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第三話
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世話焼きボッツに聞いたとおり、西の森は木々が生い茂ってはいるものの、目立って特別な素材などはないように見える。
「なるほど、これなら人が近寄らないのも理解できる。加えて、魔物の数が多い……」
魔物から素材が取れそうではあるが、これまた活用できる素材が少ないゴブリンやスライムが多く生息している森であり、冒険者が立ち寄る理由にはなりづらかった。
「それでいて、好戦的な魔物は少ない、と」
ゴブリンであれば人を襲いそうなものであったが、この森にいる魔物はユーゴが足を踏み入れても好奇の視線を送ってはくるものの、敵対心などは持っていないようだった。
「これなら、丁度いい。ここに小屋を建てるとしよう」
ユーゴは、森の奥深くに進んでいく。
金を稼ぐことは可能だが、現状資金は乏しい。
鍛冶師としてもこれから納品に向かう途中であったため、報酬をもらっていない状況だった。
「まずは、この森を足掛かりに金稼ぎから始めるか」
そうつぶやいたユーゴの頬は緩んでいた。
賢者としての力と知識は、魔法という形で様々な用途に使える。
地球の知識は、この世界に新しいものをもたらすのに使える。
鍛冶師としての腕前は一流といって遜色ない。
さらに言えば、これら三つが混ざり合うことでとてつもない面白い結果を生み出すんじゃないかと今から楽しみにしていた。
「小屋を建てるのに木を用意しないとだな。さて……」
ユーゴは居住エリアを作成するために、風魔法で木を切り倒していく。
一定数の木を確保したのちは、切り株を土魔法で掘り起こす。続けて、地盤を安定させるために土魔法で地ならしをしていく。
「これで下準備は完了だな。あとは……」
ここからは木の加工、組み立てを行っていき、夜が明ける前には見事なコテージができあがっていた。
崖から落ちて、街で情報収集をして、更には森に自分の家を建てる。
これだけのことを一晩でこなしたユーゴはさすがに疲れたため、空間魔法で保管していた昔のベッドを取り出して、眠りについた。
なんでこんなものまで入れていたのか? と前前世の自分のことを疑問に思いながらも、色々起こった急激な変化は相当体力を持っていっていたようで、あっという間に睡魔に襲われていた。
ユーゴが目覚めた頃には日も高くなっており、カーテンのない窓から強い光が入り込んでいた。
それによって強引に起こされたユーゴは、水魔法で顔を洗うと森の中を散策していく。
確かに、小屋に到着するまでの道のりではめぼしい素材などは見つからなかった。
しかし、ユーゴは森と呼ばれる規模でありながら何もないのは不自然なのではないかとも考えていた。
風魔法を使って、魔物たちがいる場所を探知していく。
特に魔物が多く集まっている場所。
そこには、きっと何か魔物たちにとって有益なものがあるはずだと、ユーゴは気配を消し、魔力を抑えて、その場所へと向かっていく。
(ほう……)
そこには、ゴブリン、スライム、ウルフなどの魔物が争わずに共生している姿があった。
ユーゴは徐々に気配をもとにもどし、その集まりの中に足を踏み入れていく。
小さな湖の周りにいる魔物たちはユーゴの姿に気づくが、敵意がないため、目立った反応を見せなかった。
『邪魔をして悪いな。危害を加えるつもりはないからそのままでいてくれ。何か面白い素材でもないかと思ってやってきただけだ』
ユーゴは言葉に魔力を込めて、魔物が理解できる言葉を話していく。
人間であるユーゴが、自分たちに理解できる言葉を発していることに魔物たちは一瞬驚き固まるが、ユーゴの気配とその言葉の意味を理解すると再びリラックスする。
「これだけ魔物が集まるとなれば、何かいいものがあるはず……これだ」
湖の周囲を移動していくと、反対側の湖岸に薬草が群生しているのを発見する。
一枚手に取ったところでユーゴは驚くこととなる。
「これはすごいな。普通の薬草じゃなくて、特薬草とか言われてる質の高いやつだ。それがこんなにあるなんて……」
ユーゴはそう呟くと周囲の魔物たちを確認する。誰かの固有の財産ではないが、それでもこの場所を先に見つけたのは魔物たちであるため持っていってもいいかと確認をとる。
何体かの魔物がユーゴを見ており、ユーゴの視線に対して頷いて返す。
特薬草といっても、そう分類づけて使用しているのは人だけであり魔物たちには毒にも薬にもならないただの草だった。
「それじゃあ、失礼して……」
ユーゴは特薬草を採集しては空間魔法で格納しを繰り返し、数十束集まったところで終了する。
かなりの量をとったにも関わらず、そこには未だ特薬草が群生していた。
「これなら、根こそぎ採らなければずっと採集し続けられる……思いがけずお宝スポットを発見してしまったな」
しかも、この森にはほとんど人がやってこないということなので、ユーゴが独占できる一人勝ち状態だといえる。
『みんな、悪いがたびたび来ることになると思うがよろしく頼む』
これからも自分が訪れることを伝え、軽く頭を下げるユーゴ。
それに対して、魔物たちは様々な反応をする。
――頷く者、無言で睨みつける者、興味がないため反応を示さない者。
しかし、ユーゴのことを拒絶するような反応は見られないため、とりあえずは受け入れられたと考えてその場を後にする。
帰りの道中でもユーゴは何かめぼしいものがないかと、確認しながらゆっくりとした歩みで移動するが、アレ以外にはこれといったものがなくそのままコテージへと帰ることにした。
小屋に戻ったユーゴは、昨晩コテージを作った際にあまった木材を利用して、小屋を建てることにする。
ユーゴが摘んできた特薬草。
これは通常の薬草よりも格段に回復量が大きいものである。
しかし、人間にも魔物にもそのまま使うには毒性が強いため、そのまま売るのは避けたほうが賢明である。
そのために、加工を行うための部屋が必要である。
そう考えたら行動は早く、数時間程度であっという間に加工作業用の部屋が建てられた。
仕上げに道具類を空間魔法で取り出して、あっという間に作業のスペースが生み出されていた。
「なるほど、これなら人が近寄らないのも理解できる。加えて、魔物の数が多い……」
魔物から素材が取れそうではあるが、これまた活用できる素材が少ないゴブリンやスライムが多く生息している森であり、冒険者が立ち寄る理由にはなりづらかった。
「それでいて、好戦的な魔物は少ない、と」
ゴブリンであれば人を襲いそうなものであったが、この森にいる魔物はユーゴが足を踏み入れても好奇の視線を送ってはくるものの、敵対心などは持っていないようだった。
「これなら、丁度いい。ここに小屋を建てるとしよう」
ユーゴは、森の奥深くに進んでいく。
金を稼ぐことは可能だが、現状資金は乏しい。
鍛冶師としてもこれから納品に向かう途中であったため、報酬をもらっていない状況だった。
「まずは、この森を足掛かりに金稼ぎから始めるか」
そうつぶやいたユーゴの頬は緩んでいた。
賢者としての力と知識は、魔法という形で様々な用途に使える。
地球の知識は、この世界に新しいものをもたらすのに使える。
鍛冶師としての腕前は一流といって遜色ない。
さらに言えば、これら三つが混ざり合うことでとてつもない面白い結果を生み出すんじゃないかと今から楽しみにしていた。
「小屋を建てるのに木を用意しないとだな。さて……」
ユーゴは居住エリアを作成するために、風魔法で木を切り倒していく。
一定数の木を確保したのちは、切り株を土魔法で掘り起こす。続けて、地盤を安定させるために土魔法で地ならしをしていく。
「これで下準備は完了だな。あとは……」
ここからは木の加工、組み立てを行っていき、夜が明ける前には見事なコテージができあがっていた。
崖から落ちて、街で情報収集をして、更には森に自分の家を建てる。
これだけのことを一晩でこなしたユーゴはさすがに疲れたため、空間魔法で保管していた昔のベッドを取り出して、眠りについた。
なんでこんなものまで入れていたのか? と前前世の自分のことを疑問に思いながらも、色々起こった急激な変化は相当体力を持っていっていたようで、あっという間に睡魔に襲われていた。
ユーゴが目覚めた頃には日も高くなっており、カーテンのない窓から強い光が入り込んでいた。
それによって強引に起こされたユーゴは、水魔法で顔を洗うと森の中を散策していく。
確かに、小屋に到着するまでの道のりではめぼしい素材などは見つからなかった。
しかし、ユーゴは森と呼ばれる規模でありながら何もないのは不自然なのではないかとも考えていた。
風魔法を使って、魔物たちがいる場所を探知していく。
特に魔物が多く集まっている場所。
そこには、きっと何か魔物たちにとって有益なものがあるはずだと、ユーゴは気配を消し、魔力を抑えて、その場所へと向かっていく。
(ほう……)
そこには、ゴブリン、スライム、ウルフなどの魔物が争わずに共生している姿があった。
ユーゴは徐々に気配をもとにもどし、その集まりの中に足を踏み入れていく。
小さな湖の周りにいる魔物たちはユーゴの姿に気づくが、敵意がないため、目立った反応を見せなかった。
『邪魔をして悪いな。危害を加えるつもりはないからそのままでいてくれ。何か面白い素材でもないかと思ってやってきただけだ』
ユーゴは言葉に魔力を込めて、魔物が理解できる言葉を話していく。
人間であるユーゴが、自分たちに理解できる言葉を発していることに魔物たちは一瞬驚き固まるが、ユーゴの気配とその言葉の意味を理解すると再びリラックスする。
「これだけ魔物が集まるとなれば、何かいいものがあるはず……これだ」
湖の周囲を移動していくと、反対側の湖岸に薬草が群生しているのを発見する。
一枚手に取ったところでユーゴは驚くこととなる。
「これはすごいな。普通の薬草じゃなくて、特薬草とか言われてる質の高いやつだ。それがこんなにあるなんて……」
ユーゴはそう呟くと周囲の魔物たちを確認する。誰かの固有の財産ではないが、それでもこの場所を先に見つけたのは魔物たちであるため持っていってもいいかと確認をとる。
何体かの魔物がユーゴを見ており、ユーゴの視線に対して頷いて返す。
特薬草といっても、そう分類づけて使用しているのは人だけであり魔物たちには毒にも薬にもならないただの草だった。
「それじゃあ、失礼して……」
ユーゴは特薬草を採集しては空間魔法で格納しを繰り返し、数十束集まったところで終了する。
かなりの量をとったにも関わらず、そこには未だ特薬草が群生していた。
「これなら、根こそぎ採らなければずっと採集し続けられる……思いがけずお宝スポットを発見してしまったな」
しかも、この森にはほとんど人がやってこないということなので、ユーゴが独占できる一人勝ち状態だといえる。
『みんな、悪いがたびたび来ることになると思うがよろしく頼む』
これからも自分が訪れることを伝え、軽く頭を下げるユーゴ。
それに対して、魔物たちは様々な反応をする。
――頷く者、無言で睨みつける者、興味がないため反応を示さない者。
しかし、ユーゴのことを拒絶するような反応は見られないため、とりあえずは受け入れられたと考えてその場を後にする。
帰りの道中でもユーゴは何かめぼしいものがないかと、確認しながらゆっくりとした歩みで移動するが、アレ以外にはこれといったものがなくそのままコテージへと帰ることにした。
小屋に戻ったユーゴは、昨晩コテージを作った際にあまった木材を利用して、小屋を建てることにする。
ユーゴが摘んできた特薬草。
これは通常の薬草よりも格段に回復量が大きいものである。
しかし、人間にも魔物にもそのまま使うには毒性が強いため、そのまま売るのは避けたほうが賢明である。
そのために、加工を行うための部屋が必要である。
そう考えたら行動は早く、数時間程度であっという間に加工作業用の部屋が建てられた。
仕上げに道具類を空間魔法で取り出して、あっという間に作業のスペースが生み出されていた。
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