旧知の名家ホテル王は懐妊した斜陽旅館令嬢を人生を賭けて愛し尽くす

烏兎 美々子

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優雅に娶られる

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 婚約のコース料理を食べ終える。
 麟斗君は静かに口をナプキンで拭いて、私も真似してナプキンで口を拭く。
 
 二人の間に沈黙が。

 「………、凛子。」
 「はい。」
 「渡したいものがあるんだ。」
 「うん。喜んで。」
 この流れだと、結婚指輪が来る筈。
 私にも、こんな日が来るなんて、想わなかったな。
 「………、俺と結婚してくれ。」
 麟斗君は、紺色の指輪ケースを開いて、私に結婚指輪を差し出す。

 大粒のダイヤモンドがついた白銀の指輪が、私の目の前にあった。

 「………。」
 私は息を呑む。
 こんなダイヤモンドを実際みたこともない。
 「はい。これから宜しくお願いします。」
 私は努めて冷静に、結婚指輪を受け取った。
 もしかしなくても、私が知っている以上に、麟斗君の白城グループは億万長者なのかも知れない。
 「大きすぎるダイヤの指輪なんて、下品だったか…?」
 「そんなことないよ!麟斗君がくれたものなんだし。」
 私は、日本一のホテル王の妻となった。
 その責任に、肩が強ばる。
 でも、私は他でもない、『麟斗君』の、妻となったのだ。
 憧れの麟斗君の花嫁に。
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