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しおりを挟むテオは黙って見ていた。
レッドに組み伏せられるルシカの姿を。
涙に濡れ、トロリと焦点の合わなくなった視線。
所在無げに投げ出された四肢。
レッドの動きに合わせて、ひくつく指先。
生々しく熱を帯びたルシカの吐息。
自分の存在など元から無かったように、目の前で重なり合う2人の形が、溶合うように崩れていく。
始めこそーーー
自分に助けを求めるような表情を浮かべていたルシカ。だが、それもレッドの手に胸の辺りを弄られると一変した。
頬が紅潮し、無意識か、「んっ」や「ふ・・っ」など、鼻から抜けるような高い声が唇の端から漏れ始める。
レッドの手がルシカのパジャマのような白い長衣を捲り上げ、ルシカの足の付け根から下が剥き出しになった。
「う、うぅ・・レッ・・ド・・っ」
ルシカの裸など初めてではない。
数日前までは、風呂でその体を隅々まで洗ってやった事もある。
あやうい、と思った事は確かにあった。
それでも、流される程の欲求が沸く訳ではない。飢えた獣でもないのだ。立場や相手の意志を尊重するぐらいの余裕はちゃんとあった。
なのに、今は、全裸にされるのを必死に防ごうと抵抗しているルシカの姿に、煽られる。
何度も濡れた目を瞬きし、身を捩る胸が浅い呼吸に上下する。
大の男に馬乗りされ、何も身に付けていない両足がパタパタとシーツの上で暴れている。
「ルシカ、包帯が解ける」
静かにレッドに注意されて、ルシカの足がピタッと動きを止めた。
屋敷に着いてから医者に固定して貰った右足は、足首の上まで包帯でぐるぐる巻きだ。
ルシカの真っ赤に腫れ上がった足首を診た医者には、これ以上炎症が酷くなるなら、一度MRIを撮った方がいいと忠告された。
数時間前、砂の上をルシカが捻挫した足でダッシュしたせいで、まさかと思うが、靭帯がブッツリと断裂した可能性もある、とのこと。
完全に靭帯が断裂した場合、手術も否めない。
その場合、ルシカの体の他の関節から腱を切り出し、それに人工の靭帯を付けて骨に接続する手術を行う必要がある。
手術をすれば、復帰までの時間は更に掛かる。
その話を聞いたルシカは真っ青になった。
「そんな・・嫌だっ、絶対手術したくないっ・・オレ、早く、試合に出たい・・!」
「だったら、安静にしなければな。いいか?今から、この足を勝手に動かす事は禁止だ」
レッドの命令に、ルシカは違反のキップでも切られたようにギョッとした顔になり、レッドの顔を見上げた。
「禁止・・」
「復帰が一ヶ月後になるか三ヶ月後になるか、か」
傷の状態次第では、長期離脱も有り得る。
使い物にならない選手は、とっとと2軍落ち。
ルシカの代わりにチャンスを掴んだ者が台頭すれば、レギュラーに復活するのも難しくなる。
レッドの隣りでテオは胸の前で腕組みし、ルシカの足を渋い顔で見つめた。
そのテオに、レッドが顎をしゃくる。
「絶対に一ヶ月で復帰させろ」
「わかってます」
テオが強い眼差しで返す。その視線を真っ向から受け止め、レッドは更に鋭い眼光でテオを飲み込む。
「必要な物は、全て用意しろ。ここで治療出来る事なら、全てやれ。私が居ない時は、お前がルシカの足の代わりをしろ」
さすがにその命令には、テオも眉を上げた。
「いいんですか?オレが触って」
悪さするかも知れませんよ、そう暗に含めたつもりだった。
すると、レッドはフンと鼻を鳴らし、
「お前にしかルシカの事は任せられん」
と、言い放つ。
テオは、ルシカへ真っすぐに視線を注ぐレッドの横顔を凝視した。
迷いなき瞳、だ。
その目には、王族独特の色がある。
王子とは、彼が生きている事が、既に国民に対して大きな責任を負う。
生まれながらに王族として他者から崇め奉られ、羨望と畏怖の対象となる。
この存在自体が、国民の誇りなのだ。
その誇りを失わせないよう、その存在感は常に、強くあるべき形に保たれて来た。
この自信に満ちた顔を、自分は13年も側で見てきたのだ。
今更ながらに実感し、テオはキツく唇を噛み締めた。
それから、医者がルシカに注意事項を言い聞かせながら、その足に包帯を巻く。
ルシカは医者の脅しに弱気になりながら、医者の言いつけに小さく「はい」を繰り返していた。
よっぽど「もう全力で走れなくなるかも知れない」という脅しが効いたのだろう、ルシカは肩を落として可哀想なくらいシュンとなる。
その姿が可愛くて、テオとレッドは、優しく目を細め、褐色の肌の青年の顔を見つめていた。
「ルシカ、暴れたら、お仕置きだ・・」
ルシカの耳元でレッドの唇が囁く。
白い長衣は胸元までたくし上げられ、レッドは自分の下衣を少し引き下げると、自分の屹立をルシカのものに合わせるように擦り付けた。
「あ・・あ・・」
頼り無くルシカの肢体が揺れる。
レッドの成熟した大人の筋肉質な体に比べ、ルシカの体は薄く、筋肉が付いているとは言っても、軽量。
腕の太さも胴回りも、肉食と草食くらい違う。
それでも、サッカー選手だけあって、足の太さだけはやや負ける程度だった。
この足で、本気で蹴れば人を殺せるだろう。
それだけの鍛え方をしているのは確かだ。
それは、彼の成長を傍で見てきた自分だからわかる事。
本気で、暴れたならーーーー、きっと、逃れられない筈がなかった。
大きく足を開かせられたルシカの腰が持ち上げられる。
その中心にあるものに、レッドが顔を寄せる。
「だ、め・・!!」
ルシカがレッドの袖の無いシャツに精一杯手を伸ばし、レッドを引き留める。が、その手に掴まれたレッドの服が半分脱げただけ。意にも返さず、レッドはルシカの愛茎に舌を伸ばした。
熱い舌がしっとりとルシカの中心を舐め取る。
「・・っやあ・・」
大きく広げた自分の股の間に陣取る男の背中を、伸ばした両腕で押さえ付けるように掻き抱き、ルシカの背中が仰け反る。
分厚く長い舌が、皺の無い茎をするすると舐め上げ、その先端にキスをする。
上下の唇の狭間に先端の丸みを咥えられ、ルシカの両足が宙へ浮く。
と、その足が意味も無く宙で彷徨い揺れ、刹那、ガクリと、力を失って落ち掛けた。
その右足を、咄嗟にテオは腕を伸ばして掴んだ。
その気配を感じ取ったレッドが、チラリとテオを見たが、それだけ。
すぐ側にいる男に見せつけるように、指の腹でルシカの固くなった乳首を潰して、ルシカを喘がせる。
「ヤ、ヤアア・・ッしないで・・っしないで・・そ、れ・・っ」
自分の胸の上で無体をする手に、ルシカも自分の手を重ね、イヤイヤと首を振る。
「いい色だ。真っ赤に充血して、今にも弾けそうだ」
邪魔をするルシカの手を掴んで押えると、そこにレッドは顔を寄せ、乳輪の下からベロリと舐め上げた。
「ア・・あ、あ・・だめ・・っ」
レッドは甘いキャンディを口の中で転がすみたいに、ルシカの胸にしゃぶりついた。
ルシカが甲高い喘ぎを上げ、ヘソの回りの腹筋が大きく波打つ。
それと同時に右膝が引き上がり、左右の足の間にいる男を足で挟み込もうとした。
が、テオがそうさせない。
股を閉じようと内へ引き上げられそうになった足を更に掲げ上げると、レッドの体の下でもテオの眼下にルシカの陰部が晒け出された。
真っ赤に熟れた緋肉が視界に入り、テオの喉が無意識にゴクリと鳴る。
時折、ビクビクと奮える肉茎から光る物が雫となって滴っている。
若い茎はまだ色も薄く滑らかに艶めいて張り詰めていた。
そこへ蜜が滴るのを見たテオに、えも言われぬ衝動が沸く。
まるで、溶け出したアイスクリームのように、慌ててそれを舐め取ってやらなければいけないような気持ちになった。
ゴクリとテオの喉が鳴る。
思わず、手が伸びそうになったのを、レッドの腕に掴まれた。
「誰が触っていいと言った。お前は見学だ」
悪戯が見つかった子どものようにテオはそこから手を引いた。が、ルシカの右足を保護するという名目の元、暴れそうになる右足首を手にしたまま、ルシカの嬌態に目を凝らす。
「レッド・・レッド・・ああ、や、・・アッ・・あ、アアッ・・・!」
レッドはルシカの胸に激しくむしゃぶりつきながら、自分の雄をルシカの窄まりに押し当てている。
解してもいない肉の窄まりが、押し当てられる物が何かわかるのか、呼応するように少しずつ開いていく。
それが、どれ程レッドがルシカと体を繋げていたかを物語る。
この屋敷に連れ込まれてから、昼も夜もなく、ひたすらに貪られたのだろう。
レッドを受け入れる事に慣らされたルシカの体が、柔らかく融けていく。
「いい子だ、ちゃんと私を覚えてる」
ルシカの体を褒めたレッドを、ルシカは悔しそうな顔で見つめ「レッドが何回もするからだろっ」と憎まれ口を叩いた。
少しずつ充溢を飲み込み、切な気に溜め息を吐き出す。
その呼吸に合わせ、レッドがまた少し腰を進める。
「ン・・ン・・」
ルシカが強請るように左足でレッドの腰を引き付ける。
欲しがる仕草にレッドは口元を少し綻ばせ、飲み込ませた分を少し引くと、ルシカの吐息に合わせてまた腰を進める。
それを数回繰り返し、やっと深く?壓がった二人は安堵の息を吐いた。
男同士のそれは、正に共同作業だ。
簡単に突っ込む事が不可能な体だからこそ、相手の負担を想えば、丁寧にならざるを得ない。
「イイか?ルシカ」
レッドに聞かれ、ルシカは目を潤ませ、枯れた声で「・・もっと・・」と呟いた。
それに、頬を弛ませたレッドが密着した腰をドンッと突き入れた。
「アンッ」
猫の泣き声のような声を上げたルシカの体が、レッドの突き上げと同時にベッドの上で跳ねた。
「届いたか?」
レッドの言葉に、ルシカは自分のヘソの下を両手で撫でるようにして身を捩り、ブルブルと奮える。
ルシカの屹立の先端からは濃い蜜が滴り、下腹を押えるルシカの手を汚していた。
「ふ・・あ、レッド・・這入って、る・・レッドの・・レッド、レッド・・っ」
体の中にあるモノが堪らないと身を捩り、ルシカはレッドの名前を呼んで『もっと』と強請った。
「いいのか?ここがテオに丸見えだぞ。それとも、見られて興奮してるのか?」
苦笑しながら、レッドがルシカの細腰を両手で固く掴む。
「あ、レッド・・レッド・・!や、ア、ア、ア、アッ」
激しい抽挿が開始すると、気持ちが良くて堪らないとルシカの足が大きく開いた。
テオの肩に乗るくらい足を広げ、ルシカが自分を突き上げるレッドの太腿に爪を立てる。
まるで、猫が引き摺られるのを必死に爪を立てて阻止しているみたいに。
「やあ・・っやああ・・っレッドッ!レッド・・!」
ルシカの体がベッドの上で不規則に跳ね上がる。
太い肉塊を尻の狭間に喰い込ませ、身も世もなくよがり狂う。
その姿に魅入られ、テオはいつの間にか、ルシカの膝に唇を押し当てていた。
ねっとりと骨張った内側の皮膚を舐める。
硬い筋の間にある柔らかな肌。
薄く汗を掻いた肌はしっとりと唇に馴染み、吸付くと赤い痕が綺麗に付いた。
テオは夢中でルシカの右足に唇や舌を這わせていると、ふ、と、レッドから視線を感じた。
テオはチラリと目だけ上げる。
レッドはやや蔑みの目でテオを見下ろし、仕方無いな、と、子どもが自慢のおもちゃを貸してやるような顔で笑った。
勿論、テオはそれを屈辱だと思った。が、ルシカの肌から唇を離す事が出来なかった。
ルシカの足を愛撫する手を止められない。
片時も、唇を外せず、激しく突き上げられて揺れる右足をテオは所構わず舐め続けた。
しなやかな筋肉、硬く柔らかく、その動きに合わせて柔軟に張り詰める体に陶然とする。
「ア、ア、ア、ア、・・・・ヤアッッ」
絶頂が近くなったのか、ルシカの声が一際高くなる。
盗み見るようにテオが視線を這わせると、ルシカの目とバチッと合った。
ルシカが荒い呼吸を継ぎながら、唇だけで『テオ』と呼んだ。
思わぬご褒美に、テオはルシカの肌に歯を立ててしまう。
すると、眉間に皺を寄せたルシカが声にならない声で喘いだ。
自分に感じた。
そう思った瞬間、テオの箍が外れた。
自分の勃起をズボンの中から掴み出し、一気に扱く。
すぐに先走りの液がずくずくと溢れ、肉茎は刺激で更に硬くなった。
一気に上り詰める。
あと少し、という所で、予期せぬ事が起きた。
自分の屹立に細い指が絡んだ。
自分の手の動きに合わせ、ルシカの手が上下する。
テオの粘液に濡れ、自分の手に重ねられたルシカの手に煽られ、テオは咄嗟に自分の手とルシカの手を入れ替えた。
直に、ルシカの手に自分の男根を握らせる。
キツい程にしっかりと握り込ませ、その上から自分の手で勃起を覆う。
これ以上は無い程に頭の中は欲情し、イク寸前、角度を変えて無理にルシカの胸に向けて精を放った。
「ア、アア・・テ、オ」
飛沫を浴び、ルシカの体がビクッと跳ねる。
それを面白くないと思ったレッドが、更にルシカの腰を抱え上げ、突き上げを深くする。
「アアアーーーーーッ」
悲鳴がルシカの口から迸り、レッドは真下に突くようにルシカの中を貫き、何度目かに体重を掛けて動きを止めると、最奥で爆ぜた。
濃厚な雄の匂い。
薄闇の中、獣達の荒い息遣いだけが響いていた。
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