暗黒騎士と女奴隷 〜最低身分で見つけた幸せ〜

桜庭 依代(さくらば いよ)

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第二十四話 ユウレスカ視点

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 ──あれは夢だったのだろうか。

 朝ベッドで目を覚まして、ちょっと残念な気持ちになる。まあ、あんなに素敵なことが、現実に起こるはずないもんね。いやあ、いい夢を見た。だって、クラウス様がすっごくかっこよかった……!!

 部屋に一人きりなのをいいことに、顔を両手で覆ってベッドの上で悶える。私に向けられた、あの瞳の力強さといったら……!!仮面越しだというのに、しっかりと目が合っていた。

 突然のノックの音。どうぞ、と言うとシヴァンさんが顔を出した。

「おはよう、ユーリ。よく眠れたかい?」

 朝から淑女の部屋を訪ねるとは……と思ったけれど、どうやらもうお昼のようだ。

「おはようございます。……その呼び方は何ですか?」

「君は昨日、クラウスの婚約者になっただろう?それと同時に我が家の一員として国王様に認められたんだ。だから本物の家族になった証に、これからそう呼ぼうと思って」

 まさか、あの夢は現実なの……?
 昨夜パーティー会場で起こったあれこれが、全部。だとすると。

「……どこからがお兄様の計画ですか?」

 熱心な指導の元で、マナーの勉強も妹のフリも自然に行えるまでに訓練してきた。それがこんなことになるなんて。

「騙していてすまなかった。もう二度と君に無断でこんなことはしないと約束する。ユーリは私の大切な妹になるのだから」

 そんなに素直に謝られると、なんだか怒れない。なにより、昨晩から現実味がなさすぎて混乱しっぱなしだ。職業斡旋を頼んで貴族令嬢になるだなんて、予想もしていなかったから。

「言いたいことがありすぎて、何から言えばいいか……」

「昨日、クラウスと話はできたのかい?」

「少しだけ。謝罪ができてすっきりしました。気を遣ってくださってありがとうございます」

「それは良かった。あいつはなにか言っていた?」

「あまり時間もなかったので、何も聞けませんでした」

 謝罪に対して一言ももらえなかったことが、少し気にかかっていた。

「そうだったのか。君の話を聞いて、あいつはきっとすごく驚いたはずだ。それに今頃は、君を屋敷から追い出したことを後悔しているよ」

「……?私があの日したことについて、クラウス様は怒っていたんですよね?」

「いいや。君と約束したから、私は何も話していないし、知らなかったはずだよ?」

 ……なんだって。

「それじゃあ私はどうして屋敷を追い出されたんですか?」

「さあ、なんでかな」

 クラウス様は何も知らなかった。だとすると、私は謝罪と同時に、自らの罪をクラウス様に告白したことになる。

 は、恥ずかしすぎる……!

「今後どんな顔して会えばいいんですか……」

 羞恥心で人は死ぬんじゃないかと本気でおもう。

「大丈夫。婚約者になったのだから、ゆっくり話し合っていけばいい。……今ちょうどクラウスが訪ねてきたところだ」

 え!?

「私に用があって来たようだが、ユーリにも会いたいだろうと思って、呼びに来た。日があくと余計に会いづらくなるだろう?準備ができたら客間においで」

 そう言って、シヴァンさんは私の部屋を出ていった。



久しぶりの投稿です。
今後ともお楽しみいただけるように頑張っていきます。
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