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#15
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口の中に入ってきた雨のしずくを、ごくり、飲み干してしまった。
視界の隅にに動くものがあって、恐る恐る振り向く。書店のショーウィンドウに、自分が写っている。水滴と埃とで汚れたガラスでは、顔すら判別できないほど、歪んだ像になっている。
とはいえ、さすがに自分がふたりになることはない。
立ち止まったわたしのすぐ後で、もうひとつの人影も立ち止まる。
短い髪、わたしより少し低い身長で猫背の女の子。うつむいたまま、何も言わず、動かない。
走った。靴底が雨で滑るが、転んでいる余裕なんかない。全力疾走、悲鳴をあげるだけの酸素もないが、恐怖に負けて振り返る。雨でけぶる道に、ばしゃんばしゃんと水しぶきだけが飛ぶ。見えない誰かが追いかけてくる。
わずかに行き交う通行人が、車道を走り抜けるわたしをちらりと見る。みんな、あれが見えてないのか、わたしの方を見て、怪訝で気の毒そうな顔をする。背後のあれは、実体じゃないということ?
(やだ、やだ、やだやだやだ……!)
涙がじわじわ浮いてきた。死んだ両親のためにも簡単には立ち止まれない。力があるなら相手をねじ伏せてやるところでも、わたしは無力だが、無鉄砲じゃない。いや、鉄砲は持っているけれど、わたしの腕が通用するとは思えない。
息があがり、心臓がぎゅっと苦しくなる。角を曲がればアパートだが中には入れないし、追いつかれないまま階段を登りきる自信もない。半泣きのまま、通り過ぎる。
ごぼごぼと低い水音が聞こえてきた。徐々に大きくなり、通行人たちが、わたしではなく、そちらに注目している。
嫌な予感がする。それはすぐ確信に変わる。
まろぶようにして方向転換するとき、視界の隅に吹き飛ぶ排水溝の蓋が映った。
まさしく沸騰した鍋の蓋だ。汚水が分厚いコンクリートの蓋を吹き飛ばし、中から幾本もの腕が歓迎のアーチを作る。
歩いていたおじさんが、悲鳴を上げてひっくり返り、その頭上を飛び越えわたしはひた走っていた。道の排水溝という排水溝がそんな調子なもんだから、あちこちが大騒ぎになっている。わたしのせいで、街は大混乱だ。どうにかしなきゃ。
逃げ込めるところは、思いつく限り、一箇所だ。南区の教会。だが、あそこにいるのは年老いた神父ひとり。逃げ込んで彼に何かあったら。
(そんなことを言っている場合じゃない!)
ユリアンも、クラウディオも何かあれば教会を頼れと言っていた。
わらにもすがる気持ちで、教会に向かって走る。
息が喘ぎ声に変わる頃、ぼろい教会の屋根がようやく見えた。
ラストスパートをかける。右足のスニーカーはどこかにいってしまった。
思い切り踏み込んだ足元に、マンホールがあった。躊躇わず通過しようとしてわたしはもんどりうって左肘から転がった。アスファルトに体中をぶつけ、あちこちがすりむけて焼け付くような痛みになる。
直下型地震、震度六。その局地的な地揺れで立ち上がることすらできない。
マンホールが雨の飛沫を上げて、空へと突き抜ける。
巨大な樹のオブジェができた。枝はうごめく腕たち。昔、千住観音像の写真を見た。あれの地獄版だ。
鼻がもげるような悪臭。汚水がしぶきと波になり押し寄せる。同時に、波濤のように腕の集合体が殺到した。擦りむいた腕で必死に顔をかばう。
「伏せろ!」
声が響いた。
雷が光る。太陽の見えない雨天で、閃き。
雨雲より黒い衣を翻し、その人物は刃を腕の樹に突き立てた。
『きゃ・あ・あ・あ・あ・あ・あ・あ・あ!』
耳をつんざく絶叫がこだます。なます切りにされた腕のかけらがびちびち地面で跳ねる。
それを踏みにじる、八センチのウェッジソール。
黒い尼僧服を纏ったあの時の美女――レオが、右の手にそろえた双刃を持ち、肉の樹の前に立ちふさがった。
振り返ったアンバーの瞳がわたしを射抜く。
「娘、じっとしてろ!」
彼(彼女?)は再び押し寄せた腕を切り伏せた。びちゃびちゃと道に落ちた欠片が踏みつけられ、淡く光の粉を振りまき消えた。
見覚えのある発光。同化だ。
レオは同化を駆使して、相手の力を弱めるつもりだ。同化しきれなかった部分は、悪臭を放ちながら赤黒い血溜りになる。
横合いから突き出された一撃に、レオの双刃がぶつかる。だが、たたき落とすまでに至らず、槍のような貫手は彼の眼前まで突き進む。
「危ない!」
わたしの忠告を聞くまでもなく、長い脚が空を切り裂く回転蹴りを見舞わせた。長く黒いスカートの裾が美しい円を描く。……多分、向こうからは中身、見えてる。
レオの踵が触れた箇所から光がこぼれて、狭間の者の体は引き裂かれていく。
「今のうちに行け!」
ユリアン側と認識されているだろうわたしを、どうしてこんな危険を冒して、助けてくれるのかわからないが、今はとにかく感謝しかない。
「ありがとうっ」
わたしは戦場を駆け抜け、体当たりで扉をぶちあけて中に転がり込んだ。
荒い息をしながら顔を上げるとはたと目があった。バケツを抱えた老神父だった。
「おやまあ、イノリさん、お久しぶりです。しかし、なんという格好で。今タオルを持ってきますよ。シャワーも必要ですね、お待ち下さい」
「す、すみません臭くて」
汚水まみれのわたしからは、きっと犬の糞のような臭いがしていることだろう。自分の鼻はとっくにバカになっている。
神父は高い天井から落ちてくる雨漏りの水滴を受け止める為にバケツを置いて、笑みを崩さずに奥に消えていった。
わたしは下手に動くと汚水を滴らせてしまうので、その場で立ち止まる。
壁一つ挟んだ屋内の静かなこと。外の死闘がまるで夢のようだ。
丸投げしてきてしまったが、レオは大丈夫なのだろうか。
扉の向こうからは、雨音が途切れなく聞こえてくる。
少し不安に思って、窓から様子を見ようか思案していると、突然、天井からガンガンと何かを打ちつける音がした。
まさか、あいつらが? わたしはびくりと肩を震わせたが、すぐに雨漏りの水滴がバケツの底を叩くリズミカルな音が止まったことに気付いた。
扉が開いた。げんのうを手にしたずぶ濡れのレオだった。
「なんだ、まだそんなところに。早く着替えないと風邪を引くぞ」
「シスター、屋根の修繕ありがとうございます、雨の中危ないのに申し訳ない」
「いや、あのままだと屋内まで被害甚大だった」
ちょうど神父様がタオルを持って戻ってきてくれたところだった。レオはあたりまえのように神父様と言葉を交わし、さっきの狭間の者の襲撃なんて忘れたような顔だ。どうやら、無事のようだと、こっそりわたしは胸をなでおろした。助けてくれるのはありがたいが、自分のために怪我でもされたら困る。
神父様が差し出した一枚しかないタオルを、まずレオが受け取ってざっと体を拭き、続いてわたしが汚水を拭う。
その間、わたしは何度もレオの方をちらちら見てしまった。
困惑しているのを感じ取ったのか、神父が説明してくれる。
「彼女はもうずっとここで奉仕してくださっているシスターです。名前はマルツィア」
「ドナトーニ神父。この娘はおそらく私の素性を知っている」
わたしがこくりと頷くと、老神父もこくこく頷いた。
「そうですか。それはそれは。イノリさん、彼女、いや彼とは初対面ではないのですね」
「はい。以前、ちょっと。……その、マルツィアというのは?」
「彼女の名だ」
レオは、自分のデコルテを軽く叩いた。
「だが、お前は私の本当の名前も知っているんだろ」
暗に、ユリアンに聞いただろうと問われ、迷ったけど、結局うなずいた。不服そうに、レオは小さく鼻を鳴らした。だが、それだけ。
「あの、レオがここにいること、ユリアンは……?」
ユリアンがドナトーニ神父とそれなりに親しいとなると、この教会でユリアンとレオが鉢合わせすることだってあったのではなかろうか。
「もちろん、ご存じですよ。そうそう、クラウディオさんも、シスターと顔は合わせていますよ。ただ、以前の姿のときですが」
「クラウディオ? 誰ですか?」
「あ、わたしの保護者です。ローマで一緒にいた、強面の男の人」
「ああ、あの……」
「おや、シスター、ローマでイノリさんたちとお会いになったんですか?」
「え、ええ、まあ」
ドナトーニ神父は、ローマでクラウディオも巻き込んで大騒動になったことは知らないみたいだ。わたしが無言で問うと、レオも無言ながら必死の形相で言うなと訴えてくるので、心優しいわたしはとりあえず黙っていてやることにした。
「クラウディオさんも、改めてご挨拶した時に、レオさんの姿が変わっていて驚くかもしれませんが、最近はみなさんそういうことにも寛容でしょう?」
「……私は性転換したわけでも整形したわけでもないんだが」
いまいち、ドナトーニ神父とレオの関係性が見えない。が、レオが今は黙っていてくれと懇願する目をしていたので、やはり飲み込んだ。あとで聞かせてもらいたい。
「ユリアンとあなたがここで鉢合わせしたら血の雨が降るんじゃないの」
「まさか。あいつだって聖職者のはしくれ。聖域での戦闘行為は避けるだろう」
なんか今、聞き捨てならない言葉が飛び出した。
「ほら、イノリさん。そんな格好でいると、風邪を引きますよ」
しかし、問いただす前に、わたしは神父に奥の古ぼけたシャワー室に連行されたのだった。
視界の隅にに動くものがあって、恐る恐る振り向く。書店のショーウィンドウに、自分が写っている。水滴と埃とで汚れたガラスでは、顔すら判別できないほど、歪んだ像になっている。
とはいえ、さすがに自分がふたりになることはない。
立ち止まったわたしのすぐ後で、もうひとつの人影も立ち止まる。
短い髪、わたしより少し低い身長で猫背の女の子。うつむいたまま、何も言わず、動かない。
走った。靴底が雨で滑るが、転んでいる余裕なんかない。全力疾走、悲鳴をあげるだけの酸素もないが、恐怖に負けて振り返る。雨でけぶる道に、ばしゃんばしゃんと水しぶきだけが飛ぶ。見えない誰かが追いかけてくる。
わずかに行き交う通行人が、車道を走り抜けるわたしをちらりと見る。みんな、あれが見えてないのか、わたしの方を見て、怪訝で気の毒そうな顔をする。背後のあれは、実体じゃないということ?
(やだ、やだ、やだやだやだ……!)
涙がじわじわ浮いてきた。死んだ両親のためにも簡単には立ち止まれない。力があるなら相手をねじ伏せてやるところでも、わたしは無力だが、無鉄砲じゃない。いや、鉄砲は持っているけれど、わたしの腕が通用するとは思えない。
息があがり、心臓がぎゅっと苦しくなる。角を曲がればアパートだが中には入れないし、追いつかれないまま階段を登りきる自信もない。半泣きのまま、通り過ぎる。
ごぼごぼと低い水音が聞こえてきた。徐々に大きくなり、通行人たちが、わたしではなく、そちらに注目している。
嫌な予感がする。それはすぐ確信に変わる。
まろぶようにして方向転換するとき、視界の隅に吹き飛ぶ排水溝の蓋が映った。
まさしく沸騰した鍋の蓋だ。汚水が分厚いコンクリートの蓋を吹き飛ばし、中から幾本もの腕が歓迎のアーチを作る。
歩いていたおじさんが、悲鳴を上げてひっくり返り、その頭上を飛び越えわたしはひた走っていた。道の排水溝という排水溝がそんな調子なもんだから、あちこちが大騒ぎになっている。わたしのせいで、街は大混乱だ。どうにかしなきゃ。
逃げ込めるところは、思いつく限り、一箇所だ。南区の教会。だが、あそこにいるのは年老いた神父ひとり。逃げ込んで彼に何かあったら。
(そんなことを言っている場合じゃない!)
ユリアンも、クラウディオも何かあれば教会を頼れと言っていた。
わらにもすがる気持ちで、教会に向かって走る。
息が喘ぎ声に変わる頃、ぼろい教会の屋根がようやく見えた。
ラストスパートをかける。右足のスニーカーはどこかにいってしまった。
思い切り踏み込んだ足元に、マンホールがあった。躊躇わず通過しようとしてわたしはもんどりうって左肘から転がった。アスファルトに体中をぶつけ、あちこちがすりむけて焼け付くような痛みになる。
直下型地震、震度六。その局地的な地揺れで立ち上がることすらできない。
マンホールが雨の飛沫を上げて、空へと突き抜ける。
巨大な樹のオブジェができた。枝はうごめく腕たち。昔、千住観音像の写真を見た。あれの地獄版だ。
鼻がもげるような悪臭。汚水がしぶきと波になり押し寄せる。同時に、波濤のように腕の集合体が殺到した。擦りむいた腕で必死に顔をかばう。
「伏せろ!」
声が響いた。
雷が光る。太陽の見えない雨天で、閃き。
雨雲より黒い衣を翻し、その人物は刃を腕の樹に突き立てた。
『きゃ・あ・あ・あ・あ・あ・あ・あ・あ!』
耳をつんざく絶叫がこだます。なます切りにされた腕のかけらがびちびち地面で跳ねる。
それを踏みにじる、八センチのウェッジソール。
黒い尼僧服を纏ったあの時の美女――レオが、右の手にそろえた双刃を持ち、肉の樹の前に立ちふさがった。
振り返ったアンバーの瞳がわたしを射抜く。
「娘、じっとしてろ!」
彼(彼女?)は再び押し寄せた腕を切り伏せた。びちゃびちゃと道に落ちた欠片が踏みつけられ、淡く光の粉を振りまき消えた。
見覚えのある発光。同化だ。
レオは同化を駆使して、相手の力を弱めるつもりだ。同化しきれなかった部分は、悪臭を放ちながら赤黒い血溜りになる。
横合いから突き出された一撃に、レオの双刃がぶつかる。だが、たたき落とすまでに至らず、槍のような貫手は彼の眼前まで突き進む。
「危ない!」
わたしの忠告を聞くまでもなく、長い脚が空を切り裂く回転蹴りを見舞わせた。長く黒いスカートの裾が美しい円を描く。……多分、向こうからは中身、見えてる。
レオの踵が触れた箇所から光がこぼれて、狭間の者の体は引き裂かれていく。
「今のうちに行け!」
ユリアン側と認識されているだろうわたしを、どうしてこんな危険を冒して、助けてくれるのかわからないが、今はとにかく感謝しかない。
「ありがとうっ」
わたしは戦場を駆け抜け、体当たりで扉をぶちあけて中に転がり込んだ。
荒い息をしながら顔を上げるとはたと目があった。バケツを抱えた老神父だった。
「おやまあ、イノリさん、お久しぶりです。しかし、なんという格好で。今タオルを持ってきますよ。シャワーも必要ですね、お待ち下さい」
「す、すみません臭くて」
汚水まみれのわたしからは、きっと犬の糞のような臭いがしていることだろう。自分の鼻はとっくにバカになっている。
神父は高い天井から落ちてくる雨漏りの水滴を受け止める為にバケツを置いて、笑みを崩さずに奥に消えていった。
わたしは下手に動くと汚水を滴らせてしまうので、その場で立ち止まる。
壁一つ挟んだ屋内の静かなこと。外の死闘がまるで夢のようだ。
丸投げしてきてしまったが、レオは大丈夫なのだろうか。
扉の向こうからは、雨音が途切れなく聞こえてくる。
少し不安に思って、窓から様子を見ようか思案していると、突然、天井からガンガンと何かを打ちつける音がした。
まさか、あいつらが? わたしはびくりと肩を震わせたが、すぐに雨漏りの水滴がバケツの底を叩くリズミカルな音が止まったことに気付いた。
扉が開いた。げんのうを手にしたずぶ濡れのレオだった。
「なんだ、まだそんなところに。早く着替えないと風邪を引くぞ」
「シスター、屋根の修繕ありがとうございます、雨の中危ないのに申し訳ない」
「いや、あのままだと屋内まで被害甚大だった」
ちょうど神父様がタオルを持って戻ってきてくれたところだった。レオはあたりまえのように神父様と言葉を交わし、さっきの狭間の者の襲撃なんて忘れたような顔だ。どうやら、無事のようだと、こっそりわたしは胸をなでおろした。助けてくれるのはありがたいが、自分のために怪我でもされたら困る。
神父様が差し出した一枚しかないタオルを、まずレオが受け取ってざっと体を拭き、続いてわたしが汚水を拭う。
その間、わたしは何度もレオの方をちらちら見てしまった。
困惑しているのを感じ取ったのか、神父が説明してくれる。
「彼女はもうずっとここで奉仕してくださっているシスターです。名前はマルツィア」
「ドナトーニ神父。この娘はおそらく私の素性を知っている」
わたしがこくりと頷くと、老神父もこくこく頷いた。
「そうですか。それはそれは。イノリさん、彼女、いや彼とは初対面ではないのですね」
「はい。以前、ちょっと。……その、マルツィアというのは?」
「彼女の名だ」
レオは、自分のデコルテを軽く叩いた。
「だが、お前は私の本当の名前も知っているんだろ」
暗に、ユリアンに聞いただろうと問われ、迷ったけど、結局うなずいた。不服そうに、レオは小さく鼻を鳴らした。だが、それだけ。
「あの、レオがここにいること、ユリアンは……?」
ユリアンがドナトーニ神父とそれなりに親しいとなると、この教会でユリアンとレオが鉢合わせすることだってあったのではなかろうか。
「もちろん、ご存じですよ。そうそう、クラウディオさんも、シスターと顔は合わせていますよ。ただ、以前の姿のときですが」
「クラウディオ? 誰ですか?」
「あ、わたしの保護者です。ローマで一緒にいた、強面の男の人」
「ああ、あの……」
「おや、シスター、ローマでイノリさんたちとお会いになったんですか?」
「え、ええ、まあ」
ドナトーニ神父は、ローマでクラウディオも巻き込んで大騒動になったことは知らないみたいだ。わたしが無言で問うと、レオも無言ながら必死の形相で言うなと訴えてくるので、心優しいわたしはとりあえず黙っていてやることにした。
「クラウディオさんも、改めてご挨拶した時に、レオさんの姿が変わっていて驚くかもしれませんが、最近はみなさんそういうことにも寛容でしょう?」
「……私は性転換したわけでも整形したわけでもないんだが」
いまいち、ドナトーニ神父とレオの関係性が見えない。が、レオが今は黙っていてくれと懇願する目をしていたので、やはり飲み込んだ。あとで聞かせてもらいたい。
「ユリアンとあなたがここで鉢合わせしたら血の雨が降るんじゃないの」
「まさか。あいつだって聖職者のはしくれ。聖域での戦闘行為は避けるだろう」
なんか今、聞き捨てならない言葉が飛び出した。
「ほら、イノリさん。そんな格好でいると、風邪を引きますよ」
しかし、問いただす前に、わたしは神父に奥の古ぼけたシャワー室に連行されたのだった。
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