【R18】Overkilled me

薊野ざわり

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完結1周年番外編

Lovers' words 3 ■

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 リアンの寝室には、セミダブルのベッドと本棚一台しかない。そのベッドの端に並んで腰を降ろし、服を脱ぐ。彼とセックスするのはもう何度目かもわからない。なのに、こうしてあらたまってその準備をすると緊張した。
 すぐに裸になったリアンが、もたもたとナイトウェアのボタンを外す私のことを見つめている。視線がちくちくして、指がなめらかに動かない。

 完全に裸になると、頬を手で包まれ顔を上に向けられた。ちょっとカサついている唇が、私の唇に押し当てられる。目を閉じ、その柔らかさに集中した。少し冷えている。唇を割って互いに舌を絡めるころには、違和感はなくなっていた。
 キスは深く穏やか。舌で口の中をあちこち慰め合う。

 リアンの乾いた熱い手は頬から耳たぶ、首筋をゆっくり撫でてさらに下に降り、私の裸の肩で落ち着いた。秋口、寒くはないが室温と手の温度にはずいぶん差があって、ぬるいお風呂に浸かって筋肉がじんわりほぐれるように、緊張が解けていった。
 抱きしめてくれるかな、と期待する。それを読みとったようなタイミングで、背中に手を回され引き寄せられて、歓喜して抱擁を受け入れた。ベッドに登って、リアンの脚の間に腰を下ろし、彼の立てた左膝に寄り掛かる。肩を抱かれるような傾いだ体勢も、左腕で背中を支えられているから苦しくなかった。

 胸を大きくゆっくり揉まれて、優しい快感がやってくる。合わせた唇の隙間から、ため息が漏れた。硬い皮膚の手のひらに乳首がこすれている。気持ちよくてもどかしい。もっと強くしてくれないかしら。そうしてほしい。でもこのもどかしさももっと楽しみたい。

 最近、なんだか体型を気にしているらしい彼は、それでもまだちゃんと腹筋の陰影をキープしていた。指先を滑らせると、その腹筋がぎゅっとなるのが面白くて好き。
 引き締まっている腰をなでて、ゆるく立ち上がっている彼の陰茎に触れた。注意しながら、茎の部分をゆっくり撫でる。温かい。包み込むようにして擦ってあげると、少しずつ体積が増してきた。私の手で彼が感じてくれている。それだけで満たされてしまう。口でしてあげたい。でも、キスが気持ち良くて、止めたくない。

 ふと唇が離れてがっかりした私をなだめるように、首筋にキスが降ってきた。ぞくりと背筋が粟立つ。生暖かい吐息が、首筋の産毛を逆立たせた。追い打ちのようにきゅっと乳首を摘まれる。背中から回された手に弄ばれて、臍の下がきゅうっと切なく疼いてしまう。
 もう片方の手で左脚を倒された。さらに右膝を押しのけるようにして開かれた場所にさっそく手が滑り込んでくる。

「ふ……ぁ……」

 手のひらでそっと粘膜を撫でられた。触れるか触れないかの曖昧さに、腰の奥がぱちぱち帯電する。長い指二本で割れ目を左右に開かれ、くちゅりと小さな水音がたった。外気に触れるその部分がじんと疼く。

 手の中のリアンの性器は準備ができているように思えた。本当はもう、前戯を切り上げて早く貫いてほしかった。満たしてほしい。愛されていると体感させて。今でも十分受け取っているというのに、呆れるくらい貪欲にそう思う。

「リアン、……お願い、……きて」
「ちゃんと慣らさないとあとが辛いぞ」

 こんなときにそんな気遣い、ただのお預けだ。ひどい。恨みがましく睨んだつもりなのに、額にキスされて流されてしまう。

「ん……、んっ……」

 硬い指がおもむろに膣に入ってきて、震えが走った。様子を見るような遠慮がちな抜き差しが、奥のほうにじんとした痺れを生む。中の一点を軽く押されるのに合わせて乳首を引っかかれると、腰が揺れてしまった。背骨を駆け上がる甘い疼き。突き上げるような激しいものじゃなくて、体の芯をとろ火で焦がすような、じれったさと重さがある。

 ごくり、と喉が鳴った。なぜか声を上げるより恥ずかしい。かあっと背中が熱くなる。じっと見られている事に気付き、プレッシャーに耐えられなくて、視線を逸らした。

「わっ」

 急にふくらはぎを掴まれ高く持ち上げられて、背中からベッドに放り出された。リアンが脚の間に身体を割り込ませてくる。正面から秘部を見つめられ、いたたまれず顔を手で覆うと、右の太ももの際どいところにちゅく、と吸い付かれた。軽い痛みがむずがゆさを連れてくる。

「やだ、それ、やめて」
「恥ずかしいのか?」
「わかってるなら指摘しないで」
「今日は恥ずかしがらないでいいだろ」

 いつからそのルールが採用になったんだろう。しっかりノーと言わなかった少し前の自分を引っ叩きたい。
 太ももの筋に沿って、リアンは好き勝手に唇を落とし、皮膚を舐める。鼠径部からさらに内側に寄ってきて、恥丘のあたりまで。次はどこにキスされるの。
 吐息が太ももや敏感な部分の表皮をかすめるだけで、膣がぎゅうっと緊張して中の指を締め付けてしまう。その指が動くたびに、くちゅくちゅいやらしい音がしてどれだけ自分が興奮しているのか思い知らされた。頭の奥がぬるりと蕩けていくような錯覚に襲われる。気持ちいい。

「……ぁっ、あっ、やっ」
「嫌だったら蹴っていいぞ」

 そんなこと言われても、足蹴になんかできない。こういうときに意地悪なことをするのはやめてほしい。顔から手を退かして睨んだ。熱がこもったリアンの目と視線があった。鼠径部に口付けながらも、彼はじっとこちらを見つめている。結果として自分の首を締めてしまったらしい。視線に犯される。脚がびくりと跳ね、つま先まで力が入ってしまった。下腹に溜まった快楽の熱が、間もなく弾ける予感がある。

「ミシカ、膝を抱えて」

 ぐい、と脚を胸につくほどあげられた。だめなのに、こんな格好。でも、薄明かりで灰色に光る緑の目でじっと見つめられると、従ってしまう。早く、この気持ちよくて苦しい緊張状態から解放してほしい。

 持ち上げた私の腿に舌を這わせながら、リアンは指の抽挿を速めた。もう片方の手で、私の硬く尖った芯の部分に、蜜を絡めて優しく撫でる。
 そこをいじめられる鋭い快感と、中を暴かれる重くて怠い快感に私は責め立てられた。目の奥に白い光が飛ぶ。

「あっ、だ……めぇ……っ! や、っあ!」
「本気で嫌だったら逃げられるだろ」
「そん、なっ……ない、あっんっ、やめ……」
「やめない。こうして俺の愛撫を受け入れて、恥ずかしがりながら気持ち良さそうにしてるミシカをもっと見たい」
「なに……ぃっ、て、あっ、あっ、……あっ!」

 のしかかるようにしてリアンが私の耳に唇を寄せてきた。

「君がいじらしくてそそられるって話をしてる」
「んっ……う、っあ! ひぁ、あああ」

 低くかすれた声で囁かれ、耳朶を甘噛みされて、断崖の端になんとか踏みとどまっていた私は墜落した。それまでじっくり堆積していたものが、堰を切り全身に散っていく。
 背中を駆け上がる甘い波に、溺れないように息を吐くので精一杯だった。その必死に酸素を取り込む唇を、唇で塞がれた。

「……んむ……んん……」

 さっきくれた優しいものとはまったく違う、蹂躙するような激しく息苦しいキス。
 まだ膝を抱えた姿勢の私の膣口に、硬いものが押し当てられた。そのままそれはぬるりと侵入してくる。

「っ、……あぅッ……」

 十分潤っていた私のそこは、与えられたものをちゃんと飲み込めたものの、指とは違う質量と熱さで圧迫感を訴える。馴染む前にずんと奥を突かれ、声も出せずに喘いだ。苦しさが、すぐに熱い疼きに変わる。シーツにしがみついて、衝撃に耐えた。

 私の膝を掴んで、リアンが腰をぶつけてくる。薄く開いた唇からため息に似た吐息をもらして。その姿に、穿たれている部分がきゅうっと疼いてしまう。

「ん、あっ……、きもち、い……! り、あ……んっ、キス……ほし……ぃっ」

 腕を掴まれ、強引に上半身を起こされた。結合がいっそう深まり身を捩る。彼の太ももを跨いだ状態で下から突き上げられた。声を上げる間もなく唇を唇で塞がれる。行き場のない悲鳴が、鼻から抜ける高い声になった。うまく息ができない。顔を背けようとしたら、ぐいと顎を掴まれて固定され口の中を執拗にさぐられた。飲み込みきれなかった唾液が唇の端からこぼれても、口内への愛撫はやまない。流石に辛くなってリアンの肩に手を突っぱると、ようやく解放された。
 ほっとする間もなく、ぐらりと彼は後ろに倒れ、私もバランスを崩して道連れになった。硬くて柔らかい胸板に頬がぶつかる。抗議しようとリアンの胸に手を突いて上半身を起こしたが、突き上げられ、無様に悲鳴をあげる結果に終わった。

「いやっ、ん……! やぁ」
「その声でいやだなんて、ねだってるようにしか思えないぞ」
「ちが、うっ、あっ……、だめっ」
「さっきは欲しがってたのに、だめなのか?」
「そうじゃ、なっ、ああぁッ! も、……だめ、なの……っ」

 お腹の下がまた切なくなってきて、限界が近い。お尻を掴まれて乱暴に揉みしだかれる。首筋をべろりと舐めあげられると、太ももに力が入って、背が勝手にしなった。

「っあ……!」

 顎が上がってしまう。頭が真っ白になって、また訪れた絶頂の波に全身を甘く苛まれながら、私は脱力してうつ伏した。リアンの硬い胸の上で、乱れた呼吸を繰り返す。
 髪をかきあげられ、押しつぶしている胸の横をやわやわと揉まれた。こそばゆい。

「ん、……もう少し、優しくして……」
「これ以上?」

 睨んだらくつくつ笑われた。額に汗ではりついた髪を手の甲で払って、口付けてくれたのは罪滅ぼしのつもりなんだろうか。
 ずるりと、まだ硬度を失ってない彼のものが抜けていき、またぞくぞくと官能の熱が腰の奥で渦巻きだす。

 後ろを向かされ、お尻を突き出すように腰を掴まれた。硬いものが入ってくる。気持ちいいところに当たって、その快感に息をついて耐えようとする。肩を支えられてベッドにぺたんと身体を伏せると、リアンがのしかかってきた。ちょっと重いけれど、密着した背中から彼の胸の熱さが伝わってくるのは好き。シーツを掴む私の左手の指の隙間に、上から節くれだった太くて長い指が挿し込まれてぎゅっと握り込まれた。

 リアンは右肘を突いて体重を支えながら、私の耳の裏に舌を這わせた。耳は弱いから止めて。すぐに達してしまうから。でも言ったらよけいにされそうで、言い出せない。鳥肌を立てながら、リアンの吐息が離れていくのを待つ――ああでもまた気持ちよくなってきてしまった。
 小さな動きで中を押される。密着しているお尻と彼の腰の間でわずかな水音がした。
 
「……ん、……あ……」

 ため息が出てしまう。さっき達したばかりのそこをリアンのものが行き来するたび下腹が切なく疼く。

「本音を言えば」
「っ……!」

 耳の至近距離でした低い声で、さあっと快感を含んだ寒気が背中に走った。

「どこの誰相手でも、君とこんなことをしたのかと思うと、憎らしくなる。たとえ俺と同じ名前、同じ顔の人間でもな。このまま永遠にこうして君のことをここにつなぎとめておきたい」

 組み合わせた指が、ぎゅっと握られた。

「ごめ、……なさいっ、……! んんぅ」
「でも、君が一人で辛い思いをするのも嫌なんだ。だからせめて、俺といるときは、しっかり寄りかかってくれ」

 ずるい。追い詰めておきながら逃げ道を残して、私が自分を好きになるように仕向けてるの?
 
 リアンは身を起こし、私の肩を掴んで仰向けにひっくり返した。覆いかぶさってくる彼の背に手を回し、近付いた唇に自分から口付けをする。唇の隙間に舌を這わせ、迎え入れてもらう。

 ごつごつしたこの背中が好きだ。何度も私を背負ってくれた。でも、死に至る怪我をしたときのリアンを思い出させもする。だからたまに抱き合っている最中、複雑な気持ちになる。

 奥を突かれながら、できる限りでその背中を撫でる。近すぎてリアンの顔がよく見えない。

「ミシカ」

 キスの合間に私を呼んでくれた声は、切なくて。私は脚を彼の腰に絡めた。もっと深く繋がりたい。離したくない。このまま溶け合って二度と分かたれないようにして。

「……好き、リアン、もっと……して」
 
 一番深くまで穿って、この場につなぎとめてほしい。

「ミシカ、愛してる」

 シンプルな言葉が胸に凶器のように刺さって、止めることもできなくて涙がこぼれた。
 抽挿が速まり、奥に叩きつけるようになる。必死にしがみつく私の背中にリアンの腕が回り、ぎゅっと抱きしめられた。
 口付けを交わして、互いを離さないように拘束しながら、二人で絶頂を迎えた。
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