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第二話 魔法の針と新たな仲間 (5/6)
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「はぁー……。十七人もいたら、絞れないよねぇ……」
家に帰ってからも、お風呂の間もずっと考えていたけど、中々良いアイデアは浮かばなかった。
部屋に戻って自分のベッドにゴロンと寝転ぶと、ぞうさんが来て私の首にかかったタオルで私の頭を拭き始める。
「みこと、まだ髪がびしょびしょじゃないか。ちゃんと乾かさないと風邪をひいてしまうよ」
「ありがとぉ……」
「みこちゃん元気ないねぇー。大丈夫?」
うさぎちゃんもやってきて、私の頬をふわふわの大きな耳で撫でる。
時々頬に当たるピンク地に白い水玉のプリントされたリボンが、ちょっとくすぐったい。
このリボンは私がうさぎちゃんに魔法の針でぬい付けたものだ。
「元気はあるんだけど、考え過ぎてもうダメ~って感じかな」
「そっかー。みこちゃんにしてはよく頑張ったって事だねっ」
「うんうん……。うん? それってわたしが普段はあんまり頭使ってないって事?」
「わあ、よくわかったね!」
「ちょっと、うさぎちゃん!?」
きゃーっと笑って逃げようとするうさぎちゃんを捕まえて、お腹もふもふの刑にしていたら、玄関で鍵の開く音がした。
「あ、お母さんだ」
玄関にかけて行くと、扉がキィと小さい音を立てて、いつものようにちょっと疲れた顔のお母さんが「ただいま。いい子にしてた?」と笑った。
「おかえりなさい」と言う私に、お母さんは「お土産」と茶色の紙袋をくれた。
何だろう。
そんなに重くないからケーキとかクッキーじゃなさそうだし、これは多分アレかな。
「試作品」
やっぱりなと思いながら袋を開く。お母さんはぬいぐるみデザイナーで、クレーンゲームの景品とかをたくさんデザインしてるんだよね。
可愛いぬいぐるみだと良いな。と、のぞきこんだ袋の中には、白いシルクハットのようなものが見えた。
「中高生に人気のキャラらしいから、みことにあげるわ」
え、これってまさか……。
袋から出てきたのは、金髪碧眼に白いマントとシルクハット。手にはステッキもぬい付けてある。下に着てるのは青いブレザーの学生服。そういえば高校生だったっけ、セオルって。
「名前はえーっと……」
「セオルだよ」
「そうそう、セオル。みことが知ってるなんて、本当に人気なのね」
「さーちゃんが大好きなんだよね、このキャラ」
「あらそうだったのね。それは試作品だから無理だけど、製品ができたら咲歩ちゃんに一つもらってきてあげようか?」
「うん、きっと喜ぶよ」
部屋に戻ろうと背を向けた私は、ふと立ち止まる。
昨日お母さんは確か……。
「しゃべれないぬいぐるみ?」
「そうなの、さーちゃんが作ったぷっぷちゃんが『ぷっ』てしか言わなくて」
「もしかしたら、そういう設定のキャラだったのかしらね?」
「あ、それはそうだって、さーちゃんも言ってた!」
「ぬいぐるみはね、人の願いでできてるのよ。その姿も、心もね」
「願いで……」
「ぞうさんも、うさぎちゃんも、みことがこんなお兄さんがいたらいいな。こんな妹みたいな友達がいたらいいな。って願いに応えて動いてるのよ」
「そっか……、そうなんだね……」
「そうよ、だから素敵なの。 この世に存在するぬいぐるみは全部、誰かの願いでできてるのよ? すごいと思わない!?」
お母さんが、料理を作る手を止めて熱く語り出す。
あ、これはダメだ。しばらく止まらなくなるやつだ。
お母さんは、夕飯中もぬいぐるみの歴史とか世界中にどんな素晴らしいぬいぐるみがあるのをずっと語り続けていたので、私は適当にあいづちをうちながらご飯を食べたんだよね。
結局「ぷっぷちゃんは咲歩ちゃんの願う通りの心になっているはず」という事だったので、ぷっぷちゃんがしゃべれないのは作り方の問題ではなかった。
それなら……。と、私は腕の中のセオルのぬいぐるみを見る。
このセオルは、作った皆に頭が良くて謎解きが得意なキャラだと思われてるわけだよね?
だったら、このセオルのぬいぐるみも謎解きができるんじゃない?
「お母さんっ、このセオルにも魔法をかけてもいい!?」
「そんなに気に入ったの? いいわよ、いつもの約束を守れるなら、ね」
「うん! 絶対最後まで大事にする!!」
キッチンで料理を作り始めていたお母さんが、ひらひらと手を振る。
私はセオルのぬいぐるみをギュッと抱き締めて、部屋に戻った。
「はぁー……。十七人もいたら、絞れないよねぇ……」
家に帰ってからも、お風呂の間もずっと考えていたけど、中々良いアイデアは浮かばなかった。
部屋に戻って自分のベッドにゴロンと寝転ぶと、ぞうさんが来て私の首にかかったタオルで私の頭を拭き始める。
「みこと、まだ髪がびしょびしょじゃないか。ちゃんと乾かさないと風邪をひいてしまうよ」
「ありがとぉ……」
「みこちゃん元気ないねぇー。大丈夫?」
うさぎちゃんもやってきて、私の頬をふわふわの大きな耳で撫でる。
時々頬に当たるピンク地に白い水玉のプリントされたリボンが、ちょっとくすぐったい。
このリボンは私がうさぎちゃんに魔法の針でぬい付けたものだ。
「元気はあるんだけど、考え過ぎてもうダメ~って感じかな」
「そっかー。みこちゃんにしてはよく頑張ったって事だねっ」
「うんうん……。うん? それってわたしが普段はあんまり頭使ってないって事?」
「わあ、よくわかったね!」
「ちょっと、うさぎちゃん!?」
きゃーっと笑って逃げようとするうさぎちゃんを捕まえて、お腹もふもふの刑にしていたら、玄関で鍵の開く音がした。
「あ、お母さんだ」
玄関にかけて行くと、扉がキィと小さい音を立てて、いつものようにちょっと疲れた顔のお母さんが「ただいま。いい子にしてた?」と笑った。
「おかえりなさい」と言う私に、お母さんは「お土産」と茶色の紙袋をくれた。
何だろう。
そんなに重くないからケーキとかクッキーじゃなさそうだし、これは多分アレかな。
「試作品」
やっぱりなと思いながら袋を開く。お母さんはぬいぐるみデザイナーで、クレーンゲームの景品とかをたくさんデザインしてるんだよね。
可愛いぬいぐるみだと良いな。と、のぞきこんだ袋の中には、白いシルクハットのようなものが見えた。
「中高生に人気のキャラらしいから、みことにあげるわ」
え、これってまさか……。
袋から出てきたのは、金髪碧眼に白いマントとシルクハット。手にはステッキもぬい付けてある。下に着てるのは青いブレザーの学生服。そういえば高校生だったっけ、セオルって。
「名前はえーっと……」
「セオルだよ」
「そうそう、セオル。みことが知ってるなんて、本当に人気なのね」
「さーちゃんが大好きなんだよね、このキャラ」
「あらそうだったのね。それは試作品だから無理だけど、製品ができたら咲歩ちゃんに一つもらってきてあげようか?」
「うん、きっと喜ぶよ」
部屋に戻ろうと背を向けた私は、ふと立ち止まる。
昨日お母さんは確か……。
「しゃべれないぬいぐるみ?」
「そうなの、さーちゃんが作ったぷっぷちゃんが『ぷっ』てしか言わなくて」
「もしかしたら、そういう設定のキャラだったのかしらね?」
「あ、それはそうだって、さーちゃんも言ってた!」
「ぬいぐるみはね、人の願いでできてるのよ。その姿も、心もね」
「願いで……」
「ぞうさんも、うさぎちゃんも、みことがこんなお兄さんがいたらいいな。こんな妹みたいな友達がいたらいいな。って願いに応えて動いてるのよ」
「そっか……、そうなんだね……」
「そうよ、だから素敵なの。 この世に存在するぬいぐるみは全部、誰かの願いでできてるのよ? すごいと思わない!?」
お母さんが、料理を作る手を止めて熱く語り出す。
あ、これはダメだ。しばらく止まらなくなるやつだ。
お母さんは、夕飯中もぬいぐるみの歴史とか世界中にどんな素晴らしいぬいぐるみがあるのをずっと語り続けていたので、私は適当にあいづちをうちながらご飯を食べたんだよね。
結局「ぷっぷちゃんは咲歩ちゃんの願う通りの心になっているはず」という事だったので、ぷっぷちゃんがしゃべれないのは作り方の問題ではなかった。
それなら……。と、私は腕の中のセオルのぬいぐるみを見る。
このセオルは、作った皆に頭が良くて謎解きが得意なキャラだと思われてるわけだよね?
だったら、このセオルのぬいぐるみも謎解きができるんじゃない?
「お母さんっ、このセオルにも魔法をかけてもいい!?」
「そんなに気に入ったの? いいわよ、いつもの約束を守れるなら、ね」
「うん! 絶対最後まで大事にする!!」
キッチンで料理を作り始めていたお母さんが、ひらひらと手を振る。
私はセオルのぬいぐるみをギュッと抱き締めて、部屋に戻った。
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