兄ちゃん、これって普通?

ジャム

文字の大きさ
上 下
4 / 16

しおりを挟む
予告付きのキスに、僕は身震いして、掌を握り込んだ。
ゆっくりと近づいてきた兄の唇。
僕は抵抗するどころか、薄く唇を開けて、その甘い弾力を受け止めた。
そして、唇の隙間から遠慮無く兄の舌が這入ってくる。
鳥肌が立つ程に、抗い難い快感に支配されて、僕はソファーに仰け反り兄の首に腕を回した。
すると、兄の手が僕のシャツの上から、小さな胸の突起を押し潰してくる。
思わず、肩がビクリと上がり、僕は慌てて兄の手を掴み唇を離した。
「なに・・して・・」
「ダイキ、俺、シたいんだけど」
「え・・なにを?」
「エッチな事」
「え。エッチって・・せ、せ、せ」
「どもるな。セックスじゃねえから。エッチな事がシたいだけ。な?ちょっとだけ」
そう言って再び兄の唇が落ちてくる。
と、同時に兄にシャツの裾を捲り上げられて、服の中に潜り込んで来た手が、僕の乳首を指で挟んで押し潰した。
「ン~~~っっ」
顔が熱くなる。
そこから起こる痛みとシビレが、キスで痺れた唇とリンクする。
「や・・それ、イタイ・・」
「痛くねえだろ。すげえ優しく触ってるし。ほら、大丈夫だろ?な?」
確かに摘まれている感覚はあるが、痛みはそれ程ない。
それでも、目の前で自分の乳首を弄ぶ兄の指先を見ていると、どんどん顔がのぼせてくる。
「や、やだ・・なんか、やだっこれ・・」
兄の手を掴んでそこから引き離そうとすると、兄がその手を逆に掴んだ。
「じゃあ舌な?舌なら痛くねえよな」
「えっ・・舌って」

舐めるってこと、・・だよな。
それって、なんかヤバい気する・・!

そう思っても、もう遅い。
無駄の無い動きで、ソファーから下りた兄が、僕の伸ばした足の上を膝立ちで跨いだ。
その体を押しのけようと伸ばした腕は、あっさりと兄に捕らえられて、その両手は、指と指を組んで握り込まれてしまう。
上から見下ろされて、兄が溜め息を吐いた。
「お前な・・抵抗すんな。俺に、逆らうな」
いつも以上に鋭い視線と、めったに聞かない命令口調に、僕の体が縫い付けられて動けなくなる。
僕の手から力が抜けていくのを確かめた兄が、手を放し、僕の服をたくし上げた。
口を開けた兄が目の前に屈んでいく。
自分の胸にピリっとした痛みが走ったのは一瞬で、すぐに熱い粘膜で覆われたソコは僕の全身を粟立たせた。
ねっとりと嬲るような兄の舌に、何度も胸の粒を転がされ、押し潰されて、最後は口の中へ吸われて、堪らず兄の服を掴んだ。
呼吸を荒くした僕は、兄の肩に縋るように掴まり、太腿の内側を震えさせていた。

なんだ・・これ・・?
ピリピリする・・っ
ヤバい・・っ
ヤバいって・・これ反則・・っ
こんなとこが、気持ちイイなんて知らない・・!

「にいちゃ・・っ」
快感に耐えきれず、自分の胸に顔を埋める兄の頭へ自分の頭をもたげた。
と、兄の顔がそこから離れ、すぐに僕の唇と唇を合わせると乱暴に口の中へと這入ってきた。
「ん・・っ」
それから、また指の腹で胸の粒を捏ねるように弄られる。
が、そこが唾液で濡れた分、指で触れられているだけでも呼吸が乱れそうに熱くなる。
抵抗したくても出来ない、もどかしいその感覚に、立てた足の爪先がビクビクと震えた。

あー・・ヤバいっ
こんなんされたら・・勃つ。
勃っちゃうって・・!
アーー・・・やめてくれ・・。

何度も何度も口角を変え口の中を嬲られながら、胸の粒をぐりぐりと押し潰されたり引っ張られたりしている内に、身体の中心がどうしようもない程に熱を持ち始める。
やっと唇を離してくれた兄が僕の唇から零れた唾液を舌で舐め上げた。
それから、優しく僕の目元に、頬に、耳に、キスを落とす。
その間中、自分の胸が激しく上下する。
兄に触られて、快感に喘いでいるのは、一目瞭然。
なのに、わかりきってるだろうに、兄はわざわざ僕に「気持ちいいのか?」と、質問した。
顔がカッと熱くなる。
それから、どんなに兄を睨みつけてみても、勿論答えが変わる訳ではない。
こんな事を言わされるなんて・・これなら、酒を飲んでおけば良かったと、今更ながらに後悔した。
飲んでいれば、酔ってるせいだとか、覚えてないとか、色々言い訳が出来た筈だ。
フと目線を上げた自分の視界に映ったのは。
テーブルの上に転がる缶チューハイの空き缶。
「兄ちゃん・・飲んでんの?」
「2本だけな。お前も飲みたい?一本開けてないのあるぞ」
兄はテーブルの方へ手を伸ばして、その缶を取ると僕に向けた。
その顔がやたら機嫌良さそうに笑うのを、僕は真っすぐに見れずに缶を開ける。
たった数パーセントのアルコールを摂取するだけで、理性と言う名の箍が外れるなら、もう外してしまいたい。
自分で外せないなら、引き金になって欲しい。
そう思って、ゴクゴクとそれを喉の奥へと流し込んだ。
すると、兄が驚いた様子で、既に空になったチューハイの缶を僕の手からひったくった。
「アホっお前、一気に飲むなっ・・ったくあぶねえな・・」

あーそっか。急性アルコール中毒って、こういうのでなるんだっけ。
とにかく。飲んだ。
これで、大丈夫。
何が大丈夫かわかんないけど!とりあえず、言い訳は用意出来た!
のに。
なんか兄ちゃんの様子がおかしい。

目がトロンとして瞼が重たそうに下がり、口元を少し引き上げて僕の首に抱きついてくる。
それから覚悟してたように、首筋に唇を当てられて、僕は体をビクリと揺らした。
「にいちゃん・・」
「んー・・ダイキ。ダイキ、俺、めっちゃシアワセだ・・」
再び兄の手が服の中に潜り込んで来た。
けど、それは、急に力無くぱたりと落ちる。
それから、僕の耳元で兄の寝息が聞こえ出す。
「兄ちゃん・・寝るなよ・・!」

覚悟決めて、体も準備万端、完全勃起。
なのに・・っ
なんで、やる気満々だった奴が急に寝るんだよ!
サイアク・・。
酒の力、サイアク・・!

頭にキタ僕は、寝息を立てる兄の首筋を舐めながら、自分のズボンの中へ手を突っ込んだ。
兄を片手で抱き寄せ、兄の匂いを嗅ぎながらオナる。

いいのかよ・・っ兄ちゃんがこうしたかったんじゃねえのかよ・・!?

すぐにゴールは見えてきて、頭の中が霞んでく。
「気持ちイ・・ッ」
噴き出す寸でのところで、僕は手を止めた。
こんな状態の僕をほったらかす兄を憎々しく睨みつけ、自分から初めて兄にキスをした。
「いーのかよ・・にいちゃん。一人でイってもいーのかよ・・?」
囁いても、兄はピクリとも瞼を上げない。

仕方無く。

テーブルの下に置いてあったティッシュを引き寄せて、自分の肩につっぷす兄の横で手を動かした。
ティッシュを数枚片手に取り、呆気なくフィニッシュを迎える。
寝ているとは言え、兄のすぐ横でオナるなんて大胆な行動を取った自分に・・これもアルコールのせいだな、と、木場の事も含め、酒の力のスゴさに思わず唸っていた。

酒で人格変わるってホントなんだな。
気をつけないと・・今日みたく、マジで兄ちゃんに流されかねない・・よな。
ヤバいよ。
気持ちがついてってないのに・・。
体だけ落とされ掛けてる。

そう自分を反省し、兄の寝顔を少し眺めてから、なんとなくもう一度触れるだけのキスをした。
それから兄に毛布を持ってきて体に掛けてやり、自分は部屋のベッドで休んだ。

その後。
自分が全く酒に酔わないタイプだと知ったのは、この数日後の年末のことだった・・。
しおりを挟む

処理中です...