【クラフト小学校】消えた水着写真と爆破予告【ぬいぐるみグループ】

弓屋 晶都

文字の大きさ
上 下
16 / 29

第三話 二回目の犯行予告と意外な一面 (5/5)

しおりを挟む
「まだ誰か残ってるのかー?」
あ、まずい。先生だ。さっきの千山くんの叫び声で気づかれたのかも。
私はセオルを素早くランドセルに戻して蓋を閉める。
同じ失敗を二度やらないように。
「まだ三人も残ってたのか。一斉下校なんだぞ、すぐ帰りなさい」
一組の、体格のいい男の先生に叱られて、心臓がギュッとなる。
「すいませーん。宿題忘れて取りに戻ってましたー。今帰りまーす」
千山くんがいつもの大きな声で返事をすると、先生は「まったく千山は忘れ物ばっかりでしょうがないな」と言いながら、私達が出た教室に鍵を閉めた。

そっか。戸締りして回ってるんだ。
あの日も私達が出たらすぐに教頭先生が鍵を閉めてたよね。
犯人が生徒なんだとしたら、写真を戻したのはやっぱり朝だろうな。
明日は学校に来るのが早い子の情報を集めてみようかな。

「二人とも、悪ぃな。調査の邪魔しちまってさ」
下駄箱で千山くんが謝った。『調査』のところは、いつもよりもずっと小さな声で。
もしかして、秘密の調査だと思ってるのかな?
まあ、内緒にしてくれるならその方が助かるけど。

校庭に出ると、もう生徒は一人も残っていなかった。
「俺さ、一コ下に妹がいてさ。そろそろプールの写真もらってくると思うんだよな。また爆破予告とかきてるしさ、同じように妹達の写真盗まれたりしたら嫌だよなぁ……」
校門までの間、千山くんは私たちと並んで歩きながらそんな事をぼやく。
へー、千山くんはお兄ちゃんなんだなぁ。
私にとってのぞうさんみたいに、つい妹の心配をしてしまうお兄ちゃん。

今日は千山くんの色んな一面を知ってしまった。
おさいほう……特にレースが好きなところ。
お兄ちゃんなところ。
人の大切なものを、大切にしようとしてくれるところ。

言葉は乱暴だし声は大きいけど、千山くんって私が思ってるほど怖い人じゃないのかも?

「それじゃ、ちやまくん、また明日ね」
校門を出たところで挨拶をしたら、千山くんが小さく眉を寄せた。
あ、あれ? にらまれるほどじゃなかったけど……、やっぱり私嫌われてる?

「あの方は何をなさってるんでしょうか」
咲歩の声にそっちを見れば、校門側の道からひとつ曲がった先で、学校を囲むフェンスの外から校舎をじっと見ている人がいた。
マスクにサングラスをかけて帽子を目深に被ったその人は、校舎をじーっと見つめては、手元の紙に何やら書いて、また校舎をじーっと見つめる。
「絵でも描いてるのかな?」
「私には、彼は何か……計算しているように思えるのですが」
「計算?」
「ええ、時々長さを測るような仕草をなさってますし、校舎の大きさでも測っているのでしょうか」
「何のために?」
「こーゆー時は挨拶してみりゃいーんだよ」
私たちが立ち止まった横を、千山くんはずんずん大股で通り過ぎて、その人の方に向かう。
確かに、小学生があいさつすれば地域の人はだいたいあいさつを返してくれるよね。
そしたら「何してるんですか?」って千山くんなら普通に聞いてくれそう。

ところが、千山くんが元気に「こんにちは!」とやるより早く、その人は近づいてくる千山くんの姿を見ただけでバタバタと駆け去ってしまった。

「何だあれ、マジもんの不審者ふしんしゃじゃねーか」
私達がかけよる頃には、取り残された千山くんのご立腹な独り言がはっきり聞こえた。
「何してたんだろうね」
「先生かケーサツに連絡したほうがいーんじゃねーの?」
「確かに怪しい人だったけど、ただ校舎を見てたってだけで通報するわけにはいかないよ」
私が言うと千山くんは「そりゃそーだな」と言って小さく苦笑した。

あ。もう一面発見した。
千山くんってあんまり笑わないけど、笑うと子どもっぽい顔になって可愛いんだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『空気は読めないボクだけど』空気が読めず失敗続きのボクは、小六の夏休みに漫画の神様から『人の感情が漫画のように見える』能力をさずけられて……

弓屋 晶都
児童書・童話
「空気は読めないけど、ボク、漫画読むのは早い方だよ」 そんな、ちょっとのんびりやで癒し系の小学六年の少年、佐々田京也(ささだきょうや)が、音楽発表会や学習発表会で大忙しの二学期を、漫画の神様にもらった特別な力で乗り切るドタバタ爽快学園物語です。 コメディー色と恋愛色の強めなお話で、初めての彼女に振り回される親友を応援したり、主人公自身が初めての体験や感情をたくさん見つけてゆきます。 ---------- あらすじ ---------- 空気が読めず失敗ばかりだった主人公の京也は、小六の夏休みに漫画の神様から『人の感情が漫画のように見える』能力をさずけられる。 この能力があれば、『喋らない少女』の清音さんとも、無口な少年の内藤くんとも話しができるかも……? -------------------- 2023年、ポプラキミノベル小説大賞→ 最終候補 2024年、第2回きずな児童書大賞→ 奨励賞

守護霊のお仕事なんて出来ません!

柚月しずく
児童書・童話
事故に遭ってしまった未蘭が目が覚めると……そこは死後の世界だった。 死後の世界には「死亡予定者リスト」が存在するらしい。未蘭はリストに名前がなく「不法侵入者」と責められてしまう。 そんな未蘭を救ってくれたのは、白いスーツを着た少年。柊だった。 助けてもらいホッとしていた未蘭だったが、ある選択を迫られる。 ・守護霊代行の仕事を手伝うか。 ・死亡手続きを進められるか。 究極の選択を迫られた未蘭。 守護霊代行の仕事を引き受けることに。 人には視えない存在「守護霊代行」の任務を、なんとかこなしていたが……。 「視えないはずなのに、どうして私のことがわかるの?」 話しかけてくる男の子が現れて――⁉︎ ちょっと不思議で、信じられないような。だけど心温まるお話。

悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~

橘花やよい
児童書・童話
女子中学生・リリイが、入学することになったのは、お嬢さま学校。でもそこは「悪魔」の学校で、「執事として入学してちょうだい」……って、どういうことなの⁉待ち構えるのは、きれいでいじわるな悪魔たち! 友情と魔法と、胸キュンもありの学園ファンタジー。 第2回きずな児童書大賞参加作です。

【完結】魔法道具の預かり銀行

六畳のえる
児童書・童話
昔は魔法に憧れていた小学5学生の大峰里琴(リンコ)、栗本彰(アッキ)と。二人が輝く光を追って最近閉店した店に入ると、魔女の住む世界へと繋がっていた。驚いた拍子に、二人は世界を繋ぐドアを壊してしまう。 彼らが訪れた「カンテラ」という店は、魔法道具の預り銀行。魔女が魔法道具を預けると、それに見合ったお金を貸してくれる店だ。 その店の店主、大魔女のジュラーネと、魔法で喋れるようになっている口の悪い猫のチャンプス。里琴と彰は、ドアの修理期間の間、修理代を稼ぐために店の手伝いをすることに。 「仕事がなくなったから道具を預けてお金を借りたい」「もう仕事を辞めることにしたから、預けないで売りたい」など、様々な理由から店にやってくる魔女たち。これは、魔法のある世界で働くことになった二人の、不思議なひと夏の物語。

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

チーム!

えりっく
児童書・童話
魔法が使えないはずの少年が 魔法使いたちの学校に通うことに。 少年の所属するクラスのチームは問題児揃い。 学校では少年は出身地のことでいじめの標的に。 そして少年は魔法使いたちの戦争にも巻き込まれていく。 しかしそこへ謎の少年少女が現れる。 少年の方はかなり強い魔力の持ち主だ。 だけど、魔法が使える者はすべてこの国で管理されているはず。 様々な勢力がぶつかりあい、少年は仲間と共に困難に立ち向かう。

化け猫ミッケと黒い天使

ひろみ透夏
児童書・童話
運命の人と出会える逢生橋――。 そんな言い伝えのある橋の上で、化け猫《ミッケ》が出会ったのは、幽霊やお化けが見える小学五年生の少女《黒崎美玲》。 彼女の家に居候したミッケは、やがて美玲の親友《七海萌》や、内気な級友《蜂谷優斗》、怪奇クラブ部長《綾小路薫》らに巻き込まれて、様々な怪奇現象を体験する。 次々と怪奇現象を解決する《美玲》。しかし《七海萌》の暴走により、取り返しのつかない深刻な事態に……。 そこに現れたのは、妖しい能力を持った青年《四聖進》。彼に出会った事で、物語は急展開していく。

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

処理中です...