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第百四十話
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「――ご、ご主人様? こ、これは?」
この状況になることをヤマトとユイナは予想していたが、ルクスには何も説明をしていなかった。
「敵を騙すにはまず味方から、ということわざがあってね。一人は知らない人間がいることで、真実に見えてくるんだよ――ルクス、ごめんね」
戸惑うルクスの様子が伝わってきたヤマトは、視線をグレデルフェントから動かさずにルクスに謝罪する。
「そ、それはいいのですにゃ……それより、これは一体?」
ルクスが聞きたいのは、説明してもらえなかった理由などではなかった。状況から見るに、グレデルフェントとヤマト、ユイナが敵対している。
グレデルフェントは確かに登場してすぐに、魔族の一人を勝手な判断で殺してしまった。
かといってヤマトたちに敵対するというそぶりは見せていない。
ゆえに、なぜこのような状況になっているのかとルクスは驚いている。
「ふむふむ、彼には話していなかったのですね。それで、あなたたちお二人は私のことをどう考えてらっしゃるんですか?」
なるほどと何度か頷いたグレデルフェントは、ニヤニヤとした笑いを顔に浮かべて質問を口にする。
「そうですね、俺たちをこの世界に召喚したのは恐らく本当――できるかどうかはわからなかったけど、試してみたら召喚できた。力が初期値に戻ったのは、想定外のことだったのかもしれないです。面白いとは思ったけど、力がないと召喚した意味がない」
冷静な表情でヤマトは召喚された当時のことから自身の予想を交えつつ、話をしていく。
その説明を頷きながら、時に感心しながら、グレデルフェントは聞きに徹している。
ヤマトの分析力は当初から目をつけていた部分だけあり、どのような答えを出すのか興味深そうであった。
「もしかしたら、俺とユイナの成長に関して何かの力で監視していたのかもしれませんね。そして俺たちはグレデルフェントさんの期待に応えるように成長していった。塔にやってくることも予想はしていたんだろうと思います。だって、あそこにはトッププレイヤーなら必ず向かうだろう場所ですしね」
ヤマトは次々と説明していく中、言葉にすることでこれまで感じていた違和感が解けていくのを感じていた。
グレデルフェントが他の世界線を見ることができるということから、その力を他でも利用した可能性があると思っていたのだ。
「そして、実際に会ってみて能力が高いこと、それにボスと戦うに向けて、壊れた神話装備を持っていること――それらがグレデルフェントさんの期待にかなったのかもしれないですね。そして、魔王を倒すのが目的で俺たちを召喚したということにした」
ヤマトの話を黙って聞いていたグレデルフェントがニタっと目を細めて質問を返す。
「なるほど、話は筋が通ってますね。本当にそのとおりであれば……ですが。あなた方を呼んだのは魔王を倒すことが目的です。彼らはこの世界に悪い影響を及ぼす存在ですからね」
縛られている魔族二人、そしてヤマトに倒されたであろう魔王へ視線を送って、グレデルフェントはうっそりと笑っていた。
「それで……ここまでであなたの話で間違っているのは、私が魔王を倒すことを目的にしたというのが嘘というところだけで、あとはあっています。そして、その通りになっているので、問題があるようには思えませんが?」
ヤマトがこれから話すことをなんなのかわかっているが、それでもグレデルフェントは自分は何も怪しくないと大きく両手を開いて笑う。
「そこ、ですね。さっきから悪意に満ちた笑顔になっていますよ。あなたが俺たちを呼んだ目的は魔王討伐じゃない。魔王と対峙してみてわかりましたが、あいつは悪いやつじゃない」
それはヤマトの直感であったが、魔王とグレデルフェントの二人の身体に漂っているオーラの違いは、ユイナの目にははっきりと映っていた。
「――それに、あいつまだ生きていますしね」
ふっと笑ったヤマトがそう言うと、崩れ落ちた瓦礫の中からぬっと魔王が姿を現した。
「ふう、さすがにあれだけの時間瓦礫に潰されていると疲れるな。あと、お前の魔法はなかなか強力だったぞ……ったく、もう少し手加減をしてくれ」
やれやれといった様子で姿を現した魔王は、瓦礫の下にいる間にケガの治療を終えており、怪我一つない状態でヤマトたちのもとへとやってくる。
「な、なんでお前が生きているんだ!?」
魔王が無事であることを確認したグレデルフェントは、ここにきて初めて表情を崩し、動揺する。あれほどの攻撃を受けておいて傷一つなく動けていることが信じられないといった様子だ。
「そりゃ、演技だったからな? 途中でこいつから耳打ちされてな。刃を交えればなんとなくだが人となりが出るってもんでよ、戦ってみて嘘をつくようなやつだとは思えなかったから信じてみたのさ」
ふっと不敵な笑みを浮かべた魔王は、服についた埃を払いながらグレデルフェントの質問に答える。ヤマトは自分の言葉を信じてくれた魔王に心の中で感謝していた。
「……くっ、はっはっは! これはこれはやられました――倒したと思って姿を現したのに演技だったとは……いつから気付いていたんですか?」
「――最初に会った時から」
鋭い声音でヤマトが即答すると、グレデルフェントは目を大きく見開いて驚く。
「な、なぜ……?」
「この世界は基本的にゲームの時と大きな変化はない。もちろん街のつくりとかは時間経過とか、些細な違いなんだろうけど……それでも、ミノス、ポセイドン、精霊王のように力のある、個性の強いキャラクターの存在場所は変わらない」
動揺を隠しきれないグレデルフェントをよそに、ヤマトはゆっくりと手をあげてグレデルフェントを指差す。
「ただしグレデルフェント、あなたはこの世界に存在しない。それが本来のあなたです、しかしあなたはグレデルフェントだと名乗っている。彼は大層な肩書きを持っているけど、あくまで人です。人ならばそんなに長い時間生きているとは思えない――なら、あなたの正体は?」
その時、ヤマトの指摘を聞いたグレデルフェントの顔からすっと表情が消えた。
ヤマト:剣聖LV1000、大魔導士LV950、聖銃剣士LV929
ユイナ:弓聖LV1000、聖女LV950、聖強化士LV932、銃士LV911、森の巫女LV852
エクリプス:聖馬LV1000
ルクス:聖槍士LV949、サモナーLV1000
ガルプ:黄竜LV940
エグレ:黒鳳凰LV904
トルト:朱亀LV883
ティグ:青虎LV891
この状況になることをヤマトとユイナは予想していたが、ルクスには何も説明をしていなかった。
「敵を騙すにはまず味方から、ということわざがあってね。一人は知らない人間がいることで、真実に見えてくるんだよ――ルクス、ごめんね」
戸惑うルクスの様子が伝わってきたヤマトは、視線をグレデルフェントから動かさずにルクスに謝罪する。
「そ、それはいいのですにゃ……それより、これは一体?」
ルクスが聞きたいのは、説明してもらえなかった理由などではなかった。状況から見るに、グレデルフェントとヤマト、ユイナが敵対している。
グレデルフェントは確かに登場してすぐに、魔族の一人を勝手な判断で殺してしまった。
かといってヤマトたちに敵対するというそぶりは見せていない。
ゆえに、なぜこのような状況になっているのかとルクスは驚いている。
「ふむふむ、彼には話していなかったのですね。それで、あなたたちお二人は私のことをどう考えてらっしゃるんですか?」
なるほどと何度か頷いたグレデルフェントは、ニヤニヤとした笑いを顔に浮かべて質問を口にする。
「そうですね、俺たちをこの世界に召喚したのは恐らく本当――できるかどうかはわからなかったけど、試してみたら召喚できた。力が初期値に戻ったのは、想定外のことだったのかもしれないです。面白いとは思ったけど、力がないと召喚した意味がない」
冷静な表情でヤマトは召喚された当時のことから自身の予想を交えつつ、話をしていく。
その説明を頷きながら、時に感心しながら、グレデルフェントは聞きに徹している。
ヤマトの分析力は当初から目をつけていた部分だけあり、どのような答えを出すのか興味深そうであった。
「もしかしたら、俺とユイナの成長に関して何かの力で監視していたのかもしれませんね。そして俺たちはグレデルフェントさんの期待に応えるように成長していった。塔にやってくることも予想はしていたんだろうと思います。だって、あそこにはトッププレイヤーなら必ず向かうだろう場所ですしね」
ヤマトは次々と説明していく中、言葉にすることでこれまで感じていた違和感が解けていくのを感じていた。
グレデルフェントが他の世界線を見ることができるということから、その力を他でも利用した可能性があると思っていたのだ。
「そして、実際に会ってみて能力が高いこと、それにボスと戦うに向けて、壊れた神話装備を持っていること――それらがグレデルフェントさんの期待にかなったのかもしれないですね。そして、魔王を倒すのが目的で俺たちを召喚したということにした」
ヤマトの話を黙って聞いていたグレデルフェントがニタっと目を細めて質問を返す。
「なるほど、話は筋が通ってますね。本当にそのとおりであれば……ですが。あなた方を呼んだのは魔王を倒すことが目的です。彼らはこの世界に悪い影響を及ぼす存在ですからね」
縛られている魔族二人、そしてヤマトに倒されたであろう魔王へ視線を送って、グレデルフェントはうっそりと笑っていた。
「それで……ここまでであなたの話で間違っているのは、私が魔王を倒すことを目的にしたというのが嘘というところだけで、あとはあっています。そして、その通りになっているので、問題があるようには思えませんが?」
ヤマトがこれから話すことをなんなのかわかっているが、それでもグレデルフェントは自分は何も怪しくないと大きく両手を開いて笑う。
「そこ、ですね。さっきから悪意に満ちた笑顔になっていますよ。あなたが俺たちを呼んだ目的は魔王討伐じゃない。魔王と対峙してみてわかりましたが、あいつは悪いやつじゃない」
それはヤマトの直感であったが、魔王とグレデルフェントの二人の身体に漂っているオーラの違いは、ユイナの目にははっきりと映っていた。
「――それに、あいつまだ生きていますしね」
ふっと笑ったヤマトがそう言うと、崩れ落ちた瓦礫の中からぬっと魔王が姿を現した。
「ふう、さすがにあれだけの時間瓦礫に潰されていると疲れるな。あと、お前の魔法はなかなか強力だったぞ……ったく、もう少し手加減をしてくれ」
やれやれといった様子で姿を現した魔王は、瓦礫の下にいる間にケガの治療を終えており、怪我一つない状態でヤマトたちのもとへとやってくる。
「な、なんでお前が生きているんだ!?」
魔王が無事であることを確認したグレデルフェントは、ここにきて初めて表情を崩し、動揺する。あれほどの攻撃を受けておいて傷一つなく動けていることが信じられないといった様子だ。
「そりゃ、演技だったからな? 途中でこいつから耳打ちされてな。刃を交えればなんとなくだが人となりが出るってもんでよ、戦ってみて嘘をつくようなやつだとは思えなかったから信じてみたのさ」
ふっと不敵な笑みを浮かべた魔王は、服についた埃を払いながらグレデルフェントの質問に答える。ヤマトは自分の言葉を信じてくれた魔王に心の中で感謝していた。
「……くっ、はっはっは! これはこれはやられました――倒したと思って姿を現したのに演技だったとは……いつから気付いていたんですか?」
「――最初に会った時から」
鋭い声音でヤマトが即答すると、グレデルフェントは目を大きく見開いて驚く。
「な、なぜ……?」
「この世界は基本的にゲームの時と大きな変化はない。もちろん街のつくりとかは時間経過とか、些細な違いなんだろうけど……それでも、ミノス、ポセイドン、精霊王のように力のある、個性の強いキャラクターの存在場所は変わらない」
動揺を隠しきれないグレデルフェントをよそに、ヤマトはゆっくりと手をあげてグレデルフェントを指差す。
「ただしグレデルフェント、あなたはこの世界に存在しない。それが本来のあなたです、しかしあなたはグレデルフェントだと名乗っている。彼は大層な肩書きを持っているけど、あくまで人です。人ならばそんなに長い時間生きているとは思えない――なら、あなたの正体は?」
その時、ヤマトの指摘を聞いたグレデルフェントの顔からすっと表情が消えた。
ヤマト:剣聖LV1000、大魔導士LV950、聖銃剣士LV929
ユイナ:弓聖LV1000、聖女LV950、聖強化士LV932、銃士LV911、森の巫女LV852
エクリプス:聖馬LV1000
ルクス:聖槍士LV949、サモナーLV1000
ガルプ:黄竜LV940
エグレ:黒鳳凰LV904
トルト:朱亀LV883
ティグ:青虎LV891
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