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第二話 魔法の針と新たな仲間 (4/6)
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昼休み、めったに人の通らない特別教室棟の廊下のすみ。
立ち入り禁止の屋上に続く階段に私たちは座っていた。
「ぷっぷちゃんは犯人を見ていたんです」
咲歩の言葉に私は頷く。咲歩の手の中で、ぷっぷちゃんも頷いた。
それは昨日も分かってたけど、ぷっぷちゃんは喋れなかったから、詳しいことまでは分からなかったんだよね。
「あれから私、家でずっとぷっぷちゃんから聞き取りをしていたんです」
「ずっと……」
「犯人の服装は、半袖に半ズボン。メガネはかけておらず、髪は肩より短く、坊主でもない。そして、服の色は白だったそうです!」
「お、おおーーっ」
私は思わず拍手してしまった。
咲歩はこの情報を全部あの『はい』と『いいえ』の動きだけで引き出したんだろうか。
すごい努力だ……。
メモを片手に真剣な咲歩と、同じく真剣なぷっぷちゃんが、夜通し向き合ってぴょんぴょんしたりぷるんぷるんしていたのかと思うと、何だか微笑ましくて笑顔になってしまいそうだ。
「でもこの時期に、半袖半ズボンで、メガネじゃなくて、髪がショートからボブの子って……」
「そうなんです、せっかくぷっぷちゃんから色々聞き取ったのに、私のクラスにはこの条件に合う子が十七人もいるんです……」
「だよねぇ」
候補の全員に、あなたが写真をとったんですか? なんて聞いて回るわけにもいかないし……。どうしたらいいんだろう。
「なので、私は今日ぷっぷちゃんをランドセルにつけてきました!」
「そうそれ! ぷっぷちゃん、ずっと動かないでマスコットのフリしてるの?」
私が聞くと、ぷっぷちゃんがぴょこんとうなずいた。
「すごいね、じーっとしてるのってしんどくない?」
ぷっぷちゃんはまたぴょこんとうなずく。
「あ、でもさっきはぴょこぴょこしてたでしょ!」
「あれは、犯人が見える範囲に来たら合図をしてもらうことにしてたので」
「じゃああの時、わたしたちの近くに犯人がいたってこと!?」
ぷっぷちゃんはもう一度、今度は力強くぴょこんとうなずいた。
「あれから五分休みの間に聞いてみたんですが、黒板前を通るのが見えたそうです」
「あー……、そっか。ロッカーの中からじゃ教室全部は見渡せないもんね。あの時前に誰がいたかな……」
「それが……私もロッカー近くの人は確認していたんですが、前の方は覚えていなくて……」
「わたしが邪魔しちゃったもんね」
「いいえ、助かりました。私もあの後ぷっぷちゃんに合図を出す時は他の人からぷっぷちゃんが見えない時だけに。とお願いし直しました」
でもそんな条件が揃うことってそうそうあるんだろうか……。
「こういう時、セオル様ならズバッと解決してくださるんでしょうね……」
「セオルって、あれだっけ。さーちゃんの好きなゲームの」
「そうです。謎解きアクションアドベンチャーゲーム、ラビリンスタワーズの主人公です。頭が良くて、紳士的で、強くて優しくて、かっこいいんですよ!」
「さーちゃんセオルが出てくるシリーズ全部やったって言ってたもんね」
「昨日は言いそびれてしまいましたが、ラビタワのアニメ化が決まったんです!」
「へえ、よかったね」
「ゲームは難しくてできないと言われてしまいましたが、みこちゃんもアニメなら見られるでしょう?」
「そうだね。見てみるよ」
「はいっ、ぜひ見てください! 放送開始日が決まったら、またお知らせしますね! 録画もしますから、ぜひ一緒にセオル様のお姿をタンノウしましょうね!」
「う、うん」
えっと、そこまでテンションあげて見られる自信はないけど、頑張るね。
そんな話をしていたら、昼休みはあっという間に終わってしまった。
昼休み、めったに人の通らない特別教室棟の廊下のすみ。
立ち入り禁止の屋上に続く階段に私たちは座っていた。
「ぷっぷちゃんは犯人を見ていたんです」
咲歩の言葉に私は頷く。咲歩の手の中で、ぷっぷちゃんも頷いた。
それは昨日も分かってたけど、ぷっぷちゃんは喋れなかったから、詳しいことまでは分からなかったんだよね。
「あれから私、家でずっとぷっぷちゃんから聞き取りをしていたんです」
「ずっと……」
「犯人の服装は、半袖に半ズボン。メガネはかけておらず、髪は肩より短く、坊主でもない。そして、服の色は白だったそうです!」
「お、おおーーっ」
私は思わず拍手してしまった。
咲歩はこの情報を全部あの『はい』と『いいえ』の動きだけで引き出したんだろうか。
すごい努力だ……。
メモを片手に真剣な咲歩と、同じく真剣なぷっぷちゃんが、夜通し向き合ってぴょんぴょんしたりぷるんぷるんしていたのかと思うと、何だか微笑ましくて笑顔になってしまいそうだ。
「でもこの時期に、半袖半ズボンで、メガネじゃなくて、髪がショートからボブの子って……」
「そうなんです、せっかくぷっぷちゃんから色々聞き取ったのに、私のクラスにはこの条件に合う子が十七人もいるんです……」
「だよねぇ」
候補の全員に、あなたが写真をとったんですか? なんて聞いて回るわけにもいかないし……。どうしたらいいんだろう。
「なので、私は今日ぷっぷちゃんをランドセルにつけてきました!」
「そうそれ! ぷっぷちゃん、ずっと動かないでマスコットのフリしてるの?」
私が聞くと、ぷっぷちゃんがぴょこんとうなずいた。
「すごいね、じーっとしてるのってしんどくない?」
ぷっぷちゃんはまたぴょこんとうなずく。
「あ、でもさっきはぴょこぴょこしてたでしょ!」
「あれは、犯人が見える範囲に来たら合図をしてもらうことにしてたので」
「じゃああの時、わたしたちの近くに犯人がいたってこと!?」
ぷっぷちゃんはもう一度、今度は力強くぴょこんとうなずいた。
「あれから五分休みの間に聞いてみたんですが、黒板前を通るのが見えたそうです」
「あー……、そっか。ロッカーの中からじゃ教室全部は見渡せないもんね。あの時前に誰がいたかな……」
「それが……私もロッカー近くの人は確認していたんですが、前の方は覚えていなくて……」
「わたしが邪魔しちゃったもんね」
「いいえ、助かりました。私もあの後ぷっぷちゃんに合図を出す時は他の人からぷっぷちゃんが見えない時だけに。とお願いし直しました」
でもそんな条件が揃うことってそうそうあるんだろうか……。
「こういう時、セオル様ならズバッと解決してくださるんでしょうね……」
「セオルって、あれだっけ。さーちゃんの好きなゲームの」
「そうです。謎解きアクションアドベンチャーゲーム、ラビリンスタワーズの主人公です。頭が良くて、紳士的で、強くて優しくて、かっこいいんですよ!」
「さーちゃんセオルが出てくるシリーズ全部やったって言ってたもんね」
「昨日は言いそびれてしまいましたが、ラビタワのアニメ化が決まったんです!」
「へえ、よかったね」
「ゲームは難しくてできないと言われてしまいましたが、みこちゃんもアニメなら見られるでしょう?」
「そうだね。見てみるよ」
「はいっ、ぜひ見てください! 放送開始日が決まったら、またお知らせしますね! 録画もしますから、ぜひ一緒にセオル様のお姿をタンノウしましょうね!」
「う、うん」
えっと、そこまでテンションあげて見られる自信はないけど、頑張るね。
そんな話をしていたら、昼休みはあっという間に終わってしまった。
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