65 / 117
第15章
第5話
しおりを挟む
「山? 山の方だな」
俺が初めての任務に関わった場所に近い。
移動する自販機が電線に絡みつき、辺り一帯を停電させた。
あの時はすぐこの後ろに、あの人がいたのに……。
竹内は首をかしげる。
「電波の届かないところ? だけど、今時そんなところなんて……」
「妨害電波を出しても、人がいなければ周囲に気づかれることもない。人気のないところを選んでいる可能性はある」
突然、隊長の位置を示す表示がマップから消えた。
「ん? これは自分で消した? それとも消された?」
竹内はシステム上での捜索を始めようとしている。
本部では特に騒いでいる様子もない。
隊長自身の特殊任務を考えると、こんな端くれの一般隊員から情報を秘匿することなんて、別に珍しいことでもなんでもないのだろう。
「待って。これは緊急事態だよ、使えるじゃないか」
突然そう言い放った俺を、竹内は不思議そうに見上げる。
「隊長が行方不明となった。我々は至急、救出作戦を実行する」
俺たちは飯塚さんを追うんじゃない、隊長を救出しに行くんだ。
それならば隊員行動規範にだって違反しない。
竹内は呆れたように頭を横に振った。
「そんないいわけ、通用するとは思えないけどな」
「どうせ俺たちは不出来なバカなんだから、バカでいいんだよ」
竹内はため息をついた。
ガタガタと立ち上がり、骨張った細い体で眼鏡ごしににらみつける。
「で、どうするつもりだ」
「……どうしよう」
竹内は空になったカップを洗い始めた。
その隣にカップを置くと、黙って一緒に洗ってくれる。
「お前お得意のノープラン作戦?」
「……ダメ、かな?」
「無理だろ。やめだ、やめ。もう少しちゃんと考えてから動こう。また失敗を繰り返したくはないだろ」
洗い終わったカップを水切り棚に並べる。
俺たちは同時にため息をついた。
俺が初めての任務に関わった場所に近い。
移動する自販機が電線に絡みつき、辺り一帯を停電させた。
あの時はすぐこの後ろに、あの人がいたのに……。
竹内は首をかしげる。
「電波の届かないところ? だけど、今時そんなところなんて……」
「妨害電波を出しても、人がいなければ周囲に気づかれることもない。人気のないところを選んでいる可能性はある」
突然、隊長の位置を示す表示がマップから消えた。
「ん? これは自分で消した? それとも消された?」
竹内はシステム上での捜索を始めようとしている。
本部では特に騒いでいる様子もない。
隊長自身の特殊任務を考えると、こんな端くれの一般隊員から情報を秘匿することなんて、別に珍しいことでもなんでもないのだろう。
「待って。これは緊急事態だよ、使えるじゃないか」
突然そう言い放った俺を、竹内は不思議そうに見上げる。
「隊長が行方不明となった。我々は至急、救出作戦を実行する」
俺たちは飯塚さんを追うんじゃない、隊長を救出しに行くんだ。
それならば隊員行動規範にだって違反しない。
竹内は呆れたように頭を横に振った。
「そんないいわけ、通用するとは思えないけどな」
「どうせ俺たちは不出来なバカなんだから、バカでいいんだよ」
竹内はため息をついた。
ガタガタと立ち上がり、骨張った細い体で眼鏡ごしににらみつける。
「で、どうするつもりだ」
「……どうしよう」
竹内は空になったカップを洗い始めた。
その隣にカップを置くと、黙って一緒に洗ってくれる。
「お前お得意のノープラン作戦?」
「……ダメ、かな?」
「無理だろ。やめだ、やめ。もう少しちゃんと考えてから動こう。また失敗を繰り返したくはないだろ」
洗い終わったカップを水切り棚に並べる。
俺たちは同時にため息をついた。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲
俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。
今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。
「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」
その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。
当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!?
姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。
共に
第8回歴史時代小説参加しました!
大絶滅 2億年後 -原付でエルフの村にやって来た勇者たち-
半道海豚
SF
200万年後の姉妹編です。2億年後への移住は、誰もが思いもよらない結果になってしまいました。推定2億人の移住者は、1年2カ月の間に2億年後へと旅立ちました。移住者2億人は11万6666年という長い期間にばらまかれてしまいます。結果、移住者個々が独自に生き残りを目指さなくてはならなくなります。本稿は、移住最終期に2億年後へと旅だった5人の少年少女の奮闘を描きます。彼らはなんと、2億年後の移動手段に原付を選びます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる