旧知の名家ホテル王は懐妊した斜陽旅館令嬢を人生を賭けて愛し尽くす

烏兎 美々子

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優雅に娶られる

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 「月夜の海って、寂しさも込み上げてくるものなのかな。」
 私は麟斗に問う。
 「さあ、確かに夜風は冷えるけども。」
 「ここじゃ俺達は、近づけないな。」
 彼が私に答える。
 「ここじゃ近づけないってことは、わかってるんだ、俺も。」
 私達は、もう夫婦なのだ。もっと、近づいていいんだから。
 「レストランを出た後に、泊まるところは予約してるんだ。」
 「逃げないで。」
 麟斗が切なく言う。
 私は彼を拒否なんてしたくない。
 共にいきたい。
 「お願い、一緒に泊まろ?」
 私は恋人らしく、甘く囁く。
 「初めての泊まりデートだな。」
 「いや、昔同じ屋根の下で過ごしてたけれどもな。」
 大人同士で、二人だけの宿泊デート。
 今更だけど、初めてのデート。
 「やっぱり、白城グループのホテルなの?」
 気になって、聞いてみる。
 「まぁ…、そうだ。うちのホテルなら、特別な夜が過ごせるから、さ。」
 麟斗は、ぎこちなく答える。
 「白城グループのホテルの枕は、安眠を保証するから、ね。」
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