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第7章
第2話
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「忘れ物だ。それでちゃんと、わんこの変わりが出来るから」
「これを取りに来ただけ?」
「もちろんそうじゃない」
バタンと扉を閉める。
自動でロックのかかる音が聞こえる。
竹内はまっすぐに歩き出した。
「部隊関連施設は、もちろん頭に入ってるんだろうな?」
答えられない質問に関しては、黙っておくに限る。
竹内は鼻でため息をついた。
「ま、いいけどね。お前もそんなに、長くはもたないかもな」
裏口から外に出る。
軽自動車の横にいづみが立っていた。
「分岐点で別れたわ。追いつける?」
「えぇ、もちろん。そうさせていただきますよ」
竹内は運転席に座ると、エンジンをかけた。
慌てて助手席に乗り込む。
「そのうち、この運転も代わってもらうからな」
サイドブレーキを下ろした瞬間、急発進する。
こんな所を通る車がいたのか? っていうような細い路地を猛スピードで走り抜け、少し大きな通りに出た思ったら、すぐまた裏路地に入り込む。
と、車を止めた。
「間に合ったわね」
「ま、こんなもんですよ」
映画のような乱暴すぎる運転に、俺の心臓はキャパオーバーで止まりそうだ。
「よく事故とか起きないよね!」
「……。車が勝手によけるよう、この俺が設定したんだ」
地下鉄のホームへ降りる階段が見えた。
辺りはもうすっかり暗くなっている。
車を近くの私営駐車場に停めると、灯りの灯り始めた街から地下へと潜り込んだ。
「ここで回収するわよ」
カビ臭い生暖かい空気が鼻をつく。
人手は多くはないが、少ないというわけでもない。
列車到着予定時刻まで2分あった。
一般の乗客だって普通にいる。
ただの当たり前の電車ホームだ。
回収って、どうするんだ?
竹内がくるりと振り返った。
「重人、わんこチェック」
「は?」
「さっき渡しただろ」
舌打ちしてやりたいのをグッと我慢する。
代わりに盛大なため息をついた。
「だから、この状況でそれ必要?」
電車はホームに滑り込んだ。
乗車を待つ客は線路に近寄る。
俺はその乗客を避けて、ホーム壁際に寄った。
「重人、そこはやめた方がいい」
飯塚さんの横顔が、俺の袖を引いた。
「これを取りに来ただけ?」
「もちろんそうじゃない」
バタンと扉を閉める。
自動でロックのかかる音が聞こえる。
竹内はまっすぐに歩き出した。
「部隊関連施設は、もちろん頭に入ってるんだろうな?」
答えられない質問に関しては、黙っておくに限る。
竹内は鼻でため息をついた。
「ま、いいけどね。お前もそんなに、長くはもたないかもな」
裏口から外に出る。
軽自動車の横にいづみが立っていた。
「分岐点で別れたわ。追いつける?」
「えぇ、もちろん。そうさせていただきますよ」
竹内は運転席に座ると、エンジンをかけた。
慌てて助手席に乗り込む。
「そのうち、この運転も代わってもらうからな」
サイドブレーキを下ろした瞬間、急発進する。
こんな所を通る車がいたのか? っていうような細い路地を猛スピードで走り抜け、少し大きな通りに出た思ったら、すぐまた裏路地に入り込む。
と、車を止めた。
「間に合ったわね」
「ま、こんなもんですよ」
映画のような乱暴すぎる運転に、俺の心臓はキャパオーバーで止まりそうだ。
「よく事故とか起きないよね!」
「……。車が勝手によけるよう、この俺が設定したんだ」
地下鉄のホームへ降りる階段が見えた。
辺りはもうすっかり暗くなっている。
車を近くの私営駐車場に停めると、灯りの灯り始めた街から地下へと潜り込んだ。
「ここで回収するわよ」
カビ臭い生暖かい空気が鼻をつく。
人手は多くはないが、少ないというわけでもない。
列車到着予定時刻まで2分あった。
一般の乗客だって普通にいる。
ただの当たり前の電車ホームだ。
回収って、どうするんだ?
竹内がくるりと振り返った。
「重人、わんこチェック」
「は?」
「さっき渡しただろ」
舌打ちしてやりたいのをグッと我慢する。
代わりに盛大なため息をついた。
「だから、この状況でそれ必要?」
電車はホームに滑り込んだ。
乗車を待つ客は線路に近寄る。
俺はその乗客を避けて、ホーム壁際に寄った。
「重人、そこはやめた方がいい」
飯塚さんの横顔が、俺の袖を引いた。
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