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   悲嘆

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「武さま、どこまでご記憶なされてますか?」 

「北海道から帰って来る時の?」 

 夕麿を抱き締める身体が微かに震えた。 

「そうです」 

「……迎えに来た車に乗る辺りまで…でもその前から、何だか霞がかかったみたいで…」 

 武はガタガタと震え始めた。夕麿は身をひるがえし武の背に手を回して抱き締めた。 

 すると清方が合図して、控えていた周がPCを差し出した。液晶に映し出されたのはまさに数日前の武の姿だった。夕麿に縋り他の人間を受け付けない自分の姿。観たくないのに液晶から視線をそらせる事が出来ない。 

 数分間だけの映像に武は強い恐怖を感じた。 

「これをご覧ください」 

 周が腕を捲り上げて巻いていた包帯を解いた。そこにはくっきりと歯型がついていた。 全身を強張らせて息を呑む。何がどうなっているのか……武には突き付けられるものを、否定も拒否も出来なかった。記憶にはないのに自分の行動だと納得してしまう何かがあった。 

 清方が武の様子を見ながら状態の説明をしていく。 

 自分であって自分でない状態は武には恐怖しかなかった。 

 ただ…清方は一つだけ、武には言わなかった事がある。あの状態の武が夕麿を失う恐怖に怯えている事を。夕麿の愛情を信じられない今が、その反動を受けて強くなっている可能性があった。記憶が失われているならば無理に告げるのは逆効果。病院の医務局で複数の医師たちと、繰り返しカンファレンスを行った結果だった。 

 まずは武が夕麿への信頼を取り戻す事。それなしには先へ進めないと判断されたのだ。武が意識を取り戻しカウンセリングを行った後行われ診断された事だった。その上で全てが行われたのだ。 

「武さま、今回のあなた様の行動について、清方さんの診断書を上に提出いたしました。極度のストレスによって、病が再発なされたと判断されました。故に3日間の座敷牢での謹慎があなた様への罰でした。また伴侶としての失態として、夕麿にも1日の謹慎が課せられました。あなたと同じく座敷牢へ入ったのは夕麿本人の意志です。 

 座敷牢での期間や夕麿の処遇については、あなた様にお知らせしてはならないと申し渡されました。御不安をお持ちいただく事も、罰だったと御了承くださいませ」 

 幾つかの嘘が混じっている事を忠義を尽くす大夫として、言わなければならないのは今の周には心苦しい限りだった。 

 周は今朝、密かに宮内省に紫霞宮家の大夫を辞したいと申し出た。表向きの理由は医師としての学びに専念して、紫霞宮家に侍医として仕えたいと。だが本当の理由は治療の為とは言っても、武に大夫として嘘を吐かなければならないのが許せなかったのだ。医師としてならば治療として割り切れる。だが大夫としては…主である武に不実だと感じてしまったのだ。 

 後任には雅久を推薦した。彼ならば武の信頼も篤い。けじめは付けるべきだと周は思っていた。 

「それから…どうか、武さま。雫さんの立場を御理解いただけませんか。彼は今回の役目を最初、強く拒否しました。信頼関係がなくなる事は、警護を行う者にとっては大変な痛手なのだそうです」 

「私からもお願いします。雫さんは本当に苦しまれました」 

 夕麿の言葉に武は唇を噛み締めた。 

「パートナーである私が申し上げるのは、相応しくないのかもしれませんが…雫は職を辞する覚悟でおります」 

 真実だった。清方は自分が下した治療法が、雫の立場を危うくしてしまったのをわかっていた。愛する人を犠牲にして主たる者の治療を行う。医師としても臣としても、確かにそれは優れた行為かもしれない。だが清方は彼に詫びる言葉が見つからなかった。武との間に信頼関係が回復しなければ、雫は本当に制服を脱ぐだろう。キャリアとして積み重ねて来たものも、室長として立ち上げつつある特務室も全て捨てる事になってしまう。雫の願いや希望を奪う事になるのだ。 

 武は彼らのそんな想いは知らない。知らなくて良いとも思う。そこまでを背負わせたくはないのだ、誰も。 

「武、お願いです」 

 もう一度、夕麿が懇願した。すると武は小さく頷いた。 

 今更、雫を責めたり拒否しても意味がない。そんな事をしたら多くの人間が、自分からも御園生からも離れてしまうだろう。 雫にも警護官の立場がある。 第一、今回、悪いのは自分なのだと。こんなにも皆に迷惑をかけ、心配させたのだと思うと悲しかった。しかもあんな状態に陥って、もっと心配させてしまったのだ。謝っても謝りきれない。 

「ごめん…なさい…誰も…悪くないから。全部、俺の所為…だから」 

 ちゃんと謝罪しようと思うのに、涙が次々と溢れて上手く言葉にならない。それが歯痒い。 

「それは違います、武。私も悪かったのです。あなたがストレスを溜めているのに気付きながら、私は何もしなかった」 

「僕も武さまのお気持ちを考えておりませんでした」 

 武のやった事は確かにその身分と立場においては、とんでもない事だった。だがそこまで追い詰めてしまった、自分たちの配慮のなさを全員が痛感していたのだ。武だけを責める事は出来ない。ここにいない者も含めてその想いでいっぱいだった。 

「周さん…清方先生、俺はまたこんな状態になるの?」 

 PCを指差しての問いに、清方も周も頷くしかなかった。 

「治療法はないんだよね?」 

「今、現在の医学では」 

「わかった。だったらお願いする。次にそうなった時は何もしないで。それで死ぬなら……俺の運命だ」 

「武!?」 

「今も何もしなくて良い」 

 吊された点滴のパックを見上げて武は微笑んだ。 

「それは…医師としてお断り申し上げます。患者の為に最善を尽くすのが、我々医師の使命でございます」 

 周の凛とした言葉に、武は安心したように微笑んだ。 

「…うん、周さんの気がそれで済むなら…」 

 幼い頃から病を繰り返しているからこそ武にはわかっていた。食物を身体が受け付けない以上、点滴のみでは限界があるのを。昏睡状態の患者ですら、胃への栄養剤の投与を行う。今の武はそれすらも吐き出してしまう。胃そのものが食物に対して異物だと反応するのだ。どんなに点滴を続けても身体は衰弱を免れはしない。それでも周や清方が医師として納得するならば、最低限の治療を受け入れよう。 

「夕麿、ごめんな…もう少しだけ、俺に付き合ってくれ」 

「何を言うのです!」 

「俺が病気で死ねばどこからも不満は出ない。ホッとする人もいるだろうさ。これで良いんだ、これで」 

 穏やかに全てを諦めた顔だった。 

「ごめん…最後まで苦労をかけて」 

 そうきっとこれが一番な方法なのだ。たくさんの幸せな思い出と消える。それが望みだった時があった。だから……今更だ。 

「武…私は嫌です!そんな事は認めません」 

 止めなければ。何故、武が死ななければならないのだ。 

「夕麿、それが一番、全てがおさまる。お前たちも自分の本来、在るべき人生に戻れる」 

 日陰の宮など不必要なのだから。そんなものに縛られて、これ以上は皆に苦労をさせたくはない。消える時が来たのだ。 



「お茶が入りました」 

 液晶画面を見過ぎて頭が痛い。あれから数日が過ぎた。社に復帰はしたが夕麿もほとんど食物が喉を通らない。そんな日々が続き、帰宅すると夕麿も点滴を受ける状態だった。 

 雅久はずっと気になっている事があった。 

「あの…夕麿さま、少しお伺い申し上げてもよろしいでしょうか?」 

「珍しいですね、雅久。何かありましたか?」 

「武さまの事でございます」 

「武の?何でしょう?」 

 今は武の事ならば何でも聞きたい。どこかに答えとは行かなくても、かたくなな彼の心を動かす欠片が隠されていはしないか。わらにも縋りたい気持ちだった。 

「周さまと何ぞあらしゃりましたか?」 

「周さんと…?どういう事ですか?」 

「先日、武さまのお世話せもじをさせていただいた折り、周さまが来られまして……武さまの点滴パックを取り替えられた時でございます。周さまと視線がお合いであらしゃる時は笑顔であらしゃいました。でも…周さまが視線を外されると、その…武さまは大層、悲しげな顔をなされました」 

 その表情に雅久は胸が痛くなった。 

「まさか…でも…」 

 夕麿には心当たりがあった。武を座敷牢から出したあの日、彼が薬で眠っていた時に周と窓際で今後を話し合っていた。その時に眩暈に襲われ倒れそうになっ周が抱き止めてくれたのだ。そのすぐ後に武が起きた。 もし…それを目撃してから、武が起きたというアピールをしていたなら…… 

「武さまはまだ、周さまを気になされていらっしゃるのですね」 

 気持ちはわからない訳ではない。雅久はそう思った。周が武や夕麿から去ったならば、そのような疑いは持ちようがなかっただろう。だが周は大夫としても侍医としても二人の側にいて、しかも御園生邸に住んでいるのだ。 

「夕麿さま、束ぬ事をお伺いいたしますが…」 

「何でしょう?」 

「その、武さまとの閨事ねやごとは如何なされていらっしゃいますか?」 

 雅久が少し頬を染めながら言った。 

「珍しいですね、あなたがそのような事を口にするのは。私たちはそれ程、あなたや義勝を心配させているのですね」 

 雅久が淹れたダージリンを一口飲んで、夕麿はゆっくりと息を吐いた。 

「発作中の武とはありましたが…今はあの状態です。体調に障りがあるかもしれませんので」 

 彼が正気に戻る前日、抱かれたのが最後だった。

「必ずしも肌を重ねるのが愛情だとは申しませんが……それによってでしか、感じられないものがあるのではないでしょうか?」

 差し出がましい事を口にしている。雅久はそれを自覚しながら、夕麿に対して言葉を紡いだ。彼も義勝も武を死なせたくなかった。夕麿も道連れになるのがわかっていたのもあった。

「あなたが記憶を失ってから8年…義勝は、本当にあなたを大切にして来たのがわかります」

「ありがとうございます。私もそう思っております」

 二人が寄り添う姿は、誰が見ても微笑ましい光景だった。

「それと…先程、宮内省から電話がございました」

「電話?」

「はい。周さまが大夫を辞されたそうでございます。それで恐れ多くも私を、後任にご推薦くださったと…」

「周さんは…座敷牢の件で、大夫として偽りを武に言ったのを悔やんでいました。自分を許せなかったのでしょう。

 雅久、秘書を増やす予定でいます。あなたなら武も納得するでしょう。引き受けてはもらえませんか?義勝は私が説得しますから」 

 雅久ならば武も安心する。第一、周が大夫になったのは、武が紫霄在校中のみの約束だったのだ。それが彼もUCLAへ編入する事になって、留任になったままだった。周はよく尽くしてくれた。もう十分だろうと思う。 

「義勝は…直後に連絡を入れました時に私に任せると」 

「無理強いはしません。ですが私もあなたが引き受けてくれる事を望みます」 

「もったいない御言葉を忝もったいのうございます」 

「いえ、あなたが武や私に常日頃から、よく尽くしてくれているのをわかっているからこその事」 

 武にも異存はない筈だと言葉を付け加えた。 



 夜、帰宅して部屋へ戻ると珍しく武の笑い声が響いた。久し振りに聞く。 

「ただいま戻りました」 

 部屋にいたのは小夜子と義勝だった。義勝はどうやら武の点滴を外しに来たらしい。小夜子は武の検査結果やカルテを手に日本中を飛び回っていた。それとなく彼女に視線を向けると首を振るのがわかった。 治療出来る医師は未だ、見付かってはいないという意味だ。 

「随分と楽しそうですが、義勝。また、余計な事を武に話したのではないでしょうね?」 

「お前の事に関して、ネタは尽きないからな」 

 義勝が涼しい顔をして言うと、武と小夜子が同時に噴き出した。 

「義勝!今度は何を言ったのです!?」 

 真っ赤になった夕麿を見て、武がベッドの上を転げ回る。 

「小等部時代の話を幾つかな」 

「そんな…昔の事を…」 

 ワナワナと怒りに震える夕麿がおかしいとまた武が笑い声をあげた。 昔話で笑われるのは複雑な気持ちではあるが、武に笑い声をあげさげてくれたのを内心は感謝していた。 

「で、何の話をしたのです?」 

「ん?ああ、どちらのおねしょの跡が大きいか、競争した話だとか……」 

「よ~し~か~つ~」 

 夕麿は穴があったら入りたい気持ちになった。それはまだ小等部に入ったばかりの頃の話だ。 

「武、記念に撮ってもらった写真があるぞ?べそかいてる夕麿も写ってる」 

「見たい!」 

「私も見たいわ、可愛い夕麿さんを」 

「そんな物を出して来ないでください!!」 

 羞恥が頂点に達して夕麿が絶叫した。するとまた武が笑い転げる。恥ずかしくて堪らないが、武を笑わす事が出来るならば……とも思ってしまう。 

「義勝、覚えておきなさい!」 

「そんな余裕があったら記憶しとく」 

 夕麿にニヤリと笑って答える姿に武がまた笑う。 

「…ったく…」 

 上着を脱いでハンガーに掛け、夕麿は着替えを手にバスルームへ逃げ込んだ。 

 武の笑顔。引き出したのは義勝でも内容は自分の事だ。笑う事で少しは生きる気力を出して欲しい…と祈らずにはいられない。 

 シャワーを浴びて出ると室内は静かだった。バスローブでそっと覗くと、小夜子と義勝の姿はもうなかった。そのままバスルームから出た。 

 ベッドの上の武は笑顔だった。 

「武」 

「ふふ。写真を見せてもらう約束しちゃった」 

「悪趣味ですね、あなたは」 

「そう…かな?」 

 クスクスと笑うのが愛しい。夕麿はその唇に自らの唇を重ねた。唇を放すと武は目を伏せた。バスローブを脱ぎ捨ててベッドに上がった。上がっていたリクライニングを下げ、もう一度ど武に口付けをする。 

 帰宅して清方に相談すると彼はこう答えた。 

「武さまをお抱きになられるのは、体力的に少し問題があると思います。ですが逆ならばさほどのご負担はないかと」 

 義勝に笑わされて、気分もいつもより良い筈だ。ベッドに押し付けるようにして、抗う事を出来なくして、思う存分に唇の甘さを貪る。武のパジャマの下衣を下着ごと剥ぎ取った。 

「武、抱いてください。あなたが欲しい…」 

 彼の手を取って自分の胸に導く。すると武は大きく目を見開いた。 

 武は久し振りの夕麿の温もりに、愛しさに胸がいっぱいになった。夢中で触れてしまう。

「夕麿…痩せた?」

 手触りが違う。胸元や脇腹が細くなっていた。見るとすぐ横に伸ばされた腕に、注射針の痕が幾つかある。

 武は息を呑んだ。

「ああ…余り食欲がなくて、清方先生が念の為と仰って」

 優しい微笑みに胸が締め付けられる。自分の事で心配させているからだと。

「こんな状態の私は…嫌ですか?抱いてはいただけませんか?」

 武は首を振る事しか出来なかった。指先で左の乳首を摘む。

「あ…ぁあッ!」

 いきなりの刺激に全身を戦慄かせて反応する。

「あれ…?いつもより感じてない?」

 その言葉にカッとばかり夕麿が赤面した。けれどその口調やからかうような笑みは普段の武だった。それが嬉しいと思ってしまう。

「あなたが欲しいのです」

 喘ぐように耳許に囁いてみるといきなり組み敷かれた。

 力のない武は時々、合気道を利用してこういう事をする。級や段を取得する試験に出られずに、未だに白帯のままではあるが、貴之の話によると既に有段者の技術を持っていると言う。 

「俺、最後まで出来るかどうか、わからないぞ?」 

「大丈夫です」 

 武の頬に指先で触れて艶やかに微笑んだ。 

「あのな…」 

「武、愛してます」 

 彼の瞳を真っ直ぐに見据えてしっかりと言った。すると武はスッと視線をそらした。 

「何故だ…あんな状態になる俺に、お前は嫌気がささないのか?」 

「どうしてですか?」 

「どうしてって…!!」 

 絶句する姿が痛々しい。 

「辛くない…と言えば、確かに嘘になります。でも…私はあなたがあのままでも、この気持ちに変わりはないと言えます」 

「お前は…バカだ…」 

 溢れ出た涙が頬を伝い夕麿に降り注ぐ。 

「あなたの為になら、バカにでも愚かにでも喜んでなります。武、今回の事はあれを含めて、あなただけの責任ではないと思っています。それに…あなたは一人ではないのです。私がいます。私たちを支えてくれる皆がいます。 

 ……信じてはいただけませんか?」 

 武の行動にはたくさんの制限があって、時として小さな望みすら叶えるのが難しい事がある。紫霄の中では紫霞宮である立場はある程度の力を持っていた。だが外ではそれは武の枷にしかならない。 それでも武自身が選んだ事なのだ。選んだ限りは責任や義務が発生する。 

「あなたの重荷を共に背負う為に私はいるのです。皆はそれを如何に軽減させ、支えるかを考えています」 

 武は首を振った。 

「では、こう言えばわかっていただけますか?」 

 夕麿は武の頬を掴んで視線を合わせ、笑顔でこう囁いた。 

「逃げ出すなら何故、一緒に連れて言ってくださらなかったのです」 

「………え?」 

「狡いですよ、あなただけ」 

「行きたかった…の?」 

 戸惑ったような声を出す武に、夕麿は笑いながら頷いた。 

「マジ?」 

「ええ、真面目にそう思います」 

「ええ!?」 

 逃げ出した自分の気持ちなど、夕麿には理解してもらえないと思っていた。 

「私だって切羽詰まってました。あなたのように逃げるという選択肢を知らなかっただけで」 

「いや…それは…」 

 自分がやった旅は多分、夕麿には不可能だ。武はそう思う。 

「次は連れて行ってくださいね?」 

 次があってどうする…… と心の中で呟いた。 

 やっぱり逃げ出した武の本当の気持ちは、彼にはわからないのだと思う。哀しくは思うが逃げ出す選択肢がなかった夕麿を理解していない自分を感じる。全てをわかり合う事は、生涯不可能なのかもしれない。 

「夕麿」 

「はい」 

「ごめんな…バカな事ばかり言って。それに…俺はお前を疑った」 

「いいえ、多分、今回の事全てが、あの症状が原因だったのでしょう。あなたは病気だったのです。どうして責める事が出来るでしょう」 

 武の顔を見上げながら今、彼に真っ直ぐに言葉が伝わるのは、あの症状から本当に回復して来たからなのではないだろうか。 

「武、愛しています」 

「俺も…夕麿を愛してる」 

 自然に重なる唇を互いに夢中に貪る。抱き締めた武の背中はすっかり痩せて、肩甲骨も背骨も形が指でなぞれる程だった。 

 武の唇はあの症状の頃か、絹子が気遣って、リップクリームでケアしていたので、本来ならばカサついている筈が滑らかだった。 

「武…武…早く…」 

 武の心を取り戻した。ならば身体も満たして欲しい。触れる指や唇が、身体をどんどん熱くしていく。 

「あッ!ああ…武…そこ…ン…あン…」 

 常になく乱れてしまう。淫らな自分を止められない。指が蕾を解すのを待ちわびて、夕麿は武を組み敷いた。自ら受け挿れていく。 

「ああッ…ひィ…武…あッ…」 

 自らの体重が容赦なくかかり、身体を開き穿っていく。 

「ああ…熱い…」 

 見下ろした武の顔には幸せそうな笑みが浮かんでいた。 

 ああ…これが見たかった。夕麿は純粋にそう思った。歓びに身体が反応して、思わず中を締めてしまう。 

「くッ…夕麿…」 

 久し振りに感じる感覚に武が唇を噛み締める。 

「武…武…」 

 両手が腰を掴んで促すように揺すぶられる。快感が背骨を駆け上り、口からはとめどなく嬌声が溢れた。 

「はぁ…や…ンぁ…あッ…ああッ…イイ…もっと…ひィあ…奥…ダメ…」 

 時折突き上げられて深い場所に届く。 

「ダメ…ああ…武…イく…あッ…あッ…ああッあああ!」 

「夕麿…!」 

「ああ…熱い…!」 

 武の吐精を体内に受けて更に深い悦びを迎えた。 

 武の上に倒れ込みながら感極まって啜り泣く。嬉しかった。本当に嬉しかった。武を失っては生きてはいけない。武だけが夕麿の光で道標だった。それが自分の弱さを呼んでいるのはわかってはいる。 

 武が優しく抱き締めてくれた。 

「ごめんな…夕麿…心配させて…」 

「生きて…ください…」 

「うん…うん…」 

 何度も何度も口付けを繰り返し、二人はその夜、しっかりと抱き合って眠った。 



「では、行って来ます」 

「うん、行ってらっしゃい」 

「絹、後をお願いします」 

「はい、お任せくださいませ」 

 出社する夕麿をベッドから見送って武は絹子に言った。 

「雫さんを呼んでくれるかな?」 

「成瀬さまでございますね。先程、居間にいらっしゃいましたから、お呼びして参ります」 

 絹子は笑顔で部屋を出た。今朝、武は彼女が運んだ重湯を少量だが食べた。そして笑顔で礼を口にし、その後に迷惑をかけたと謝罪したのだ。 

「とんでもございません。私はその為にいるのでございますから」 

 むしろ普段の武は、余りにも手がかからなくて物足りないくらいだった。絹子は居間で清方に武が重湯を口にした事を話し、雫を呼ぶように言われたと伝えた。 

 雫と清方は互いに頷き合って武の部屋へ向かった。朝食の時に武の変化については、夕麿から話されてはいた。 

「失礼いたします。武さま、お呼びでございますか」 

 部屋に入ると武が立ち上がった。 

「雫さん、清方先生、ごめんなさい。俺、いっぱい迷惑をかけた」 

 それは二人が知る本来の武の姿だった。 

「私こそ…」 

「その話はなしだ」 

 武は雫の言葉を遮った。彼に罪はないと心底、思っていたからだ。 

 今朝の武は表情に力があった。

「それでご用は何でしょう?」

「あ、うん。少し外に出たいんだけど」

「外…にでございますか?」

「あ、庭で良いんだ…外でお日さまを浴びて、呼吸したいなって…」

 武の言葉に二人がホッとした顔をするのを見て、まだ自分は何をするかわからないと思われいるのだと感じた。

「余り日が高くなりますと気温が上がりますので…そうですね。10時のお茶をイングリッシュ・ガーデンの四阿あずまやでというのは如何でしょう?

 雫、それなら構いませんよね?」

「良いでしょう、許可いたします」

「ありがとう」

「では武さま、幾つか治療の為にご質問をさせていただいてもよろしいでしょうか」

「あ、はい」

 昨日までとは打って変わった様子に、やはりあれの症状の一つだったと清方は確信していた。




 出社の車に乗り込んだ途端、夕麿はシートに身を投げ出して深々と溜息を吐いた。車の中は運転手以外は雅久と貴之しかいない。

「少し…弱音を言わせていただけますか」

 未だかつて夕麿が、そんな事を言い出した記憶が二人にはなかった。 

「私たちは聞かなかった事にいたします」 

 雅久の言葉に貴之は頷いたが、清方にもしも……と言われていた。武の状態は夕麿の心に、過分の負担を掛けた筈だったからだ。 

「あの症状が今後も起こると言うならば…私は…また武にこの心を疑われるのでしょうか。病が原因だとわかってはいます。 でも…私はどこまでそれに耐えられるのか、自信がないのです」 

 無理もない……と二人は思った。最愛の相手に愛情を疑われる程、辛く悲しい事はない。ましてや武は自分の生命を投げ出そうとしたのだ。普通の状態でも耐えるのは難しい。 病気だから…で全てを納得出来るならば、看病疲れなどから事件が発生したりはしない。わかっていても心がままにならないのが人間だ。 

「どうすれば…いつになれば、私は武に本当に信じてもらえるのでしょう?」 

 それは余りにも悲痛な言葉だった。 

「夕麿さま、清方先生のお話によると正常な状態の武さまは、そのような疑いを微塵も持っていらっしゃらないようです」

 貴之もそう伝えるしかなかった。

「結局、我が身から出た錆びなのでしょうね。私は武に疑われるような事を、過去にしてしまいました。

 だから……」

 両手で顔を覆って啜り泣く。武が正気に戻ったからこそ、振り回された夕麿は自分の心を安定させられないでいた。すっかり心をすり減らしてしまっていたのだ。 

 それでも出社して今後の為の対策に奔走する。直轄部署の人員はかなり選抜出来た。 

 今日は外資系企業の人間との会合がある。新興国での共同プロジェクトの話が持ち上がっていた。プロジェクトそのものは別な部署が、チームを結成する予定だが相手方が面談を希望したのだ。 本来ならばバックアップに付く担当部署の人間が、重役たちの嫌がらせで資料だけを持って来た。結果を出さなければ誰も自分のような若僧を信用しない。 

 身分も血筋も立場も企業経営では役に立つ事は少ない。 

 有能であるかどうか。 

 問われるのはそこだ。社に到着して最上階に直行し今一度、相手方の資料に目を通す。同時にネットなどで収集した情報にも目を通す。 こんな時には貴之が警察へ行った事を残念に思ってしまう。彼の情報力は強力な味方になった筈だが、貴之が自分で選んだ事だ。わがままは言ってられない。 

「夕麿さま、お車の用意が出来ました」 

 貴之が今日の警護担当らしい。朝と同じく車に乗り相手方の会社へ向かう。 

 そこで夕麿は懐かしい友と再会する事になる。のちに彼の専属秘書となる、天羽 榊あもう さかきである。 



 夕麿が帰宅すると清方が武の状態を説明した。 

 そこへ雅久宛てに宮内省から電話が入った。 

「はい……ありがとうございます。身命しんみょうに代えて仕えさせていただきます」 

 雅久の紫霞宮家大夫の正式任命の連絡だった。後日、任命証を持った勅使が来ると言う。 

「ただいま戻りました」 

「お帰りなさい」 

「失礼いたします」 

「雅久兄さん?どうしたの?」 

 夕麿と一緒に雅久がやって来たのに武が首を傾げた。夕麿が武の傍らに立ち、雅久が跪いた。 

「紫霞宮さま、私、御園生 雅久は本日付けを持ちまして、紫霞宮家大夫の任命を受けました」

「え?周さんは?」 

 驚いた武が夕麿を見上げた。 

「周さんは医師に専念したいそうです。もとよりあなたが紫霄在学中のみの約束でした」 

「そっか…無理をお願いしてたんだ。 

 わかった、よろしくお願いするね」 

「ありがとうございます」 

 帰国してから様々な事が変わっていく。そのほとんどが望まない事の気がした。 

 1週間後、武はようやく出社した。家から逃げ出した日から、1ヶ月半が経過していた。武も夕麿もそれぞれがまたあの症状が来るのではないか…という恐怖を抱いていた。

 武は自分が自分でなくなり、周囲に様々な迷惑をかけるのが怖かった。何よりも夕麿を疑い傷付けてしまうのが恐怖だった。

 夕麿は自分がどこまで耐えられるのか。耐えられなかった場合はどうなるのか。そういった事への恐怖を抱いていた。

 だが時間も事態も気持ちを置き去りにしたまま、二人を多忙へと駆り立てて行く。

「武、午後一で会って欲しい者がいます」

「部屋で?」

「呼んであります」

「わかった」

 武の体調やストレスを考えて、出社は月火・木金の週4日という事になった。二人の執務室の隣にある資料室をあけ、そこを簡易に改造してベッドやソファ・テーブルなどを置いた。いつでも武が休めるようにという配慮で、執務室側と廊下側に出入り口がある。もっとものちに武が部屋から逃げ出すので、廊下側のドアは防犯の為という理由で閉鎖された。

 また、雫たちが改装が終了した為、隣のビルへと引っ越して行った。彼らがいた場所の1/3のスペースが、今は資料室となっている。武の身体に合わせて、あらゆる対処がとられた上での出社許可だったのだ。 

 午後、雅久に案内されて来たのは、武のよく知る人物だった。 

「相良? 相良 通宗あいらみちむねじゃないか!」 

 御厨 敦紀が武の専属秘書に相応しい人物として、一番に名前をあげたのが彼であった。敦紀の後を継いで高等部生徒会長になった彼は、身分こそ低くはあったものの努力を惜しまない姿が圧倒的な支持を集めた。 

 彼は従兄の赤佐 実彦あかささねひこが武が発足した、『暁の会』の最初の救済対象だった事もあり、ただならぬ忠義の気持ちを抱いていた。武の為に何かをしたい。そう願って御園生に就職していたのだ。紫霄学院の卒業生で元生徒会長。そんな逸材を御園生が受け入れない筈がない。 

 敦紀は通宗の武への忠義を理解していた。彼ならば武を支える力も心もある。画家としての道を選んだ敦紀は自分が、武の為に尽くす立場から一歩下がってしまったのを自覚していた。それでも彼は敦紀の絵を愛し、一番のコレクターになってくれている。だから通宗を推薦したのだ。自分が最も信頼を置ける相手として。通宗も夕麿と雅久の願いに最初は、戸惑いはしたものの、武を襲った病を聞いて決心したのだ。自分が出来る事をやりたいと。 

「武、彼をあなたの専属秘書に」 

「相良が?大歓迎だ、よろしくな!」 

「ありがとうございます。よろしくお願いいたします」 

 武は通宗と笑顔でしっかりと握手を交わした。 

「雅久は経営スタッフルームの統括秘書に就任してもらいました」

「うん、わかった」

 夕麿は武が不在だった時の事を次々と報告していく。雅久は夕麿の合図で次の人物を招き入れた。

「あ…えっと、持明院だよな?」

 持明院 智恭じみょういんともやすは、敦紀が生徒会長を務めた時の副会長だった人物だ。控え目だが大変な切れ者で、敦紀の想いが次々と実行出来たのは、彼がいての事だと言われている。敦紀が通宗の次に名をあげたのが彼だった。

「彼を経営スタッフルーム直轄部門の主任に抜擢したいと思います」

 夕麿は実際に面談してみて、智恭は秘書にはもったいないと思ったのだ。持明院家は御厨家とほぼ同格の家柄で親戚関係にもある。実際、敦紀と智恭は従兄弟であった。つまり彼は武や夕麿とも繋がっている血筋なのである。

「直轄部門?ああ、この前言ってたのか。

 持明院なら任せられるな」

「ありがとうございます」

 口許にうっすらと笑みを浮かべて智恭は頭を下げた。敦紀がクールビューティーと渾名され、智恭はロックアイスと渾名された。ほとんど表情を変えない彼の感情を読むのは難しい。 

「それで夕麿、人員は揃ったの?」 

「現在、持明院君を含めて6人を配置しました」 

 武には言っていない、智恭を含めた、4人までもが同じ部署からの移動組だった。智恭がこれまで所属していたのは食品関連部門だった。 

 武と夕麿には現在、正式な役職名はない。御園生では余りそういうものを重視していないのだ。海外に対しての表向き肩書きは与えられはする。有人が最高経営責任者(CEO= Chief Executive Officerの略)であり、武と夕麿の二人が最高執行役員(COO= Chief Operating Officerの略)という立場になる。 

 そこで一番面白くないのが専務取締役の肩書きを持つ男だった。彼は有人の大叔父にあたるが、 御園生の以前の習慣に従って、他家へ養子に出された人物だった。有人の祖父とは腹違いで年齢の離れた弟だが、それでもかなりの高齢者である。本来ならばそろそろ引退して欲しいところだが、義兄が政治家という事もあって肩書きに固執しているのが現状だった。 

 彼は武と夕麿に忠義心を持つ、紫霄卒業生たちが煙たいのだ。政治家の家系とは言っても戦後からの家柄。戦後に爵位の叙任が廃止されてから政治家になった一族だった。故に専務には実家である御園生のが戦前に受けた、勲功貴族としての地位に絶対的コンプレックスがあった。 

 智恭たちは優秀な業績をあげても故に冷遇されていたのだ。 

 もちろん専務は武の本当の身分を知らされていない。 噂通り有人の若い時の恋が成した実子だと思っている様子だった。 
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