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鳥籠の中の楽園8
しおりを挟む「ほう・・」
新藤がクリップで纏められた数枚の資料に目を通しながら感嘆の声を漏らす。
拉致未遂の現場から咲坂の運転でマンションに戻ると、新藤は中澤に風呂で体を温めて来いと浴室へ行かせ、自分は煙草に火を点けて寝室へ向かった。
部屋の中はそれほど寒くはなかったが、風呂上がりの中澤に風邪を引かせないようにとエアコンを入れる。
ダークブラウンのフローリングの真ん中にはキングサイズのベッド、ベッドの向こう側には腰高のガラス扉のついた黒い木目調のキャビネットが置かれ、窓は殆ど閉め切りで萌黄色の分厚いカーテンが掛けられている。
新藤はスーツの上着を脱ぐとベッドの上へ放り投げ、キャビネットからブランデーと口広のグラスを出して、そこへ3分の一程酒を注ぎ、それを一気に煽った。
新藤が寝酒用にこの部屋にしたためている酒は殆どが高級品で値段も張る。
それを、こんなビールを一気飲みするようなやり方で普段は飲まない。
睡眠時間も短く、寝つきの悪い新藤が酒の力を借りてベッドに入る事は少なくない。
特にイラついている時は神経が高ぶったまま眠気がなかなか来ないため、寝る態勢に持って行くまでに時間が掛かる。
出来るだけ気持ちを落ち着けようと酒の力を借りるのだが、その味が今ひとつでは溜息が出る。落ち着くどころか、忌々しくなり、飲むだけ酒の無駄だ。
とは言うものの、その力も無いよりはマシ、な程度だが。
刺激物が放り込まれた胃が、すぐに次の刺激を欲しがって動き出し、新藤はグラスにもう一杯酒を注ぎ足した。
中澤が標的にされた事にも苛立ったが、自分の忠告を無視した中澤にも腹が立っていた。
連中に囲まれ、身を固くしていた中澤の姿を思い出すと、もし自分が間に合わなかったらどうなっていたのかと最悪の状況を想像してしまう。その想像に胸糞悪さと苛立ちが倍増し、それを払拭するように酒を煽った。
暫くそうしてアルコール度の高い酒を片手にイライラと携帯端末を弄っていると、インターフォンが玄関で鳴った。
使いにやっていた咲坂が戻って来たのだろう。
咲坂はまだ若いが、言葉遣いも割としっかりしていて、従順で動きもいい。
ただ、やけに中澤に懐いているところが少し気になるが、自分の下に付いて2年。オレが大事にしているものに手を出したり、裏切ったりする事はまず無い男だった。
それだけ奴は、オレの間近で怖いものを見てきたからだろう。
咲坂はドアの前できっちりと最敬礼して玄関に入り、新藤からの頼まれ物が入ったビニール袋と数枚のコピーを新藤に差し出した。
どうやら、うちの組の風俗店で扱っている品と『やさしい縛り方』と銘打った緊縛マニュアルのコピーを取って来たらしい。
よく気が利いているが、この『やさしい』の文字に妙に苛立つ。
舐められているような気がして、どうせなら上級編を持って来い、と言いたくなったが、無表情に資料に目を通していくと、幾何学模様で縛られている女の裸の写真が何枚かサンプルとして写っている。
手足を窮屈に折り曲げたまま縛られ、胸の丸みや尻たぶに五角形の縄を食い込ませて局部を露わにしている姿は、まるでスパイダーマンだ。
どうすれば乳首の回りまで縛れるのか。その緻密なテクニックに唖然としてしまった。
目を見開いて濃いシワを眉間に刻む新藤の表情に、咲坂はまずいと直感した。これは余計な真似をしてしまったと青ざめ、新藤に撃鉄を落とされる前に逃げなければと「失礼します!」を大声で繰り返して、その場を後にした。
そんな咲坂の様子にも気づかず結び目に目を凝らしていた新藤だが、バタン!とドアの閉まる音を聞いて我に返ると早々に資料の読解を諦めた。
蓋つきのゴミ箱にコピーを丸めて捨てる。
寝室へと戻りながらビニール袋を開けて、中身を取り出して見た。
鮮やかな赤い縄ーーーと言うよりも、紐が編み込まれた物、と言った方が正しい気がする。
なるほど『やさしい』訳だ。
5m程もある縄(太い紐)を伸ばしたり輪にしたり眺めている内に中澤が風呂から出て来た。
「新藤さん・・」
思わず、と言った様子で自分を見つめる中澤が白いバスローブの胸の合わせを握り締める。
「座れよ」
新藤がベッドへと目で示すと、中澤はゆっくり恐る恐ると言った感じでベッドへと腰掛けた。その後ろへ、縄を手にした新藤が回る。
「千垣、お前、オレの忠告をなぜ無視した?一人になるなってオレは言ったよな?」
後ろから勢い良くバスローブの肩を引き下ろしてそれを脱がし、全裸の中澤の脇に腕を入れて縄を通し、まだ柔らかい胸の粒を挟むように胸の前で縄を交差させる。
「しょうがないじゃないですか・・買い物に行きたくて・・アッ」
ギュッと背中で引き絞り、蝶々結びで止めた後、余りの縄を鋏で切る。
背中の蒼い虎を縛る結び目に垂れる赤い縄がまるで女のビキニでもつけているように扇情的に映る。
「入墨だけでもいいが、これはこれで、そそるな」
「新藤さん・・っどうする気なんですか・・?」
「何寝ぼけた事言ってる。お前が、あの時、捕まってたらどうなるかって事を教えてやってんだろうが」
低い怒声を響かせた新藤の腕に掴まれ、中澤の体がベッドの上へと仰向けに倒される。
ベッドのスプリングが男二人の体重に跳ね、大きく二度揺れる。
「千垣」
名前を呼ばれて、反射的に閉じていた目を開くと目の前には新藤の冷たい視線が自分を見据えていた。
こんな新藤の表情は久しぶりだった。
そう、きっと入墨を入れられた時以来・・・、まだ他人でいられた頃の何となく投げられた冷たい視線だ。
「お前、耐えられるか?オレ以外の男をここに挿れられるのか?」
新藤の手が荒々しく中澤の股を割った。
風呂上がりの肌はまだ湿っていて、新藤の指がそこを強くこじ開けるのもあっけなく許してしまう。
「おい、少しは抵抗しろよ。これがオレじゃなかったら、お前、簡単に嵌められてるぞ」
至近距離で中澤の目を覗き込み凄みを利かせると、中澤はゴクリと喉を鳴らしてから震える声で訴えた。
「し、新藤さんが、・・相手、だから・・抵抗、出来ないんじゃないですか・・っ」
怖いのだと、中澤の目が揺れている。
「お前な・・」
これじゃ脅してる意味がないだろうが、と、新藤は中澤の髪をくしゃくしゃと撫でてから唇を合わせた。
「あ、・・新藤さ・・」
掻き毟るように中澤の首の後ろを抱き、舌で歯列を撫で唇を吸って、粘膜同士を絡み合わせる。
激しく求め合うように角度を変えて唇を噛ませ合わせ、お互いの唾液で口の周りが濡れる。
そのまま中澤の顎から首筋を舐めまわしながら、尻に含ませた中指を根元まで沈めた。
「あ・・ああ・・っ」
体の奥を探られ、中澤の尻が浮く。
「これでどうやって貞操を守るつもりだ?」
新藤の指の動きに合わせて小刻みに中澤の腰が揺れると、新藤の指を銜え込んでいた肉壁が少しずつ緩み出す。
「そら、お許しが出たぞ」
2本目を中に抉じ入れ、中の指を曲げて襞を掻き回してやると、中澤はつま先をシーツの上で突っ張って身を捩る。
「どうするんだ?もう一本入れてくれって、犯してくれって頼むつもりか?」
グチャグチャと淫らな粘膜が激しく掻き混ぜられ、新藤の指の動きに合わせて中澤の開いた両足の間から水音が鳴る。
「ひ・・っや、あ・・・!」
感じる場所をしつこく捏ねられて、中澤は息を荒げて新藤の背中に腕を回して力一杯しがみついた。
「輪姦されてみろ・・皆殺しにしてやる・・」
中澤の耳元で獣の唸り声がした。
直後、指よりも熱く肉厚で逞しい物が尻の間に押し当てられる。
「ア・・・」
腰骨を大きな手で固定され、ググッと力任せに張りのある先端が中澤の中へと挿いり込み、その今までにない大きさに中澤は震えた。
巨大な肉塊に狭い肉筒の中へ潜り込まれ、生理的な涙が浮かぶ。
「痛、い・・いた、い・・・新藤さ、ん・・」
「バカ野郎・・犯される時は、こんなもんじゃねえぞ。ただ抉られて、好き放題突き上げられて、血だらけになろうが、ガバガバになろうが、4人も5人も連続で咥えこまされるんだぞ」
それでも、いいのか?
と新藤が腰を引く。
さすがに傷をつける気はないのか、そこからはゆっくりと何度も先端だけを出し入れして、新藤のカリ首を中澤が無理なく飲み込めるようにしてから、先を続けた。
その頃には中澤の痛みもなくなり、新藤を求める喘ぎ声が口の端から漏れてしまう。
「こんな、こと・・新藤さんにしか・・出来ませんっ新藤さんにしか・・っ」
言いながら、もっと欲しいと中澤が自分の膝に手を掛けて開く。
声を震わせ、目に涙を溜めて新藤の名前を呼ぶ中澤に、新藤の獣身が怖いくらいにそそり立つ。
「一人になるな・・・絶対だ。オレが居なけりゃ社長でも、咲坂でも岸場でもいい。絶対一人になるな」
それが、自分と一緒にいるための条件だ。
新藤は、わかったのか、と中澤の顎を掴んで自分と目線を合わせさせる。
しばらく虚ろだった中澤の目がゆっくりと新藤の目と焦点が合い、中澤の唇が動いた。
「・・好きです・・。あなたが、好きです・・」
ドクリと新藤の鼓動が大きく動いた。
そこから耳の中が心臓の音に支配される。
箍が、外れるーーーーー!
中澤の膝裏に手を掛け、ぐにゃりと体を押しつぶすように体重を掛けて腰を打つ。
何度も何度も中澤の体がベッドの上へ上へと逃げるのも構わずに、激しい抽送を繰り返した。
途中いつの間にか軟体動物のように力のなくなった中澤の首を支え、背を抱いて、それでも穿つ事をやめられない。足を開かせたままにするため、太ももと足首を縛り付けた。
腕の中に力なく身を委ねる中澤の首筋に噛みつきながら、その身を揺すぶり続け、ついには性器から出すものが無くなった。
それでも、自分は中澤を求め続けて勃起したままだ。
異常だった。だが、それも心地いい。
硬いままの自分を中澤の中に置き去りしたまま眠りにつける事に、新藤は最高の幸せを感じた。
意識が途切れる寸前まで中澤を感じていたい。
自分の太ももと同じ場所を縄で括り、中澤を背中から抱いて目を閉じた。
なんて、幸せな時だろう。
こんな平穏な気持ちで自分の心が満たされる時が来るなんて思わなかった。
千垣が居れば、眠れる。
オレは、眠れる。
おまけ
『ジゴクヲミタオトコ』
激しく、甘い責め苦に、何度も何度も中澤は「新藤さん、許してくださいっ」と叫んでいたつもりだった。
声にならない声を上げ、力の入らない腰を下から突き上げられ、縄を掛けられた胸の乳首は摩擦で擦れて腫れ上がり、いつもの2倍は大きく勃っていた。
「あ、ああ、もう、もう~~っ」
何度も、これ以上は無理です、と泣いて訴えたのに、新藤は中澤の中から一度も出る事も、萎える事もなく射精も何度も中澤の奥で放って、ついにその新藤が力尽き、その狂腕から解放されるかと思いきや・・足同士を縄で繋いで固定され、硬い物を奥まで挿入されたままの状態で寝るという凶行に出られた。
それでも。
これでやっと終われるのだと気を緩めた中澤だったが、そこからがまた地獄だった。
自分が身動ぎする度、新藤の物が中で反応するのだ。
ビクリと中澤の中で思い出したかのように揺れ、わざとなのか無意識なのか、中澤に大人しくしていろと言わんばかりに新藤が腰を打ち付けてくるのだ。
だが、中途半端に中を擦られてもイケる訳がない。
そんな事を何度も繰り返され、眠る事も出来ない中澤は、最後には自分で自分自身を扱いてイくしかなかった。
これで楽になれるーーー!
そう思って前を手の中で擦るが、簡単ではない。
どうしても意識は体の中のモノに反応してしまう。
結局、まだ硬さのある新藤の先端を自分のイイ場所に当たるように自分で腰を蠢かした。
もうちょっと・・もっちょっと・・。
あと少しで、終わる・・。
と、先が見えた瞬間。
「千垣、お前、そんなにコレが好きか?」
と、ガラガラ声の含み笑いが耳元で囁いた。
「そんなに締め付けられちゃ、眠れねえだろうが」
叱りつけるように言いながら、首筋を新藤に強く吸われ、中澤は「あっ」と声を上げて仰け反った。
が、ここは渡りに船、だ。
「新藤さん・・もっと、もっと奥に・・」
お願いします・・!と、言いかけた中澤の耳に、信じられない物が聞こえてくる。
スースーと、なんとも安らかな新藤の寝息が耳のすぐ後ろから聞こえてくるのだ。
「ひ、ひどい・・このままで寝るなんて・・アンタ、本物の鬼だ・・っ」
非難する中澤の体を、新藤の腕が閉じ込める。
強姦も輪姦も恐ろしいが、新藤の罰も本当に恐ろしかった。
好きな男のものが自分の中にある。
それはまるで、切れない催淫剤でも飲まされたようなもの。
新藤の形に広がった中が、気持ちが良くて眠れない。
欲しくて堪らず、新藤が萎えそうになると自ら腰を揺らして勃たせてしまう。
よせばいいのに、やめればいいのに・・そう思いつつ腰が揺れてしまう。が、絶頂を迎えられる程ではない。
中澤にとっては、正に地獄。
新藤は、自分の思惑以上の罰を中澤に与える事に成功したのだった。
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