断罪済み悪役令嬢に憑依したけど、ネトゲの自キャラ能力が使えたので逃げ出しました

冒険者になりました２

　冒険者の仮登録を済ませると、私は街をブラブラと歩いた。

　商業区はたくさんの露店でにぎわっていた。
　付近の村から直接農家が野菜や果物を売りに来ているらしい。他にも、雑貨や服を売る店もたくさんあった。
　露店の並ぶ区画では、決まった税金を役人に払えば、誰でも店を出せるそうだ。

「何か生産して、市で売って稼ぐ手もあるのか。でも、生産の場所をどうするか……」

　ゲームでは、プレイヤーがアイテムを生産するシステムも充実していた。鍛冶とか調薬とかいろいろあって、それぞれ、特殊な生産道具を使っていた。
　しかし、ゲームなら、道端や広場に道具を出して生産する光景が見られたのに、こっちでは全く見かけない。物作りは自分の家とか工房でするルールなのかもしれない。

　生産道具自体は、機織り・裁縫のものだけ、手持ちのアイテム枠に入っていた。こちらに移る直前のゲームの状態を反映しているらしく、生産するつもりの服飾の道具と材料を持っていて、他は倉庫に入れていたみたいだ。

「宿の部屋みたいな場所で道具を出すのは危険だな。生産道具は重量のありそうな見た目だったし、床が抜けそう」

　とすると、自由にできる拠点が欲しい。

「城壁の中の土地って高そうだなぁ。自分がどれくらい稼げるかもまだ分からないし。しばらくは、この環境に慣れるのが優先かな。……というか、眠気がすごい……」

　昨夜、牢獄から脱出してずっと、歩きっぱなしだった。興奮状態でしばらくは眠気を感じなかったけど、さすがにそろそろ休まないと厳しいな。

　私は商業区の端の治安の良さそうな宿屋に１０泊ほど前払いして部屋を借りた。
　部屋に入るころには、疲れがどっと出ていて、ベッドに横になってすぐに、私は深い眠りに落ちてしまった。