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4※ 最終話
しおりを挟むお風呂へ入ると、さっきまで昂っていた身体が少し落ち着いた。お風呂から出たら、さっきの続きをするのか、もしくは何事も無かったように寝るのか、兄上のことだからどちらも容易に想像できてしまって、緊張で心臓がおかしくなりそう。
脱衣所へ出ると、着替えのガウンが置いてあったのでそれを着る。下着は置いてなかったので、心許ないがそのまま部屋に戻った。
「兄上、お先ありがとうございました。いい湯加減でした」
「では俺も風呂へ入ってくる。寝台でゆっくりしておけ」
「はい」
ゆっくりしておけ、って寝ていろということではなさそう。……つまり、さっきの続きをするという事なのだろうか。
なんだか居た堪れない気分になったので寝台へ寝転びながら大きい枕を強く抱き締めた。
どのくらい経ったのか分からない。うとうとし始めた頃に、兄上の「待たせたな」という声が聞こえ遠のいていた意識がハッとする。
「悪い、起こしたか?フェル」
「いいえ、寝てはないです、ちょっと寝そうだったけど……」
目を擦りながら上半身を起こす。起こしたはずの半身は、兄上によって再び倒された。
「フェル……いいか?」
「はい、……大丈夫、です」
「夢みたいだ……、フェルに想いを伝え、こうして触れることが出来るなんて」
心底幸せそうな顔をした兄上が、僕の頭を撫でる。こんな時まで子ども扱いを……。
「兄上、こんな時まで……子ども扱いはやめてください。僕はもう立派な大人なんですから」
「だから膨れているのか、……可愛い奴だ」
「そういうのが、子ども扱いなんですよ。僕は子どもじゃありませんっ」
いきなり、ガウンを左右に開かれた。下着を身につけていなかったのでもちろんその下は裸だ。
「ひゃっ、あっ、兄上!?」
「知っているよ、子どもじゃないことくらい」
膝から太ももを手で這うようになぞり、徐々に上へと手を滑らせてくる。手つきにやらしさを感じないものの、その手を意識しすぎて身体がぴくりと度々反応してしまう。
「……こんな色気のある子どもがいてたまるか」
色んなところにキスを落とされる。兄上が触れた部分がじわじわと熱を持っていくのがわかった。
「ほら、フェルが子どもじゃないということ、俺によく見せてごらん」
「やっ、やっぱり子どもでいい……」
腕を通しているだけのガウンを手繰り寄せ、身体を隠す。じっくりゆっくり全てを暴かれそうだ。
「んっ……ふ、ぅう、んっ……」
深いキスをしながら、ガウンの上から主張している胸の突起で遊ばれる。男の胸なんて、触らなくていい。そう思って手を引き離そうとするが、僕の力では兄上の手はビクリとも動かない。
「やっ、あに、うえ、……もう、胸は、だめ……っ」
布で擦られ、先がじんじんしてくる。
「あぅ……、やっ、……」
「どこを触っても、……駄目なのか」
胸から手が離れたかと思うと、次は太ももの内側から手が侵入してきて少し反応してしまっている下腹部を握られた。そしてそこを軽く上下に扱き、完全に立ち上がってしまうまで触られた。
「フェル、怖かったり痛かったりしたら言ってくれ。少し足を広げて持ち上げて」
兄上が膝裏を持ち両足を上へあげる。そして自分で抑えて、というふうに手を膝裏に持っていかれた。
両腕を通しただけのガウン姿で、自ら足を広げ兄上目前に勃起した性器を晒している。何故こんなことをさせられているか分からず、僕は羞恥と困惑でいっぱいだった。
「あ、にうえ……、これ、いやです」
「少しだけ我慢してくれ。慣らすだけだから、な?」
「うぅ……」
兄上が透明の液体が入った瓶を横の棚から手繰り寄せる。手に垂らしてから、それを僕の臀部へと塗りつけてきた。
「ひっ、ぁ……」
「ごめん、冷たかったか?」
「い、いえ、冷たくはないです……けど……」
兄上があらぬ場所を探るように触ってくる。男同士はそこを使うんだと理解はしていた、だが、自分が経験するなんてまだちゃんと気持ちが追いついていなかったようだ。
「フェル、だんだん足が閉じてきているよ。安心しろ、怖いことはしないから」
「ぁ、……あに、う、……ゆび、……」
剣だこの出来ている逞しい手が、指が、僕の中に少しずつ入ってくるのがわかった。瓶の液体のおかげか、ぬるぬるしていて痛みはない。
「フェル……」
「ん……っ、ぅ……」
触れるだけのキスを、なんども、なんどもくれた。兄上とキスした回数が、もう分からなくなりそう。
「んっ、ンンっ!」
キスに夢中になっていると、突然快楽が襲ってきた。兄上はキスを中断し、上気した表情で、熱っぽい視線をこちらに送っていた。
「……ここが、いいのか……」
穴の中で指が皮膚を押し上げ、内側からじわじわ熱くなっていく。いつの間にか兄上の指の本数が増え、少し苦しく感じた。
瓶の液体をちょくちょく足され、兄上の指が動かされる度ぐちゅぐちゅ、ぬちゃぬちゃと卑猥な音がする。
「んっ、ん、……んっ、んっ、……」
「唇を噛むな。切れたらどうする」
「ぅ……ぁっ、やぁ、あっ、」
唇をぺろぺろと舐められ、固く結んでいた口が開かれてしまう。すると途端に上擦った自身の声が聞こえてきた。恥ずかしくて目を瞑っていたら、いきなり指が引き抜かれ、また声を上げてしまった。
「あ、にうえ……?」
「そろそろ、……いいかもしれん」
狼に食べられる兎のような心境かもしれない。兄上の瞳が、僕をじっと捉えて目を離さない。そんな兄上を目の当たりにし、僕の心臓はさらに煩く鳴り出してしまった。
「途中で止めれる、自信が無い。……2回ほど抜いてきたんだがな……」
「やめなくても、いいですよ。僕も、兄上と、……したいんですから……」
恥ずかしくて、言葉は尻すぼみになってしまった。
1度キスを交わして、兄上が足の間に身体をすり込ませてくる。僕は愛撫で精一杯で他のことに気が回っていなかったけど、いつの間にか兄上も衣服は身につけていなかった。
お尻の穴に、熱いものが触れるのがわかり、息が浅くなる。すごく緊張してきた。
「ゆっくり息を吐け。……そう、いい子だ」
兄上の硬いそれが、徐々に押し進んでくる。痛い、という訳では無い。どちらかと言うと苦しい。
「はぁ、……ぅ、んっ……」
「痛くないか……?」
「だい、じょうぶです……」
兄上が、苦しさで少し萎えてしまった前を刺激してくる。男故感じないことは無く、素直に快感を受け取ってしまう。
「んっ、ぁ、……っん」
前に気を取られているうちに、兄上がゆっくりと動き出す。何度か往復すると、幾分スムーズに動くようになった。動く度にでっ張った部分が腰が痺れるような快感を生み出す箇所を押し込み、僕の空いた口からは漏れでる声が止まなかった。
「は、……ぁ、に、んっ、……あっ、あ、ぁあっ!」
「フェル、……名前、呼んで……っ」
徐々に早く、より確実に急所を刺激するような動きを繰り出されながら、兄上がそう言った。
「あっ……ンっ、……あれ、んっ、ぅ……」
アレン、アレン、と兄上の名前をうわ言のように呼ぶ。兄上も、僕の名前を低い掠れがかった脳に響くような声を耳元で投げられ、それだけで至る所がきゅんきゅんと幸せを訴えていた。
◆
「おはよう、フェル」
窓から射し入る朝日で目が覚めた。目の前には兄上がいて、こちらを甘い顔で見つめている。
「お、おはようございます、兄上……」
「アレン」
「へ……?」
「昨日はアレンと、名前で呼んでくれていただろう?」
昨日、と言われ艶かしい記憶が蘇る。火がでそうなほど顔が熱い。
「もう呼んではくれないのか?」
「兄上を名前で呼ぶのは、まだ慣れません」
「最後の方はたくさん呼んでくれていたのにな」
「ぼっ、僕、兄上を名前で呼んだあたりから、そんなに覚えてないです、だから名前で呼ぶのは、少し待ってください……」
頭に手を置かれ、髪を解くように撫でられる。そしてため息をついた。
「覚えてないのか」
「うぅ、すみません……」
「いや、覚えていたら今頃布団から篭って出てきてないだろうな」
昨日の僕は一体何をしでかしたんだ……。
「すごく魅力的で、淫らで美しかった……」
「みっ、淫ら……、なんて……」
「次する時はちゃんと覚えておけよ?」
“次”と聞いて、ドキっとしてしまう。また、兄上とあんなふうに身体を繋げるのか。期待しているような、緊張しているような、どっちつかずなドキドキだ。
「はい……次は、覚えていられるように、頑張ります」
兄上が緩く微笑んで僕の唇と兄上のそれを重ね合わせた。
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