持ち枠のお金のランダムな消滅のみとはいえ、ちょっとのミスで死んで、死んだらチーム全体に迷惑をかけるようなところに、私は行く気になれなかった。

 連続クエストを完結させるには、特殊エリアでのみドロップするアイテムが必要だったのだ。

「アイテムはマーケットで買えるから、値下がりしたらクエストを終わらせるつもりだったんだよね」

 だから、特殊エリア攻略は必須ではない。ガチ勢がとってきたアイテムを買えば、誰でもクエストを最後までできる。アイテムを取るのは徐々に簡単になっていくから、値崩れしていずれライトプレイヤーもエンディングを見られる見込みだった。

「特殊エリアもはじめの方は簡単になっていたから、ちょっとは入ったことあるしね」

 ゲームで出来たフレンドに連れて行ってもらって、少し攻略をしていた。
 だから、ステータスの私のレベルは、‘50(55)’となっている。
 通常エリアではレベル50、特殊エリアに入ると55ということね。

 特殊エリアの最高レベルは70だったから、レベル60くらいまでは、ライトを引っ張って行くことが出来たそうだ。

「なんか、ナンパ目的っぽいフレンドだったけど、話が面白いから乗せられて、時間のあるときに連れて行ってもらったのよね」

 ゲーム内恋愛しちゃうタイプの人で、……ああいうのって、気を付けないといけなかったのかな。良い人そうだったけど。

 そんなので、多少は特殊エリアにも入れたけど、イベントの攻略に必要なアイテムはもっと難しいところにあった。なので、私があのクエストをクリアするのは、もっと先になるはずだった。

「まあ、私が逃げたことでイベントは崩れただろうし、放置でいっか」

 悪役令嬢が悪魔召喚せずに逃げたのだから、これでイベントは終わりだろう。


 気持ちを切り替えて、冒険者ギルドに向かうことにした。
 昼を過ぎて、活動を始めるには遅いけど、発行された正式なギルドカードを受け取るくらいはできるだろう。

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