兄ちゃん、これって普通?

ジャム

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この気持ちを罪だと言うなら、誰が助けてくれるのだろう。
僕達は、欠けたピースの様にお互いを埋めているだけ。
求めた形が、『それ』だっただけ。
だけど、それでも。
何も迷わない訳じゃない。
僕達は、きっとずっと同じ傷を背負って生きていくんだろう。
それこそ。
本望かも知れない。

労るように僕の髪を何度も何度も梳く兄ちゃんの手を掴んで、僕は兄ちゃんを見つめた。
「兄ちゃん、好きだよ」
そう笑って言えたことが、僕は本当に嬉しかった。






それから、2年後。
「ちょ、マジかよ・・!?」
「ダイキーー、ちゅーしてくれ~!」
深夜2時。
玄関には、ベロベロに酔っ払った兄ちゃんが地べたに座って僕に両手を広げて、抱っこしてのポーズ。
高校の時より髪を少し伸ばした兄ちゃんは、あの頃よりもっと鋭い目つきになっていて、体には大人らしい筋肉が付き、精悍な雰囲気は悪く無いけど、一見して凶悪な見た目には近寄り難いものがあった。
あの頃より、僕の背も体重も増えた筈だが、やっぱり兄ちゃんより一回り体が小さく感じてしまう。
「もう・・!酒飲まないって言ってたの誰だよッ!」
僕は自分の額を手で押え、兄の姿に思わず盛大な溜め息が零れてしまう。
なぜなら、兄がこうなると、もう手がつけられないからだ。
しかも、だいたい記憶が無いとくるから、腹が立つ。
なのに、こんな時の兄は凄絶な雄の欲望丸出しで自分を求めてくるから、否が応にも酷く自分まで昂ってしまう。
だから、イヤなんだ・・!
普段は甘過ぎるくらい甘いくせに・・!
酔っ払ってる時は、恐いくらい激しく求めてくる。
それが普段は抑え込んでいる欲望なのかと思い知らされる程に激しくて、僕自身、自分の体でさえコントロールを失う程にこの兄に感じてしまう。
「マジで・・勘弁してくれよ・・兄ちゃん」
早くこの玄関から抱き起こして、介抱してやりたい気持ちは山々なのだが。
今、手を伸ばせば、この場で今すぐに押し倒されて、犯されかねない。
その杞憂に、兄ちゃんに触れる事がどうしても出来ない。
「兄ちゃん・・頑張って、自分で上がれ!僕は手貸さないからな」
「えええ・・っ冷てえ、弟だな・・。オレが、こんな弱ってんのに・・」
そう言って、本当に目に涙を滲ませるから質が悪い!
「兄ちゃん・・!」
ダメだダメだ・・!騙されるな・・!そうやって何回、僕は兄ちゃんに捕まった!?
どんなに抵抗したって、その場で骨までしゃぶられる程に体中を嘗め回されて、イカされて、喘がされて、どんな目に合ったか・・!
それでいて、何も憶えてないって言うんだ!この人は!
冗談じゃない・・っ
僕は猛獣用のエサじゃないんだぞ・・!?
そうそう、しゃぶり尽くされて堪るか・・!!
「兄ちゃん。今日は絶対、手貸さないからな!自分で上がって来い!」
「ダイキ・・なんだよ・・?オレの事キライになったのか?」
赤ら顔で目を潤ませる兄ちゃんの姿に、ゾゾッと背筋が戦慄いたのは事実だけど、とにかく、ここで折れる訳にはいかない。
玄関でなんて、僕は絶対ヤりたくない!!
「キライとかそんな話じゃねえよッ兄ちゃん・・っ頼むからっ頼むから、僕の部屋まで来い!」
なんとか、兄に手を伸ばしてしまわないように自分の腕を自分で封じ、兄との距離を取る。
すると、ゆっくりと兄が、地べたに膝を突いた。
そこから、のっそりと立ち上がる。
そして、足を上げて。
「兄ちゃん!靴!靴は脱げ!!」
「あー?」
面倒くせえな~、と兄ちゃんは靴を脱ぐと後ろへ放り投げた。
それがドアに当たり、ガン!ガン!!と派手に音が鳴る。
「あ~~っもう、マジでいい加減にしろ・・!母さん起きるだろが・・!!」
ヤキモキしつつも、絶対兄に捕まらないように後ずさりする。
兄ちゃんは、フラつきながらも壁伝いに足を前に出して進んで来る。
僕もそれに合わせて、距離を取り、階段を後ろ向きに上がりながら兄ちゃんの様子に気をつけていた。
「部屋行ったら・・抱くからな」
そう僕を野獣の目で睨みつけ、今にも襲いかかられそうな雰囲気に気圧された僕は、あ、と思った瞬間に階段を踏み外してしまった。
「イタッ・・!」
滑るように体が落ち、連続で硬い段差に足や尻を打ち付ける。
壁に手を伸ばして、何も掴めずあっさり壁を通り過ぎた手は、数段下に居た兄の体に縋り付いていた。
「あっぶねえな・・このアホっ」
「に、兄ちゃんが悪いんだろ・・!」
「お前な・・助けて貰った態度かよ。もう知らねえ」
そう言うが早いか、兄ちゃんが僕の髪を後ろに引き、首を仰け反らせると、その唇を奪った。
「んー・・・!んんっ・・ヤ・・」
密着した体から服がずり下げられ、硬い階段の途中に座らせられた僕は、兄ちゃんに膝の裏を取られた。
大きく開かされた股の間に、兄ちゃんが頭を落として来る。
必死にそうされたくなくて、兄ちゃんの服を掴んで抵抗するが、それは、ただ兄ちゃんの服を脱がす手伝いにしかならず、殆ど何の抵抗もなく、兄ちゃんが僕のそこにむしゃぶりついてしまう。
「や・・だめ・・っそれ・・だめ・・っにいちゃ・・!」
たっぷりと唾液を乗せた舌で、緋肉を犯される。
兄ちゃんは吐息混じりに舌で粘膜をやさしく嬲り、僕を激しく煽ってくる。
そこがジンジンと熱くなる。
その熱を煽るように、丁寧に、やさしく、僕が兄ちゃんを欲しくなるように犯してくる。
「んんっ・・にいちゃ・・っ」
「ヒクヒク言ってるぞ。欲しくて堪んねえだろ?ここでスるか?」
言いながら、更に長い指を狭い肉壁の中へと埋めてくる。
「ひっ・・」
悲鳴を上げそうになって、僕は息を飲み込んだ。
「オレももう爆発寸前だ・・。挿れてやろっか?なあ」
そんな事、絶対噓なんだ。
ここで始めてしまったら、最後、きっと1時間はここで啼く事になる。
僕は霞む視界の中で、顔を横に振った。
「やめて・・にいちゃ」
「やめる?・・ムリに決まってんだろ」
ニヤリと笑った兄ちゃんが、自分のズボンを下ろした。
「やだ・・っにいちゃん・・!」
グッと熱いものが押し当てられて、僕は絶望に襲われる。
けれど、体は既に言う事を聞かず、兄ちゃんの唾液で解されたソコは、兄ちゃんの性器を喜んで受け入れようとしていた。
「ホラ、開けって」
「ア・・ーーーッ」
両膝を大きく開かされて、そこに兄ちゃんのモノがズルリッと侵入してきた。
「もっとだろ」
更に、足を上げさせられ、兄ちゃんの肩へと乗せられてしまうと、もう兄ちゃんの侵入を拒む事は不可能だった。
大きく広げられた肉の輪が目一杯に兄ちゃんを咥え込み、美味しそうに蜜を零してしまう。
その蜜の滴る中、兄ちゃんの粗暴な性器が一旦根元まで這入り込んだ後、ゆるゆると抽挿を始めた。
「ダイキっ」
「ひあ・・っ」
襲い来る快感に、目の前がチカチカと眩む。
目を閉じても、それは収まらず、僕は必死に兄ちゃんにしがみ付いた。
階段から落ちないようにしっかりと抱き合い、兄ちゃんをより深く、体の中へ受け入れる。
「にいちゃ・・っ」
「ああ、愛してるっダイキ・・愛してる・・っ」
「もっと・・もっと奥・・シて・・っ」
荒い呼吸の中、唇を押し付け合い、奪うように舌を入れ、熱く濃くキスを交わしながら、兄ちゃんが上り詰めていくのを腹の中で感じた。
「ダイキ・・っ好きだ・・好きだ・・っ」
「にいっちゃ・・っんんんっ・・!」
体の深部で、兄ちゃんの欲望が弾ける。
断続的に起る躍動に、肉襞が嬉々として絡み付いていくのがわかって、自分でもなんて浅ましい身体なのかと、恥ずかしくなってしまう。
こんなに、思っているように体が動くものなのだろうか?
兄ちゃんの全てを受け止めたいと思っているから、体が反応するのだろうか?
「すげえ・・全部、絞り取られそうだ・・っ」
耳元にそう言われて、僕は恥ずかしくなって、顔を背けた。
「おい、どこ見てる。顔、こっちに見せろ」
顎を取られて、マジマジと顔を見つめられ、僕は唇を噛んだ。
「噛むな」
そう言われて、代わりに兄ちゃんの指が僕の口の中に這入ってくる。
「やあ・・っ」
口元から溢れた唾液が糸を引いて落ちる。
「声、殺すな」
そして、再びゆったりと兄ちゃんが腰を使い出す。
「にいちゃ・・おねが・・っ・・ここ、ヤダッ・・!!」
「ああ・・。いいのか?抜いて」
意外にも兄ちゃんが部屋に移る事に同意してくれたが、僕はここで首を振ってしまった。
「抜かないで・・っ」
「ったく・・。そんなにイイかよ」
「イイよぉ・・っすごい・・イイよ、にいちゃん・・っダメ・・っもう、ヤだ」
「イイのにヤだってどういう事だよ・・」
クスクスと笑う兄ちゃんに体を持ち上げられる。
勿論、繋がったまま。
「良過ぎて・・もう、ダメ・・っ耐えらんない・・」
そう言った僕の額に兄ちゃんがチュッと音の出るキスをしてくる。
「可愛い奴・・。お前、オレを落とす天才だよ」
密着した体から兄ちゃんの心臓の音が響いてくる。
その少しざわついた音に、胸が熱くなる。
もっと、もっと、いっぱい、一番・・。
「ダイスキ・・にいちゃん」
箍が外れてるのは、僕も一緒。
兄ちゃんが、僕を大事に、一番に想ってくれるから。
だから、僕も、この時だけ、自分の欲望に素直に、正直になれる。
「部屋に入ったら・・めちゃくちゃ抱くからな・・っ」

ダイキを前に、余裕が無いのは、いつもの事だ。
けど、こんな日は、ダイキは全てを許し、全てを曝け出してくれる。
オレをどう想ってるのか、オレを本当に求めてくれているのか。
あの日の過ちを償う術はどこにも無い。
けれど、それが幸運にも、オレにとって都合のいい免罪符を与えてくれた。
オレは全てを忘れたフリをして、ダイキを抱きたいだけ抱いて、ダイキが自分のものだと確認する。
あれ以来、酒を飲んだオレの記憶が飛ぶと思ってるダイキは、酔ったオレに抱かれる日は、何もかも脱ぎ捨ててくれた。
我が侭も言いたい放題、だけど、喘ぎ方は普段の時の3割増しだ。
そんな姿を見せられて、普通でいれる訳がない。
こんなダイキ、誰にも見せたくない。
オレにだけ、善がって、啼いて、激しく求めて欲しい。
「ダイキ・・愛してる」
「にいちゃ・・僕も・・スキ・・ダイスキ・・!!」
「ああ、一生・・大事にするからな・・ダイキ」
つい想い余って口をついた台詞に、ダイキが目を見開いた。
「一生・・?」
聞き返してくるダイキに、キリっと胃の辺りが痛む。
「いや、か?」
尋ねると、ダイキは首を横に振って、目を細めて答えた。
「一生、にいちゃんと居る」
一瞬、その聞き覚えのあるフレーズに思考が固まり、オレは吹き出してしまった。
「な、なんだよ・・っ人が真面目に・・!」
「いや、違くて・・。叶ったなって思ってさ」
「何が・・?」
「オレの『一生のお願い』がさ」
そこで、オレ達は顔を見合わせ、また吹き出してしまった。

ダイキと始めてしたキスを思い出しながら、オレはゆっくりとダイキの唇に自分の唇を押し当てた。

あの日のことを、思い出す。
『本当に、一生のお願いだったら、聞いてくれんだな?』
『うん。本当に、ならね』
少し困ったように笑ったダイキの顔を、オレは生涯忘れないだろう。



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