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18 指針
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その後アスカに説明を受け、恐る恐るウインドウルフを触るムーアンと、それを見て笑う子供たち。
そしてアスカに何度も何度も「本物じゃ!真のテイマーじゃ」と顔を赤らめて言うムーアンに対し、「クロスやっておしまい!」と言うアスカ。
それを見て笑う村人たち。
村は平穏を取り戻した。
落ち着きを取り戻した村人たちは、瓦礫等を片付け復興の準備を始めた。
久しぶりの再会で親と戯れるクロたちを置いて、アスカたち三人は、みずぐるま亭に戻った。
「ふぃ~!疲れた……雨に濡れると倍疲れるなぁ。結局あいつらも雨に濡れっぱなしで、モフモフ出来なかったなぁ」
「良くやった!部屋は掃除済みだ。好きに使うと良い」
カウンターから声がした。
「助かるよ!また少し休ませて貰うよ」
顔だけ出した毛むくじゃらな男に軽く挨拶をした後、部屋に戻り服を脱ぐとベッドへダイブした。
目が覚めると辺りは薄暗かった。
濡れた服を着て下階に降りると、朝の挨拶をされ、もう直ぐ夜明けだと告げられた。
「テイマー様!私ども女のみならず、村まで救って頂き感謝してもしきれません!」
「俺は何もしてないよ」
胸の大きな女性が、深々と頭を下げて涙を流した。
「立派!」
突然食堂の方から、しゃがれた声が聞こえた。
「あっ、あの方もお客様で、ここに宿泊されておられます。部屋は……」
「はいはい!あんたの隣の部屋さね。私はねここで人を待ってるのさ。しかし、あんた大活躍だったねぇ」
白髪の三つ編みをした老婆がいた。
黒い服と、つばの広い三角帽子を被っており、壁には老婆の物と思われる長い杖が立て掛けられ、机の上には黒い座布団のような物に透明の玉が乗っていた。
(まんま魔女!)
「お、おうそんな事は無ぇよ。仲間たちのお陰さ」
「立派!普通の冒険者は自分の功績をひけらかすもんなのにねぇ。なかなか出来る事じゃないさね」
「そ、そうか?でも事実なんだから仕方ねぇよ」
「私には見えてるがね」
(ドキ~ッ!マ、マ、マ、マズイ!イセカイザーがバレてる!?婆さん!余計な事言うなよ!)
「そんなに慌てなさんな。私はねぇ……」
「あ~~~!」
アスカは両手をバタつかせながら、老婆の前まで走り込んだ。
「落ち着きな。まあ座りなさいな」
そう言って人差し指で、消しゴムでも飛ばすかのように弾く仕草をすると、老婆の向かい側にある椅子が、座れと言わんばかりに一人でに動いた。
「お、おう」
驚きつつも、その椅子に座った。
(何だこの婆さん!ヤベェぞ!間違いなく俺の正体を知ってやがる!)
「私はねぇ。この水晶であんたの……」
「あ~~~っ!ちょ、ちょっと、もうちょっと声のトーンを落としてくれるか?」
「コソコソするのは好きじゃないね!」
「あんた魔女か?」
顔を近付け小声で聞いた。
「魔女!私が?ただの占い好きの奴隷商さね」
「ちょ、ちょ!頼むよ聞かれちゃヤバイんだって」
アスカは慌てて魔女の隣の席に移った。
占い師は深いため息をついて、声のトーンを落とし話し始めた。
「分かったよ今回だけだよ。それで私に何を占って欲しいんだい?モンスターを追い払った褒美として、ただにしといてあげるよ」
(なにぃ~!どうしてそうなるんだ!俺の正体を言うんじゃなかったのか?この流れの方が俺には助かるけども。話を変えるのには丁度いいな、クロたちの事でも聞いてみるか)
「そうだなぁ。別れた仲間の事を教えてくれ」
「では、この水晶玉をよ~く見ておれ」
占い師は水晶玉に手をかざし、ブツブツと何かを唱え始めた。
「見えてきたぞ。何やら追い詰められてるみたいだねぇ」
「何だって!?」
水晶玉に映し出されたのは、体の自由を失い、歪んだ顔に、緑の液体が掛かっているゼンジの姿だった。その向こうには、真っ赤なバスケットボールのような魔物が多数漂っているのが見えた。
「クロ……じゃない!こいつは自衛隊!!なんだ!?あれは……そうか!魔物の毒だな!クソッ!待ってろよ!今助けに行くからな!!!」
アスカは椅子を吹き飛ばし勢い良く立ち上がり、みずぐるま亭から飛び出した。
「……慌て過ぎさね。でも3、2、1ほら戻って来た」
「婆さん!!場所はどこだ?」
「慌てなさんな。そう来ると思ってもう占っとるさね。これはサービスだよ」
水晶玉には地図が映し出されている。中央から下へ矢印が伸びており、その先の赤い点を指していた。
「南だな!助かったよ!サンキュー婆さん」
それだけ言い残すと再び飛び出して行った。
老婆は再び深いため息をついた。
「全く。だから慌てるなって言ったんだよ!水晶玉は反対側から見ると、逆さまに写るのは当たり前さね。仲間は北にいるのにねぇ……」
みずぐるま亭を出たところで、どこが南か分からない事に気付いた。
「雨雲で太陽は見えないし、もう一度婆さんに聞くかな。ん?これは!!」
扉の横に、ウサギに角の生えたモンスターの死骸があった。
「何だこれは!?」
他の家を見ると同じ様に鳥や、ネズミのモンスターの死骸が置いてあった。
「誰だこんな酷い悪戯をする奴は!」
その時、門の方から何かの気配を感じた。目を細め注意深く見ると、見えて来たのはクロスであった。クロスは咥えていたイノシシのモンスターを民家の前に置いた。
「あいつらまさか」
その後を追いかけるようにして、クロが咥えていたネズミのモンスターを別の家の前に置いた。
「食料を取って来てくれたのか!」
アスカに気付いたクロは、一目散に駆け寄り飛びついた。
「ありがとな!でもネズミは食わないと思うぞ」
騒ぎを聞きムーアンが目の前の家から出てきた。
「こんな早朝に何事ですじゃ?これは一体!?」
「こいつらが取ってきてくれたみたいだ」
「なんと!!そうでしたか。ありがたい!久方ぶりの肉じゃ!」
ネズミの尻尾を持ち、曲がった背中を伸ばして大いに喜んだ。
「前言撤回だ。この村はもう大丈夫みたいだな!そうだ!爺さん南ってどっちだ?」
「南ですか?南はあの大きな川を渡った先ですじゃ。流れが強くてここからは渡れんが、川に沿って東に行くと大きな街がありますのじゃ。そこに掛かる橋を渡れば南に行けるのじゃが…」
「そうか!爺さん助かったよ!それじゃぁ俺は行くよ!」
「待ってください!まだ何のお礼もしておらんのじゃ!せめて皆と見送らせてくだされ!」
「そんな恥じぃ事出来ねぇよ!爺さん元気でな!さらば!」
「せめてお名前だけでも!」
ポーズを決めたアスカは門へ向かい走った。
「行ってしまわれた。何とも不思議な青年じゃったな。しかしせっかちじゃな。橋は壊れておるのに」
それを聞いていたクロスは、川へと向き直り空を見上げた。川の遥か遠くの空は雲の隙間から光が差していた。
クロが擦り寄りクロスがそれを見下ろす。そして親子でアスカの後を追った。
~~~
門に着くとシロ、チャ、ブチが待っていた。
「お前たちも元気でな!後は頼むぞ!」
『『『『ワォン』』』』
「クロス後は任せた!お前たちも親子仲良くな!」
『グルル』
「ん~!よし!じゃぁ行くか!」
『キュ~』
『ミ~』
アスカは一つ伸びをすると、崩れた門を出て東へ向かった。
『テランタ村に仲間を残し次の街へ向かうアスカ。
行き先は南。偶然出会った占い師にゼンジの危機を知らされたものの、慌てて情報を錯誤してしまった。アスカの「あ」は慌てん坊の「あ」!
慌てん坊のアスカ!サンタクロースイセカイザー!
次回予告
赤』
「歌えば良いのか?あ?赤い服着て?あ?」
そしてアスカに何度も何度も「本物じゃ!真のテイマーじゃ」と顔を赤らめて言うムーアンに対し、「クロスやっておしまい!」と言うアスカ。
それを見て笑う村人たち。
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目が覚めると辺りは薄暗かった。
濡れた服を着て下階に降りると、朝の挨拶をされ、もう直ぐ夜明けだと告げられた。
「テイマー様!私ども女のみならず、村まで救って頂き感謝してもしきれません!」
「俺は何もしてないよ」
胸の大きな女性が、深々と頭を下げて涙を流した。
「立派!」
突然食堂の方から、しゃがれた声が聞こえた。
「あっ、あの方もお客様で、ここに宿泊されておられます。部屋は……」
「はいはい!あんたの隣の部屋さね。私はねここで人を待ってるのさ。しかし、あんた大活躍だったねぇ」
白髪の三つ編みをした老婆がいた。
黒い服と、つばの広い三角帽子を被っており、壁には老婆の物と思われる長い杖が立て掛けられ、机の上には黒い座布団のような物に透明の玉が乗っていた。
(まんま魔女!)
「お、おうそんな事は無ぇよ。仲間たちのお陰さ」
「立派!普通の冒険者は自分の功績をひけらかすもんなのにねぇ。なかなか出来る事じゃないさね」
「そ、そうか?でも事実なんだから仕方ねぇよ」
「私には見えてるがね」
(ドキ~ッ!マ、マ、マ、マズイ!イセカイザーがバレてる!?婆さん!余計な事言うなよ!)
「そんなに慌てなさんな。私はねぇ……」
「あ~~~!」
アスカは両手をバタつかせながら、老婆の前まで走り込んだ。
「落ち着きな。まあ座りなさいな」
そう言って人差し指で、消しゴムでも飛ばすかのように弾く仕草をすると、老婆の向かい側にある椅子が、座れと言わんばかりに一人でに動いた。
「お、おう」
驚きつつも、その椅子に座った。
(何だこの婆さん!ヤベェぞ!間違いなく俺の正体を知ってやがる!)
「私はねぇ。この水晶であんたの……」
「あ~~~っ!ちょ、ちょっと、もうちょっと声のトーンを落としてくれるか?」
「コソコソするのは好きじゃないね!」
「あんた魔女か?」
顔を近付け小声で聞いた。
「魔女!私が?ただの占い好きの奴隷商さね」
「ちょ、ちょ!頼むよ聞かれちゃヤバイんだって」
アスカは慌てて魔女の隣の席に移った。
占い師は深いため息をついて、声のトーンを落とし話し始めた。
「分かったよ今回だけだよ。それで私に何を占って欲しいんだい?モンスターを追い払った褒美として、ただにしといてあげるよ」
(なにぃ~!どうしてそうなるんだ!俺の正体を言うんじゃなかったのか?この流れの方が俺には助かるけども。話を変えるのには丁度いいな、クロたちの事でも聞いてみるか)
「そうだなぁ。別れた仲間の事を教えてくれ」
「では、この水晶玉をよ~く見ておれ」
占い師は水晶玉に手をかざし、ブツブツと何かを唱え始めた。
「見えてきたぞ。何やら追い詰められてるみたいだねぇ」
「何だって!?」
水晶玉に映し出されたのは、体の自由を失い、歪んだ顔に、緑の液体が掛かっているゼンジの姿だった。その向こうには、真っ赤なバスケットボールのような魔物が多数漂っているのが見えた。
「クロ……じゃない!こいつは自衛隊!!なんだ!?あれは……そうか!魔物の毒だな!クソッ!待ってろよ!今助けに行くからな!!!」
アスカは椅子を吹き飛ばし勢い良く立ち上がり、みずぐるま亭から飛び出した。
「……慌て過ぎさね。でも3、2、1ほら戻って来た」
「婆さん!!場所はどこだ?」
「慌てなさんな。そう来ると思ってもう占っとるさね。これはサービスだよ」
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「南だな!助かったよ!サンキュー婆さん」
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老婆は再び深いため息をついた。
「全く。だから慌てるなって言ったんだよ!水晶玉は反対側から見ると、逆さまに写るのは当たり前さね。仲間は北にいるのにねぇ……」
みずぐるま亭を出たところで、どこが南か分からない事に気付いた。
「雨雲で太陽は見えないし、もう一度婆さんに聞くかな。ん?これは!!」
扉の横に、ウサギに角の生えたモンスターの死骸があった。
「何だこれは!?」
他の家を見ると同じ様に鳥や、ネズミのモンスターの死骸が置いてあった。
「誰だこんな酷い悪戯をする奴は!」
その時、門の方から何かの気配を感じた。目を細め注意深く見ると、見えて来たのはクロスであった。クロスは咥えていたイノシシのモンスターを民家の前に置いた。
「あいつらまさか」
その後を追いかけるようにして、クロが咥えていたネズミのモンスターを別の家の前に置いた。
「食料を取って来てくれたのか!」
アスカに気付いたクロは、一目散に駆け寄り飛びついた。
「ありがとな!でもネズミは食わないと思うぞ」
騒ぎを聞きムーアンが目の前の家から出てきた。
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「なんと!!そうでしたか。ありがたい!久方ぶりの肉じゃ!」
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「南ですか?南はあの大きな川を渡った先ですじゃ。流れが強くてここからは渡れんが、川に沿って東に行くと大きな街がありますのじゃ。そこに掛かる橋を渡れば南に行けるのじゃが…」
「そうか!爺さん助かったよ!それじゃぁ俺は行くよ!」
「待ってください!まだ何のお礼もしておらんのじゃ!せめて皆と見送らせてくだされ!」
「そんな恥じぃ事出来ねぇよ!爺さん元気でな!さらば!」
「せめてお名前だけでも!」
ポーズを決めたアスカは門へ向かい走った。
「行ってしまわれた。何とも不思議な青年じゃったな。しかしせっかちじゃな。橋は壊れておるのに」
それを聞いていたクロスは、川へと向き直り空を見上げた。川の遥か遠くの空は雲の隙間から光が差していた。
クロが擦り寄りクロスがそれを見下ろす。そして親子でアスカの後を追った。
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門に着くとシロ、チャ、ブチが待っていた。
「お前たちも元気でな!後は頼むぞ!」
『『『『ワォン』』』』
「クロス後は任せた!お前たちも親子仲良くな!」
『グルル』
「ん~!よし!じゃぁ行くか!」
『キュ~』
『ミ~』
アスカは一つ伸びをすると、崩れた門を出て東へ向かった。
『テランタ村に仲間を残し次の街へ向かうアスカ。
行き先は南。偶然出会った占い師にゼンジの危機を知らされたものの、慌てて情報を錯誤してしまった。アスカの「あ」は慌てん坊の「あ」!
慌てん坊のアスカ!サンタクロースイセカイザー!
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