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おさとうじゅういちさじ

7.

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「そこは俺に任せてください」

「なるほど」

「頼ってくれますか」

「遼雅さんほど頼れる人は、他にいないです」

「それは良かった」


遼雅さんが大丈夫だと言うのなら、間違いないと思えてしまうからすごいと思う。

笑って両手で頬に触れたまま、やさしく遼雅さんの唇を塞いでみる。触れてすぐに離してみたら、どこまでもあつい瞳にまっすぐに射抜かれてしまった。


「どこにいても、もう柚葉さんが俺の奥さんだってわかるようになるね」

「遼雅さんは嫌じゃないですか?」

「もちろん。こんなにかわいい奥さんだって見せびらかしたいよ」

「もう、すきになっちゃうことばっかり言うのずるいです」

「かわいい」

「真顔女です」


ふざけてつぶやいてみる。もう、真顔なんてほとんど作れてもいないだろう。遼雅さんも同じようにおかしそうに笑ってくれている。


「あはは、そんなことないよ。柚葉、初めからずっと目が震えたり、とろとろになったり、あつくなったり、すっごくかわいかった。今はもっとそうだ」

「み、ないでください」

「ベッドで恥ずかしがってるところは、たまらなく愛おしい。――最近は誰にでも笑うようになって、かなり、嫉妬するくらいだよ」

「嫉妬、しますか」

「とても。……柚葉さんが、可愛すぎるので」


言われれば言われるだけ恥ずかしくて、頬が赤くなってしまうことを知っているのだろう。伺い見るような瞳に胸が苦しくなって、頬に添えていた手で遼雅さんの両眼を隠した。

それさえもたのしいみたいに、遼雅さんはずっと笑ってくれている。


「柚葉さん」

「はい」

「契約違反は、俺が先です」

「うん?」


目隠しした手を簡単にはがされて、両手を繋がれたまま、遼雅さんのまっすぐな瞳を見つめ続けている。


「三回目のデートで」

「……はい」

「ただハグして眠ってほしいって意味だと知っていたのに、勝手に手を出して、結婚まで追い込みました」


絶句してしまった。

清々しく笑っている人が、勝手にちゅう、と唇に吸い付いて、名前を呼んでくる。

頭がうまく回らなくて、ただ、呆然としてしまっていた。意図をはき違えられていたのだとばかり思っていたけれど、遼雅さんがそんな大きなミスを犯すはずもない。


「……私のこと、好きだったんですか」


なぜか、おそるおそる問いかけてしまっていた。もう、どれだけ大切にしてくれているのかはよくわかっている。
すこし連絡が取れないだけであんなに慌ててしまうくらいだから、こころのやわらかいところに住まわせてもらっているのだと思う。

わかっていても、そんなにも早くからこころに引き入れてくれていたとは知らない。

呆然と見つめる私を笑って、もう一度キスをした遼雅さんが、簡単に事実を話し始めてしまった。


「一回目のデートで可愛いなと思って、二回目で側にいたいと思って、三回目は、携帯を見ないって言われたとき、変な言い方だけど、すこしさみしいと思って、すぐにきみに惹かれていると気づいた」


ひまわりの瞳がうつくしい。

私を真摯に見つめて、「だから、強引に進めました」と詫びるように瞼に唇を押し付けられる。

情報量が多すぎてパンクしてしまいそうだった。そんなにも前から、特別に思ってくれていたのか。


「全然……、気づきませんでした」


そもそも、遼雅さんが私のことを好きでいてくれているかもしれないと思ったのも本当に最近のことだから、まったく感じ取れていなかったことになる。

のろまとも鈍感とも言われ続けているけれど、ここまでひどいとは思ってもいなかった。

狼狽えて声も出せない。

私の様子を見て、遼雅さんが軽快に笑い声をあげた。


髪を撫でる手はやさしい。瞳もあまい。

全部がすきだ。
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