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本編
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きっともう、あの三人は車でこのビルを脱出したことだろう。
私は手と顔を洗い、口を濯ぐ。いつまでたっても鉄臭さが口内に残っている気がして、舌で頬の内側を探ってみたら切れていた。怪我に気付くととたんに痛みが存在を主張しはじめる。
鏡に映る自分は、ちょっと前に鏡を見たときより酷い顔になっていた。伊丹に抵抗されて多少怪我をしたから。
それだけじゃない。落ち窪んだ目、血の気のない頬、かさかさの唇。まるで死人だ。
61、
私はぼろぼろのカットソーを脱いで、顔を拭く。この服を着てうろうろする気にはもうならない。
ごみ同然になった、かつて服だったものをトイレのゴミ箱に放り投げる。ここに自分の手がかりを残していったら、事件が沈静化したあと、伊丹を殺害したとして私も裁かれるかもしれない。それでもかまわない。今はそんな気分だった。
さすがに、上半身下着だけだと寒い。身震いしてしまう。ふと顔を上げたら、鏡に映った私の背後に男が立っていた。
「ひっ……」
思わず声が出て体が強張る。振り返ると、男は降参するように両手を上にあげた。
須賀だった。
「悪い。驚かせた」
須賀は片手に伊丹から渡された銃を持ったままだった。その目はトイレの奥に向いていた。きっと個室から伸びた二本の足が見えただろう。だが、須賀は動揺した様子も無く言った。
「あんたがやらなきゃ、俺がやるつもりだった」
その言葉に、少しだけ緊張が解ける。彼のことはわからないことが多いけれど、少なくとも今は敵対していないということだろうか。
「あんたは、伊丹から俺と大木についていろいろ聞かされてるだろうが、命が惜しければ他の人間には黙ってろ。そうすればなにもしない。俺もこのことを誰かに話すつもりはない」
「……伊丹とどんな話をしたの? 彼が言っていたことは本当?」
ずっと気になっていたことを問うが、須賀は片方の口の端を上げて笑うだけだった。
「いろいろと複雑でね。だが、あいつの言っていた陰謀論はほとんど妄想だぞ。そんな技術あったら俺たちはとっくに天下をとってるし、こんな馬鹿げた騒動を起こすわけもない。そもそも、そんな技術持った組織があったら、国が黙っちゃいないだろ」
俺たち、という範囲がどこの何を指し示すのか、明言されなくてもわかった。そして、彼の言うことはたしかにごもっともではあるが――。となると、やはり、私と伊丹のことは説明できないという説明文がつくことになるわけだ。
「ただ、あんたらが何度も転生? 甦り? しているのは、事実のようだな。伊丹がぺらぺら俺たちに語った内容には、俺たちにしかわからない話が含まれていたからな。まったく、あんたも面倒なことに巻き込まれたな」
「私も?」
「それより、さっさとここを出るぞ。柏田も来てる。あんたを探して、向こうを見に行ってる」
踵を返した須賀に従って、私はトイレを出る。
「もう、みんなここを出たのかと思ってた」
「俺はそうしようと提案した。あんたが自分の意思で伊丹に着いていったんだから放っておけとな」
歯に衣着せない話し方が、彼のスタイルなのだろうか。その背中は、服越しにわかるほど鍛えられていてる。本当に看護師なのか。そう疑いたくなるほど。
「だが、柏田が譲らなくてな。三十分待つと言って聞かなかった。それで時間がきたら今度は探しに行くだとよ」
「……でも、あなたも来てくれた。ありがとう」
礼を言うと、須賀は失笑した。
「そりゃあんた、柏田ひとり行かせて死なれてみろよ。俺は歩けねえ怪我人を抱えて、このゴーストタウンをうろうろしなきゃいけないんだぞ。死ぬだろ」
「それでも、助かったから」
「まあ、礼は柏田に言え。ほら、本人だ」
須賀たちが点灯したのだろう。フロントをふくめ、フロアの電気が明るく光っている。私はトイレの中にいたせいで、点灯したことに気づかなかった。
須賀が見たのは、板張りのスタジオがある方向。その出入り口から、リアンが顔を出したところだった。彼は銃を手にしたまま、小走りにこちらに寄ってきて、私の顔を見ると、一瞬顔を顰めた。
伊丹に殴られ負傷したリアンの頬は、すでに手当てされていた。そのことにほっとする。
「あの、迎えに来てくれて、ありがとう」
私の言葉を無視して、リアンは私たちの横を通り過ぎた。私とは、目もあわせない。
なにか気に障ることをしただろうか。この出会いがしらに? もしかして勝手なことをしたと怒っている?
リアンはカウンターの奥にストックされているブルーのウエアを一枚引っ張り出して、私に向かって放り投げた。それでようやく、自分が下着姿だということを思い出した。今更ながら羞恥心が蘇って、私は急いで後ろを向きその服に袖を通した。
「悪い悪い。職業柄、裸に抵抗ないもんだから」
大して悪いと思っていない様子で、須賀が謝った。
実際、勝手に脱いだのは私の方なので、彼が悪いところは一切ないのだが……。そのことを気にもとめないくらい、脱がされたり服を破かれたりしてるなと思うと、うんざりすると同時に、慣れの怖さを感じる。
「もう一人はどうした?」
リアンがやや警戒した硬い表情で、私に問う。
私は、一瞬、答えにつまった。
「感染者に襲われて、死んでた」
須賀が、軽い調子で言う。思わぬ助け舟。須賀はこちらを見もしない。
真偽を確かめるように、私の顔をじっと見ていたリアンだったが、ひとつ大きく息を吐いて表情を少し緩めた。
「君が、無事でよかった」
たぶん、深い意味なんて無い。彼からしたら、顔見知りに無事再会できたから出ただけの言葉だろうに。
私は、自分の目からぼたぼたと涙が零れだすのを止められなかった。
ぎくっとした様子で、リアンが表情を硬くしたのが、歪んだ視界の中でもわかった。
「ごめん、大丈夫だから。ちょっと気が緩んで……」
無様にひっくり返った涙声でそう告げて、ウエアの袖で乱暴に目を擦った。なかなか涙はおさまらなかったけれど、みっともない泣き顔をさらさなくて済む。
「あーあ、泣かした」
「おい……」
須賀のからかう意地悪な声と、リアンの途方に暮れたような声が頭上から降ってくる。
落ち着こうと深呼吸をしようとするが、しゃくりあげてしまってうまくいかない。泣きながら、自分でも途方に暮れる。泣いている場合じゃないというのは、わかっているのに。目が覚めてからずっと頭を占めてきた、伊丹への対処が現実に完了して、落ち着いてしまったからだろうか。リアンと初めてキスしたときだとか、一緒に食事をしたこと、笑いあったこと、抱きしめあったことなんて、今は関係ないことが次々思い出されて――そしてそのどれもが、私の頭の中にしか存在しない記憶だということを、再確認して、涙になって溢れてしまう。
きっと、私を好きだと言ってくれたリアンだったら、こんな私を見て抱きしめてくれただろうけれど、今の彼は戸惑うだけ。
泣きながらそんなことを思い、その頭の片隅で考える。
私は、一度も彼に好きだと言えてなかったけれど――でも、こんなに彼のことが好きだったんだ。もっときちんと、自分の気持ちを伝えるべきだった。後悔で、涙が苦く感じる。
「もう大丈夫だから、ほら」
泣き止まない私に困り果て、苦心の末という感じで、遠慮がちに背中をなでられる。止めてほしい、余計に涙が出てしまう。
君が無事でよかった。もう大丈夫だから。
その言葉を、前回、私が死ぬことなく聞けたら、どれほどよかっただろう。
◆
結局、私は泣きながら、自分で歩いてエレベーターに乗って、屋上まで辿り着いた。
車の中でぐったりしていた塩野も、私の戻りを喜んでくれた。その顔を見てようやく涙が止まった。もうひとつ、やらなくてはならないことを思い出したからだ。
助手席に須賀が座り、リアンが運転席に座る。その後ろに私は座った。
車が徐行で車用のエレベーターに入る。こういうエレベーターに乗ったことがないので、かなり緊張した。車止めに当たるまで進ませたあと、窓から手を出したリアンが、壁に備え付けられていた昇降ボタンを押すと、ブザーが鳴ってゆっくりと背後のドアが閉まった。低速なのか浮遊感などもなく、階数表示が下がっていく。とりあえずビルを出ることができそうだ。
同じようにほっとした顔をしている塩野の手に、ショートパンツのポケットから取り出したものを握らせた。
「え? なに?」
突然私が手に触れたからか、彼はびっくりしていたが、自分の手の中のものを見て、いっそう驚いた顔をした。そして、くしゃりと顔を歪めると、祈るように握り締めた両手を額に当てて、声を殺して咽び泣く。
「……ありがとう」
彼の手の中には、私が渡した指輪が入っている。
彼の嗚咽を聞いていると、また鼻の奥がつんとして、私も顔をうつむかせた。
「泣いてないで、飯でも食えよ。エンストしたら歩く羽目になるから、今のうちしっかり蓄えておけ」
須賀が放り投げてきたコンビニの袋から、シリアルバーを取り出して、口に含む。キャラメル味のはずがしょっぱかった。
私は手と顔を洗い、口を濯ぐ。いつまでたっても鉄臭さが口内に残っている気がして、舌で頬の内側を探ってみたら切れていた。怪我に気付くととたんに痛みが存在を主張しはじめる。
鏡に映る自分は、ちょっと前に鏡を見たときより酷い顔になっていた。伊丹に抵抗されて多少怪我をしたから。
それだけじゃない。落ち窪んだ目、血の気のない頬、かさかさの唇。まるで死人だ。
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私はぼろぼろのカットソーを脱いで、顔を拭く。この服を着てうろうろする気にはもうならない。
ごみ同然になった、かつて服だったものをトイレのゴミ箱に放り投げる。ここに自分の手がかりを残していったら、事件が沈静化したあと、伊丹を殺害したとして私も裁かれるかもしれない。それでもかまわない。今はそんな気分だった。
さすがに、上半身下着だけだと寒い。身震いしてしまう。ふと顔を上げたら、鏡に映った私の背後に男が立っていた。
「ひっ……」
思わず声が出て体が強張る。振り返ると、男は降参するように両手を上にあげた。
須賀だった。
「悪い。驚かせた」
須賀は片手に伊丹から渡された銃を持ったままだった。その目はトイレの奥に向いていた。きっと個室から伸びた二本の足が見えただろう。だが、須賀は動揺した様子も無く言った。
「あんたがやらなきゃ、俺がやるつもりだった」
その言葉に、少しだけ緊張が解ける。彼のことはわからないことが多いけれど、少なくとも今は敵対していないということだろうか。
「あんたは、伊丹から俺と大木についていろいろ聞かされてるだろうが、命が惜しければ他の人間には黙ってろ。そうすればなにもしない。俺もこのことを誰かに話すつもりはない」
「……伊丹とどんな話をしたの? 彼が言っていたことは本当?」
ずっと気になっていたことを問うが、須賀は片方の口の端を上げて笑うだけだった。
「いろいろと複雑でね。だが、あいつの言っていた陰謀論はほとんど妄想だぞ。そんな技術あったら俺たちはとっくに天下をとってるし、こんな馬鹿げた騒動を起こすわけもない。そもそも、そんな技術持った組織があったら、国が黙っちゃいないだろ」
俺たち、という範囲がどこの何を指し示すのか、明言されなくてもわかった。そして、彼の言うことはたしかにごもっともではあるが――。となると、やはり、私と伊丹のことは説明できないという説明文がつくことになるわけだ。
「ただ、あんたらが何度も転生? 甦り? しているのは、事実のようだな。伊丹がぺらぺら俺たちに語った内容には、俺たちにしかわからない話が含まれていたからな。まったく、あんたも面倒なことに巻き込まれたな」
「私も?」
「それより、さっさとここを出るぞ。柏田も来てる。あんたを探して、向こうを見に行ってる」
踵を返した須賀に従って、私はトイレを出る。
「もう、みんなここを出たのかと思ってた」
「俺はそうしようと提案した。あんたが自分の意思で伊丹に着いていったんだから放っておけとな」
歯に衣着せない話し方が、彼のスタイルなのだろうか。その背中は、服越しにわかるほど鍛えられていてる。本当に看護師なのか。そう疑いたくなるほど。
「だが、柏田が譲らなくてな。三十分待つと言って聞かなかった。それで時間がきたら今度は探しに行くだとよ」
「……でも、あなたも来てくれた。ありがとう」
礼を言うと、須賀は失笑した。
「そりゃあんた、柏田ひとり行かせて死なれてみろよ。俺は歩けねえ怪我人を抱えて、このゴーストタウンをうろうろしなきゃいけないんだぞ。死ぬだろ」
「それでも、助かったから」
「まあ、礼は柏田に言え。ほら、本人だ」
須賀たちが点灯したのだろう。フロントをふくめ、フロアの電気が明るく光っている。私はトイレの中にいたせいで、点灯したことに気づかなかった。
須賀が見たのは、板張りのスタジオがある方向。その出入り口から、リアンが顔を出したところだった。彼は銃を手にしたまま、小走りにこちらに寄ってきて、私の顔を見ると、一瞬顔を顰めた。
伊丹に殴られ負傷したリアンの頬は、すでに手当てされていた。そのことにほっとする。
「あの、迎えに来てくれて、ありがとう」
私の言葉を無視して、リアンは私たちの横を通り過ぎた。私とは、目もあわせない。
なにか気に障ることをしただろうか。この出会いがしらに? もしかして勝手なことをしたと怒っている?
リアンはカウンターの奥にストックされているブルーのウエアを一枚引っ張り出して、私に向かって放り投げた。それでようやく、自分が下着姿だということを思い出した。今更ながら羞恥心が蘇って、私は急いで後ろを向きその服に袖を通した。
「悪い悪い。職業柄、裸に抵抗ないもんだから」
大して悪いと思っていない様子で、須賀が謝った。
実際、勝手に脱いだのは私の方なので、彼が悪いところは一切ないのだが……。そのことを気にもとめないくらい、脱がされたり服を破かれたりしてるなと思うと、うんざりすると同時に、慣れの怖さを感じる。
「もう一人はどうした?」
リアンがやや警戒した硬い表情で、私に問う。
私は、一瞬、答えにつまった。
「感染者に襲われて、死んでた」
須賀が、軽い調子で言う。思わぬ助け舟。須賀はこちらを見もしない。
真偽を確かめるように、私の顔をじっと見ていたリアンだったが、ひとつ大きく息を吐いて表情を少し緩めた。
「君が、無事でよかった」
たぶん、深い意味なんて無い。彼からしたら、顔見知りに無事再会できたから出ただけの言葉だろうに。
私は、自分の目からぼたぼたと涙が零れだすのを止められなかった。
ぎくっとした様子で、リアンが表情を硬くしたのが、歪んだ視界の中でもわかった。
「ごめん、大丈夫だから。ちょっと気が緩んで……」
無様にひっくり返った涙声でそう告げて、ウエアの袖で乱暴に目を擦った。なかなか涙はおさまらなかったけれど、みっともない泣き顔をさらさなくて済む。
「あーあ、泣かした」
「おい……」
須賀のからかう意地悪な声と、リアンの途方に暮れたような声が頭上から降ってくる。
落ち着こうと深呼吸をしようとするが、しゃくりあげてしまってうまくいかない。泣きながら、自分でも途方に暮れる。泣いている場合じゃないというのは、わかっているのに。目が覚めてからずっと頭を占めてきた、伊丹への対処が現実に完了して、落ち着いてしまったからだろうか。リアンと初めてキスしたときだとか、一緒に食事をしたこと、笑いあったこと、抱きしめあったことなんて、今は関係ないことが次々思い出されて――そしてそのどれもが、私の頭の中にしか存在しない記憶だということを、再確認して、涙になって溢れてしまう。
きっと、私を好きだと言ってくれたリアンだったら、こんな私を見て抱きしめてくれただろうけれど、今の彼は戸惑うだけ。
泣きながらそんなことを思い、その頭の片隅で考える。
私は、一度も彼に好きだと言えてなかったけれど――でも、こんなに彼のことが好きだったんだ。もっときちんと、自分の気持ちを伝えるべきだった。後悔で、涙が苦く感じる。
「もう大丈夫だから、ほら」
泣き止まない私に困り果て、苦心の末という感じで、遠慮がちに背中をなでられる。止めてほしい、余計に涙が出てしまう。
君が無事でよかった。もう大丈夫だから。
その言葉を、前回、私が死ぬことなく聞けたら、どれほどよかっただろう。
◆
結局、私は泣きながら、自分で歩いてエレベーターに乗って、屋上まで辿り着いた。
車の中でぐったりしていた塩野も、私の戻りを喜んでくれた。その顔を見てようやく涙が止まった。もうひとつ、やらなくてはならないことを思い出したからだ。
助手席に須賀が座り、リアンが運転席に座る。その後ろに私は座った。
車が徐行で車用のエレベーターに入る。こういうエレベーターに乗ったことがないので、かなり緊張した。車止めに当たるまで進ませたあと、窓から手を出したリアンが、壁に備え付けられていた昇降ボタンを押すと、ブザーが鳴ってゆっくりと背後のドアが閉まった。低速なのか浮遊感などもなく、階数表示が下がっていく。とりあえずビルを出ることができそうだ。
同じようにほっとした顔をしている塩野の手に、ショートパンツのポケットから取り出したものを握らせた。
「え? なに?」
突然私が手に触れたからか、彼はびっくりしていたが、自分の手の中のものを見て、いっそう驚いた顔をした。そして、くしゃりと顔を歪めると、祈るように握り締めた両手を額に当てて、声を殺して咽び泣く。
「……ありがとう」
彼の手の中には、私が渡した指輪が入っている。
彼の嗚咽を聞いていると、また鼻の奥がつんとして、私も顔をうつむかせた。
「泣いてないで、飯でも食えよ。エンストしたら歩く羽目になるから、今のうちしっかり蓄えておけ」
須賀が放り投げてきたコンビニの袋から、シリアルバーを取り出して、口に含む。キャラメル味のはずがしょっぱかった。
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