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23 再会

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『琥珀の渡鳥』に無料で泊まる事になったアスカは、ジーナの手料理を堪能した。キュウとミミの食事まで頂き、更には同じ部屋に泊まる許可まで貰った。
部屋に案内されると濡れた服を脱ぎ捨て、久々のベッドに潜り込んだ。キュウとミミもアスカの足元で丸まり、寝息を立て始めた。

~~~

次の日、窓から入る朝日に起こされアスカはベッドの上で呟いた。

「晴れてるな……良かった……」

大きく欠伸をして立ち上がり、おもむろに着替え始める。しかし服はしっとり濡れていた。

「服が欲しいな……」

部屋を出て階下に降りると、エレノアが元気よく挨拶をしてアスカに駆け寄った。

「よく眠れましたか?」

「ああ。ぐっすり!」

「朝食の支度ができてます」

アスカは、カウンター近くの椅子に腰掛けた。

「今日はどこに行くか予定は決まってるのかい?」

ジーナが、パンに肉を挟んだ朝食を運んできた。

「サンキュ。まずは換金して服を買いに行くよ」

「それならこの店の隣が防具屋だよ。ちょっと変わった店主だけど良い物が揃ってるよ」

ジーナは、エプロンのポケットから1万ギャリーを取り出し、アスカの目の前の机に置いた。

「隣で服を買うなら、これだけあれば足りるよ」

「ん?これは何だ?」

その答えを聞いて豪快に笑ったジーナは、エレノアにパンを持って来るように言った。

「本当に面白いね!1万ギャリーを見た事が無いのに、りんごを持ってるなんてね。それで服を買っておいで。りんごのお礼にしては霞んじまうけどね」

「良いのか?」

「ここからギルドまで行って、換金してまた戻るのは手間だからね。それに濡れてるだろ?その変わった服は早く着替えないと風邪引くよ」

「助かる!ありがたく使わせて貰うよ!しかしこのハンバーガー、ゲロ美味いな!」

アスカは立ち上がり、硬いパンを頬張りながら出ようとした。

「はい。ジーナさん」

エレノアが、もう一つパンに肉を挟んだ物を持ってきた。

「ちょっと待ちな!これを隣の防具屋に渡すんだ。私からだと言いなよ」

「おう分かった!ついでに渡してくるよ!」

アスカは1万ギャリーをポケットに入れ、両手にパンを持ち元気よく出て行った。

「目付きの割に、本当に面白い子だね」

「はんばーがーって何でしょうね?」

「良い響きだね。あのパンの名前は、はんばーがーにしようかね」

ジーナとエレノアは、顔を合わせてクスリと笑った。

『琥珀の渡鳥』の隣には、昨日は表に出てなかった西洋風の甲冑や、鱗で覆われた盾が店の前に並べられている。

「この鎧ピカピカだ!欲しいな」

腰に手を当てて、ポーズを取る甲冑をアスカが眺めていると、その腕の隙間から店の奥のカウンターが見えた。そして、そこに座る女性を見つけた。

「お?店番か?」

暗いカウンターには、髪の毛を二箇所、お団子にしている女性が肘をつき、ヒマそうに顔を乗せているが、表情までは確認できなかった。しかし口元には光が当たっており、艶やかに輝いている。
白のキャミソールに似た薄手の服を着ている。

アスカが笑顔を向けるが、その女性は気付いてないのか、動く気配が無かった。

アスカは店の看板を見上げると、そこには
『キャサリンズ♡ベア』と書いてあった。

「変わった名前の店だな。モグモグ。まぁ、入ってみるか」

アスカは、食べかけのパンの食感を楽しみながら店の中に入ると、ここもやはりカビ臭かった。しかし防具に至っては手入れが行き届いており、埃ひとつ乗っていなかった。

「へぇ。凄いな!まるで博物館だな。骨董品でも見てるみたいだ」

アスカは鎧や兜が店に並んでいる事が、不思議でたまらなかった。

「あら~いらっしゃい。うちの子たちは骨董品じゃないわよ~」

カウンターに座る女性が、妖艶な声でアスカに語りかけた。

「悪かったな。そう言う意味じゃ無いよ。初めて見る物ばかりで圧倒されてたんだ。綺麗だし」

「綺麗?よく見ればあなた、良い男じゃない!うっふん」

カウンターに座っていた女性が、投げキッスをアスカに飛ばした。

「珍しい格好してるわね。もっと良く見せてくれない?」

(セクシー!!何だあのエロい唇!お近付きになりたいなぁ!)

アスカはスキップをする様に店の奥へと入って行くと、カウンターの女性がゆっくりと立ち上がった。

「私の好みだわ~。雨が止んで初めてのお客様だから、良い事ありそう」

ムクムクと立ち上がる女性を、アスカは見上げた。身長188センチのアスカが見上げたのである。その女性は、およそ200センチ。2メートル!

「あわわわ」

アスカは慌てて止まろうとしたが、足が滑り空回りして、その場に尻餅をついてしまった。

「気を付けて。ね」

女性はカウンターを軽くまたぎ、そのまま一歩で近寄ると、前屈みになり、倒れたアスカに手を伸ばした。ゴツゴツとした手を……

化粧をしてはいるが、よくよく見ると、口の周りには青く髭を剃った跡があり、頭はスキンヘッド、その顔は完全に男だった。

「お、お、おと!おと」

アスカは座った状態で、足をバタバタ動かし後ろに下がろうとしたが、足首をゴツい手で掴まれた。
男は立ち上がると、アスカは逆さ吊りになった。

「大丈夫?怪我はしてないかしら?」

「ギャ~~~!!こっ、これは!?」

アスカの目の前には、ハイレグに収められた男のイチモツが、もっこりと主張としており、それが徐々に距離を詰め始めた。

イチモツが目前まで迫ると、アスカは逆さ吊りの状態で抱きしめられた。

「ギィヤァァァァ~!」

そして、お尻をモニモニされた後、体の至る所を入念に触られながら、ゆっくりと上下を回転されて、目の前には口周りが青い、男の顔がハッキリと見えてきた。

そしてなんと!頭にある二つのお団子は、髪の毛ではなく、耳だった。
スキンヘッドの天辺には、丸い熊の耳が付いていた。

「ギャ~ッ!!く、く、くま、熊男ぉ~!?」

「失礼しちゃうわね。キャサリンよ」

熊の獣人の男は、クネクネと体を揺らすと、口を尖らせアスカに顔を急接近させた。

「ギャ~~!!危ねぇ!即死攻撃だな!ハァハァ」

アスカは迫り来る唇を間一髪でかわす事に成功した。
着ている服に目をやると、キャミソールではなく、タンクトップであった。

「グッタリして大丈夫?元気出して。ん~~」

女の格好をした男がアスカを下ろすと、唇を近付けてきた。

「ギャ~~!!!変身」

アスカはパニック状態に陥り、手に持っていたパンを胸に当てて叫んだ!

「あらまぁ!それはジーナのじゃな~い?」

「そ、そうだ!ジーナからこれを渡すように言われてたんだ!」

アスカはパンを男の目の前に出した。

「嬉しい!大好物なの!いただくわね。あ~ん」

男はアスカが持つパンをひと齧りした。

「自分で持てよ!気色悪い!」

「貴方、ジーナのお友達?だったらサービスしちゃうわ!これにはコーヒーが会うのよね」

キャサリンと名乗った熊男は、アスカを下ろすと、奥に戻り両手にコーヒーを持ち戻って来た。

「はいど~ぞ~。キャサリン特製のコーヒーよ~」

アスカは持っていたパンと引き換えに、コーヒーを受け取った。

「この世界にもコーヒーはあるんだな……」

「何か言ったぁ?」

そして、パンとコーヒーを持つキャサリンを見て、アスカはどこか懐かしい感覚を覚えた。

「どこかで会った事ないか?」

「それはナンパね?クマっちゃうわ♡」

「違ぇよ!そんな事するか!」

「そのコーヒー飲んでみて。美味しいわよ」

「ん?ああ。いただきます」

「私の愛が詰まってるでしょ?」

「ぶーーーーーっ!飲めるか!!怖ぇな!何恐ろしい物入れてんだよ!」

アスカが吹き出したコーヒーを頭から被るキャサリン。

「クマったわね……蜂蜜を入れたにクマってるじゃない。これはどんなプレイ?」

それを見たアスカは思い出した。

「ああぁぁぁぁ!!思い出した!最初の夢に出て来た熊のパン屋だ!!」

「嬉しいわ!私を既に夢で迎えてくれていたのね!」

「違うわ!!」

「いやん!そんなに怒らなくってもい~じゃない。失礼しちゃうわね。ベアベア!」

「ぷんぷん、みたいに使うな!」

アスカは深いため息を吐いた。

「しかし本当に居たんだな……スキンヘッドの熊の獣人」

「いるにクマってるでしょ!」

「無理矢理、言葉の端々にクマを入れんなよ!気色悪い!」

「熊の獣人なんだもん。仕方ないベア!」

「オエッ!もう黙っててくれ!」

「ハイハイ。お口にベア」

キャサリンは口元にニャンニャンと猫の真似をするように、ゴツい拳を当ててウインクをした。

「がはっ!……クリティカルヒット……悪夢よ!早く覚めてくれ!!!」


『ジーナの紹介により劇的な再会を果たしたアスカ。宿屋のおっちゃんの次は、防具屋のオカマちゃん。二人の可愛子ちゃんの間で、大きく心を揺さ振られる。
愛の伝道師アスカ!三人の愛の行方は如何に!!!
次回予告
条件』

「二人とも『ちゃん』が付いてるけど、男だからな!!しかも俺は激しく動揺してるんだよ!揺さぶられてるって言い方、良くないと思います!!勘違いされるからぁ!もうBLイジリはやめて頂戴!」
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