旧知の名家ホテル王は懐妊した斜陽旅館令嬢を人生を賭けて愛し尽くす

烏兎 美々子

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優雅に娶られる

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 「外へ出ようか、凛子。」
 「えっ!?」
 VIPルームには入り口とは異なる、外に繋がる扉があるようだ。
 麟斗君が外への扉を開いて、私を連れ立って行く。
 外には、小さなチャペルがあった。
 「チャペルで、二人っきりの結婚式をしよう。」
 白い月光に照らされている白いチャペルは、波音が聴こえる海岸の近くにある。
 チャペルから直ぐに、白砂のビーチが広がっていて、煌めく海が幻想的だ。
 「カラカラカラン」
 私はチャペルのベルを鳴らした。
 蒼い夜に響き渡る、高らかな鐘の音。
 「月の元に愛を誓うなんて、ロマンス小説の中みたいね。」
 「変身しそうなヤツか?」
 二人で愛を誓い合う。
 誰も介さずに、月に、星に、世界に誓う。
 
 そう、私達の結婚は、お互いの心が惹かれた結果の結婚なのだもの。

 チャペルのステンドグラスの前に、二人で立つ。
 ステンドグラスは密やかに、月光の元で万華鏡のような光彩を魅せる。
 麟斗君が私の手を握りしめる。
 「白城麟斗は生涯をかけて、凛子を愛し尽くします。」
 私の胸の高鳴りは最高潮に達する。
 麟斗君の誠実な愛の言葉を聞くだけで、私は夢に覚めてゆく。
 「白城凛子はいかなる時も、麟斗に寄り添い生きてゆきます。」
 私が麟斗君への誓いを述べると、彼は私の手の甲にキスをした。
 映画に出てくる騎士のような神聖さ。
 きっと彼ならば、私を護り尽くしてくれるだろう。
 「凛子…。君は俺の妻だ。」
 麟斗君が、私の唇に深く口付ける。
 私は息を奪われた。奪われるのが幸せだと想った。
 「っ…つっ。」
 「…は…ぁ…。」
 互いに口付けを交わし合い、お互いの身体を抱き締める。
 夜を駆ける海風が、私達の身体を撫でる。
 私の髪が、海風に靡いて艶めく。
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