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第61話
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「そのタイミングを、待っていたんですけどね」
「な! コイツ、頭おかしいだろ?」
「そのために、元SPのあなたを護衛につかせていたんじゃないですか。明穂さんの身の安全に対する責任は自分が持つと了承したのも、あなた自身ですよ」
「本部の作戦見通しが甘かった!」
「それは言い分けです」
横田さんと長島くんの怒りの矛先が、突然こちらに向かった。
「だからあの時!」
「なんで勝手に移動したんですか?」
「えー、だって……」
私は、本気で彼女を救いたかった。
助けてあげたかった。
まさか長島少年の研究対象になっているとは思ってもいなかったし、局に入局した時点で、単純に彼女は許されたのだと思っていた。
「私は、本当に愛菜を助けてあげたかったんです」
長島くんはため息をついた。
「それでこそ、あなたは最良のコントロールでしたよ」
「私がPP回復アップの秘訣を、授けた甲斐もあったでしょ?」
芹奈さんは笑う。
「え? それもこのためだったんですか?」
「違うわよ。違うけど、結果的にはそうなったんじゃない?」
「あのバカみたいな、お約束がか?」
横田さんも、やっぱりそう思ってたんだ。
「七海ちゃんには、ちゃんと効果があったじゃない!」
「あのお約束は、本人の自己規律を促すという狙いでは、よいアドバイスでした」
長島くんが芹奈さんをフォローする。
「ま、あなたには、不要だったみたいですけど」
「だって、やっぱり明穂ちゃんには堂々としていてほしいじゃない?」
芹奈さんの片肘が、私の右肩に乗った。
「我らがPP局の、生みの親なんだから」
にやりと微笑んだはずの芹奈さんが、急に両手で顔を覆って泣き伏せた。
「だってもっとかっこよくて強い女性をイメージしてたのに、あんなでっかいぬいぐるみ依存症の、ちっちゃい女の子だったなんて!」
「やっぱり芹奈さんもそう思ってたんですね! そうなんですよね!」
「そんなの残念すぎるじゃない!」
「ひどいー!」
「でも、かっこよかったですよ!」
市山くんが入ってきた。
「遊園地で見つけた時、あぁ、やっぱりそれでこそ明穂さんなんだなって、思いました!」
「そうそう」
さくらもうなずく。
長島少年がため息をついた。
「とにかく、今は彼女は、保険局の保護施設で更正プログラムを受けています。もちろん貴重なサンプルとして収容したからには、僕のフィールドワークにも協力してもらいますけど」
「実験動物ですか?」
「人権は保護されます」
彼のその言葉には、あんまり説得力がないと思う。
「一生涯、観察対象ですけどね」
やっぱり変態だ。
オフィスに呼び出し音が鳴り響き、掲示板に『至急:長島健一副局長:面会者来局:警察関係者』の文字が浮かんだ。
「あぁ、また面倒なのが来たな」
「お時間ですよ、副局長」
横田さんは、長島くんにわざと意地悪な言い方をしている。
「横田さんは、もうお帰りになるのですか?」
「えぇ、彼女と一緒に帰ります」
横田さんの手が、私の肩に乗った。
「あぁ、うらやましい限りですね、さっさとそうして下さい」
「あの! 長島くん!」
私の言葉に、彼は振り返った。
「助けてくれて、ありがとうございました。警察への引き渡しを拒否してくれたのは長島くんだったと聞いて、本当に感謝しています」
彼はにっこりと微笑んで手を振ると、迎えに来たアシスタントロボと一緒に、部屋を出て行った。
私と横田さんも、オフィスを後にする。
「な! コイツ、頭おかしいだろ?」
「そのために、元SPのあなたを護衛につかせていたんじゃないですか。明穂さんの身の安全に対する責任は自分が持つと了承したのも、あなた自身ですよ」
「本部の作戦見通しが甘かった!」
「それは言い分けです」
横田さんと長島くんの怒りの矛先が、突然こちらに向かった。
「だからあの時!」
「なんで勝手に移動したんですか?」
「えー、だって……」
私は、本気で彼女を救いたかった。
助けてあげたかった。
まさか長島少年の研究対象になっているとは思ってもいなかったし、局に入局した時点で、単純に彼女は許されたのだと思っていた。
「私は、本当に愛菜を助けてあげたかったんです」
長島くんはため息をついた。
「それでこそ、あなたは最良のコントロールでしたよ」
「私がPP回復アップの秘訣を、授けた甲斐もあったでしょ?」
芹奈さんは笑う。
「え? それもこのためだったんですか?」
「違うわよ。違うけど、結果的にはそうなったんじゃない?」
「あのバカみたいな、お約束がか?」
横田さんも、やっぱりそう思ってたんだ。
「七海ちゃんには、ちゃんと効果があったじゃない!」
「あのお約束は、本人の自己規律を促すという狙いでは、よいアドバイスでした」
長島くんが芹奈さんをフォローする。
「ま、あなたには、不要だったみたいですけど」
「だって、やっぱり明穂ちゃんには堂々としていてほしいじゃない?」
芹奈さんの片肘が、私の右肩に乗った。
「我らがPP局の、生みの親なんだから」
にやりと微笑んだはずの芹奈さんが、急に両手で顔を覆って泣き伏せた。
「だってもっとかっこよくて強い女性をイメージしてたのに、あんなでっかいぬいぐるみ依存症の、ちっちゃい女の子だったなんて!」
「やっぱり芹奈さんもそう思ってたんですね! そうなんですよね!」
「そんなの残念すぎるじゃない!」
「ひどいー!」
「でも、かっこよかったですよ!」
市山くんが入ってきた。
「遊園地で見つけた時、あぁ、やっぱりそれでこそ明穂さんなんだなって、思いました!」
「そうそう」
さくらもうなずく。
長島少年がため息をついた。
「とにかく、今は彼女は、保険局の保護施設で更正プログラムを受けています。もちろん貴重なサンプルとして収容したからには、僕のフィールドワークにも協力してもらいますけど」
「実験動物ですか?」
「人権は保護されます」
彼のその言葉には、あんまり説得力がないと思う。
「一生涯、観察対象ですけどね」
やっぱり変態だ。
オフィスに呼び出し音が鳴り響き、掲示板に『至急:長島健一副局長:面会者来局:警察関係者』の文字が浮かんだ。
「あぁ、また面倒なのが来たな」
「お時間ですよ、副局長」
横田さんは、長島くんにわざと意地悪な言い方をしている。
「横田さんは、もうお帰りになるのですか?」
「えぇ、彼女と一緒に帰ります」
横田さんの手が、私の肩に乗った。
「あぁ、うらやましい限りですね、さっさとそうして下さい」
「あの! 長島くん!」
私の言葉に、彼は振り返った。
「助けてくれて、ありがとうございました。警察への引き渡しを拒否してくれたのは長島くんだったと聞いて、本当に感謝しています」
彼はにっこりと微笑んで手を振ると、迎えに来たアシスタントロボと一緒に、部屋を出て行った。
私と横田さんも、オフィスを後にする。
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