旧知の名家ホテル王は懐妊した斜陽旅館令嬢を人生を賭けて愛し尽くす

烏兎 美々子

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優雅に娶られる

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 コース料理が、テーブルの上を埋め尽くした。豪華な眺め。
 今度こそ、ウェイターは撤退し、私達二人だけのVIPルームになった。
 婚約の為のコース料理なので、量はお腹に丁度良い量。
 コース料理には赤ワインが付いてきた。
 私が見てもわかるような、燻し銀なデザインのラベルのワイン。
 ワインボトルの中で、深いボルドーが、光り、揺らめく。
 「そのワインは、凛子と同じ生誕年のワインだよ。所謂、生まれ年ワインだね。」
 「俺の花嫁になってくれて、ありがとう、凛子。」
 そう言って、麟斗君は私にグラスを手渡す。
 強く握ると割れてしまいそうなので、余程の高級ブランドのワイングラスだということがわかる。
 「このワイングラスで呑めば、一層ワインを豊かに味わえるよ。」
 「ありがとう、頂くわ。」
 ワインよりも日本酒の知識の方が断然多いので、ワインの事は麟斗君に聞くしかないかな。
 生まれ年ワインの栓を開けただけで、豊満な薫りが漂うのがわかる。
 ルビーの液体がワイングラスに注がれる。
 グラスを傾けて、薫りを楽しんでみる。太陽の光で育った葡萄畑の暖かみのある薫りがする。ラズベリーのアロマ感も合わさって、風味豊かなのだろう事が伺える。
 口に一口含んで呑む。
 「甘くて葡萄感が味わえて、美味しい。」
 「婚約ワインだから、甘口のを選んだんだ。口に合ってよかった。」
 私の生まれ年ワインと共に、メインディッシュの『ラム肉のビーツ風味赤ワイン煮込み』を頂く。
 ラム肉を煮込むのにも、同じ生誕ワインを使用しているらしく、口の中でよく馴染む。
 「子羊なんだ。柔らかくて美味しいだろう?」
 「口の中でお肉が蕩けるわね。」
 「それじゃ、改めて。」
 「俺達の婚約に、乾杯。」
 私と麟斗君は、グラスを合わせて乾杯する。
 静寂のVIPルームに、グラスの上品な音が響く。
 グラス越しに、麟斗君が私を愛おしげに見つめてきて、私は彼の瞳に吸い込まれてしまう。
 「凛子…。俺は、一目みた時から君の事が好きだった。」
 「今日、君を娶って…。俺の気持ちは正しかったと思えた。君を花嫁に迎えられて、夢みたいだよ。」
 麟斗君が、昔から抱いていた私への愛を告げる。
 「私の方こそ…、麟斗君みたいに、誰もが憧れる男の人に娶られて。世界一の幸せ者です。」
 私も負けじと、麟斗君へ想いを告げる。
 麟斗君への愛の言葉を口にして初めて、麟斗君の花嫁にこれからなるのだなという実感が湧いてきた。
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