絶望の終わり

雪紫

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「知ってるか?最近の話なんだが、三番地の路地裏にいつでもヤッていいガキがいるんだとよ」
「タダで?」
「俺はそう聞いたが……、なんでも街の慰み者だとか」
「そりゃいい、こんな湿臭い貧困層の街でもいい所はあんだな」


前に歩いている男2人組がこんな話をしている。訝しげに眉を曲げ、その男達に話しかけた。

「ちょっと失礼、その話俺にも詳しく聞かせてくれねえか?」
「あぁ?アンタも興味あんのか?」
「おおありだね」

貧困の東街と対になる西方面に住むデューイ・フェルダンは、警察という立派な職に着いている。今回はたまたまこちら側に用があっただけで、仕事できた訳では無い。だが、先程の話、デューイに取って聞き流すことは出来ない話だった。

へらへらと相手に取り繕うように接した末、今日その場に共に連れていってくれると言った。ただし、夕飯を奢る羽目になった。


「たしかここら辺じゃね?」
「おっ、声聞こえる」

薄暗い路地を歩き続けること20分、苦しそうな悲痛な叫びが微かに聞こえる。デューイは奥歯を噛み締めた。
そのまま声を辿って少し広い場所に出ると複数の男が1人を囲っているのが分かった。驚愕の光景だ。この世にこんなにも目を背けたくなる光景があるとは、とデューイは絶句していた。

「新しいちんぽが増えたぞ、よかったなぁ」

四つん這いになっている茶髪の少年を持ち上げ、ぱかりと足を開く。真っ赤になっている穴は排出口ではなく、もう入口と化していた。ヒクヒクと収縮させながら、白い白濁を零れさせる姿はなんとも淫らなものだった。

「エロアナル見てもらえよ、クスリ入れたばっかだから風が当たるだけでも最高だろ?」

長い前髪で表情は見えなかったが、頬に涙の跡があるのにデューイは気づき、頭が破裂しそうなほど怒りが襲ってきた。

「3人ともヤっちゃってイイよ。使い込まれてるけどちゃんと締まるし、たぶん気に入るはず」
「じゃあ早速、もうガチガチで痛いくらいだわ」

案内してくれた男が少年に歩み寄る。それよりも先にデューイは少年の前にしゃがみこみ、自分が来ていたコートを掛けた。

「は? おいおい、お前さんが最初かよ」
「……警察だ。牢に入りたくなければ撤退しろ」

予め持っていた手帳を翳す。周りはざわざわと淀めきだしたが、デューイは勤務中でないため、剣も、手錠も持ち合わせていない。警察、というのはただの身分であってこの場ではもはや関係なかった。

「丸腰の1人の人間、人数いるこっちの方が有利じゃん」

老人数人は逃げたらしいが、若い奴らは残っているようだ。力に自信のあった者らしいが、怒りも相まったデューイは尋常ではない力を発揮し、あっという間に立っている者達を薙ぎ払った。
生憎今は逮捕できる状況でもないし、そもそもここは西の警察が担当していい場所ではない。東は東の警察がどうにかする、互いには干渉しないのだ。

「大丈夫か、意識はあるか?」

何度か問いかけるものの、少年は熱に浮かされた、吐息と喘ぎの入り交じった声しか出さなかった。
コートに来るんだ身体を横抱きにし、そのまま家へと少年を連れ帰った。



稼ぎは多いものの随分と倹約家な、いや、ケチなデューイは狭い家に住んでいた。必要最低限の物しかないので、狭さを感じることは無かった。
意識のない少年を風呂に入れ、軽く身体の汚れを洗い流す。恐らく路地で生活していたんだろう。そんな生活で風呂に入る機会なんてあるはずも無く、少年の身体には乾燥した精液らしきものまで付着していた。

「気が知れねぇな、……こんな酷いことをするなんざ……」

蜜のような柔らかい茶髪に指を通し、ぱりぱりと束になっている部分を洗う。他人の精液に触れる、なんとも嫌悪感の強い行動だが、今はそんなことデューイの頭から抜けている。今は、この少年を綺麗にしてあげたいという気持ちしか無かった。
「もうやめて」「もういやだ」デューイが肌に触れる度、少年の口からはか細く声を上げる。どれだけ辛かったろう、どれだけ苦しかったろう。デューイの計り知れない程の地獄を見てきたに違いない。もうそんな目に合わせはしない、とデューイは心の中で強く誓った。
少年の後ろの孔も綺麗に、指を入れ中のものを掻き出す。意識はないにもかかわらず、少年は上擦った声を漏らしていた。

身体を吹き、デューイの寝巻きの上を着せてベッドに横たわせる。息は荒いものの、他に異常は無さそうだ。

「さて、俺はどこで寝ようかね」

一人暮らしのため、ベッドは1つ、椅子が1つという無駄のない家具になっているデューイの家。客がくる時は滅多になく、困ったことは無かったが、デューイは今日初めて倹約家なことを呪った。

様子を見るためと自身に言い聞かせ、結局デューイは少年の横に入って共に眠った。


夜中の、まだ日が上がらない頃に目が覚めた。隣に寝ている少年が酷く暴れていたからだ。暴れる、と言うより発情していた。

「ん、はぁ……、うぅ……、おねがい、……いれて」

デューイの腕をつかみ、髪と同じ茶色い瞳が懇願していた。しかし、少年の目は焦点があっておらず、正気でないことがわかった。

「奥が……、さびしい、ね、ぇ、……ほしい……」

淫らに腰を揺らしながら、少年は言葉を紡ぎ続ける。デューイは少々困惑しながらも、少年へと向き合った。

「お前は今、クスリのせいでそうなってるんだ、東で出回ってるモンはそう強力じゃない、寝れば治る」
「ねれない、むり、……もう、しにそう……」
「クスリが、抜けるまでな」

デューイは少年を膝へ跨らせる。そして、下から手を滑り込ませ、解れている孔に指を入れた。

「ぁあ、あっ、ぁ……、もういや、やめて、……」

路地裏で男に犯されている時を思い出したのか、身体は恐怖に震え、「もういやだ」「もうやめて」と繰り返し出した。デューイはどうすればいいか分からず、動かしている指を止め、代わりに細い身体を抱きしめた。

「もう怖くない、もう大丈夫、大丈夫だ」

何度も、何度も繰り返した。「大丈夫」だと。快感を欲しがっていた身体からはいつの間にやら力が抜け、少年は再び眠りについていた。デューイはホッとして、また少年の横で寝た。




その日の朝、デューイが目が目覚めると横で少年が魘されていた。苦しそうに顔を顰める少年の肩に手を置き、軽く揺する。すると少年はパッと目を見開いた。

「起きたか」
「こ、ここは……」
「昨日のこと、覚えてねぇか?」
「昨日……は、注射2回打たれて、それで、人が増えて……?」

少年は考え込んだ後「警察」と言葉に出した。どうやら覚えているらしい。

「そう、俺は西の街の警察だ。お前には悪いが勝手に西に連れてきた」
「僕……昨日、夜、変なこと言ったよね……?」
「気にすんな、クスリのせいだろ。子どものうちは、大人に甘えときゃいいんだよ」

艶のある茶色の柔らかな髪をガシガシと撫でる。少年はビクリと身体を強ばらせてしまった。

「配慮ができなくて悪い、迷子の子どもにするみたいに、触っちまった」
「ううん、大丈夫……」

少年の瞳はまるで色を失ってしまったかのように暗かった。

「そういや名前聞いてねえな、俺はデューイ・フェルダン。お前は?」
「……ダリル」
「ダリル、いい名前だ」




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