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第24話 無神経な吉岡
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次に、吉岡宛に道長からの情報を動画ファイルと一緒に送ると、彼は待ち構えていたらしく興奮した文面の返信が届いた。返信に返信をしていると、思いのほかやりとりが続いた。
「密室殺人事件!」
「ふざけないで」
「悪い。ナイフの鞘と指紋の件は初耳だね。あ、ちょっと動画開きます」
(OKサインをしているウサギのスタンプ)
「君、説明が下手すぎるよ。肝心なことを言い忘れている! ダイイングメッセージがあるじゃないか! こんなドラマでしか見たことがないようなもの、忘れるか普通?」
「仕方ないでしょ。いきなり人が亡くなっているのを発見したんだから。普通の精神状態じゃいられないの、分かんない?」
(激おこのクマのスタンプ)
「警察はなんて?」
「さあ。正子さんだけ別室で事情聴取されていたから。私はとっとと帰ったし」
「ああ、そこは粘らなきゃ、だよね。まあ、聞き込みで得た情報と一致するけどね」
「聞き込み? 本当にやっていたんだ。どんな情報?」
「高木家の近所に古くから住んでいる八十過ぎのお婆さんに話を聞けたんだ。『あそこのお嬢さん方』って言っていたから、ずいぶん長い付き合いみたいだった。聞いた限りだと、姉妹の仲は最悪だね。三千代が独身なのは正子が邪魔をしたせいらしい。正子は嫁にいった後も、高木家の実権を握っていたってさ。長男で跡を継いだ一夫も大人しくて、正子の言いなりだったらしい。正子は、三千代の縁談にことごとくイチャモンをつけて、三千代が好きになった相手にも、家柄がどうとか、職業がどうとか、相手が逃げ出すまで嫌味を言っていたらしい。あくまでも噂だけど」
「うわ。最悪。やだね。でもあの人なら本当にそれぐらいのことは、やってそう」
(縦線の項垂れたウサギのスタンプ)
「一夫が結婚した後くらいに、両親は事故でいっぺんに亡くなったらしい。そっから正子の無慈悲な専制政治が始まったようだね」
「無慈悲?」
「ああごめん。ちょっと“北”っぽく言ってみただけ」
(湯気を出している激怒クマのスタンプ)
「でもま、家族を思い通りにしたくて、というか実際していたみたいだから、相当なお婆さんだね。あ、それと、正子と三千代は、あの学習院出身だってさ。その割には二人とも性格が悪くて、あまり好かれていなかったらしいけど」
それは知っている。その学習院繋がりで高木家とお見合いをしたんだから。
返信のタイミングが遅れると、吉岡は、自分のターンに回されたと思ったらしい。
「その八十過ぎのお婆さんてばさ、久しぶりに話し相手ができたのが嬉しかったみたいで、わざわざ娘に電話をかけて、正子か三千代を知っていそうな人を探してくれたんだ」
「午前中の聞き込みにしては、すごい成果じゃない」
「実際は一時間ちょっとだったけどね。それで、三千代の同級生が見つかって連絡先を教えてもらったんだ。葬儀に参列される友人を探しているって言ったら、誰もいないんじゃないかって。理由を聞いたら、これが、しゃべる! しゃべる!」
「分かったから早く教えて!」
「三千代の友人はみんな結婚していて、三千代は交流を絶ったらしい。友人たちから見た姉の正子は恐ろしい人物で、まるで三千代が幸せにならないように見張っていたんじゃないかって、噂をしていたらしい」
「あの二人、血は繋がっているよね?」
「そのはずだけどね。戸籍なんて、然るべき理由で弁護士が取りに行かない限り、僕らじゃ無理だからね。ま、そこは確認しなくてもいいんじゃないかな」
「そだね」
「三千代は学生時代からアンティークドールが好きで集めていたらしい。友人たちと会わなくなってからは、その人形だけが話し相手だったのかもね。動画で見たけど、部屋の隅に山盛りの人形があったよね。君からは聞けなかったけど」
「事件に関係ある?」
「いや別に。情報の整理をしただけだよ。でもま、人形しか話し相手がいなくなって、年をとるに連れて、どんどん性格が捻くれていったっていうところなのかな。姉の正子の方は、子供の頃から貧乏人を攻撃していたらしいけどね。五十年遅く生まれていたら、ホームレスを襲撃とかしていたかもね」
「それで、ダイイングメッセージに対する考察は?」
「ま、三千代の本心ってことなんじゃない?」
「何それ!」
「犯人の情報よりも、姉に対する文句を、死に際に言い残したかったのかな……」
「まあ、そうなると、相当な捻くれ者だね」
「正直、現時点ではメッセージについては分かんないね」
優里はだんだん文字入力が面倒になってきた。
(次からはビデオ通話にしてもらおう。もうスタンプだけを返せばいいや)
「とりあえず、今日のところはこんなもんかな。そうそう、次からはビデオ通話にしない? そのほうが手っ取り早い」
(私から言おうと思ったのに先に言うな!)
優里は湯気を出している激怒クマのスタンプを三連打した。
「密室殺人事件!」
「ふざけないで」
「悪い。ナイフの鞘と指紋の件は初耳だね。あ、ちょっと動画開きます」
(OKサインをしているウサギのスタンプ)
「君、説明が下手すぎるよ。肝心なことを言い忘れている! ダイイングメッセージがあるじゃないか! こんなドラマでしか見たことがないようなもの、忘れるか普通?」
「仕方ないでしょ。いきなり人が亡くなっているのを発見したんだから。普通の精神状態じゃいられないの、分かんない?」
(激おこのクマのスタンプ)
「警察はなんて?」
「さあ。正子さんだけ別室で事情聴取されていたから。私はとっとと帰ったし」
「ああ、そこは粘らなきゃ、だよね。まあ、聞き込みで得た情報と一致するけどね」
「聞き込み? 本当にやっていたんだ。どんな情報?」
「高木家の近所に古くから住んでいる八十過ぎのお婆さんに話を聞けたんだ。『あそこのお嬢さん方』って言っていたから、ずいぶん長い付き合いみたいだった。聞いた限りだと、姉妹の仲は最悪だね。三千代が独身なのは正子が邪魔をしたせいらしい。正子は嫁にいった後も、高木家の実権を握っていたってさ。長男で跡を継いだ一夫も大人しくて、正子の言いなりだったらしい。正子は、三千代の縁談にことごとくイチャモンをつけて、三千代が好きになった相手にも、家柄がどうとか、職業がどうとか、相手が逃げ出すまで嫌味を言っていたらしい。あくまでも噂だけど」
「うわ。最悪。やだね。でもあの人なら本当にそれぐらいのことは、やってそう」
(縦線の項垂れたウサギのスタンプ)
「一夫が結婚した後くらいに、両親は事故でいっぺんに亡くなったらしい。そっから正子の無慈悲な専制政治が始まったようだね」
「無慈悲?」
「ああごめん。ちょっと“北”っぽく言ってみただけ」
(湯気を出している激怒クマのスタンプ)
「でもま、家族を思い通りにしたくて、というか実際していたみたいだから、相当なお婆さんだね。あ、それと、正子と三千代は、あの学習院出身だってさ。その割には二人とも性格が悪くて、あまり好かれていなかったらしいけど」
それは知っている。その学習院繋がりで高木家とお見合いをしたんだから。
返信のタイミングが遅れると、吉岡は、自分のターンに回されたと思ったらしい。
「その八十過ぎのお婆さんてばさ、久しぶりに話し相手ができたのが嬉しかったみたいで、わざわざ娘に電話をかけて、正子か三千代を知っていそうな人を探してくれたんだ」
「午前中の聞き込みにしては、すごい成果じゃない」
「実際は一時間ちょっとだったけどね。それで、三千代の同級生が見つかって連絡先を教えてもらったんだ。葬儀に参列される友人を探しているって言ったら、誰もいないんじゃないかって。理由を聞いたら、これが、しゃべる! しゃべる!」
「分かったから早く教えて!」
「三千代の友人はみんな結婚していて、三千代は交流を絶ったらしい。友人たちから見た姉の正子は恐ろしい人物で、まるで三千代が幸せにならないように見張っていたんじゃないかって、噂をしていたらしい」
「あの二人、血は繋がっているよね?」
「そのはずだけどね。戸籍なんて、然るべき理由で弁護士が取りに行かない限り、僕らじゃ無理だからね。ま、そこは確認しなくてもいいんじゃないかな」
「そだね」
「三千代は学生時代からアンティークドールが好きで集めていたらしい。友人たちと会わなくなってからは、その人形だけが話し相手だったのかもね。動画で見たけど、部屋の隅に山盛りの人形があったよね。君からは聞けなかったけど」
「事件に関係ある?」
「いや別に。情報の整理をしただけだよ。でもま、人形しか話し相手がいなくなって、年をとるに連れて、どんどん性格が捻くれていったっていうところなのかな。姉の正子の方は、子供の頃から貧乏人を攻撃していたらしいけどね。五十年遅く生まれていたら、ホームレスを襲撃とかしていたかもね」
「それで、ダイイングメッセージに対する考察は?」
「ま、三千代の本心ってことなんじゃない?」
「何それ!」
「犯人の情報よりも、姉に対する文句を、死に際に言い残したかったのかな……」
「まあ、そうなると、相当な捻くれ者だね」
「正直、現時点ではメッセージについては分かんないね」
優里はだんだん文字入力が面倒になってきた。
(次からはビデオ通話にしてもらおう。もうスタンプだけを返せばいいや)
「とりあえず、今日のところはこんなもんかな。そうそう、次からはビデオ通話にしない? そのほうが手っ取り早い」
(私から言おうと思ったのに先に言うな!)
優里は湯気を出している激怒クマのスタンプを三連打した。
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