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第31章
第2話
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「ねぇ、鹿島くんの、どこが嫌い?」
俺はうつむいて、彼女の机の板にある落書きと傷の数を数える。
この溝にプリントとかのシャーペンの芯がぐさっと刺さったりなんかして、イラついたりしてんだろうな。
「別に、嫌いとかそんなんじゃないよ」
彼女の白い指が、俺の前で複雑に絡まっている。
人差し指がぴくりと動いて、彼女はまたため息をついた。
「じゃあ、なんなの?」
「うーん……。奥川は、どうしたいの?」
その言葉に、彼女は少し頬を赤くして、うつむいた。
言葉を探すように、目線が横に流れる。
「どうしたいって、私は別に……」
分裂した部を元に戻したいと思っているのか、それとも俺に、何か別のことをしてほしいのか。
奥川は俺に、何を望んでいるのだろう。
「奥川が何かしてほしいのなら、俺はしてあげるよ」
面と向かっては言えないから、思いっきりうつむいて言ってみる。
すぐに顔を上げるわけにはいかなくて、俺はそのまま顔を背ける。
思った以上に、声が小さくなってしまったような気がする。
「別に、あんたにどうこうしてほしいとか、私は一切ないんだけどね」
「どういう意味?」
「そのまんま。他に意味はない」
ずっと彼女のそばにいて、こうやって人目も気にせず、気さくに話せるのは、俺だからだと思ってるし、それは彼女にしたって、同じことだ。
俺はずっと、そう思っている。
「だとしてもさ、他になにか言うことあるでしょ」
「なにが?」
「なにか、言いたいこと」
じれったいのはいつものことで、数センチ単位の距離にある彼女の指先が、なぜか今日は、いつも以上に近く感じる。
「俺がさ、ずっとどう思ってるか、知ってるでしょ?」
そう言ってから、しばらく待ってみたのに、彼女からの返事はない。
「……。だから、今さらそんなこと言うのも、なんなのかなーなんて、思って」
俺はずっと待っていた。
待っていたからこそ、待たせてもいたんだと思う。
だからそろそろ、いいんじゃないかと、そう思ったんだ。
俺はうつむいて、彼女の机の板にある落書きと傷の数を数える。
この溝にプリントとかのシャーペンの芯がぐさっと刺さったりなんかして、イラついたりしてんだろうな。
「別に、嫌いとかそんなんじゃないよ」
彼女の白い指が、俺の前で複雑に絡まっている。
人差し指がぴくりと動いて、彼女はまたため息をついた。
「じゃあ、なんなの?」
「うーん……。奥川は、どうしたいの?」
その言葉に、彼女は少し頬を赤くして、うつむいた。
言葉を探すように、目線が横に流れる。
「どうしたいって、私は別に……」
分裂した部を元に戻したいと思っているのか、それとも俺に、何か別のことをしてほしいのか。
奥川は俺に、何を望んでいるのだろう。
「奥川が何かしてほしいのなら、俺はしてあげるよ」
面と向かっては言えないから、思いっきりうつむいて言ってみる。
すぐに顔を上げるわけにはいかなくて、俺はそのまま顔を背ける。
思った以上に、声が小さくなってしまったような気がする。
「別に、あんたにどうこうしてほしいとか、私は一切ないんだけどね」
「どういう意味?」
「そのまんま。他に意味はない」
ずっと彼女のそばにいて、こうやって人目も気にせず、気さくに話せるのは、俺だからだと思ってるし、それは彼女にしたって、同じことだ。
俺はずっと、そう思っている。
「だとしてもさ、他になにか言うことあるでしょ」
「なにが?」
「なにか、言いたいこと」
じれったいのはいつものことで、数センチ単位の距離にある彼女の指先が、なぜか今日は、いつも以上に近く感じる。
「俺がさ、ずっとどう思ってるか、知ってるでしょ?」
そう言ってから、しばらく待ってみたのに、彼女からの返事はない。
「……。だから、今さらそんなこと言うのも、なんなのかなーなんて、思って」
俺はずっと待っていた。
待っていたからこそ、待たせてもいたんだと思う。
だからそろそろ、いいんじゃないかと、そう思ったんだ。
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