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第1章
第16話
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基地の入り口で、軍のジープが止まると、小銃を持った兵士が近寄ってきた。運転席にいた兵士は、カードのようなものを出して見せた。小銃をもった兵士が合図すると、基地の入り口の頑丈そうな門が開いた
軍のジープは、開かれた門の間を通って進んでいった。基地の門を通って、眼の中に飛び込んで来た基地内の様子に進治と光太郎は驚いた。基地の中はまるで別世界であった。進治と光太郎がランチを食べていたレストランがあった街。デモの群衆が道路を埋め尽くしていた街。そこは、貧困を象徴するような建物が、灼熱の風に晒されている街であった。
一歩基地の中に入ると、眼に映るのは、近代的な建物であった。基地の中とは思えないような町並みが広がっていた。
軍のジープは、建てられたばかりの真新しいビルの前で止まった。ジープを運転していた兵士に誘導されて、進治と光太郎はビル内の廊下を進んでいった。
エレベーターに乗せられた進治と光太郎は五階で降ろされた。エレベーターの出入り口から出て、最初に見えた扉を兵士は開けた。進治と光太郎は指示されるままに部屋の中に入っていった。
部屋の中には、軍服を着た男と普段着の女がソファーに座っていた。軍服を着た男は軍の最高指揮官であり、普段着を着ている女は、ルスピアスであることが分かった。
「あなたがたにお願いしたいことがあってここにお連れしたのですが」
「私たちのことを知っていてここに連れてきたのですか」
最高指揮官の言葉に答えて光太郎が言った。
「あなたがたがこの国に来てからずっと、宿舎を監視していましたから。今日はずっとあなたたちを兵士が尾行していたはずです」
「お願いしたいこととは何ですか」
「私たちはあなたがたの会社から多額の資金援助を受けることになっていたのですが、それを打ち切りたいという連絡をあなたがたの会社から受けました。それはとても困ることです」
「会社の決定ですから、私たちの一存でどうこうなることではありません」
「今この部屋にいるルスピアスとあなたがたの命は、私の決定次第でどうにでもなります。この国の報道機関はすべて私の手中にあります。ルスピアスとあなたがたが今死んでも、その死因はなんとでも好きなように捏造することができます。あなたがたの命がいま危機に瀕していることを会社に切実に伝えれば、あなたがたの会社からの資金は今日にでもすぐに入金できるのではないですか」
「それではまるで身代金の要求じゃないですか」
「あなたがたに何と思われようとどうでもいいことです。ただ約束していたお金が入ればいいだけのことです。ここにあなたがたの会社とのホットラインの電話があります。いまから会社と連絡して直ぐに入金させてください。それが出来なければまずルスピアスから犠牲になっていただきます」
最高指揮官はルスピアスに銃を向けた。進治の眼が光りだした。最高指揮官がルスピアスに向けていた銃が、炎のように真っ赤に光りだした。銃は溶岩のように溶け出して、最高指揮官の手から流れ落ちた。最高指揮官の手は焼けただれた。焼けただれた手をおさえて大声をあげて喚いた。
進治の身体全体が光りだした。最高指揮官の身体が宙に浮かんだ。天井に身体が打つかる音がした。額から爪先まで天井に接触した身体は激しく震えた。身体の震えはますます激しくなっていった。身体の震えで衣服が破れる音がした。千切れた衣服の切れ端が天井から雨の雫のように床に落ちていった。
進治の身体から発せられていた光が消えると、最高指揮官の身体が床に打つかる音がした。床にうつ伏せになったままの最高指揮官の身体はしばらく激しく震えていた。震えがとまってから、何度か立ち上がろうとしたが、その度に躓いた。やっとのことで立ち上がってから、最高指揮官は部下の兵士たちに命じた。
「コイツラは一体何なんだ。忌々しい厄介払だ。ルスピアスをそいつの家に、この二人を会社の宿舎へ返してこい」
ルスピアスと進治と光太郎は、ビルの外に案内され、軍のジープに乗せられた。軍のジープはルピアスの家と進治と光太郎の宿舎へと向かって走っていった。
軍のジープは、開かれた門の間を通って進んでいった。基地の門を通って、眼の中に飛び込んで来た基地内の様子に進治と光太郎は驚いた。基地の中はまるで別世界であった。進治と光太郎がランチを食べていたレストランがあった街。デモの群衆が道路を埋め尽くしていた街。そこは、貧困を象徴するような建物が、灼熱の風に晒されている街であった。
一歩基地の中に入ると、眼に映るのは、近代的な建物であった。基地の中とは思えないような町並みが広がっていた。
軍のジープは、建てられたばかりの真新しいビルの前で止まった。ジープを運転していた兵士に誘導されて、進治と光太郎はビル内の廊下を進んでいった。
エレベーターに乗せられた進治と光太郎は五階で降ろされた。エレベーターの出入り口から出て、最初に見えた扉を兵士は開けた。進治と光太郎は指示されるままに部屋の中に入っていった。
部屋の中には、軍服を着た男と普段着の女がソファーに座っていた。軍服を着た男は軍の最高指揮官であり、普段着を着ている女は、ルスピアスであることが分かった。
「あなたがたにお願いしたいことがあってここにお連れしたのですが」
「私たちのことを知っていてここに連れてきたのですか」
最高指揮官の言葉に答えて光太郎が言った。
「あなたがたがこの国に来てからずっと、宿舎を監視していましたから。今日はずっとあなたたちを兵士が尾行していたはずです」
「お願いしたいこととは何ですか」
「私たちはあなたがたの会社から多額の資金援助を受けることになっていたのですが、それを打ち切りたいという連絡をあなたがたの会社から受けました。それはとても困ることです」
「会社の決定ですから、私たちの一存でどうこうなることではありません」
「今この部屋にいるルスピアスとあなたがたの命は、私の決定次第でどうにでもなります。この国の報道機関はすべて私の手中にあります。ルスピアスとあなたがたが今死んでも、その死因はなんとでも好きなように捏造することができます。あなたがたの命がいま危機に瀕していることを会社に切実に伝えれば、あなたがたの会社からの資金は今日にでもすぐに入金できるのではないですか」
「それではまるで身代金の要求じゃないですか」
「あなたがたに何と思われようとどうでもいいことです。ただ約束していたお金が入ればいいだけのことです。ここにあなたがたの会社とのホットラインの電話があります。いまから会社と連絡して直ぐに入金させてください。それが出来なければまずルスピアスから犠牲になっていただきます」
最高指揮官はルスピアスに銃を向けた。進治の眼が光りだした。最高指揮官がルスピアスに向けていた銃が、炎のように真っ赤に光りだした。銃は溶岩のように溶け出して、最高指揮官の手から流れ落ちた。最高指揮官の手は焼けただれた。焼けただれた手をおさえて大声をあげて喚いた。
進治の身体全体が光りだした。最高指揮官の身体が宙に浮かんだ。天井に身体が打つかる音がした。額から爪先まで天井に接触した身体は激しく震えた。身体の震えはますます激しくなっていった。身体の震えで衣服が破れる音がした。千切れた衣服の切れ端が天井から雨の雫のように床に落ちていった。
進治の身体から発せられていた光が消えると、最高指揮官の身体が床に打つかる音がした。床にうつ伏せになったままの最高指揮官の身体はしばらく激しく震えていた。震えがとまってから、何度か立ち上がろうとしたが、その度に躓いた。やっとのことで立ち上がってから、最高指揮官は部下の兵士たちに命じた。
「コイツラは一体何なんだ。忌々しい厄介払だ。ルスピアスをそいつの家に、この二人を会社の宿舎へ返してこい」
ルスピアスと進治と光太郎は、ビルの外に案内され、軍のジープに乗せられた。軍のジープはルピアスの家と進治と光太郎の宿舎へと向かって走っていった。
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