1 / 7
0 プロローグ
しおりを挟む
雨の日の夜だった。コンビニに行く途中の交差点。横断歩道を渡っていた私。赤信号で突っ込んできたトラック。眩しい車のヘッドライトに私は目を塞いだ。
目を開けると、私は生まれたばかりの赤子になっていた。知らない天上である。
ベッドに仰向けになって、私の誕生を涙ぐみながら喜んでいる女性。私を産んだ母親だろう。現実離れした、金色の髪の美人である。二十代前半? 外国人だし、十代もありえる?
助産婦たちによって私は産湯につけられ、柔らかい布で丁寧に体を拭かれる。
どういうこと~? 私はコンビニに行く途中で……
『落ち着いてください』と、頭の中から声が聞こえた。
室内を飛び浮かんでいたのは蜻蛉のように透明な羽を持つ妖精だった。どうやら私以外には見えていないらしい。
『ここはどこ? わたしはだれ? あなたは?』と月並みなことを尋ねる。
『ここは、ユニレグニカ帝国のアリスター侯爵家の屋敷。あなたは間もなく、父であるアリスター侯爵からエリザベスと名付けられます。そして私は、イアーゴー。この世界に魂ごと迷い込んでしまったあなたをサポートするための存在です』
ユリレグニカ帝国という国名を私は聞いたことがなかった。世界には200カ国近い国があって、全部の名前を私が知っているわけではない。地球のどこかの国なのかもしれない。
が、妖精が空中に浮いている時点で察しがついた。そして、生まれたばかりの赤子である私が言語を理解しているのもおかしい。
『サポートがいるって心強いわ。よろしくね。それで、イアーゴー。私はつまり異世界に転生したってことね?』
『理解が早くて助かります』とイアーゴーは答える。
「生まれたか!」と、部屋に飛び込んできたのはイケメンの貴公子。
「旦那様! 部屋の外でお待ちくださいと言ったではありませんか!」と助産師が言うが、「浄化魔法で消毒済みだ」と言って、
「でかしたぞ! シルビア!」と、出産で疲れ、額に汗を浮かべている母の手を握りしめている。
「あなた、申し訳ありません。後継を生むことができず」と母は言った。
この人が私の父か。母も父も、美男美女。これ、私も順当に美女に育つ? と思ってしまうような容姿である。
「何を言う! 本当にでかした! 初めての出産だ。ゆっくり休め。愛しているぞ」と、頬に口付けをしていた。
『イアーゴーさん。ここは、“浄化魔法”と魔法がある世界。そして、母は出産が初めてということで私は長女。で、おそらく“後継”は男子という、男尊女卑的な思想の残る遅れた文明? それに、貴族という特権階級がいるということはつまり身分制度が存在しているのね。人権思想からすると後進的で硬直的な社会?』と私は頭の中で尋ねる。
『イアーゴーと呼び捨てで結構です。本当に、理解が早くて助かります、エリザベス』
「お前の名前は……そうだな……」と私を抱き上げ、数秒の沈黙と思慮の後、「決めた! お前の名前は“エリザベス”だ!! きっと、お母さん似の美人になる!」と、父は私を両手で抱き上げ、私に“エリザベス”という名前をつけた。
なるほどね。イアーゴーは、この世界のことをかなり把握している。
父はたった今、私の名前を思いついたようだ。もしかしたら未来の情報も把握しているのかもしれないと私は分析しながら、恐ろしいほどの疲労感を感じる。三日間徹夜して仕事をしたくらいの疲労感だ。
胎内から出てきたのだ。初めて臍の緒からの栄養供給なしで、私はこの世界に存在している。そして、赤子の未発達の脳で思考するには負担が大きいのかもしれない。
眠たい……。赤子の私は産声をあげるのをやめ、すやすやと眠りに落ちた。
目を開けると、私は生まれたばかりの赤子になっていた。知らない天上である。
ベッドに仰向けになって、私の誕生を涙ぐみながら喜んでいる女性。私を産んだ母親だろう。現実離れした、金色の髪の美人である。二十代前半? 外国人だし、十代もありえる?
助産婦たちによって私は産湯につけられ、柔らかい布で丁寧に体を拭かれる。
どういうこと~? 私はコンビニに行く途中で……
『落ち着いてください』と、頭の中から声が聞こえた。
室内を飛び浮かんでいたのは蜻蛉のように透明な羽を持つ妖精だった。どうやら私以外には見えていないらしい。
『ここはどこ? わたしはだれ? あなたは?』と月並みなことを尋ねる。
『ここは、ユニレグニカ帝国のアリスター侯爵家の屋敷。あなたは間もなく、父であるアリスター侯爵からエリザベスと名付けられます。そして私は、イアーゴー。この世界に魂ごと迷い込んでしまったあなたをサポートするための存在です』
ユリレグニカ帝国という国名を私は聞いたことがなかった。世界には200カ国近い国があって、全部の名前を私が知っているわけではない。地球のどこかの国なのかもしれない。
が、妖精が空中に浮いている時点で察しがついた。そして、生まれたばかりの赤子である私が言語を理解しているのもおかしい。
『サポートがいるって心強いわ。よろしくね。それで、イアーゴー。私はつまり異世界に転生したってことね?』
『理解が早くて助かります』とイアーゴーは答える。
「生まれたか!」と、部屋に飛び込んできたのはイケメンの貴公子。
「旦那様! 部屋の外でお待ちくださいと言ったではありませんか!」と助産師が言うが、「浄化魔法で消毒済みだ」と言って、
「でかしたぞ! シルビア!」と、出産で疲れ、額に汗を浮かべている母の手を握りしめている。
「あなた、申し訳ありません。後継を生むことができず」と母は言った。
この人が私の父か。母も父も、美男美女。これ、私も順当に美女に育つ? と思ってしまうような容姿である。
「何を言う! 本当にでかした! 初めての出産だ。ゆっくり休め。愛しているぞ」と、頬に口付けをしていた。
『イアーゴーさん。ここは、“浄化魔法”と魔法がある世界。そして、母は出産が初めてということで私は長女。で、おそらく“後継”は男子という、男尊女卑的な思想の残る遅れた文明? それに、貴族という特権階級がいるということはつまり身分制度が存在しているのね。人権思想からすると後進的で硬直的な社会?』と私は頭の中で尋ねる。
『イアーゴーと呼び捨てで結構です。本当に、理解が早くて助かります、エリザベス』
「お前の名前は……そうだな……」と私を抱き上げ、数秒の沈黙と思慮の後、「決めた! お前の名前は“エリザベス”だ!! きっと、お母さん似の美人になる!」と、父は私を両手で抱き上げ、私に“エリザベス”という名前をつけた。
なるほどね。イアーゴーは、この世界のことをかなり把握している。
父はたった今、私の名前を思いついたようだ。もしかしたら未来の情報も把握しているのかもしれないと私は分析しながら、恐ろしいほどの疲労感を感じる。三日間徹夜して仕事をしたくらいの疲労感だ。
胎内から出てきたのだ。初めて臍の緒からの栄養供給なしで、私はこの世界に存在している。そして、赤子の未発達の脳で思考するには負担が大きいのかもしれない。
眠たい……。赤子の私は産声をあげるのをやめ、すやすやと眠りに落ちた。
0
あなたにおすすめの小説
前世ブラックOLの私が転生したら悪役令嬢でした
タマ マコト
ファンタジー
過労で倒れたブラック企業勤めのOLは、目を覚ますと公爵令嬢アーデルハイトとして転生していた。しかも立場は“断罪予定の悪役令嬢”。だが彼女は恋愛や王子の愛を選ばず、社交界を「市場」と見抜く。王家の財政が危ういことを察知し、家の莫大な資産と金融知識を武器に“期限付き融資”という刃を突きつける。理想主義の王太子と衝突しながらも、彼女は決意する――破滅を回避するためではない。国家の金脈を握り、国そのものを立て直すために。悪役令嬢の経済戦争が、静かに幕を開ける。
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした
ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!?
容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。
「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」
ところが。
ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。
無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!?
でも、よく考えたら――
私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに)
お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。
これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。
じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――!
本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。
アイデア提供者:ゆう(YuFidi)
URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる