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第二十二話 ユウレスカ視点
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あの人はなんだったんだ。
クラウス様と訪れた休憩室で、先程の出来事を思い返す。せっかくクラウス様が私を支えて歩いてくれていたのに、邪魔をしようとして。近衛だかなんだか知らないけれど、放っておいてほしい。
でもまあいい。気持ちを切り替えて、やることをやろう。この機会を逃してはいけない。
「クラウス様、先日は申し訳ありませんでした」
私に住処と美味しい食事を与えてくれたのに、大して役にも立てずに屋敷を去った。恩知らずにも程がある。別れた時に何も言えなかったことが、ずっと気になっていた。
「……君が謝ることなどない。こちらは命を救われたんだ。心から感謝している」
私がシヴァンさんに無理を言って看病させてもらっただけだ。そのせいで、屋敷の皆に迷惑をかけもした。……それに加えて。
「いいえ。不快な思いをさせてしまったのですから、謝らせてください。意識のない方に口付けるなんて……私が非常識でした」
ただ薬を飲ませたかったのなら、薬を布に含ませて口に突っ込めばよかったのだ。まあ、それも少々問題あるかもしれないけれど。
「奴隷の身でありながら許可なく主人に触れるなど、そもそも許されることではありません。クラウス様が優しくしてくださったから、私は勘違いして……いえ、甘えていたんです」
座ったままでは失礼か。私は立ち上がって「本当に申し訳ありませんでした」と頭を下げる。クラウス様は私の謝罪をどう受け止めるべきか悩んでいるようで、無言で立っていた。
──コンコン。
ノックの音がして、クラウス様が動き出した。私の向かい側のソファに腰掛けて、訪問者の入室を促す。
「二人ともここにいたのか」
現れたのはシヴァンさんだ。
「挨拶はもう済んだのか?それにしては早いな」
「急いで来たんだ。国王様に妹を王子の婚約者にしないかと打診されてね。どうやら一目惚れされたらしい」
ええ!?……今日の私は超絶美少女に変身させられているので、そういうこともあるのか。私は所詮偽物令嬢だというのに、どうすればいいんだ。
「それ、受けたのか?」
返答に困る私の代わりに、クラウス様が聞いてくれる。
「いいや。婚約が内定していると言って断ったよ」
そんな話は聞いたことがない。まさか、国王様に嘘を教えた……?
私の心の声が聞こえたかのように、シヴァンさんは続ける。
「心配ない。今から婚約してしまえば、嘘にはならない。……そこでクラウス。ちょっと頼まれてくれないか」
「……俺には関係のない話のようだが」
「大いに関係がある。その婚約者は誰かと問われたから、クラウス。お前だと答えた」
「は!?」
「今から共に顔を見せろとの仰せだ。そうすればその場で婚約を認めてくれると。だから私は二人を呼びに来た」
ちょちょ、シヴァンさん!?何をしちゃってるんですか?私はともかく、クラウス様の意向を無視してこんなことをするなんて……!
「勝手に決めて申し訳なかったが、お前たちなら大丈夫だろう。それとも、二人は嫌なのか?……クラウスは?」
「俺は……構わないが」
「ユウレスカは?」
「……私も嫌ではありません」
むしろ嬉しいです!!とか言っちゃダメな雰囲気なので自重する。そして、冷静になって考えてみる。今日が過ぎてしまえば、私は貴族令嬢でもクラウス様の婚約者でもなくなる。だから、このハプニングを喜んでも悲しんでも、無意味。これは私の人生ではないのだ──。
そう思っていた。満足気に頷くシヴァンさんに、「妹さんは納得しているのですか?」と耳打ちして、「問題ない。私の妹は君だけだから」と言われるまでは。
シヴァンさんの計画的犯行です。
クラウス様と訪れた休憩室で、先程の出来事を思い返す。せっかくクラウス様が私を支えて歩いてくれていたのに、邪魔をしようとして。近衛だかなんだか知らないけれど、放っておいてほしい。
でもまあいい。気持ちを切り替えて、やることをやろう。この機会を逃してはいけない。
「クラウス様、先日は申し訳ありませんでした」
私に住処と美味しい食事を与えてくれたのに、大して役にも立てずに屋敷を去った。恩知らずにも程がある。別れた時に何も言えなかったことが、ずっと気になっていた。
「……君が謝ることなどない。こちらは命を救われたんだ。心から感謝している」
私がシヴァンさんに無理を言って看病させてもらっただけだ。そのせいで、屋敷の皆に迷惑をかけもした。……それに加えて。
「いいえ。不快な思いをさせてしまったのですから、謝らせてください。意識のない方に口付けるなんて……私が非常識でした」
ただ薬を飲ませたかったのなら、薬を布に含ませて口に突っ込めばよかったのだ。まあ、それも少々問題あるかもしれないけれど。
「奴隷の身でありながら許可なく主人に触れるなど、そもそも許されることではありません。クラウス様が優しくしてくださったから、私は勘違いして……いえ、甘えていたんです」
座ったままでは失礼か。私は立ち上がって「本当に申し訳ありませんでした」と頭を下げる。クラウス様は私の謝罪をどう受け止めるべきか悩んでいるようで、無言で立っていた。
──コンコン。
ノックの音がして、クラウス様が動き出した。私の向かい側のソファに腰掛けて、訪問者の入室を促す。
「二人ともここにいたのか」
現れたのはシヴァンさんだ。
「挨拶はもう済んだのか?それにしては早いな」
「急いで来たんだ。国王様に妹を王子の婚約者にしないかと打診されてね。どうやら一目惚れされたらしい」
ええ!?……今日の私は超絶美少女に変身させられているので、そういうこともあるのか。私は所詮偽物令嬢だというのに、どうすればいいんだ。
「それ、受けたのか?」
返答に困る私の代わりに、クラウス様が聞いてくれる。
「いいや。婚約が内定していると言って断ったよ」
そんな話は聞いたことがない。まさか、国王様に嘘を教えた……?
私の心の声が聞こえたかのように、シヴァンさんは続ける。
「心配ない。今から婚約してしまえば、嘘にはならない。……そこでクラウス。ちょっと頼まれてくれないか」
「……俺には関係のない話のようだが」
「大いに関係がある。その婚約者は誰かと問われたから、クラウス。お前だと答えた」
「は!?」
「今から共に顔を見せろとの仰せだ。そうすればその場で婚約を認めてくれると。だから私は二人を呼びに来た」
ちょちょ、シヴァンさん!?何をしちゃってるんですか?私はともかく、クラウス様の意向を無視してこんなことをするなんて……!
「勝手に決めて申し訳なかったが、お前たちなら大丈夫だろう。それとも、二人は嫌なのか?……クラウスは?」
「俺は……構わないが」
「ユウレスカは?」
「……私も嫌ではありません」
むしろ嬉しいです!!とか言っちゃダメな雰囲気なので自重する。そして、冷静になって考えてみる。今日が過ぎてしまえば、私は貴族令嬢でもクラウス様の婚約者でもなくなる。だから、このハプニングを喜んでも悲しんでも、無意味。これは私の人生ではないのだ──。
そう思っていた。満足気に頷くシヴァンさんに、「妹さんは納得しているのですか?」と耳打ちして、「問題ない。私の妹は君だけだから」と言われるまでは。
シヴァンさんの計画的犯行です。
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