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優雅に娶られる

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 愛の熱を帯びて火照ってしまった私達。
 キスの余韻に、ワインよりも酔いしれている。
 麟斗君は、私の肩に手をやる。
 「月夜の砂浜を、散歩しないか。」
 私まだ、麟斗君と愛し合いたい。
 「じゃあ、私先に行くわね!」
 「追いかけっこしましょ!」
 私は、下駄を履いているのにも関わらず、砂浜を目指して駆ける。
 白砂に足跡を残しながら、愛しの旦那様が追いかけてくるのを楽しみに。
 「待て、凛子。」
 「捕まえるからな。」
 優秀な麟斗君なのだ。脚も速いのだ。
 調子にのっていた私が、白砂につまづきそうになる。と、直ぐ様彼は、私を抱き止める。
 「危なっかしい奥様だこと。」
 麟斗君は間髪を入れずに、受け止めた私をきつく抱き締めて、再び口付けをする。
 
 数刻たって、麟斗君からの熱い口付けが、私の唇を離れる。
 「着物を着て駆け回る君は、名前の如くに蝶々だな。」
 「俺という籠の中に、閉じ込めてしまいたい。」
 きっと、麟斗君正直な気持ちなのだろう。声に真実味がある。
 麟斗君に囚われるのならば、私も本望だ。
 「麟斗君が籠ならば、きっと快適な籠でしょうね。」
 「…麟斗でいいよ。もう夫なんだ。」
 「…麟斗、好き。」
 私も麟斗君を抱き締める。
 抱き締め合ってあるのに、何故、こんなにも麟斗君を遠くに感じるのだろう。
 もう、彼の妻になったのに、私は何故ーーー………。
 私の顔が曇る。
 麟斗は、少しの変化も見逃さない。凛子の顔の華が萎むのを。
 
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