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ずっとそばにいる2
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12月31日、大晦日。
一年最後のその日も、朝だろうが昼だろうが、普段と何ら変わることなく、ベッドの上で激しい情交を繰り返していた犬とシアン。
そんな最中に鳴り響いたのはシアンの携帯電話の幾何学的メロディ。
いつもなら、そんなものを気にもしないでヤリ続ける犬が、煌煌と明るく着信を告げるディスプレイ目掛け、後ろ足を蹴り出した。
「んあッ・・!な、なにすんだよ、急に・・っアソコが裂けたらどうすんだ・・!」
繋がったまま体を横に振られたシアンが、真っ赤になって犬の首に抱きついて抗議する。
「大丈夫だ。シアンの身体は、こんなに柔らかいんだから」
と、再びシアンの身体に密着して伸し掛かり、大きく開いたシアンの尻の狭間を自分の獣芯で埋め尽くす。
犬に蹴られた携帯は絨毯の上に落ちたせいで、ゴンッと硬い音はしたが無事だった。そこから着信音はそのまま鳴り続いている。
「あ・・携帯鳴ってる・・」
シアンがやっと気づいたという顔で、ベッドの下へと視線を向けた。
それが面白く無い犬は、大きな口を開けて、シアンの真っ赤に弾けそうに膨らんだ胸の粒へと、ザラつく長いベロで下から舐め上げる。
「イッ!!イッッ・・犬!!」
引き攣り押し潰された乳首に、シアンの強い眼光が犬へと戻って来る。
「よそ見するな」
ふてぶてしい犬の顔。
その瞳が、いつもと違う。
「なに・・?なんで、犬・・怒ってんの・・?」
愛されてる筈の行為の最中、犬の瞳に映る苛立ちに、シアンは泣きたくなった。
犬の愛を真っ正面から受け入れているシアンの身体には、犬の憤りは痛いくらいに響いて来る。
「怒ってない・・。シアンが好きなだけだ」
「ほんと・・?」
「本当だ。お前を誰にも取られたく無い」
「犬・・、誰も取らないよ・・?」
「取られる。お前はあれ(携帯)が鳴ると、オレから離れてしまう」
「携帯?あ、あー・・そっか。そういう事か・・」
そこで、なんだそんな事でイライラしてたのか、と、シアンは犬の苛立ちの理由を理解して、ホッとしたのも束の間、一瞬で顔色を変え、犬の足の付け根に自分の足を引っ掛けて叫んだ。
「今日・・何日!?」
「・・31だ」
正直に答えてくれた犬には有り難いが、シアンは犬の身体に引っ掛けた足に、グッと力を入れて膝を伸ばし、犬の巨体を引き離しに掛かる。
「お前・・!わざとだろ!道理でヤリ続けてると思った・・!オレ、友達と初詣行くって言ってあったよな!?」
「行くなシアン・・。オレはシアンと二人で居たい。ここに居ろ、シアン」
「バカ!寺(実家)にも行かなきゃいけないって言ったろ!いいから、抜け!抜けよっコラ!」
シアンは、犬の性器を中から追い出そうと足を突っ張ったが、すぐに犬の腰がそれを阻止すると同時に、より繋がりを深くして来る。
涙目で「犬!!」と怒っても、珍しく犬が抵抗をして見せる。
「なんなんだよっどうして・・っ」
「初めてなんだ。初めて、シアンと新しい年を迎えるんだ。絶対、二人きりで居たい」
至近距離で見つめられ、そう告白されたシアンの顔が一気に真っ赤になった。
「なんだよ・・それ・・」
「願掛けだ。これからもずっとシアンがオレを愛してくれるように・・、ずっとオレの側から離れないように」
「・・バカ・・。オレ、離れないって言っただろ・・?なんで・・そんな風に思うんだよ」
「シアンは・・すぐ友達と出掛ける。学校にも行く。カラオケにも」
「そりゃ行くだろ。オレ高校生だもん」
「だから『願掛け』する。あと37回」
そうきっぱりと言い切った犬が、更にシアンの中へと昂りを深く突き入れた。
そして、いくら濡れて弛んだ蕾とは言え、その綻びをこれ以上開く事を許さないと言わんばかりに犬の獣芯の根元が膨らんで圧迫する。
瘤だ。
シアンの胎内へ、零さず射精するために、犬の性器の根元に瘤が出来る。
「あ・・」
自分の中で犬が張り詰めたのがわかったシアンは、慌てて、イヤだと身を捩ったが、既にシアンの肉壁に喰い込む程大きく膨らんだ瘤が邪魔して、二人の繋がりは解けない。
「これで、あと36」
「さっきから、37とか、36って何?」
犬の熱い飛沫を胎内に浴びせられ、シアンは犬の毛に指を絡ませて身悶える。
「ああ、百度参りってあるだろ?あれと一緒だ。百回射精する」
それを聞いた瞬間ーーー、犬の射精にシアンは熱に浮かされながらも、自分が百回イカされるんじゃなくて良かった・・と思う。
が、よくよく考えてみると、実際、犬との情交でシアンがイク回数は、犬より自分の方が断然多い、という事に後から気づいた。
そう悟った瞬間、シアンの怒りが頂点に達する。
「ふ、ふざけんな!誰がヤっていいって言った!?百回!?オレを殺す気か!?だから・・だから冬休み入った途端、毎日寝ないでヤってたのかよ!」
連日連夜に及ぶ行為のせいで、シアンは今日が何日かもわからなかった程だ。
しかも、後36回だと言う。
計算上、既に64回こなしているという事になる。
「今日中に終らせる。シアン頑張ろうな」
そう言って、犬がシアンの顔をペロペロと舐めて励ました。
「抜け!!もう、絶対抜け!!出すな!!もう、一滴も出すなーーーーッ!!」
「無理だ」
そう言って犬がブルリと身体を戦慄かせた。
胎内で躍動する勃起から熱い飛沫が勢い良く噴き出してくるのが、腹の上に乗せた手に伝わってくる。
シアンは両手でヘソの辺りを押えて、「やだ・・っ出すなよ・・っもう、もうヤダ・・っ」と涙目になる。
その零れかけた涙を犬がぺろりと舐めた。
「かわいいシアン。36回なんて、すぐ終る。ああ、本当に可愛い。泣くな、シアン、可愛くて喰いたくなる。もっと泣かせたくなる」
そう言って、犬の舌が顔だけじゃなく、シアンの首や胸を丁寧に舐め、手の指の1本1本に優しく舌を絡ませた。
「愛してる、シアン。お前がオレのものになるなら、オレは何でもするぞ」
「アッ・・バカ、犬・・ッオレは、お前のだって・・言ってんのに・・ンッ・・なんで信じな・・」
いや、違う、犬はオレの言葉を信じてない訳じゃない。
犬はやっぱり犬で、この現代の仕組みを理解してるようで理解出来てないんだ。
オレはまだ16歳で、学校に行く生活をしなきゃいけないのに、そういう現代の『常識』をわかってないんだ。
どんなに『願掛け』したって、オレがあと2年、学校に通うのはどうしようもない事なのに・・!
それでも、『願掛け』をやめる気配の無い犬を、シアンはキツく睨みつけた。
「絶対、初詣行くからな・・っ」
シアンの宣言に、一瞬顔を曇らせた犬。
だが、
「お前も一緒行くんだよ。オレの彼氏なんだから・・っ」
と、はにかんだシアンの台詞に、犬の目に光りが戻る。
しかも射精中だというのに、大喜びで大きな尻尾をブンブンと振り回されて、シアンは胎内に埋め込まれた勃起が振動するのに喘いだ。
「や、やめっちょッ・・・ンッやっ・・あ、あ、あ・・ダメッ」
と、仰け反った瞬間には、犬に比べたら可愛らしいシアンの勃起が薄い粘液を飛び散らせて爆ぜていた。
明くる朝。
マンションの窓から、犬に組み敷かれたまま日の出を見たシアンは、フラフラになりながらもシャワーを浴び、体に馴染んだ犬との情交の匂いを洗い流すと、この一週間、一度も履くことのなかったジーンズに足を突っ込んだ。
「なんか・・服着るの久しぶりな気する・・」
思わず呟いた自分の独り言に、顔が火照ってしまう。
それくらい必死に犬に身体を求められ、『お百度参り』は後数回という所まで来ているのだから、犬の情熱には呆れるしかない。
その上ーーー
いつものように窓からコンニチハの彦(ガテン系吊り目、バサバサ金髪の裸に毛皮コート男)が、ベランダの窓を開けて、仰け反った。
まるでこの部屋の中に結界でも張ってあるみたいに、手を少し伸ばしては引っ込めて、と、中に入れないというジェスチャーをする。
「何してんの・・彦」
「シアン・・お前、何やらしてんだよ」
そう青褪める彦に、シアンは首を傾げる。
「獣臭くて、部屋に入れねえ・・。つーか、お前も、どうすりゃ、ここまで蒼狼の匂いがつくんだよ・・!?」
素で、彦に部屋から漏れる匂いを手で掻き分けるような仕草をされ、全身に火がついたように熱くなった。
思わず風呂場に駆け込むと、イヌがヒトの姿でシャワーを浴びている。
「わッごめっ」
思わず開けてしまった扉を閉めようとして、素早くイヌに腕を取られて、服を着たまま風呂場へ引き摺り込まれてしまう。
「バカっビショビショんなっちゃったじゃんか!」
「オレに用じゃなかったのか?」
腕の中に抱き込まれて、キスされて、イヌの手がオレの服を剥いでいく。
「違うッオレ、もう一回シャワー浴びたくて・・っ」
「もう一回・・?」
小首を傾げるイヌが、オレの話を聞いているのか聞いていないのか、クンクンとオレの首筋の匂いを嗅ぎ始める。
「彦が、すごい匂いするって・・っオレ、イヌの匂いがするって・・っ」
真っ赤になって言うシアンに、イヌが「ああ」と微笑んだ。
「いっぱい出したからな」
その一言で、身体から力が抜ける。
「噓だろ・・っそんな匂いすんのか・・!?」
「本当に匂いがする訳じゃない。『霊験あらたか』って奴だ。彦だからわかるだけで普通の人間にはわからない」
そう言われても、自分には、どうかわからない。
とりあえず、もう一度シャワーを浴びる事にしたオレは、イヌにいじめられ・・もとい、いじられながら泡ダクになった。
じっくり時間を掛けて身体を洗った(?)せいで、部屋に戻ると彦の姿は無く、オレとイヌは初詣に行くべく、久しぶりの外出をした。
日本には八百万の神々がいる。
それを認識出来るようになったのは、本当に最近だ。
しかも、しっかりはっきりとその姿が目の前に見えるから、オレは普通の人かと思った程だ。
初詣へと行くすがら、すれ違う神様にイヌは上機嫌で挨拶する。
それもその筈だ、皆が皆「嫁貰ったのか」と聞いてくるんだから、恥ずかしくなる。
やっぱり・・匂いしてるんだ・・!イヌの匂いがオレの身体から出てるんだ・・!
このバカ犬が・・あんなに中出しするから・・!!
オレとイヌがヤってるの丸わかりなんだ・・!!
涙目になりそうになりながら、それでも、相手は普通の人間には見えない神様達なんだから気にするな、と自分に言い聞かせる。
が、イヌの匂いを消そうと、一生懸命、泡ダクになった事を、オレは同級生と合流してから後悔する事になった。
「シアン・・すげえいい匂いするけど。もしかして、朝からシャワー浴びてきた?」
「え、あ、うん・・ちょっと、汗かいちゃったから」
「ふ~ん・・」
「へ~・・」
友人二人から冷たい視線を浴びせられ、心臓が縮み上がる。
「な、何?」
「え、いや~・・二人で同じ匂いしてるから、同じシャンプーなんだな~って」
「そ、そうだねっ」
殆ど、一緒に風呂に入った?と聞かれてるも同然の台詞。
そんな、背中に滝汗流れるシアンの気持ちも知らず、イヌはニコニコと、頭一つ分上から、無邪気にシアンの髪の匂いを嗅いでいる。
その仕草に、シアンは深い溜め息を吐いた。
まだーーー
ホモだって思われてるだけ、いい。
そう気持ちを奮い立たせる。
だって、この友人達には、まさかオレが狼とセックスして喘がされてるなんて、想像もつかないだろうから。
いや、ついて堪るか・・っそんなの絶対バレる訳にいかないだろ・・!
初詣客の長い行列を並び、4人はやっと拝殿へ辿り着く。
賽銭箱へ、願いが『通る』ようにと、穴の開いた5円玉をそっと落とした。
「えっと2礼・・2拍手・・」
「シアン、鐘を鳴らせ。魔除けだ」
「あ、そっか」
一度だけカランッと鐘を振り、最後に、もう一度礼をして手を合わせ、願い事を心の中で呟いた。
『どうか、オレの狼をしあわせにして下さい』
本当は色々『お願い』を考えていたのに、作法をトチったせいか慌て、何が一番かわからなくなり、心の中にふっと浮かんだ願い事を唱えた。
顔を上げると、イヌと目が合う。
イヌはコートのポケットに手を突っ込んだまま、特に何を祈った風でもない。
それをイヌに聞いてみると、『願掛け』中は、他の神に祈らないと言う。
やぶへびな質問だったと、顔を俯かせると、イヌの手が頭に乗った。
「シアンの願いなら、ちゃんと叶う」
そう言われて、思わず納得した。
正真正銘、鐘が鳴る寺の生き神様、蒼狼のお墨付きーーーだ。
思わず笑みが溢れる。
「そうだね」
しあわせにしたい。
しあわせにさせたい。
そんな気持ちが胸に沸き、じんわりと温かくなる。
ずっと、そばにいてね。
オレの蒼狼様。
「シアン」
前を歩く友人二人が手を上げてシアンを呼ぶ。
「おみくじ引き行こうぜ」
「うん!」
シアンはイヌと手を繋ぎ、初詣客で賑わう人ごみの中へと入って行った。
end
一年最後のその日も、朝だろうが昼だろうが、普段と何ら変わることなく、ベッドの上で激しい情交を繰り返していた犬とシアン。
そんな最中に鳴り響いたのはシアンの携帯電話の幾何学的メロディ。
いつもなら、そんなものを気にもしないでヤリ続ける犬が、煌煌と明るく着信を告げるディスプレイ目掛け、後ろ足を蹴り出した。
「んあッ・・!な、なにすんだよ、急に・・っアソコが裂けたらどうすんだ・・!」
繋がったまま体を横に振られたシアンが、真っ赤になって犬の首に抱きついて抗議する。
「大丈夫だ。シアンの身体は、こんなに柔らかいんだから」
と、再びシアンの身体に密着して伸し掛かり、大きく開いたシアンの尻の狭間を自分の獣芯で埋め尽くす。
犬に蹴られた携帯は絨毯の上に落ちたせいで、ゴンッと硬い音はしたが無事だった。そこから着信音はそのまま鳴り続いている。
「あ・・携帯鳴ってる・・」
シアンがやっと気づいたという顔で、ベッドの下へと視線を向けた。
それが面白く無い犬は、大きな口を開けて、シアンの真っ赤に弾けそうに膨らんだ胸の粒へと、ザラつく長いベロで下から舐め上げる。
「イッ!!イッッ・・犬!!」
引き攣り押し潰された乳首に、シアンの強い眼光が犬へと戻って来る。
「よそ見するな」
ふてぶてしい犬の顔。
その瞳が、いつもと違う。
「なに・・?なんで、犬・・怒ってんの・・?」
愛されてる筈の行為の最中、犬の瞳に映る苛立ちに、シアンは泣きたくなった。
犬の愛を真っ正面から受け入れているシアンの身体には、犬の憤りは痛いくらいに響いて来る。
「怒ってない・・。シアンが好きなだけだ」
「ほんと・・?」
「本当だ。お前を誰にも取られたく無い」
「犬・・、誰も取らないよ・・?」
「取られる。お前はあれ(携帯)が鳴ると、オレから離れてしまう」
「携帯?あ、あー・・そっか。そういう事か・・」
そこで、なんだそんな事でイライラしてたのか、と、シアンは犬の苛立ちの理由を理解して、ホッとしたのも束の間、一瞬で顔色を変え、犬の足の付け根に自分の足を引っ掛けて叫んだ。
「今日・・何日!?」
「・・31だ」
正直に答えてくれた犬には有り難いが、シアンは犬の身体に引っ掛けた足に、グッと力を入れて膝を伸ばし、犬の巨体を引き離しに掛かる。
「お前・・!わざとだろ!道理でヤリ続けてると思った・・!オレ、友達と初詣行くって言ってあったよな!?」
「行くなシアン・・。オレはシアンと二人で居たい。ここに居ろ、シアン」
「バカ!寺(実家)にも行かなきゃいけないって言ったろ!いいから、抜け!抜けよっコラ!」
シアンは、犬の性器を中から追い出そうと足を突っ張ったが、すぐに犬の腰がそれを阻止すると同時に、より繋がりを深くして来る。
涙目で「犬!!」と怒っても、珍しく犬が抵抗をして見せる。
「なんなんだよっどうして・・っ」
「初めてなんだ。初めて、シアンと新しい年を迎えるんだ。絶対、二人きりで居たい」
至近距離で見つめられ、そう告白されたシアンの顔が一気に真っ赤になった。
「なんだよ・・それ・・」
「願掛けだ。これからもずっとシアンがオレを愛してくれるように・・、ずっとオレの側から離れないように」
「・・バカ・・。オレ、離れないって言っただろ・・?なんで・・そんな風に思うんだよ」
「シアンは・・すぐ友達と出掛ける。学校にも行く。カラオケにも」
「そりゃ行くだろ。オレ高校生だもん」
「だから『願掛け』する。あと37回」
そうきっぱりと言い切った犬が、更にシアンの中へと昂りを深く突き入れた。
そして、いくら濡れて弛んだ蕾とは言え、その綻びをこれ以上開く事を許さないと言わんばかりに犬の獣芯の根元が膨らんで圧迫する。
瘤だ。
シアンの胎内へ、零さず射精するために、犬の性器の根元に瘤が出来る。
「あ・・」
自分の中で犬が張り詰めたのがわかったシアンは、慌てて、イヤだと身を捩ったが、既にシアンの肉壁に喰い込む程大きく膨らんだ瘤が邪魔して、二人の繋がりは解けない。
「これで、あと36」
「さっきから、37とか、36って何?」
犬の熱い飛沫を胎内に浴びせられ、シアンは犬の毛に指を絡ませて身悶える。
「ああ、百度参りってあるだろ?あれと一緒だ。百回射精する」
それを聞いた瞬間ーーー、犬の射精にシアンは熱に浮かされながらも、自分が百回イカされるんじゃなくて良かった・・と思う。
が、よくよく考えてみると、実際、犬との情交でシアンがイク回数は、犬より自分の方が断然多い、という事に後から気づいた。
そう悟った瞬間、シアンの怒りが頂点に達する。
「ふ、ふざけんな!誰がヤっていいって言った!?百回!?オレを殺す気か!?だから・・だから冬休み入った途端、毎日寝ないでヤってたのかよ!」
連日連夜に及ぶ行為のせいで、シアンは今日が何日かもわからなかった程だ。
しかも、後36回だと言う。
計算上、既に64回こなしているという事になる。
「今日中に終らせる。シアン頑張ろうな」
そう言って、犬がシアンの顔をペロペロと舐めて励ました。
「抜け!!もう、絶対抜け!!出すな!!もう、一滴も出すなーーーーッ!!」
「無理だ」
そう言って犬がブルリと身体を戦慄かせた。
胎内で躍動する勃起から熱い飛沫が勢い良く噴き出してくるのが、腹の上に乗せた手に伝わってくる。
シアンは両手でヘソの辺りを押えて、「やだ・・っ出すなよ・・っもう、もうヤダ・・っ」と涙目になる。
その零れかけた涙を犬がぺろりと舐めた。
「かわいいシアン。36回なんて、すぐ終る。ああ、本当に可愛い。泣くな、シアン、可愛くて喰いたくなる。もっと泣かせたくなる」
そう言って、犬の舌が顔だけじゃなく、シアンの首や胸を丁寧に舐め、手の指の1本1本に優しく舌を絡ませた。
「愛してる、シアン。お前がオレのものになるなら、オレは何でもするぞ」
「アッ・・バカ、犬・・ッオレは、お前のだって・・言ってんのに・・ンッ・・なんで信じな・・」
いや、違う、犬はオレの言葉を信じてない訳じゃない。
犬はやっぱり犬で、この現代の仕組みを理解してるようで理解出来てないんだ。
オレはまだ16歳で、学校に行く生活をしなきゃいけないのに、そういう現代の『常識』をわかってないんだ。
どんなに『願掛け』したって、オレがあと2年、学校に通うのはどうしようもない事なのに・・!
それでも、『願掛け』をやめる気配の無い犬を、シアンはキツく睨みつけた。
「絶対、初詣行くからな・・っ」
シアンの宣言に、一瞬顔を曇らせた犬。
だが、
「お前も一緒行くんだよ。オレの彼氏なんだから・・っ」
と、はにかんだシアンの台詞に、犬の目に光りが戻る。
しかも射精中だというのに、大喜びで大きな尻尾をブンブンと振り回されて、シアンは胎内に埋め込まれた勃起が振動するのに喘いだ。
「や、やめっちょッ・・・ンッやっ・・あ、あ、あ・・ダメッ」
と、仰け反った瞬間には、犬に比べたら可愛らしいシアンの勃起が薄い粘液を飛び散らせて爆ぜていた。
明くる朝。
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「なんか・・服着るの久しぶりな気する・・」
思わず呟いた自分の独り言に、顔が火照ってしまう。
それくらい必死に犬に身体を求められ、『お百度参り』は後数回という所まで来ているのだから、犬の情熱には呆れるしかない。
その上ーーー
いつものように窓からコンニチハの彦(ガテン系吊り目、バサバサ金髪の裸に毛皮コート男)が、ベランダの窓を開けて、仰け反った。
まるでこの部屋の中に結界でも張ってあるみたいに、手を少し伸ばしては引っ込めて、と、中に入れないというジェスチャーをする。
「何してんの・・彦」
「シアン・・お前、何やらしてんだよ」
そう青褪める彦に、シアンは首を傾げる。
「獣臭くて、部屋に入れねえ・・。つーか、お前も、どうすりゃ、ここまで蒼狼の匂いがつくんだよ・・!?」
素で、彦に部屋から漏れる匂いを手で掻き分けるような仕草をされ、全身に火がついたように熱くなった。
思わず風呂場に駆け込むと、イヌがヒトの姿でシャワーを浴びている。
「わッごめっ」
思わず開けてしまった扉を閉めようとして、素早くイヌに腕を取られて、服を着たまま風呂場へ引き摺り込まれてしまう。
「バカっビショビショんなっちゃったじゃんか!」
「オレに用じゃなかったのか?」
腕の中に抱き込まれて、キスされて、イヌの手がオレの服を剥いでいく。
「違うッオレ、もう一回シャワー浴びたくて・・っ」
「もう一回・・?」
小首を傾げるイヌが、オレの話を聞いているのか聞いていないのか、クンクンとオレの首筋の匂いを嗅ぎ始める。
「彦が、すごい匂いするって・・っオレ、イヌの匂いがするって・・っ」
真っ赤になって言うシアンに、イヌが「ああ」と微笑んだ。
「いっぱい出したからな」
その一言で、身体から力が抜ける。
「噓だろ・・っそんな匂いすんのか・・!?」
「本当に匂いがする訳じゃない。『霊験あらたか』って奴だ。彦だからわかるだけで普通の人間にはわからない」
そう言われても、自分には、どうかわからない。
とりあえず、もう一度シャワーを浴びる事にしたオレは、イヌにいじめられ・・もとい、いじられながら泡ダクになった。
じっくり時間を掛けて身体を洗った(?)せいで、部屋に戻ると彦の姿は無く、オレとイヌは初詣に行くべく、久しぶりの外出をした。
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しかも、しっかりはっきりとその姿が目の前に見えるから、オレは普通の人かと思った程だ。
初詣へと行くすがら、すれ違う神様にイヌは上機嫌で挨拶する。
それもその筈だ、皆が皆「嫁貰ったのか」と聞いてくるんだから、恥ずかしくなる。
やっぱり・・匂いしてるんだ・・!イヌの匂いがオレの身体から出てるんだ・・!
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涙目になりそうになりながら、それでも、相手は普通の人間には見えない神様達なんだから気にするな、と自分に言い聞かせる。
が、イヌの匂いを消そうと、一生懸命、泡ダクになった事を、オレは同級生と合流してから後悔する事になった。
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「ふ~ん・・」
「へ~・・」
友人二人から冷たい視線を浴びせられ、心臓が縮み上がる。
「な、何?」
「え、いや~・・二人で同じ匂いしてるから、同じシャンプーなんだな~って」
「そ、そうだねっ」
殆ど、一緒に風呂に入った?と聞かれてるも同然の台詞。
そんな、背中に滝汗流れるシアンの気持ちも知らず、イヌはニコニコと、頭一つ分上から、無邪気にシアンの髪の匂いを嗅いでいる。
その仕草に、シアンは深い溜め息を吐いた。
まだーーー
ホモだって思われてるだけ、いい。
そう気持ちを奮い立たせる。
だって、この友人達には、まさかオレが狼とセックスして喘がされてるなんて、想像もつかないだろうから。
いや、ついて堪るか・・っそんなの絶対バレる訳にいかないだろ・・!
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賽銭箱へ、願いが『通る』ようにと、穴の開いた5円玉をそっと落とした。
「えっと2礼・・2拍手・・」
「シアン、鐘を鳴らせ。魔除けだ」
「あ、そっか」
一度だけカランッと鐘を振り、最後に、もう一度礼をして手を合わせ、願い事を心の中で呟いた。
『どうか、オレの狼をしあわせにして下さい』
本当は色々『お願い』を考えていたのに、作法をトチったせいか慌て、何が一番かわからなくなり、心の中にふっと浮かんだ願い事を唱えた。
顔を上げると、イヌと目が合う。
イヌはコートのポケットに手を突っ込んだまま、特に何を祈った風でもない。
それをイヌに聞いてみると、『願掛け』中は、他の神に祈らないと言う。
やぶへびな質問だったと、顔を俯かせると、イヌの手が頭に乗った。
「シアンの願いなら、ちゃんと叶う」
そう言われて、思わず納得した。
正真正銘、鐘が鳴る寺の生き神様、蒼狼のお墨付きーーーだ。
思わず笑みが溢れる。
「そうだね」
しあわせにしたい。
しあわせにさせたい。
そんな気持ちが胸に沸き、じんわりと温かくなる。
ずっと、そばにいてね。
オレの蒼狼様。
「シアン」
前を歩く友人二人が手を上げてシアンを呼ぶ。
「おみくじ引き行こうぜ」
「うん!」
シアンはイヌと手を繋ぎ、初詣客で賑わう人ごみの中へと入って行った。
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