【R18】Overkilled me

薊野ざわり

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本編

45 ■

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 濡れたままのリアンに抱きしめられたせいで私のシャツは湿り、エアコンの風を受けると冷たく感じた。身震いすると彼の手が伸びてきて、ボタンを一つずつ外される。第三ボタンを外されるとき、喉が鳴ってしまった。
 シャツの前をはだけさせられ、そのままパンツの前のボタンもジッパーも下げられる。下着以外を取り払われて、体を縮こまらせていると、膝裏に手を差し込まれて横抱きにされた。


45、

 リアンはベッドに腰を下ろすと、私の背中に手を添え横抱きにしたまま、また口付けてきた。
 私は少し寒くて、彼の胸に体をくっつける。温かく硬い胸板の感触に、無性に安心させられた。
 額、頬、唇、顎、喉、鎖骨とどんどん口付けは降りてくる。その間にも、リアンの自由な方の手が、労わるように温めるように、私の太ももの外側を摩っていた。

 体の中心を降りてきた口付けは、みぞおちで止まった。リアンは緑色の目で私を見つめたまま、そっと、下着の上から私の胸に触れた。大きな手で優しく包まれる。あまりにじっと見つめられるので、気恥ずかしさに耐えられなくなり、私は自分から彼の唇に唇を重ねた。

 それが合図になったのか、下着の中にリアンの手が忍び込んできた。慎重な手つきで胸を大きく揉まれる。胸の先端が彼の指に触れると、甘い痺れが背筋に走った。口付けはさらに深くなる。私がそれに意識をとられたころを見計らったように、きゅっと胸の頂きを摘まれた。思わず鼻にかかった声が漏れてしまう。恥ずかしくなって、抗議のつもりで身体を捩ろうとしたが、不安定な体勢でうまくいかなかった。

 背に添えられていたリアンの手に、下着のホックを外された。彼は私の胸の先端を弄びながら、下着をぐいっと上にずらす。まだ触れられていない方の胸まで、期待で先端を尖らせていることを知られたくなくて、私は自分の舌を彼の口内に捻じ込んだ。たとえ、触れられればすぐにわかってしまう事実だとしても。

 唇を離すと、どちらのものともわからない唾液が糸を引いて私の口の端に垂れた。それを舐めとった舌で、リアンは私の胸に口付けた。転がすように、胸の先端を甘噛みされる。背筋がぞくぞくして、思わず身を捩るが、彼は止めようとしない。

「あっ、……ぁ、あ」
「いい声だ」

 そう一つ囁いて、リアンはまた胸に顔を埋めた。私はやり場のない手で、彼の頭をなでる。茶色の髪はまだ湿っていた。
 リアンの自由な方の手は、私のふくらはぎをマッサージするように摩っていたが、不意に太ももの内側に滑りこんできて、今度はそこを優しくなでていく。それ以上、上の部分に触れられたくない。脚をぎゅっと閉じた。彼の手を挟み込む形になる。

「ミシカ、これじゃ君に触れられない」

 耳元でそう言って、リアンは私の首筋に口付けた。くすぐったさと、ぞくぞくと背筋を駆け上がる快感に、私は首を竦めた。彼は執拗に、首筋を舐めたり甘噛みする。

「それ、やめ……」
 身を捩って脚の力が抜けた隙に、リアンが下着の上から私の最も敏感な部分に触れた。
「やっ」
 驚いて腰を引くが、やはり抱えられている状態ではうまく身動きが取れない。リアンは、肘を使って私の脚を閉じないように固定すると、下着の上からその中心をゆっくりと指でなでた。何度も何度も。そのもどかしい刺激が、私の腰のあたりに疼きを与える。
 唇を噛んで声を殺していると、彼は再び私の胸に顔を埋め、前より強く、胸の頂を噛んだ。

「あっ、やっ」

 ぴりっとした痛みもすぐに気持ちよくなる。同時に、ショーツのクロッチを横にずらして、彼の指が直接触れてきた。秘裂をなでられると、腰に電流のような刺激が走って、足の指先に力が入った。
 リアンは、私の秘処から溢れた蜜を指に絡めると、その滑りで指先を滑らせて、秘裂と花芯を擦る。

「だめ、それだめっ」

 腰から頭に突き抜けるような快感から逃げ出そうとリアンの胸に腕を突っ張るが、力が入らなかった。口付けられると、それを受け入れて、彼の胸に縋るしかない。

「んんっ、あっ、あっ」

 あとからあとから声が出て、どうしようもなかった。リアンの指はどんどん速くなり、私の腰の疼きはどんどん熱くなっていく。目の奥がちかちかしてくる。

「もっと可愛い顔を見せてくれ」

 耳元でかすれた声で囁かれたとき、体が裏返るような感覚に襲われた。

「あ、や、あっ――」

 一瞬、瞼の裏が白く染まり、息が詰まる。爪先まで駆け抜ける甘い波。

 衝撃が去ったあと、私は荒い息をつきながら、ぐったりとリアンに寄りかかった。
 目だけでリアンを見ると、彼はいつもの落ち着いた表情で私を見ていた。いや、緑の目だけはどこかぎらぎらしている。

 ベッドの上に横たえられて、今度はリアンを見上げる形になった。顔の横にスマートフォンがあって、着信を知らせるライトが点滅していた。私は手でそれをベッドの端に追いやって、降ってきた彼の口付けを受け入れた。
 口内で舌を絡め合う。彼の背に手を回して、締まった背筋と肩甲骨、背骨を指で辿った。そうしていると、脚の間にリアンの体が割り込んでくる。期待と不安とで、少し落ち着いていた心拍がまた速くなる。
 下着はそうしているうちに全て取り払われて、彼と同じく私も完全に裸になった。

「んっ……」
 ぬるりと彼の指が体の中に侵入してきて、身を強張らせた。圧迫感はさほどなく、ゆるゆると抜き差しされるうちに消えて行く。かわりに、鈍い快感がやってきて、私はまた吐息を漏らした。

 一度達したあとは、体が敏感になっているから、快感が少し辛い。
 だが、リアンは丁寧に――いっそ執拗な程、指で私を確かめている。

「リアン、……っもう」
 止めてほしかったのに、口調がまるでねだっているようになってしまった。
 リアンは、うん、と小さく言って――指を増やし、抽挿のスピードをあげた。

「ちが、そうじゃな、あっ、いやっ」
 強い快感が辛い。背が勝手に撓る。身を捩る私を見て、彼はさらに指を増やして速くした。
「何か違うか? もっと奥?」
「ちがう、ちがっ……あうっ」

 リアンの目は、普段なら見せないような嗜虐心に満ちている。怖い。胸を鷲掴みにされて、手荒く揉みしだかれる。痛みに近い快感で、私はシーツにしがみ付いた。

「もうやめて、やめ、だめ、だ、めぇっ……ァああっ」

 必死に訴えるが、宥めるように口付けられて、言葉も封じられる。ねっとりと口内を舐められ、頭蓋の内側を痺れが走っていった。
 中の一点に彼の指が触れ、まるで熱源がそこにできたかのように、熱い快感がじわりじわりと広がって行く。立てた膝ががくがく震えている。

「んん――ッ」
 悲鳴を口付けで殺されたまま、私は再び、波に飲まれた。
 真っ逆さまに崖下に落ちるような錯覚。頭の中で火花が散る。
 背中の汗を感じながら、私は全身の力を失ってその場でぐったり横たわる。

「大丈夫か?」

 頬を気遣わしげになでられて、重い瞼を上げる。へとへとだった。
 リアンが何度も私の髪を梳いた。

「……だめって、いったのに……」

 乱れた息のままそう告げると、ああ、と肯定も否定もしない返事をして、リアンは私の額に口付けた。

「これ以上は、止めておこうか」
「え?」
「いじめすぎた」

 苦笑して、リアンは今度は私の頬に口付けを落とす。
 私はそろりと手を伸ばして、彼のものに触れた。見なくてもわかるほどに怒張して、反り返っている。しかし、ここで止めてほしいと言えば、彼は本当にそうするだろう。
 私は鼻面を彼の首筋に埋めて、耳朶を甘噛みした。そして囁いた。

「お願い、止めないで」

 強く抱きしめられた。また口付けが降って来る。密着した体をずらして、リアンが自分のものを私に宛がった。ゆっくりと、質量のある熱いものが体に侵入して来る。背筋を震わせる快感に、私は口付けられながら嬌声を上げた。
 全てを私に収めて、彼は深く息をついた。

「……痛くはないか」
「大丈夫」

 圧迫感にも慣れ始めている。
 リアンが腰を動かした。私はその背に手を回して、子供にするように背骨を優しくなでた。これがこのひとの匂い。これがこのひとの肌の感触、温かさ。初めて味わうはずが、妙にしっくり馴染むように思うのはどうしてだろう。それでいて、胸の奥がきゅうっと疼くのは。
 
 何度かリアンのものが行き来すると、またじわじわと私の下腹部に、疼きが集まって来る。彼はじれったいほどにゆっくりと、抽挿を繰り返す。味わうように。

「……温かい」
「……あなたも」

 密着した体も、リアンを受け入れている体の中も、熱い。その熱に集中するため私は目を閉じた。
 徐々に、リアンが動きを速める。それまで私の頭をなでていた手が、今度は私の胸を掴んで、強く揉みしだいた。

「んっ……あっ、ああっ」

 二度も達したせいか、火がつくと、自分ではどうしようもないほど体が震えた。彼の動きにあわせて腰が浮く。がくがくと震える膝は、まるで別の生き物みたいだ。
 リアンは身を起こすと、私の震える膝に手を置いて持ち上げた。私は膝を胸辺りで抱えるように体を曲げるしかない。苦しい上に恥ずかしい体勢に、抵抗しようとしたが、奥に思いっきり突き立てられて終わった。

「あっ」

 見上げた彼の目は、ぎらぎらしてまるで別人のようだ。私の膝を掴んだまま、容赦なく腰を打ち付けてくる。

「どうだ? もっと強い方がいいか?」
 これ以上勢いをつけられたら、どうにかなってしまう。
「やっ……、いや、あっ、ふ、あう」
 うまく言葉にならなくて、必死に頭を左右に振った。
「そうか」
「――っ」

 わかった、というような顔をして、彼はさらに強く腰を打ち付けてきた。目の奥がちかちかしだして、私は顔を手で覆う。さっきから、だめなところに当たってるの。だめだけど、――やめないでほしい。それを口に出す勇気はなくて、窮屈な姿勢で必死にリアンの腕にしがみついた。爪が刺さらないようになんて気遣いをする余裕もなかった。

「ミシカ」
 名前を呼ばれた。私の片膝だけを抱え込んだまま、彼は体を倒して、私に口付けた。今日、何度目かもわからない口付け。
「ミシカ……」

 また名前を呼ばれる。応えるために、私は彼の頬を手で包んで、口付けた。
 うわごとのように私の名前を何度も呼んで、彼は一度息を止めると、私のお腹の上に吐精した。彼が自身を抜く瞬間の衝撃で、私はまた、全身を満たす甘やかな波に身を任せた。
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