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想望
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さざめくようなクスクス笑いの中で、深い水底から浮き上がったような感じでフワリと意識が回復した。 目を開くと目の前が真っ白だった。眩い灯りに眼がついていってない。
「司さま…御園生 武が気がつきました」
バリトンの声がすぐ横でした。白い制服…襟元の鳥の記章。 それは彼が白鳳会の一員である事を示していた。
驚いて目を見開いて首を振り動こうとして、はじめて武は自分の状態を把握した。 全裸で鉄製の椅子の背もたれの上部に両手が繋がれ、両脚は左右の肘掛けにそれぞれ縛られている。 首を巡らすと温室らしいそこには、そんな武を観賞するかのように、ゆったりとした長椅子の肘掛けに身を委ね、マイセンのティーカップを手にする男がいた。 貴族独特の能面のような瓜実顔。 切れ長で冷酷な光を帯びた眼。 紅色の薄い唇。
恐らく彼が正巳が言っていた前年度生徒会長で、白鳳会の長、慈園院 司。 あのラブレターの差出人だ。
「清治、あれを」
やや高めの声が控える星合 清治に告げる。
「御意」
清治は傍らのテーブルの上の金属製の容器の蓋を開いた。中から注射器を取り出す。中には僅かに赤味を帯びた水溶液が入っていた。
「なんだよ…それ! やめろ!」
もがく武の左腕を押さえて、注射針が突き立てられ、薬液が注入された。手慣れた様子の行為に武の肌が粟立つ。 薄笑いを浮かべて見つめる二人。その眼差しから逃れようともがいても戒めは緩む気配もない。誰からも距離を置いている今、武が寮に戻っていない事に気付く者などいないであろう。助けは来ない。だからと言って二人に陵辱されるのは嫌だ。 けれどもがけばもがくほどに戒めは逆に締め付けを強める。
嫌悪と恐怖でパニックになりそうになったその時、突然、心臓が跳ねた。
「あ…くぅ…」
その瞬間息が詰まった。別の恐怖にかられて空気を求めて懸命に喘ぐと、全身が発火するような熱に包まれた。心臓が激しく大きく跳ねる度に熱が全身に広がる。束縛された両脚が、痙攣するように揺れる。
武の透けるような白い肌が、ほんのりと色付き目許が紅潮しはじめた。縁が青みががっている瞳は虹彩が開いて潤み、唇はぽってりと膨らんで赤味を増した。司と清治は予想以上の清艶ながらの妖しさを燃え上がらせる姿に、息を呑んで立ち上がった。
「来るなッ…」
懊悩が熱となって身体中を荒れ狂っていた。
「無理をせず、請うが良い」
「ひあッ…!」
司が爪で武の乳首を抓ると、彼は悲鳴を上げてのけぞった。痛みすら刺激の波紋を呼び、電撃の如き快感となって身体中を走る。
「ほれ、お前のここは物欲しそうに蜜を滴らせておる」
細長い指が、未だ誰も触れていないモノに絡み付き、刺激を求めて震えるそれをやわやわと握る。
「あッ!…ああッ…やめろ…」
こんな感覚は知らない。心は嫌悪と恐怖でいっぱいなのに、身体は熱を持ち、解放を求めて中で荒れ狂う。だが、望まぬ渇望に対する拒否の想いも強かった。
「さあ、請いなさい。快楽の極みを味合わせてあげよう」
司の勝ち誇った声が響く。吐精寸前で放されたモノからは、蜜が溢れて自らの腹部を濡らしている。武は唇を噛み締めて激しく首を横に振った。
「ほう…清治、まだ抗う気力があるようですよ」
「時間の問題ですが、追い討ちにアレを使いますか?」
「ふむ。久しぶりに興のある奴ゆえ、それも面白かろう」
「明日と明後日は試験後の休校。ここでお楽しみになられた後、お部屋に運んで存分に為されませ」
「ふふふ…あははは…久しぶりに、腰が抜ける程に嬲ってあげよう」
「嫌だ…離せ!」
かすれた声で叫ぶが、逆に司の嗜虐嗜好をそそるだけだった。司は清治から軟膏のようなものを受け取って、たっぷりと指にすくうと未だかたく閉じている蕾をなぞるように触れた。
「そんなところを…触るな…ッ!」
もがき叫んで抗うと背後にまわった清治が腕をまわして、身体を抑えながら両手で尻肉を開かれた。ヌプリと軟膏の滑りに助けられて司の指が体内に挿入される。
「嫌だあッ! やめろ…!」
異物感が気持ち悪い。吐き気すら感じる。だがその一方で、懊悩が解放を求めて渦巻く。
武の意志に逆らって、肉壁は挿入された指に絡み付き、快感を求めて収縮する。 濡れた音が温室内に響き、軟膏の成分が肉壁に吸収されていく。
司は残虐な笑みを浮かべて、蕾から指を抜き、軟膏をすくって指を増やして再び挿入した。懊悩の中心が肉壁へと移動した。 蠢く指では足らないと身体が悲鳴をあげている。
「たまらぬであろう? これは我が慈園院秘伝の催淫薬。精を注ぎ込まれなければ、渇望は消えない。欲しいと強請ってみよ、至上の悦楽に飛翔出来るぞ」
「あッ…あッ…イヤ…だ…絶対…ひィッ…断る…!!」
「面白いのう。清治、代われ。一度口で気をやらせてやれ。その方が効力が高まる」
「御意」
司が離れると清治が武の前に跪き、まず左手の指に軟膏をすくって挿入する。最も感じる部分を探って蠢きながら、もう片方の手の指は快楽を求めて蜜を滴らせて続けているモノを掴んで支えた。
「やめろォォォ」
敏感な部分をペロリと舐められ、絶叫する武を無視して、幹の部分に舌を這わせ、嚢を口に含んで中を舌先で転がす。その間も挿入している指は敏感な部分を引っ掻き回す。
「ああン…あッあッ…やめ…イヤだ…」
嫌悪と恐怖と快感の狭間に心が揺れ動く。闇が触手を伸ばして体内に侵入して来る。だが快楽は甘美だ。孤独の闇を彷徨える武の心は、しがみつく縁よすがを持たない。それなのにプレッシャーに潰されそうになる反面、それにすがりつく事でバランスを保っていた。堕ちてしまった暗闇のタールのような重く黒い灼熱の粘液が、絡み付きながら弱った心の中に流れ流れ込んで来る。抗うのをやめれば孤独から逃れられるかもしれない。たとえ性奴隷として繋がれても独りではなくなるのだ。涙さえ流せない苦痛から逃げられるかもしれない。同じように心を封じて生きるなら、快楽に溺れて何もわからなくなる方が楽に違いない。
清治の絶妙な指と舌にとろけされながら揺れ動く心を止めるかのように、夕麿の面影が脳裏を過ぎった。委ねてしまったらもう彼の優しい笑みも見る事は叶わない。彼は本当に異母兄なのだろうか…?
「あッあッあッ…ああ ああッ…!!」
絶頂のスパークする意識の中で、夕麿の姿が遠のいて行った。涙が溢れた。もうどこに自分が向かっているのか、どこへ向かえば良いのかわからなかった。
「嫌…だ…もう…嫌だあ…離して…」
絶頂が肉壁の軟膏の成分を吸収促進し、懊悩が一層の熱を帯びた。啜り泣く声は甘みを帯び、絶頂の余韻に収縮する肉壁を尚も刺激されて、両脚は爪先まで快楽の痺れに痙攣する。生まれて初めて他人の口で与えられた快楽に口腔内に吐精し、音を立てて嚥下されるのを目の当たりにして、ショックの余り幼子のように泣きじゃくる。
清治は中に挿入れた指を尚も蠢かしながら、涙にと汗に濡れる頬を撫で、耳許に唇を寄せた。
「怖くはないから。気持ち悦かっただろう?
司さまはもっと優しく寵愛ちょう愛して下さるよ? さあ、全てお任せしてごらん。
欲しいって、お願いするだけだよ」
頬を濡らす涙を舌先で舐め取り、耳朶を甘噛みして武の懊悩の炎を煽る。 腰が揺れて肉壁が貪欲に収縮した。
「ほら、君の身体は素直だよ。心も素直になってごらん、武」
名前を呼ばれて眼を見開いた。清治は穏やかに微笑んでいた。司に性的な玩具を用意する為に磨かれた清治のオトシは、その辺のジゴロすら凌駕する。武のように慣れない環境に投げ込まれた少年の孤独さは、甘美な悦楽で溺れさせるのが容易い。本人が弱い心を覆う鎧をまとえばまとう程、容易く堕ちる。 鎧が強固であれはある程、中は脆いものだ。ましてや思いの外ウブで可憐な少年に、清治自身の嗜好が動いた。
「さあ、ここを…」
と言って、中を大きくかき混ぜる。
「ああッ…ンン…ッ」
「司さまのモノで、満たしていただこう。欲しいと言えば戒めも解いてあげるよ」
快楽に戦慄く武を、司がそっと横から抱き締めて囁く。
「お前は美しい。私はお前を大切にしよう。悦びをたくさん教えよう。私のものにおなり」
穏やかで優しい言葉と共に唇が重ねられた。
「司さまの言葉に従うならば、唇を開いて舌を差し出しなさい」
囁きと共に耳が舌先で愛撫され、また腰が揺れる。 二人は巧妙だった。
哀れな仔羊、だが思ったよりも可憐で精艶だ。しかも戦後の混乱期を生き抜いた御園生家の財閥としての力は、摂関貴族である慈園院家にはたとえよううもなく甘美だ。 武を手に入れれば快楽の奴隷としては一石何鳥にもなる。
武の返事を促すように、司の指が武のモノに絡まり、清治の指も湿った音を響かせて挿出される。なすがままの武の脚は快楽に痙攣を続けていた。もし両腕が自由であったら、武は既にどちらかにすがりついていただろう。甘言と快感に既に朦朧として、ただ全てを燃えたぎる懊悩の炎に灼き尽くしたかった。
「もう、何も考えなくても良いんだよ、武。 何もかも司さまが良いようにして下さるからね。
さあ、唇を開いて舌を出して…」
熱に浮かされて武が唇を開きかけたその時! 温室のドアが勢いよく開けられた。
「そこまでです、慈園院 司」
夕麿の声が響いて、武の混沌へ沈みかかった意識が戻った。
「良い所で…とんだお邪魔虫だな、六条 夕麿」
「御園生君を解放しなさい」
「今更正義の味方ぶるとは、最低な男だな、貴様は」
「あなたのような人を人とも思わない卑劣な者に、言われる筋合いはありません」
「ふん。貴様が変に事を荒立てた結果、被害者である筈の彼がどんな状態におかれてしまったか、知っているのかね? 可哀想に一般クラスでは仲間外れにされて、昼休みは唐橘の茂みの中に隠れて過ごしてたのを、貴様は知らないだろう?
第一、私は昇降口に倒れていた彼を連れて来て、私の寵童にしようとしただけだ。彼の孤独を慰める為にね」
「くっ…」
司の指摘は夕麿の知らない事だった。食堂に全く姿を見せず疑問に思ってはいたが、麗が聞いて来た「勉強に集中する為の自炊」を鵜呑みにしていたのは確かだった。
「確かに筋は通ってはおりますが、慈園院さま。薬物を用いての行為を風紀としては認めるわけには参りませんね」
絶句した夕麿に変わって、風紀委員長の良岑 貴之が言った。
「確かな現場を抑えさせていただきましたから、それ相応の処分を受けていただきます。今度は言い逃れ出来ません」
貴之の言葉に司がみるみる青ざめていく。
「夕麿、御園生君の身体が異常に熱い。かなりの高熱だぞ」
戒めを解かれて義勝の上着を掛けられた武は、全身を震わせて義勝の腕の中でぐったりとしていた。元々プレッシャーから来るストレスで、かなり体調を崩していた。教室を出る辺りから兆候はあったのだろう。だが武本人が見ないふりをしていたのだ。そして薬物を使用しての陵辱。最後まで至らなかったとはいえ、武の心身を蝕むには充分だった。未だに薬物が経験のない身体に火を点け、二人がかりの陵辱で燃え上がった官能の炎はくすぶったままである。叫び出したい焦燥感を必死になって耐えているのは、浅ましく醜い姿をこれ以上は夕麿の前に晒したくはなかったからだ。
武を気遣って抱き締めている義勝の腕すら、甘い痺れをもたらしている。
「麗、校医を彼の部屋へ。彼は連れて帰ります」
きっぱりと言い切った夕麿に向かって、司が鼻で笑って言った。
「私たちが塗り込んだ軟膏は、精液でしか中和されない。放置すれば狂うよ。誰かがたっぷりと可愛がっておあげなさい」
どの道、誰かが武を犯すしかないのだと高笑いする、司の言葉は紛れもない真実たった。なおも司は畳み掛けるように言葉を背を向けた夕麿に向かって放った。
「誰にでも優しく親切で、けれど本当は誰にも心を許さず、慕い寄ってくる者を冷酷に退ける…それが貴様の本当の姿だ、六条 夕麿。
誰も愛さない氷の心で、もっと彼を苦しめるつもりなのかな?
武、辛くなったらいつでも来なさい。少なくとも私は君を抱き締めて溺れさせてあげるよ。快楽は素晴らしい。どんな悲しみも苦しみも忘れてしまえる。
私は待っているよ」
義勝に抱き上げられて立ち去る背後で投げかけられた言葉から逃れるように、武は目を閉じ耳を塞いで震えた。彼らの指や舌が与えた甘美な快楽を振り切るように。身体はまだ更なる快楽を求め続けていた。それが武の心に自分自身に対する強い嫌悪感と絶望を募らせた。
苦しい… …苦しい… …苦しい……苦しい……苦しい……
ベットの上で悶えても、身体の奥底でくすぶる炎は消えない。
校医はこのような状態をある程度経験しているらしく、解毒剤を打って様子を見た上で発熱の処置をすると言って立ち去った。
司の言葉通り、体内の渇望は増しても、弱まる気配すらない。誰にも救いを求められない。何よりも怖いのは夕麿の眼差しだった。温室に入って来た彼はそこの有り様を見て、はっきりと嫌悪の表情を浮かべていた。武には行われている行為に対してだけではなく、堕ちようとしていた武の浅ましさに対するものが混じっていたように感じていた。それ故か…武は自分を酷く穢らしいものに感じていた。こうやって悶えている事も、自分の浅ましき穢らわしさ故だと。
孤立に疲れ果て高熱に犯された頭は、既に正常な思考が出来なくなっていた。寝室にひとりになった瞬間、武はベットサイドテーブルの引き出しから、カッターナイフを取り出した。自分をバラバラに切り裂いてしまいたかった。 こんな穢らしいものはいらない。刃を首筋に当て、切り裂こうとする瞬間、入って来た麗が悲鳴をあげて押さえつけた。
「会長~!」
麗の叫びに夕麿が飛び込んで来た。
「カッターナイフ、取り上げるから押さえて!」
「離せ!切るんだ、こんな…こんな穢らしいもの! いらない! いらない!」
催淫剤の懊悩と高熱と不安と恐怖が入り混じって、既に錯乱状態に陥っていた。夕麿が武をベットに組み敷いて、麗がカッターナイフを取り上げて下がる。
武は泣き叫んだ。
「触るな! 触らないで、穢い! 俺は穢い!」
心身共に既に限界だった。このままだと司が言ったように武の精神が崩壊してしまう。
「麗、後は私に任せて下さい」
「え…会長?」
「部屋から出て」
「……わかった。ね、会長? 御園生君は多分…会長の事を…」
「麗!」
「わかった…優しくしてあげて、会長…」
言葉だけ残して、麗は部屋を後にした。
「武、武、私がわかりますか?」
初めて名前で呼ばれた。
「会長…ダメ…見ないで…」
泣きながらもがく。
「辛いでしょう? もう我慢しなくて良いですからね」
シーツごと抱き締められて、恐怖と羞恥に武がもがいた。
「やめて…会長…穢いよ…」
「大丈夫。あなたは穢くなんかありません」
武の眼から涙が溢れた。
「会長…」
「違うでしょう、武?」
「え…?」
「夕麿です」
「夕…麿…」
恐る恐る呟くと、夕麿は微笑みながら唇を重ねた。そっと触れるだけの軽い口付け。けれど嬉しい。この人が欲しかった。あんな風に触れられるなら、この人がいい。両腕を夕麿の背に回した。制服のシルクのシャツを握り締めた。武には性的な行為の経験は皆無だ。母子家庭で育った由縁でどうしてもそういったものを避ける傾向の中で育ってしまった。だから余計に先ほどの陵辱が恐怖を煽っていた。
触れられるだけで快感が全身を震わせる。夕麿に抱かれる喜びと、恐怖と懊悩が入り混じって、武は一層つよく縋り付いた。
「大丈夫です、武。怖くないから。私に任せてください、ね?」
髪を撫でられた武は、紅潮した頬を一層染めて頷いた。
再び重ねられた唇。舌先が唇をなぞる。武はゆっくりと唇を開いた。差し込まれた舌が口腔内を妖しく動いて武の官能を揺すぶる。キスが気持ちが良いものだと武は初めて知って夢中になる。
「ああ…」
離れた二人の唇の間を、銀の粘液の橋が繋げる。うっとりした眼差しで夕麿を見上げると、微笑み返された。
「もっとォ…」
もっと欲しい。心も身体も更なる快楽を求めていた。それに答えるように、ぷくりと膨れて欲情に上下する乳首を、双方同時に摘んで強めに爪を立てる。
「ひィッ…ああああッ…!!」
与えられた刺激に武はのけぞって吐精し、飛び散った精液が夕麿のシャツを濡らした。
「…ごめんなさい…ごめんなさい…」
恥ずかしくて情けなくて…啜り泣くと、夕麿はシャツを脱ぎ捨てて、乳首を口に含んだ。
「ああッ…あン…ダメぇ…」
切なくて切なくて、自らの欲望を擦り付けるように、腰を揺らす。それを見て夕麿は武の両脚を抱え上げた。先程、清治によって散々解され掻き回された蕾は、たっぷりと濡れて未だ収縮を続けていた。指を挿入すると、武は声をあげてのけぞり、肉壁は貪欲に絡み付く。夕麿はすぐに指を抜くと、前を寛げて自分のモノを取り出す。それは既にはっきりとした欲情を示していた。
「武、いきますよ」
と言ったものの、返事を待たずあてがい、解したとはいえ、未経験の狭い蕾を押し開け大きなモノが挿入されて行く。
「ああッあッあッ…ひィィィッ…」
引き裂かれるように貫かれる痛みと、せり上がって来る圧迫感に、悲鳴をあげて逃れようとする。しかし、夕麿はしっかりと武の腰を押さえて、一気にに突き入れた。
「ああン…ああああッ…!!」
その衝撃を催淫剤に犯された肉壁は、快感に変換し、武は生まれて初めて自らの内に挿入されて吐精した。清治に中を掻き回されて口でイかされた時より、遥かに深く強く長く続く絶頂に、武のモノは精を吐き続けている。
「ああン…夕麿ァ…気持ち…イイよぉ…」
快感に痺れて舌足らずな声で甘えると、唇を重ねられ舌を絡みとられて強く吸われる。
「ふうン…あふ…」
大きなモノで中を掻き回されて、たまらずに夕麿の腰に脚を絡め、より深く強請ると夕麿の動きが激しくなった。
「あンああン…イイよぉ…あッあッ…夕麿ァ…熱い…熱いよぉ…」
余りの快感に武はもう半狂乱になっていた。挿入時の痛みなどもう、微塵も存在しない。
「夕麿ァ…夕麿ァ…また…また…イくゥ…あふああンああああッ…!!」
先程より一層大きな快感のうねりとなって、絶頂を迎えて夕麿の背に回した指先に力がこもる。
「くッ…!!」
武の絶頂で起こった肉壁の強い収縮に、夕麿も耐えきれず絶頂を迎えて、武の中に激しく吐精した。熱い迸りが肉壁を灼く。
「ああン…熱いよぉ…」
おさまらない快感の痙攣に身を委ねながら、夕麿を見上げると耳朶を甘噛みされ囁かれる。
「まだ、欲しいですか、武?」
大量に体内に吸収させられた催淫剤は、一度の吐精では中和仕切れない様子だった。それでも、正気を取り戻した武は、申し訳なさと恥ずかしさに閉じた眼から、涙が流れ落ちた。
「ごめんなさい…まだ…」
どうして良いのかわからない。
「心配しなくて良いのですよ」
優しい言葉に泣きながら頷く。再開された挿出に、また身体が灼け付く快感に息を乱す。
「夕麿ァ…溶けちゃうよ…気持ち…イイよぉ…ァああン…あンあッああンあッあッ…」
身体が満たされて行くように、心も満ちていこうとしていたその時、官能に霞む視界のぼんやりと見えたのは優しい言葉とは裏腹の、武を観察するように見下ろす夕麿の冷たい眼差しだった。
「あ…あ…夕麿…あッあッあッ…」
何かを言おうとした武の気を逸らすように、夕麿の動きが激しく荒々しくなって、快感の波が武の意識までを呑み込んだ。覚えたての快感に抗う術は武にはない。激しい挿出を続けられ、抱擁がいつ終わったのかすらわからないまま、武は意識を手放した。
目が覚めると武は昨夜の事が夢だったかのように、ベットに横たわっていた。パジャマを着てシーツも昨夜の痕跡を留めてはいない。ただ右腕に点滴の注射針が刺さっていた。額には冷却シートが貼られている。そういえば、発熱していたらしい事を思い出した。
寝室からリビングに通じるドアが少し開いているが人がいる気配はない。
喉が渇いた。
武は起き上がろうとして悲鳴をあげた。あらぬ場所から背中を貫くように激痛が走ったのだ。催淫剤が挿入の痛みを一時的に忘れさせたが、身体は押し開かれ酷使されたダメージをちゃんと受けていた。
あれは…夢ではない現実。催淫剤の中和の為に苦しむ武を夕麿は抱いた。あの冷たい眼差しが行為に愛情は込められてはいないと語っていた。温室に入って来た時の眼差しも多分、夕麿の本心だろう。昨夜、司が夕麿を「鉄の心の持ち主」と言ったのも、嘘ではないのだと。もし噂通り異母兄弟だというのなら、あのような事になった上、催淫剤の中和を外聞を憚って他の誰かに任せるのを良しとは思わず、自分で行ったという事だろう。
武は点滴の針を抜いて激痛に悲鳴をあげる身体を無理やり動かした。額の冷却シートを剥がし普段着に着替える。 息を乱しながらリビングに出ると、武の鞄と制服がテーブルに置かれていた。鞄を開けて中身を確かめると、携帯のLEDが点滅している。
メールが二件入っていた。一件は麗から。もう一件は…いつの間に武のアドレスを登録したのか、司からだった。
〔もう、わかった筈、六条 夕麿がどんなに冷酷かを。君がどんなに想おうと、彼の心は君に向く事はない。私の所へ来なさい〕
後は彼の部屋番号が記入されていた。
武は静かに携帯を閉じてソファに横になった。レザーの冷たさが熱を帯びた身体に心地良い。もう何もわからなかった。暗闇が濃度を増しただけだった。背を向けて見ないフリをしていた光は、光ではなかった。ではこれは本当に出口も光もない闇なのだろうか。
……………出口は見えない。目の前に広がっているのは、もっと深い闇。その向こうから、快楽の触手が蠢く穴が呼んでいた。光はない。だが、孤独もない。心が揺らぐ。快楽は全てを忘れさせてくれる。夕麿のあの冷たい眼差しさえ、与えられた快感の波で忘れられた、そのただ中にあるうちは。 武は喉の渇きも忘れて携帯を握り締めフラフラとベットに戻った。
武から笑顔が失われた。
誰にもかかわらないと貼り付けた笑みすら、もうつくる事ができない程に心は虚ろで真っ暗闇だった。今の武がそれでも縋り付いていたのは、執務室で夕麿の側にいる事だった。 会長補佐として正式に任命が行われ、生徒会業務の上であっても、会話を交わす事が出来る。形ばかりであっても笑みが向けられる。小さな小さな望みだった。
何も求めない……と決めていた筈なのに、求めてしまったから苦しむのだと。最初からなかったらこんな想いはしなかった。だからなかったのだと自分に言い聞かせてみる。けれどあの夜の抱擁の甘美な記憶が武の心からも、身体からも消えてはくれない…… 消える筈がない。夕麿を受け入れた部分の痛みが消えても、覚えてしまった感覚は忘れられない。
眠れない夜が続いていた。相変わらず食事は食べても、全て吐き出してしまう。バスルームの鏡に映る姿は、すっかり痩せてしまった。
夜も更け行く時間、武は一人、寮の外に彷徨い出た。エアコンの冷気が息苦しくて。梅雨間近の湿気を帯びた空気がムッとする。当て所なく歩いていると、街灯の光の向こうに灯る輝きがあった。引き寄せられるように近付いてみると温室に灯りが点いていた。武は慌てて踵を返して、その場から離れた。走ったわけでもないのに動悸が激しい。
逃げ道にしてはいけない。そんな事をすればもう執務室に入る事すら許されなくなる。甘美な誘惑を懸命に払いのけて寮の中に入ると夕麿が立っていた。
「来なさい」
いきなり手首を強い力で掴まれて、有無を言わせない態度でエレベーターに乗せられた何事かと問えぬ程、夕麿が怖かった。あきらかに何かに怒っているのを感じる。武は手首を掴まれたまま震えていた。夕麿はエレベーターを降りると最上階の自分の部屋へ武を連れ込んだ。
「どこへ行っていたのですか?」
部屋に入って漸く手を離された途端、夕麿の問い質す声が響いた。
「え…あの…外の空気を吸いに…」
「本当に?」
「はい」
やましい事はしていない…そう考えた次の瞬間、点されていた温室の灯りを思い出した。夕麿は武が温室に行っていたのではないかと、司たちの所へ行っていたのではないかと疑っているのだ。
「それが本当だというなら、私に証明しなさい」
「証明…?」
「脱ぎなさい。裸になって、私にみせなさい、身体を」
「え…」
「見せられますね、武?」
「…はい…」
今は羞恥より疑われる方が嫌だった。震える指でシャツを脱ぎ捨てると、それではダメだと言うように首を振る。唇を噛み締めて全裸になった。
「そこの窓際に外を向いて、脚を広げて立ちなさい」
六階にあるこの部屋は、二階にある武の部屋と違ってバルコニーがない。替わりに大きな硝子が嵌められていた。 外は真っ暗闇だが遥か向こうに僅かに灯りが見える。
武は夕麿の言葉に従って、硝子の前に外を向いて立った。するとピシャリと何かで尻を叩かれた。
「ヒッ」
「私は脚を開けと命じた筈です!」
夕麿の手には乗馬用の鞭が握られていた。
「…はい…会長…」
ピシャリとまた叩かれた。
「私を何と呼ぶか教えた筈ですよ、武?」
「ごめんなさい…夕麿」
「よろしい。脚を開いたら、手を硝子につきなさい」
恥ずかしさに震えながら言われた通りにすると、夕麿の手が武の尻肉を左右に開いて奥を晒した。
「腰をもっと突き出しなさい」
「はい…」
夕麿の指が蕾をなぞる。当然ながら蕾はかたく閉じていた。
「嘘ではないようですね。しかし、こんな時間に外へ行くあなたが悪いのですよ。
また、あんな目に合いたいのですか?」
こんな時間…と言われて、武は夕麿が身を案じてくれたのだと理解した。
「司たちでなくても、闇に乗じて不埒な事をする者もいるのです」
男だけの閉鎖された場所。夏休みなどの長期な休みにならないと、生徒は学院からも学院都市からも出られない。 ストレスと欲望の捌け口として、元々同性愛への禁忌意識が薄い此処では、様々な形で同性間の性交渉が行われていた。本気の恋愛、セフレ、司たちのように薬を使用して相手を取り込む者、そしてレイプや輪姦も存在した。
武はあの一件で性を覚えた。一夜とはいえたっぷりと官能を味わった身体は、既に同性の目を引き寄せる色香を放っていた。元々色白で小柄な武は司たちが目をつけたように、そういう対象にされやすいタイプに分類される。だが、当の武自身にその自覚がない。そこが夕麿の心配の原因だった。
「自分がどれだけ愚かかわかりましたか、武」
「はい…ごめんなさい…」
「司たちのやり方はまだ身体を傷付けたりしません。
しかし、レイプや輪姦なら…取り返しのつかない傷を、身体にも心にも受けるのだと、わかっていないのですね、あなたは。
仕方ありません。今から自分の愚かさを身体に覚えさせてあげます」
その言葉と共に、容赦なく武の尻に鞭が振り下ろされた。
「ひぃ!」
痛みに悲鳴をあげる武に構わず、繰り返し振り下ろされ、それは武が立っていられなくなるまで続いた。武の尻は赤く腫れ、そこ此処の皮膚が裂けて血が滲んでいた。武は謝罪の言葉を繰り返しながら、啜り泣いた。
「ごめんなさい…ごめんなさい…許して下さい…もうしません…」
うずくまって泣く武を抱き起こし、ベッドに運んで手当てをする。しばらくは座るのすら苦痛だろう。
「よく頑張りましたね。
よろしいですか、武? これからも危険な事やいけない事をしたら、私は容赦なく罰を与えます。それを決して忘れないように、良いですね?」
「はい…夕麿。ごめんなさい…」
「痛いでしょう? この痛さをちゃんと覚えておきなさい」
「はい…」
「良い子ですね」
そう言って頭を撫でられると嬉しさでまた涙が溢れる。
「夕麿…俺の事…嫌いじゃない?」
「当たり前でしょう。嫌いな相手にこんな反応はしませんよ」
夕麿は武の手を取って、自らの股間に導いた。そこは衣服の上からでもはっきりとわかる程、欲望に膨れていた。
「夕麿…欲しい…」
「お仕置きをちゃんと最後まで受けれたご褒美です。
武、口で出来ますか?」
「よくわからない…シタことないから…」
「可愛いいですね。何も知らないなら、一から私が教えてあげましょう。
まず、外に出してごらんなさい」
痛む尻を庇うように起き上がり、下に降りてベッドに座っている夕麿の脚の間に身を入れた。 恐る恐る夕麿のチノパンの前を寛げ、下着の中から彼の大きなモノを露わにする。
「大きい…」
「そう? でもこれを武に挿入れたのですよ、あの夜は」
「嘘…みたい…」
「さあ、やってご覧なさい、武。
まずは手で…そう、優しく…イイですよ。
今度は手を動かしながら、根元から先へ舐めて行きなさい…」
拙い舌使いで舐めまわし懸命に口を開けて含むが、大きさで顎が外れてしまいそうだった。それても髪を掻き回す指が、確かに夕麿が感じているのを教えてくれる。口腔に広がる味は、彼の蜜液のもたらすもの。
もっと感じて欲しくて、舌を動かし、舐めしゃぶる。次第にそれは口腔でなお膨らみ、広がる味も強くなって来た。
「武…ああ…もうイきますよ」
その言葉にそのまま頷くと、舌の動きをもっと激しくした。頬肉を動かして、出来るだけ奥へと受け入れ、吸う。
「くぅッ…ああ…!」
夕麿の感極まった呻きと共に、口腔内のモノが膨らみ、勢い良く放出された。 武は咽せそうになりながらも、懸命に喉を鳴らして嚥下した。
「気持ち悦かったですよ、武。さあ、立って、今度は私の番です。
最後まで立っていられたら、たくさんご褒美をあげましょう」
同じようにしようにも、恐らく武は座れない。武もそれがわかっているらしく、おずおずと立ち上がったが、恥ずかしそうに隠してもじもじしている。
「どうしました、武?
ふふ、私のを口でしていて感じてしまったのですね。見せてご覧なさい…もうこんなにして…はしたない子ですね」
「ごめんなさい…」
「でも、私ははしたないあなたが好きですよ?
たっぷり舐めて可愛がってあげましょうね」
初めて言われた「好き」と言う言葉。はしたなくても良いのだと、彼を求めても良いのだと。
闇の向こうに出口がやっと見えた。
夕麿の温かい口腔に包まれ、絡み付くように柔らかな舌が蠢く。清治にされたよりもずっと、強い悦びのうねりが襲う。
「夕麿ァ…もうダメぇ…イクぅ…あンあッ!」
夕麿の頭を抱えるようにして吐精する…そうしないと、あまりの快感に崩れてしまいそうだった。ガクガクと震える膝で何とか立っていると、吐精を終えた武のモノを中に残ったものまで吸う。
「ヤあ…吸わないで…」
感じ過ぎて、恥ずかしい。
夕麿は立ち上がって、羞恥に頬を染める武を抱き締めた。
「ベッドに俯せに寝て」
言われた通りにする。
尻の強い痛みは和らいだが、シーツに触れるとヒリヒリする。夕麿のベッドは、光沢のある淡い青色の練り絹のシーツが使われていた。滑らかな絹が肌に心地良い。
夕麿の指が、軽やかに背中を撫でる心地好さに、武はうっとりと目を細めた。その心地好さが次第にくすぐったいような甘い疼きに変化した。耐え切れずにもぞもぞすると、背後で忍び笑いが漏れる。
「こんなに痩せて…私の所為ですね…」
「違う…夕麿の所為じゃない…俺…よくこんな風になるんだ。食べ物が喉を通らなくて…無理して食べたら、吐いてしまう…今回も同じだから」
「それは…いつからです!?」
「うん…食欲があまりなくなったのは、階段から落ちた頃からだけど、喉を通らなくなったのは試験の前くらい…吐くようになったのは、試験が始まる頃から…」
夕麿にはそれがストレスからだとすぐにわかった。
「ここのシステムになれないまま、試験を迎えてしまったのが悪かったのでしょう」
「俺…特待生なのに、二番以下になれないから…」
一年の特待生は武だけ。しかも外部編入生である。その実力の程を誰もが注目していた。それがプレッシャーにならないわけがない。
「気が付かなくてごめんなさい。慣れないあなたを一人にしてしまいました」
「ううん…俺の問題だから」
「でも、勉強を見てあげるくらい出来たはずなのに…」
後悔の念にかられながら、夕麿は武の背にそっと口付けた。
「夕麿…俺…夕麿の事、好きでいて良いの…? 迷惑じゃない?」
握り締めたシーツで顔を隠すようにして、震える声が呟いた。
「私が迷っていたから、辛い想いをさせてしまったのですね。武、あなたが好きです。
私の想いを受け入れて下さいますか?」
返事の代わり聞こえて来たのは、啜り泣く声だった。涙腺が壊れてしまったんじゃないかと思う程、涙が溢れて止まらない。泣いてばかりで恥ずかしいのに、感情が制御できない。ずっと、悲しい事も辛い事も封じ込めて生きて来た。甘える事もしなかった。それが自分の生き方だと、っと思ってたのに…
「武…武、私を見て」
抱き起こして、指先で零れ落ちる涙を拭う。武は幼子のような顔で泣いていた。
「可哀想に、あなたはたくさんの事を我慢して来たのですね。もう我慢はしなくて良いのですよ。みんな私が受け止めましょう。あなたはもう一人ではありません」
「夕麿…夕麿…好きィ…夕麿ァ…」
抱き付いて泣きながら夕麿を抱き締めて囁く。
「私の想いを受け入れて下さいますか、武?」
静かな囁きに武は頷いて答えた。
「今夜はたくさん気持ち悦くしてあげましょう」
夕麿の指が、武のモノに絡められた。それだけで全身が彼の与える官能を求めていた。
気が付くと見慣れない部屋だった。武は暫く考えて、夕麿の部屋で抱かれたのを思い出す。ベッドには一人だ。 見ると夕麿のらしいパジャマを着ていた。袖も裾も長くて余っているのが少々悔しい。
痛む腰を庇いながら這って、僅かに開いて光が漏れているドアへ近付いた。少し開いたリビングから話し声が聞こえて、思わず止まってしまった。
「やっと御園生の気持ちを受け入れてやったのか」
義勝の声だった。
「お前の気持ちは…わからない事はない。あの事からずっと、誰かを信じられなかったんだろう?」
「あの頃の私は…子供で余りにも愚かだったのです。あれを愛されていると信じていました」
「あの男は良家や貴族の子息を思い通りにしたかっただけだ!
夕麿、お前には何の責任もない」
「私は…私は…もう、誰かを想う日など二度と来ないと思っていました。だから…武が私を見つめる眼差しが怖くて、本当に彼が私を想ってくれているのかを、探って試すような真似をしました。
義勝、私は…」
すると、義勝が夕麿の言葉を止めて立ち上がった。寝室へ通じるドアに近付き、おもむろに勢い良く開いた。
「あ…」
「盗み聞きは良くないな」
「ごめんなさい…」
また、夕麿に打たれるのではないかと、小さくなって謝る。
「武、目が覚めたのですね、こちらにいらっしゃい。」
「はい…痛ッ!」
弾かれたように立ち上がって、痛みに悲鳴を上げてしゃがみ込んだ。
「ほら、慌てなくて良いから」
壁に手を突いて立ち上がり、夕麿の横に顔をしかめて座った武を、義勝は面白いものを見た…という顔で眺めてから、向かい側のソファに座り直した。
武はというと、盗み聞きを夕麿に叱られるのではないかと、まだ身を縮めていた。
「夕麿、御園生に何をした?」
「別に。自分の置かれている状況を理解しないで、夜更けに外に出たから叱って、お仕置きしただけです」
「ほう…お前にそんな趣味があったとは」
「まさか! あなたじゃあるまいし!」
二人の会話についていけず、武は目を白黒。
「ほら…ご覧なさい。困っているでしょう」
「私は雅久を愛情込めて、可愛がっているだけだ」
「サディストが何を言うのです」
「雅久は悦んでいるが?」
「えっと…その…」
「雅久は私の可愛い恋人だよ、武?」
「あ…そうなんですか」
返事をしたにはしたが、どんな顔をしてよいのか困る。
「可愛いいねぇ。君はMっ気があるね。
どうだ、夕麿」
「その必要はありません!」
武を抱き寄せてムキになる夕麿に、またびっくり。
「お前のそんな顔は久しぶりだ、夕麿。
武のお陰だな」
「ええ」
「夕麿?」
「聞いていたのだろう?」
「少しだけ…ごめんなさい…」
謝る武が義勝に聞かされたのは、数年前に中等部で起こった事件だった。
一人の教師が、複数の生徒と関係を結び、その有り様を撮影。 一部を闇ルートに売った上に、何人かに映像をネタに売春までさせていたのだ。 そのうちの何人かは、催淫剤を飲まされた挙げ句、複数に陵辱された。そのうちの一人が精神に異常を起こし、その教師をカッターナイフで斬りつける事件へと発展した。
教師は数ヶ所を切られただけで、生命に危険は及ばなかった。しかし少年の証言で、学院側が教師の部屋を調べた結果、何人もの少年の映像が発見されたのだった。
夕麿は映像の流出や売春、複数による陵辱などの被害は免れたものの、教師に愛されていると信じ切っていただけに、真実を知らされたショックは大きかった。
この事件は少年たちの家柄ゆえに秘密裏に処理され、教師は警察に密かに引き渡された。犯人の少年はそのまま、学院大学の附属病院の精神科病棟に収容されていると言う。また、売春や集団陵辱などの被害者のほとんどは転校、事件は学院の外にも中にも漏れる事なく隠蔽がなされた。
中等部は二人部屋で夕麿の同室が雅久だったので、義勝も事情を知っているのである。
武が驚いたのは、集団陵辱された被害者の一人があの司だった事。彼のあのような行動は、その時の心の疵痕が起こしているのだと、義勝は考えていた。
そういえば、彼からのメールには繰り返し、快楽で全てを忘れられるという文面があった。
「私が子供だったのです。あなたは昔の私に似ています。私は誰にも甘えられない人間でした。たくさんのものを我慢するのを周囲に要求されて来ました。
だから私はすがるものを見つけたと…私を愛して本当の姿を見てくれる人を得たと思い込んでしまったのです」
「そんなの…夕麿の所為じゃないじゃないか!」
武を抱き締める夕麿の手は震えていた。
「夕麿はな、それからずっと誰かに抱かれる事も、抱く事も出来なくなってしまったんだ」
「え?だって……」
「あの温室で二人に陵辱されているあなたを見て思ったのです。する方…される方…どちらも私だったのではないかと。
私は単に幸運なだけだった。
それに……薬の作用に苦しむあなたを見て私は欲情したのです。だから…中和を言い訳にしたのです。あなたの気持ちを知っていて、私はあの状況を利用しました。普通の身体に戻れるのではないかと…私の下で快感に溺れるあなたを、眺めて自分の事ばかりを考えていたのです…」
「夕麿…」
「後でどれだけ後悔したか……私のそのような想いをあなたが知ればきっと軽蔑して私を嫌う。それが恐ろしくてあなたが苦しんでいるのに、なかった事にしようとしたのです」
夕麿の頬を涙が零れ落ちた。
「夕麿を責めないでくれないか、武。お前が夕麿への気持ちに戸惑ったように、夕麿も自分に戻って来た感情や身体の状態に戸惑ってしまたんだ」
「昨夜、温室に灯りが点っているのを見付けて、また彼らが誰かをと思って…」
それであんなに怒っていたのかと…武は今更ながら納得する。
「夕麿、俺はあれを忘れろとは言わない。だがな、お前はちゃんと人を好きになれたんだ。もう自分自身を許せ」
「俺もそう思う!」
「武、もっと言ってやれ~」
義勝のその言葉に、突然、夕麿が眉をひそめた。
「義勝、さっきからなんです? 勝手に……」
「はあ?……ああ、名前か?名前で呼ぶくらい、構わないだろう?
お前、意外と度量が狭いな」
義勝はやってられんとばかりに、溜息を吐いた。
「お前だけ名前で呼ぶと、武に嫌がらせをする奴らがまた何かするぞ。生徒会全員で呼べば累は及ばん」
「それは…そうですが…兎に角気に入りません!」
「はいはい、そうですか。朝食の時間だし、俺は退散しますよ。
雅久を放置したままだしな」
「え!?」
「武、聴いてはダメです。耳が腐ります」
義勝は本当に馬鹿らしくなって、部屋から退散した。
「武、改めて謝ります…」
「やめて、夕麿、謝られても嬉しくない。もう終わった事だよ?
ね、これからの事を考えようよ?」
「ありがとう、武」
重ねられた唇に応えようとする武のお腹が鳴った。
「え…あれ?」
それは久しぶりに感じた空腹だった。
「私たちも朝食におりましょう?」
「あ…着替えなきゃ」
「そうですね。その姿はなかなか扇情的で可愛らしいけれど?」
「どうせ、俺はチビですよ~」
武が膨れて立ち上がると背後で夕麿が吹き出した。彼にアカンベをして、昨夜脱いだ服を持って寝室へ行く。
武は知らなかった。夕麿が声を立てて笑うのも、あの事件以来なのだと。
その後、二人はスクールリングを交換した。リングにはそれぞれの名前が内側に刻印されている。
「ヨーロッパでは、恋人同士になった学生が、互いに交換するのです」
と言われて、武は照れながらリングを差し出した。不思議な事に二人のリングのサイズは同じで、交換が周囲にはわからない。
もっとも、恋人同士になったのを隠している訳ではない。ただ、実力行使に出る輩を警戒しての様子見として、生徒会がゆっくりと露見するように仕向けていた。
夜毎に互いの部屋を往来しているが、武にはどうしても気になっている事があった。例の噂である。
「夕麿、聞きたい事があるんだけど」
抱擁の余韻の中、武は愛する人の腕の中で、話を切り出した。
「なんですか」
「あのさ…夕麿は俺のお兄さんなの?」
「え!? ……ああ、あの噂を耳にしたのですね? 事実ではありませんよ」
「なあんだ」
「どうしてがっかりするのでしょうか?」
「だって俺、一人っ子だから…夕麿みたいなお兄さんがいたら良いなって」
「いくら男同士でも、兄弟で恋愛はいけないでしょう?」
「あ…そっか。 じゃあ、嬉しい」
「単純ですね、あなたは」
「うるさいなあ…じゃあ、どうして最初の日、迎えに来てくれたの?」
「ああそれは…」
夕麿の説明によると学院側の要請があったからだと言う。しかもそれだけではなく夕麿の父 六条 陽麿ろくじょうはるまとは知り合いなのだと聞いてるとも。
「え~初耳だよ? いつどこで知り合ったのかな?」
「私が聞いた話ですと私の母とは学友だったそうですし、小夜子さんが家庭教師をされていた御方の兄君の学友が父だったそうです。 あなたが知り合いのまるでいないこの学院に編入するのを、心配されて私を学院側に指名されたそうです」
「うわ~母さんそんな事、一言も言ってなかったよ~酷いなあ…」
拳をかためて膨れる武を夕麿は笑顔でみつめていた。 武と過ごす時間は楽しい。 様々な憂いから離れて、ただ純粋に互いを求め合い与え合う。
夕麿の心は既に十分癒され満たされていた。 武もまた夕麿の腕の中で微睡み、目覚める日々が穏やかに過ぎていくのを喜んでいた。
ずっと共にいたい。 男同士では難しいかもしれない。 それでも繋いだ手を離したくないと思っていた。
梅雨空の下、世間とは遠い学院都市では、静かに緩やかに時間が流れていた。 その梅雨も間もなく明ける。
そしてこの頃から、白鳳会の海外留学組の姿が見えなくなった。 彼らは通常ならば半年のズレがある卒業入学を、特例としてこの時期に仮に迎えるのだ。 彼らは全ての準備の為に既に海外へ出向いていた… …
「司さま…御園生 武が気がつきました」
バリトンの声がすぐ横でした。白い制服…襟元の鳥の記章。 それは彼が白鳳会の一員である事を示していた。
驚いて目を見開いて首を振り動こうとして、はじめて武は自分の状態を把握した。 全裸で鉄製の椅子の背もたれの上部に両手が繋がれ、両脚は左右の肘掛けにそれぞれ縛られている。 首を巡らすと温室らしいそこには、そんな武を観賞するかのように、ゆったりとした長椅子の肘掛けに身を委ね、マイセンのティーカップを手にする男がいた。 貴族独特の能面のような瓜実顔。 切れ長で冷酷な光を帯びた眼。 紅色の薄い唇。
恐らく彼が正巳が言っていた前年度生徒会長で、白鳳会の長、慈園院 司。 あのラブレターの差出人だ。
「清治、あれを」
やや高めの声が控える星合 清治に告げる。
「御意」
清治は傍らのテーブルの上の金属製の容器の蓋を開いた。中から注射器を取り出す。中には僅かに赤味を帯びた水溶液が入っていた。
「なんだよ…それ! やめろ!」
もがく武の左腕を押さえて、注射針が突き立てられ、薬液が注入された。手慣れた様子の行為に武の肌が粟立つ。 薄笑いを浮かべて見つめる二人。その眼差しから逃れようともがいても戒めは緩む気配もない。誰からも距離を置いている今、武が寮に戻っていない事に気付く者などいないであろう。助けは来ない。だからと言って二人に陵辱されるのは嫌だ。 けれどもがけばもがくほどに戒めは逆に締め付けを強める。
嫌悪と恐怖でパニックになりそうになったその時、突然、心臓が跳ねた。
「あ…くぅ…」
その瞬間息が詰まった。別の恐怖にかられて空気を求めて懸命に喘ぐと、全身が発火するような熱に包まれた。心臓が激しく大きく跳ねる度に熱が全身に広がる。束縛された両脚が、痙攣するように揺れる。
武の透けるような白い肌が、ほんのりと色付き目許が紅潮しはじめた。縁が青みががっている瞳は虹彩が開いて潤み、唇はぽってりと膨らんで赤味を増した。司と清治は予想以上の清艶ながらの妖しさを燃え上がらせる姿に、息を呑んで立ち上がった。
「来るなッ…」
懊悩が熱となって身体中を荒れ狂っていた。
「無理をせず、請うが良い」
「ひあッ…!」
司が爪で武の乳首を抓ると、彼は悲鳴を上げてのけぞった。痛みすら刺激の波紋を呼び、電撃の如き快感となって身体中を走る。
「ほれ、お前のここは物欲しそうに蜜を滴らせておる」
細長い指が、未だ誰も触れていないモノに絡み付き、刺激を求めて震えるそれをやわやわと握る。
「あッ!…ああッ…やめろ…」
こんな感覚は知らない。心は嫌悪と恐怖でいっぱいなのに、身体は熱を持ち、解放を求めて中で荒れ狂う。だが、望まぬ渇望に対する拒否の想いも強かった。
「さあ、請いなさい。快楽の極みを味合わせてあげよう」
司の勝ち誇った声が響く。吐精寸前で放されたモノからは、蜜が溢れて自らの腹部を濡らしている。武は唇を噛み締めて激しく首を横に振った。
「ほう…清治、まだ抗う気力があるようですよ」
「時間の問題ですが、追い討ちにアレを使いますか?」
「ふむ。久しぶりに興のある奴ゆえ、それも面白かろう」
「明日と明後日は試験後の休校。ここでお楽しみになられた後、お部屋に運んで存分に為されませ」
「ふふふ…あははは…久しぶりに、腰が抜ける程に嬲ってあげよう」
「嫌だ…離せ!」
かすれた声で叫ぶが、逆に司の嗜虐嗜好をそそるだけだった。司は清治から軟膏のようなものを受け取って、たっぷりと指にすくうと未だかたく閉じている蕾をなぞるように触れた。
「そんなところを…触るな…ッ!」
もがき叫んで抗うと背後にまわった清治が腕をまわして、身体を抑えながら両手で尻肉を開かれた。ヌプリと軟膏の滑りに助けられて司の指が体内に挿入される。
「嫌だあッ! やめろ…!」
異物感が気持ち悪い。吐き気すら感じる。だがその一方で、懊悩が解放を求めて渦巻く。
武の意志に逆らって、肉壁は挿入された指に絡み付き、快感を求めて収縮する。 濡れた音が温室内に響き、軟膏の成分が肉壁に吸収されていく。
司は残虐な笑みを浮かべて、蕾から指を抜き、軟膏をすくって指を増やして再び挿入した。懊悩の中心が肉壁へと移動した。 蠢く指では足らないと身体が悲鳴をあげている。
「たまらぬであろう? これは我が慈園院秘伝の催淫薬。精を注ぎ込まれなければ、渇望は消えない。欲しいと強請ってみよ、至上の悦楽に飛翔出来るぞ」
「あッ…あッ…イヤ…だ…絶対…ひィッ…断る…!!」
「面白いのう。清治、代われ。一度口で気をやらせてやれ。その方が効力が高まる」
「御意」
司が離れると清治が武の前に跪き、まず左手の指に軟膏をすくって挿入する。最も感じる部分を探って蠢きながら、もう片方の手の指は快楽を求めて蜜を滴らせて続けているモノを掴んで支えた。
「やめろォォォ」
敏感な部分をペロリと舐められ、絶叫する武を無視して、幹の部分に舌を這わせ、嚢を口に含んで中を舌先で転がす。その間も挿入している指は敏感な部分を引っ掻き回す。
「ああン…あッあッ…やめ…イヤだ…」
嫌悪と恐怖と快感の狭間に心が揺れ動く。闇が触手を伸ばして体内に侵入して来る。だが快楽は甘美だ。孤独の闇を彷徨える武の心は、しがみつく縁よすがを持たない。それなのにプレッシャーに潰されそうになる反面、それにすがりつく事でバランスを保っていた。堕ちてしまった暗闇のタールのような重く黒い灼熱の粘液が、絡み付きながら弱った心の中に流れ流れ込んで来る。抗うのをやめれば孤独から逃れられるかもしれない。たとえ性奴隷として繋がれても独りではなくなるのだ。涙さえ流せない苦痛から逃げられるかもしれない。同じように心を封じて生きるなら、快楽に溺れて何もわからなくなる方が楽に違いない。
清治の絶妙な指と舌にとろけされながら揺れ動く心を止めるかのように、夕麿の面影が脳裏を過ぎった。委ねてしまったらもう彼の優しい笑みも見る事は叶わない。彼は本当に異母兄なのだろうか…?
「あッあッあッ…ああ ああッ…!!」
絶頂のスパークする意識の中で、夕麿の姿が遠のいて行った。涙が溢れた。もうどこに自分が向かっているのか、どこへ向かえば良いのかわからなかった。
「嫌…だ…もう…嫌だあ…離して…」
絶頂が肉壁の軟膏の成分を吸収促進し、懊悩が一層の熱を帯びた。啜り泣く声は甘みを帯び、絶頂の余韻に収縮する肉壁を尚も刺激されて、両脚は爪先まで快楽の痺れに痙攣する。生まれて初めて他人の口で与えられた快楽に口腔内に吐精し、音を立てて嚥下されるのを目の当たりにして、ショックの余り幼子のように泣きじゃくる。
清治は中に挿入れた指を尚も蠢かしながら、涙にと汗に濡れる頬を撫で、耳許に唇を寄せた。
「怖くはないから。気持ち悦かっただろう?
司さまはもっと優しく寵愛ちょう愛して下さるよ? さあ、全てお任せしてごらん。
欲しいって、お願いするだけだよ」
頬を濡らす涙を舌先で舐め取り、耳朶を甘噛みして武の懊悩の炎を煽る。 腰が揺れて肉壁が貪欲に収縮した。
「ほら、君の身体は素直だよ。心も素直になってごらん、武」
名前を呼ばれて眼を見開いた。清治は穏やかに微笑んでいた。司に性的な玩具を用意する為に磨かれた清治のオトシは、その辺のジゴロすら凌駕する。武のように慣れない環境に投げ込まれた少年の孤独さは、甘美な悦楽で溺れさせるのが容易い。本人が弱い心を覆う鎧をまとえばまとう程、容易く堕ちる。 鎧が強固であれはある程、中は脆いものだ。ましてや思いの外ウブで可憐な少年に、清治自身の嗜好が動いた。
「さあ、ここを…」
と言って、中を大きくかき混ぜる。
「ああッ…ンン…ッ」
「司さまのモノで、満たしていただこう。欲しいと言えば戒めも解いてあげるよ」
快楽に戦慄く武を、司がそっと横から抱き締めて囁く。
「お前は美しい。私はお前を大切にしよう。悦びをたくさん教えよう。私のものにおなり」
穏やかで優しい言葉と共に唇が重ねられた。
「司さまの言葉に従うならば、唇を開いて舌を差し出しなさい」
囁きと共に耳が舌先で愛撫され、また腰が揺れる。 二人は巧妙だった。
哀れな仔羊、だが思ったよりも可憐で精艶だ。しかも戦後の混乱期を生き抜いた御園生家の財閥としての力は、摂関貴族である慈園院家にはたとえよううもなく甘美だ。 武を手に入れれば快楽の奴隷としては一石何鳥にもなる。
武の返事を促すように、司の指が武のモノに絡まり、清治の指も湿った音を響かせて挿出される。なすがままの武の脚は快楽に痙攣を続けていた。もし両腕が自由であったら、武は既にどちらかにすがりついていただろう。甘言と快感に既に朦朧として、ただ全てを燃えたぎる懊悩の炎に灼き尽くしたかった。
「もう、何も考えなくても良いんだよ、武。 何もかも司さまが良いようにして下さるからね。
さあ、唇を開いて舌を出して…」
熱に浮かされて武が唇を開きかけたその時! 温室のドアが勢いよく開けられた。
「そこまでです、慈園院 司」
夕麿の声が響いて、武の混沌へ沈みかかった意識が戻った。
「良い所で…とんだお邪魔虫だな、六条 夕麿」
「御園生君を解放しなさい」
「今更正義の味方ぶるとは、最低な男だな、貴様は」
「あなたのような人を人とも思わない卑劣な者に、言われる筋合いはありません」
「ふん。貴様が変に事を荒立てた結果、被害者である筈の彼がどんな状態におかれてしまったか、知っているのかね? 可哀想に一般クラスでは仲間外れにされて、昼休みは唐橘の茂みの中に隠れて過ごしてたのを、貴様は知らないだろう?
第一、私は昇降口に倒れていた彼を連れて来て、私の寵童にしようとしただけだ。彼の孤独を慰める為にね」
「くっ…」
司の指摘は夕麿の知らない事だった。食堂に全く姿を見せず疑問に思ってはいたが、麗が聞いて来た「勉強に集中する為の自炊」を鵜呑みにしていたのは確かだった。
「確かに筋は通ってはおりますが、慈園院さま。薬物を用いての行為を風紀としては認めるわけには参りませんね」
絶句した夕麿に変わって、風紀委員長の良岑 貴之が言った。
「確かな現場を抑えさせていただきましたから、それ相応の処分を受けていただきます。今度は言い逃れ出来ません」
貴之の言葉に司がみるみる青ざめていく。
「夕麿、御園生君の身体が異常に熱い。かなりの高熱だぞ」
戒めを解かれて義勝の上着を掛けられた武は、全身を震わせて義勝の腕の中でぐったりとしていた。元々プレッシャーから来るストレスで、かなり体調を崩していた。教室を出る辺りから兆候はあったのだろう。だが武本人が見ないふりをしていたのだ。そして薬物を使用しての陵辱。最後まで至らなかったとはいえ、武の心身を蝕むには充分だった。未だに薬物が経験のない身体に火を点け、二人がかりの陵辱で燃え上がった官能の炎はくすぶったままである。叫び出したい焦燥感を必死になって耐えているのは、浅ましく醜い姿をこれ以上は夕麿の前に晒したくはなかったからだ。
武を気遣って抱き締めている義勝の腕すら、甘い痺れをもたらしている。
「麗、校医を彼の部屋へ。彼は連れて帰ります」
きっぱりと言い切った夕麿に向かって、司が鼻で笑って言った。
「私たちが塗り込んだ軟膏は、精液でしか中和されない。放置すれば狂うよ。誰かがたっぷりと可愛がっておあげなさい」
どの道、誰かが武を犯すしかないのだと高笑いする、司の言葉は紛れもない真実たった。なおも司は畳み掛けるように言葉を背を向けた夕麿に向かって放った。
「誰にでも優しく親切で、けれど本当は誰にも心を許さず、慕い寄ってくる者を冷酷に退ける…それが貴様の本当の姿だ、六条 夕麿。
誰も愛さない氷の心で、もっと彼を苦しめるつもりなのかな?
武、辛くなったらいつでも来なさい。少なくとも私は君を抱き締めて溺れさせてあげるよ。快楽は素晴らしい。どんな悲しみも苦しみも忘れてしまえる。
私は待っているよ」
義勝に抱き上げられて立ち去る背後で投げかけられた言葉から逃れるように、武は目を閉じ耳を塞いで震えた。彼らの指や舌が与えた甘美な快楽を振り切るように。身体はまだ更なる快楽を求め続けていた。それが武の心に自分自身に対する強い嫌悪感と絶望を募らせた。
苦しい… …苦しい… …苦しい……苦しい……苦しい……
ベットの上で悶えても、身体の奥底でくすぶる炎は消えない。
校医はこのような状態をある程度経験しているらしく、解毒剤を打って様子を見た上で発熱の処置をすると言って立ち去った。
司の言葉通り、体内の渇望は増しても、弱まる気配すらない。誰にも救いを求められない。何よりも怖いのは夕麿の眼差しだった。温室に入って来た彼はそこの有り様を見て、はっきりと嫌悪の表情を浮かべていた。武には行われている行為に対してだけではなく、堕ちようとしていた武の浅ましさに対するものが混じっていたように感じていた。それ故か…武は自分を酷く穢らしいものに感じていた。こうやって悶えている事も、自分の浅ましき穢らわしさ故だと。
孤立に疲れ果て高熱に犯された頭は、既に正常な思考が出来なくなっていた。寝室にひとりになった瞬間、武はベットサイドテーブルの引き出しから、カッターナイフを取り出した。自分をバラバラに切り裂いてしまいたかった。 こんな穢らしいものはいらない。刃を首筋に当て、切り裂こうとする瞬間、入って来た麗が悲鳴をあげて押さえつけた。
「会長~!」
麗の叫びに夕麿が飛び込んで来た。
「カッターナイフ、取り上げるから押さえて!」
「離せ!切るんだ、こんな…こんな穢らしいもの! いらない! いらない!」
催淫剤の懊悩と高熱と不安と恐怖が入り混じって、既に錯乱状態に陥っていた。夕麿が武をベットに組み敷いて、麗がカッターナイフを取り上げて下がる。
武は泣き叫んだ。
「触るな! 触らないで、穢い! 俺は穢い!」
心身共に既に限界だった。このままだと司が言ったように武の精神が崩壊してしまう。
「麗、後は私に任せて下さい」
「え…会長?」
「部屋から出て」
「……わかった。ね、会長? 御園生君は多分…会長の事を…」
「麗!」
「わかった…優しくしてあげて、会長…」
言葉だけ残して、麗は部屋を後にした。
「武、武、私がわかりますか?」
初めて名前で呼ばれた。
「会長…ダメ…見ないで…」
泣きながらもがく。
「辛いでしょう? もう我慢しなくて良いですからね」
シーツごと抱き締められて、恐怖と羞恥に武がもがいた。
「やめて…会長…穢いよ…」
「大丈夫。あなたは穢くなんかありません」
武の眼から涙が溢れた。
「会長…」
「違うでしょう、武?」
「え…?」
「夕麿です」
「夕…麿…」
恐る恐る呟くと、夕麿は微笑みながら唇を重ねた。そっと触れるだけの軽い口付け。けれど嬉しい。この人が欲しかった。あんな風に触れられるなら、この人がいい。両腕を夕麿の背に回した。制服のシルクのシャツを握り締めた。武には性的な行為の経験は皆無だ。母子家庭で育った由縁でどうしてもそういったものを避ける傾向の中で育ってしまった。だから余計に先ほどの陵辱が恐怖を煽っていた。
触れられるだけで快感が全身を震わせる。夕麿に抱かれる喜びと、恐怖と懊悩が入り混じって、武は一層つよく縋り付いた。
「大丈夫です、武。怖くないから。私に任せてください、ね?」
髪を撫でられた武は、紅潮した頬を一層染めて頷いた。
再び重ねられた唇。舌先が唇をなぞる。武はゆっくりと唇を開いた。差し込まれた舌が口腔内を妖しく動いて武の官能を揺すぶる。キスが気持ちが良いものだと武は初めて知って夢中になる。
「ああ…」
離れた二人の唇の間を、銀の粘液の橋が繋げる。うっとりした眼差しで夕麿を見上げると、微笑み返された。
「もっとォ…」
もっと欲しい。心も身体も更なる快楽を求めていた。それに答えるように、ぷくりと膨れて欲情に上下する乳首を、双方同時に摘んで強めに爪を立てる。
「ひィッ…ああああッ…!!」
与えられた刺激に武はのけぞって吐精し、飛び散った精液が夕麿のシャツを濡らした。
「…ごめんなさい…ごめんなさい…」
恥ずかしくて情けなくて…啜り泣くと、夕麿はシャツを脱ぎ捨てて、乳首を口に含んだ。
「ああッ…あン…ダメぇ…」
切なくて切なくて、自らの欲望を擦り付けるように、腰を揺らす。それを見て夕麿は武の両脚を抱え上げた。先程、清治によって散々解され掻き回された蕾は、たっぷりと濡れて未だ収縮を続けていた。指を挿入すると、武は声をあげてのけぞり、肉壁は貪欲に絡み付く。夕麿はすぐに指を抜くと、前を寛げて自分のモノを取り出す。それは既にはっきりとした欲情を示していた。
「武、いきますよ」
と言ったものの、返事を待たずあてがい、解したとはいえ、未経験の狭い蕾を押し開け大きなモノが挿入されて行く。
「ああッあッあッ…ひィィィッ…」
引き裂かれるように貫かれる痛みと、せり上がって来る圧迫感に、悲鳴をあげて逃れようとする。しかし、夕麿はしっかりと武の腰を押さえて、一気にに突き入れた。
「ああン…ああああッ…!!」
その衝撃を催淫剤に犯された肉壁は、快感に変換し、武は生まれて初めて自らの内に挿入されて吐精した。清治に中を掻き回されて口でイかされた時より、遥かに深く強く長く続く絶頂に、武のモノは精を吐き続けている。
「ああン…夕麿ァ…気持ち…イイよぉ…」
快感に痺れて舌足らずな声で甘えると、唇を重ねられ舌を絡みとられて強く吸われる。
「ふうン…あふ…」
大きなモノで中を掻き回されて、たまらずに夕麿の腰に脚を絡め、より深く強請ると夕麿の動きが激しくなった。
「あンああン…イイよぉ…あッあッ…夕麿ァ…熱い…熱いよぉ…」
余りの快感に武はもう半狂乱になっていた。挿入時の痛みなどもう、微塵も存在しない。
「夕麿ァ…夕麿ァ…また…また…イくゥ…あふああンああああッ…!!」
先程より一層大きな快感のうねりとなって、絶頂を迎えて夕麿の背に回した指先に力がこもる。
「くッ…!!」
武の絶頂で起こった肉壁の強い収縮に、夕麿も耐えきれず絶頂を迎えて、武の中に激しく吐精した。熱い迸りが肉壁を灼く。
「ああン…熱いよぉ…」
おさまらない快感の痙攣に身を委ねながら、夕麿を見上げると耳朶を甘噛みされ囁かれる。
「まだ、欲しいですか、武?」
大量に体内に吸収させられた催淫剤は、一度の吐精では中和仕切れない様子だった。それでも、正気を取り戻した武は、申し訳なさと恥ずかしさに閉じた眼から、涙が流れ落ちた。
「ごめんなさい…まだ…」
どうして良いのかわからない。
「心配しなくて良いのですよ」
優しい言葉に泣きながら頷く。再開された挿出に、また身体が灼け付く快感に息を乱す。
「夕麿ァ…溶けちゃうよ…気持ち…イイよぉ…ァああン…あンあッああンあッあッ…」
身体が満たされて行くように、心も満ちていこうとしていたその時、官能に霞む視界のぼんやりと見えたのは優しい言葉とは裏腹の、武を観察するように見下ろす夕麿の冷たい眼差しだった。
「あ…あ…夕麿…あッあッあッ…」
何かを言おうとした武の気を逸らすように、夕麿の動きが激しく荒々しくなって、快感の波が武の意識までを呑み込んだ。覚えたての快感に抗う術は武にはない。激しい挿出を続けられ、抱擁がいつ終わったのかすらわからないまま、武は意識を手放した。
目が覚めると武は昨夜の事が夢だったかのように、ベットに横たわっていた。パジャマを着てシーツも昨夜の痕跡を留めてはいない。ただ右腕に点滴の注射針が刺さっていた。額には冷却シートが貼られている。そういえば、発熱していたらしい事を思い出した。
寝室からリビングに通じるドアが少し開いているが人がいる気配はない。
喉が渇いた。
武は起き上がろうとして悲鳴をあげた。あらぬ場所から背中を貫くように激痛が走ったのだ。催淫剤が挿入の痛みを一時的に忘れさせたが、身体は押し開かれ酷使されたダメージをちゃんと受けていた。
あれは…夢ではない現実。催淫剤の中和の為に苦しむ武を夕麿は抱いた。あの冷たい眼差しが行為に愛情は込められてはいないと語っていた。温室に入って来た時の眼差しも多分、夕麿の本心だろう。昨夜、司が夕麿を「鉄の心の持ち主」と言ったのも、嘘ではないのだと。もし噂通り異母兄弟だというのなら、あのような事になった上、催淫剤の中和を外聞を憚って他の誰かに任せるのを良しとは思わず、自分で行ったという事だろう。
武は点滴の針を抜いて激痛に悲鳴をあげる身体を無理やり動かした。額の冷却シートを剥がし普段着に着替える。 息を乱しながらリビングに出ると、武の鞄と制服がテーブルに置かれていた。鞄を開けて中身を確かめると、携帯のLEDが点滅している。
メールが二件入っていた。一件は麗から。もう一件は…いつの間に武のアドレスを登録したのか、司からだった。
〔もう、わかった筈、六条 夕麿がどんなに冷酷かを。君がどんなに想おうと、彼の心は君に向く事はない。私の所へ来なさい〕
後は彼の部屋番号が記入されていた。
武は静かに携帯を閉じてソファに横になった。レザーの冷たさが熱を帯びた身体に心地良い。もう何もわからなかった。暗闇が濃度を増しただけだった。背を向けて見ないフリをしていた光は、光ではなかった。ではこれは本当に出口も光もない闇なのだろうか。
……………出口は見えない。目の前に広がっているのは、もっと深い闇。その向こうから、快楽の触手が蠢く穴が呼んでいた。光はない。だが、孤独もない。心が揺らぐ。快楽は全てを忘れさせてくれる。夕麿のあの冷たい眼差しさえ、与えられた快感の波で忘れられた、そのただ中にあるうちは。 武は喉の渇きも忘れて携帯を握り締めフラフラとベットに戻った。
武から笑顔が失われた。
誰にもかかわらないと貼り付けた笑みすら、もうつくる事ができない程に心は虚ろで真っ暗闇だった。今の武がそれでも縋り付いていたのは、執務室で夕麿の側にいる事だった。 会長補佐として正式に任命が行われ、生徒会業務の上であっても、会話を交わす事が出来る。形ばかりであっても笑みが向けられる。小さな小さな望みだった。
何も求めない……と決めていた筈なのに、求めてしまったから苦しむのだと。最初からなかったらこんな想いはしなかった。だからなかったのだと自分に言い聞かせてみる。けれどあの夜の抱擁の甘美な記憶が武の心からも、身体からも消えてはくれない…… 消える筈がない。夕麿を受け入れた部分の痛みが消えても、覚えてしまった感覚は忘れられない。
眠れない夜が続いていた。相変わらず食事は食べても、全て吐き出してしまう。バスルームの鏡に映る姿は、すっかり痩せてしまった。
夜も更け行く時間、武は一人、寮の外に彷徨い出た。エアコンの冷気が息苦しくて。梅雨間近の湿気を帯びた空気がムッとする。当て所なく歩いていると、街灯の光の向こうに灯る輝きがあった。引き寄せられるように近付いてみると温室に灯りが点いていた。武は慌てて踵を返して、その場から離れた。走ったわけでもないのに動悸が激しい。
逃げ道にしてはいけない。そんな事をすればもう執務室に入る事すら許されなくなる。甘美な誘惑を懸命に払いのけて寮の中に入ると夕麿が立っていた。
「来なさい」
いきなり手首を強い力で掴まれて、有無を言わせない態度でエレベーターに乗せられた何事かと問えぬ程、夕麿が怖かった。あきらかに何かに怒っているのを感じる。武は手首を掴まれたまま震えていた。夕麿はエレベーターを降りると最上階の自分の部屋へ武を連れ込んだ。
「どこへ行っていたのですか?」
部屋に入って漸く手を離された途端、夕麿の問い質す声が響いた。
「え…あの…外の空気を吸いに…」
「本当に?」
「はい」
やましい事はしていない…そう考えた次の瞬間、点されていた温室の灯りを思い出した。夕麿は武が温室に行っていたのではないかと、司たちの所へ行っていたのではないかと疑っているのだ。
「それが本当だというなら、私に証明しなさい」
「証明…?」
「脱ぎなさい。裸になって、私にみせなさい、身体を」
「え…」
「見せられますね、武?」
「…はい…」
今は羞恥より疑われる方が嫌だった。震える指でシャツを脱ぎ捨てると、それではダメだと言うように首を振る。唇を噛み締めて全裸になった。
「そこの窓際に外を向いて、脚を広げて立ちなさい」
六階にあるこの部屋は、二階にある武の部屋と違ってバルコニーがない。替わりに大きな硝子が嵌められていた。 外は真っ暗闇だが遥か向こうに僅かに灯りが見える。
武は夕麿の言葉に従って、硝子の前に外を向いて立った。するとピシャリと何かで尻を叩かれた。
「ヒッ」
「私は脚を開けと命じた筈です!」
夕麿の手には乗馬用の鞭が握られていた。
「…はい…会長…」
ピシャリとまた叩かれた。
「私を何と呼ぶか教えた筈ですよ、武?」
「ごめんなさい…夕麿」
「よろしい。脚を開いたら、手を硝子につきなさい」
恥ずかしさに震えながら言われた通りにすると、夕麿の手が武の尻肉を左右に開いて奥を晒した。
「腰をもっと突き出しなさい」
「はい…」
夕麿の指が蕾をなぞる。当然ながら蕾はかたく閉じていた。
「嘘ではないようですね。しかし、こんな時間に外へ行くあなたが悪いのですよ。
また、あんな目に合いたいのですか?」
こんな時間…と言われて、武は夕麿が身を案じてくれたのだと理解した。
「司たちでなくても、闇に乗じて不埒な事をする者もいるのです」
男だけの閉鎖された場所。夏休みなどの長期な休みにならないと、生徒は学院からも学院都市からも出られない。 ストレスと欲望の捌け口として、元々同性愛への禁忌意識が薄い此処では、様々な形で同性間の性交渉が行われていた。本気の恋愛、セフレ、司たちのように薬を使用して相手を取り込む者、そしてレイプや輪姦も存在した。
武はあの一件で性を覚えた。一夜とはいえたっぷりと官能を味わった身体は、既に同性の目を引き寄せる色香を放っていた。元々色白で小柄な武は司たちが目をつけたように、そういう対象にされやすいタイプに分類される。だが、当の武自身にその自覚がない。そこが夕麿の心配の原因だった。
「自分がどれだけ愚かかわかりましたか、武」
「はい…ごめんなさい…」
「司たちのやり方はまだ身体を傷付けたりしません。
しかし、レイプや輪姦なら…取り返しのつかない傷を、身体にも心にも受けるのだと、わかっていないのですね、あなたは。
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その言葉と共に、容赦なく武の尻に鞭が振り下ろされた。
「ひぃ!」
痛みに悲鳴をあげる武に構わず、繰り返し振り下ろされ、それは武が立っていられなくなるまで続いた。武の尻は赤く腫れ、そこ此処の皮膚が裂けて血が滲んでいた。武は謝罪の言葉を繰り返しながら、啜り泣いた。
「ごめんなさい…ごめんなさい…許して下さい…もうしません…」
うずくまって泣く武を抱き起こし、ベッドに運んで手当てをする。しばらくは座るのすら苦痛だろう。
「よく頑張りましたね。
よろしいですか、武? これからも危険な事やいけない事をしたら、私は容赦なく罰を与えます。それを決して忘れないように、良いですね?」
「はい…夕麿。ごめんなさい…」
「痛いでしょう? この痛さをちゃんと覚えておきなさい」
「はい…」
「良い子ですね」
そう言って頭を撫でられると嬉しさでまた涙が溢れる。
「夕麿…俺の事…嫌いじゃない?」
「当たり前でしょう。嫌いな相手にこんな反応はしませんよ」
夕麿は武の手を取って、自らの股間に導いた。そこは衣服の上からでもはっきりとわかる程、欲望に膨れていた。
「夕麿…欲しい…」
「お仕置きをちゃんと最後まで受けれたご褒美です。
武、口で出来ますか?」
「よくわからない…シタことないから…」
「可愛いいですね。何も知らないなら、一から私が教えてあげましょう。
まず、外に出してごらんなさい」
痛む尻を庇うように起き上がり、下に降りてベッドに座っている夕麿の脚の間に身を入れた。 恐る恐る夕麿のチノパンの前を寛げ、下着の中から彼の大きなモノを露わにする。
「大きい…」
「そう? でもこれを武に挿入れたのですよ、あの夜は」
「嘘…みたい…」
「さあ、やってご覧なさい、武。
まずは手で…そう、優しく…イイですよ。
今度は手を動かしながら、根元から先へ舐めて行きなさい…」
拙い舌使いで舐めまわし懸命に口を開けて含むが、大きさで顎が外れてしまいそうだった。それても髪を掻き回す指が、確かに夕麿が感じているのを教えてくれる。口腔に広がる味は、彼の蜜液のもたらすもの。
もっと感じて欲しくて、舌を動かし、舐めしゃぶる。次第にそれは口腔でなお膨らみ、広がる味も強くなって来た。
「武…ああ…もうイきますよ」
その言葉にそのまま頷くと、舌の動きをもっと激しくした。頬肉を動かして、出来るだけ奥へと受け入れ、吸う。
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夕麿の温かい口腔に包まれ、絡み付くように柔らかな舌が蠢く。清治にされたよりもずっと、強い悦びのうねりが襲う。
「夕麿ァ…もうダメぇ…イクぅ…あンあッ!」
夕麿の頭を抱えるようにして吐精する…そうしないと、あまりの快感に崩れてしまいそうだった。ガクガクと震える膝で何とか立っていると、吐精を終えた武のモノを中に残ったものまで吸う。
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