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協力関係

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地下の応接間でヴァードとフォルスは対峙し
ベネディクトが静かに見守っている 

「俺が怖いのか?肝の小さい」

「君は国王暗殺未遂ということでお尋ねものなんだ!
匿う商会だって危険を背負い込まないといけないよね」

フォルスは大袈裟に手振りをして言った

「人質がいるんだ、利害は共通しているだろ
疑いがかけられてるのは商会あんたも同じだ」

「ヴァード……こう言ってはなんだが
僕たちは戦わずして事態を収めることもやろうと思えばできるんだ
君を引き渡して兵団と手打ちにする、そこでうちの副会頭レフィリアを解放させる
そうだね、毒薬の件も君のせいにしようと思えばできる
その上で問いたいんだ、商会が、あえて君と組む意味があるのかな?」

フォルスははにかみながら言った、
感情を悟らせまいとする防衛的な笑顔だった
ヴァードは嘆息した

「なるほど、ではフォルス
その提案は悪手あくしゅだと言っておこう」

「へえー、なんでだい?」

「第一にお前は戦いを理解していない
嫌疑など抹殺のための方便に過ぎん
取引に出向いたところで皆殺しにされるぞ
商会が今までどういう活動をしてきたのかは知らんが
兵団からずいぶん恨みを買ってるのはわかる」

「腐っても国の兵隊だよ、そんなことするとは思えないね……
僕たちは国王陛下のご注文に応えていただけだし」

「第二にお前は人の感情を理解していない
恨みつらみに道理など通るものか
やつら何がなんでも商会を潰すはら
お前の旅館が早速焚き火になっていたぞ」

「それは何かの間違いだよ、話せばわかりあえると思うけど……」
  
「そして……基本的なことだが
お前たちに俺を拘束することは出来ない
王都で最強の男は俺だ
この戦い、誰が勝つかは俺の機嫌次第だ
フォルス、お前は俺にすがる以外生き延びる手はないぞ」

「はっはっは!それが聞きたかった!」

フォルスは腹を抱えて笑った
ヴァードは眉をひそめた

「いや……すまなかったヴァード、君を試した
なにしろ一つの国まるごとと喧嘩をするんだからね
最強の男でなければ恐ろしくて組むわけにはいかない……」

「猿芝居を……」

「いいかいヴァード、
今から言うことは秘中の秘だ
漏らしたら死ぬよ」

「明日の命を欲しいと思ったことはない、さっさと言え」

「国王は魔王軍と組んでる」

「何……」

「君がお尋ね者になったのも……
せっかく突撃龍さまをごちそうでもおもてなししようとしたのに
何を邪魔しているのか、ということだろうね……陛下はお怒りのようだ」

「どういうことだ!」

ヴァードは瞠目どうもくした

「昨晩、ベネディクトに宮殿周辺の情報を探ってもらっていたんだ
ドラゴン騒ぎに乗じてね」

「ヴァード様のおかげで火事場泥棒がはかどりました
どうやら宮殿内に魔物が出入りしていたようです」

「魔王軍はとっくに中枢まで入り込んでいたということか……」

「辻褄が合うだろ?
王都郊外住民の見殺し、ドラゴン襲撃の際の兵団の明らかな怠慢たいまん
今回のでっち上げの冤罪
それでなくても普段から商会と兵団を対立させるよう仕向けたりね
まるで国や住民を守られると都合が悪いみたいだ」

「狂っているのか王は」

「狂っているかは国王陛下に直接お訊きするしかないね」

「こうしてはいられんな」

ヴァードは席を立った

「ヴァード!?どうする気だい」

「宮殿を燃やす」

「いや流石にそれは!!……いや……悪くない……か」

「まさかいきなり燃やしに来るとは向こうも思ってないはずだ」

「しかし、ヴァード様、レフィリア様たちが人質に……」

「それが問題だな……」

「……ベラスケスがいる」

フォルスは静かに言った
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