21 / 40
第6章
第4話
しおりを挟む「ねえ龍ちゃん。
勉強や技術を教えてくれている流民は、ここにいる人だけなの?」
「そんな事はないよ。
大陸中を探したら、百万人くらいいるかな?
いや、五百万人くらいかな?
よく知らないけど」
「みんな生活に困っていないの?
飢えたりしていないの?」
「どうかなぁ。
流民の事はよく知らないんだよね」
神龍の嘘だった。
そもそもこの国の人間の事も知らないのだ。
人間自体に、まったく興味がないのだ。
この国の守護龍となっていたのも、魔獣や魔族と戦いのが楽しかったのと、移動するのが面倒だったからだ。
「じゃあ流民を助けるのは無理なのかな?
龍ちゃんでも居場所が分からないのなら、困っている流民の人達に、この国に来てくれと言うのは無理なのかな?」
「無理じゃないよ。
僕にできない事はないからね。
使い魔や神龍鱗兵を使って、流民を集めるなんて簡単な事だよ」
神龍は強がって嘘をついてしまった。
多くの流民のなかから、一万人に激減した民の教師を探すことはできた。
自分の神力の及ぶ範囲にいる流民を連れてくる程度なら簡単だった。
だが、大陸中にいる流民全てを集めるとなると、神龍でも難しかった。
しかし、シャロンにできないという事は、神龍にはできなかった。
だから、また、戦いの女神セクメトに頭を下げることになった。
屈辱だったが、人間の事はセクメトに聞くしかなかった。
他の神に知り合いはいないし、明らかに自分よりも弱い神達に頭を下げるなんて、絶対に嫌だった。
どうしても頭を下げなければいけないのなら、自分が認める好敵手にしたかった。
それが女神セクメトだった。
「シャロン。
シャロンが女王として布告を出せばいいんだよ。
全ての流民を国民として迎え、国民として権利を与えると布告すればいいんだよ。
そうすれば、厳しい生活をしている流民は集まってくるし、他の地で豊かに生活している流民はその地に残るよ」
「そうなの?
私が女王として布告したら、流民の人達は助かるの?
だったらやるわ。
私のできる事は何でもやるわ」
神龍は女神セクメトに教えられたことを全て話した。
その話は、シャロンに大きな決断をさせた。
自覚がどれほどあるかは分からなかったが、女王として生きていく気にさせた。
それがこの国のためには大きな福音だった。
だが同時に、民が女王シャロンに依存する可能性があった。
勉強や技術を教えてくれている流民は、ここにいる人だけなの?」
「そんな事はないよ。
大陸中を探したら、百万人くらいいるかな?
いや、五百万人くらいかな?
よく知らないけど」
「みんな生活に困っていないの?
飢えたりしていないの?」
「どうかなぁ。
流民の事はよく知らないんだよね」
神龍の嘘だった。
そもそもこの国の人間の事も知らないのだ。
人間自体に、まったく興味がないのだ。
この国の守護龍となっていたのも、魔獣や魔族と戦いのが楽しかったのと、移動するのが面倒だったからだ。
「じゃあ流民を助けるのは無理なのかな?
龍ちゃんでも居場所が分からないのなら、困っている流民の人達に、この国に来てくれと言うのは無理なのかな?」
「無理じゃないよ。
僕にできない事はないからね。
使い魔や神龍鱗兵を使って、流民を集めるなんて簡単な事だよ」
神龍は強がって嘘をついてしまった。
多くの流民のなかから、一万人に激減した民の教師を探すことはできた。
自分の神力の及ぶ範囲にいる流民を連れてくる程度なら簡単だった。
だが、大陸中にいる流民全てを集めるとなると、神龍でも難しかった。
しかし、シャロンにできないという事は、神龍にはできなかった。
だから、また、戦いの女神セクメトに頭を下げることになった。
屈辱だったが、人間の事はセクメトに聞くしかなかった。
他の神に知り合いはいないし、明らかに自分よりも弱い神達に頭を下げるなんて、絶対に嫌だった。
どうしても頭を下げなければいけないのなら、自分が認める好敵手にしたかった。
それが女神セクメトだった。
「シャロン。
シャロンが女王として布告を出せばいいんだよ。
全ての流民を国民として迎え、国民として権利を与えると布告すればいいんだよ。
そうすれば、厳しい生活をしている流民は集まってくるし、他の地で豊かに生活している流民はその地に残るよ」
「そうなの?
私が女王として布告したら、流民の人達は助かるの?
だったらやるわ。
私のできる事は何でもやるわ」
神龍は女神セクメトに教えられたことを全て話した。
その話は、シャロンに大きな決断をさせた。
自覚がどれほどあるかは分からなかったが、女王として生きていく気にさせた。
それがこの国のためには大きな福音だった。
だが同時に、民が女王シャロンに依存する可能性があった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
いつか彼女を手に入れる日まで
月山 歩
恋愛
伯爵令嬢の私は、婚約者の邸に馬車で向かっている途中で、馬車が転倒する事故に遭い、治療院に運ばれる。医師に良くなったとしても、足を引きずるようになると言われてしまい、傷物になったからと、格下の私は一方的に婚約破棄される。私はこの先誰かと結婚できるのだろうか?
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
根暗令嬢の華麗なる転身
しろねこ。
恋愛
「来なきゃよかったな」
ミューズは茶会が嫌いだった。
茶会デビューを果たしたものの、人から不細工と言われたショックから笑顔になれず、しまいには根暗令嬢と陰で呼ばれるようになった。
公爵家の次女に産まれ、キレイな母と実直な父、優しい姉に囲まれ幸せに暮らしていた。
何不自由なく、暮らしていた。
家族からも愛されて育った。
それを壊したのは悪意ある言葉。
「あんな不細工な令嬢見たことない」
それなのに今回の茶会だけは断れなかった。
父から絶対に参加してほしいという言われた茶会は特別で、第一王子と第二王子が来るものだ。
婚約者選びのものとして。
国王直々の声掛けに娘思いの父も断れず…
応援して頂けると嬉しいです(*´ω`*)
ハピエン大好き、完全自己満、ご都合主義の作者による作品です。
同名主人公にてアナザーワールド的に別な作品も書いています。
立場や環境が違えども、幸せになって欲しいという思いで作品を書いています。
一部リンクしてるところもあり、他作品を見て頂ければよりキャラへの理解が深まって楽しいかと思います。
描写的なものに不安があるため、お気をつけ下さい。
ゆるりとお楽しみください。
こちら小説家になろうさん、カクヨムさんにも投稿させてもらっています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる