旧知の名家ホテル王は懐妊した斜陽旅館令嬢を人生を賭けて愛し尽くす

烏兎 美々子

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 漆黒の髪と瞳が夜に映える優雅な男の手が、私の寝間着をシュルリと剥ぎ取ってゆく。
 その男の名前は、白城麟斗。
 私、蝶野凛子が世界一で一番愛していると想える男。
 麟斗に、されるがまま着ているものを剥ぎ取られた私は、上質なソファの上に仰向けになる。
 「ねぇ、そんなに私を求めるの?」
 「どうしてそんなに必死なの?」
 麟斗は、彼を一目見た女は振り向くというほどルックスも立派な男。
 なのに、気づけば隙あらば私を求めるような行為をするようになっていた。
 いや、前々から彼自身は、そうだったのかもしれない。
 「愛してるんだぞ、お前を。なら、必死にならない道理はないだろ。」
 しなやかな麟斗の手が、私の頬を撫でる。
 私がまるで壊れてしまうかもしれないとでもいうように、そっと、頬に手を触れてくる。
 「っ…。くすぐったい。」
 「そうか、ふふ。」
 私が麟斗の可愛がりを好き好んで受けている様子を、麟斗は眺めて愉しんでいる。
 麟斗の射貫く様な鋭い瞳が、揺らめいて…私の瞳を、じっと見つめている。
 「麟斗、そんなに見つめなくても…。」
 私は、なんだか気恥ずかしくなって、視線を胸元に反らした。
 「俯く睫毛が、また色っぽいな。態とか。」
 誘ってるだろ、と、麟斗は言って…ーーー。
 私の顔に、その好みすぎる端正な顔面を近づけてくる。
 「んっ…!?やっ…!」
 私はこの先を先読みして、無意識に身構えてしまう。
 「このまま、襲われると思ったのか?」
 麟斗は、昔みたいに少年の顔で悪戯っぽく笑って、私の瞼に口付けを落とした。

 「今まさに夢の中にいるんだ、俺は。幼い頃からの。」

 神様に感謝するかのように、低く響きの善い声で呟く。
 誠実すぎる声は、赤面する私の心の奥底にまで届いていった。
 
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