上 下
5 / 29

第一話 消えた写真と私のヒミツ (4/4)

しおりを挟む
***

「もしもし、お電話かわりました」
「あっ、さーちゃん、ごめんね急に電話して」
「いえ、それはかまいませんが……。どうしたんですか?」
「それが……」

電話を切って十分もしないうちに、インターホンが鳴る。
咲歩の家はうちのマンションの隣の隣のマンションだ。
この辺りは背の高いマンションがたくさん建っていて、小学生もまたたくさん住んでいた。

「お邪魔します」
「さーちゃんいらっしゃい。ごめんね急に呼び出しちゃって」
「いえ、それはかまいませんが……。どうしたんですか?」

うん、こんな会話さっきもやった気がする。

「えっと……」
どこから話したらいいんだろう。
魔法の針の話?
咲歩はぬいぐるみが動いて喋ったら、怖いと思うかな……?

「やあ咲歩さん、いつもみことと仲良くしてくれてありがとう」
「こちらこそ、みことさんにはお世話になっていて……」

私が悩んでいると、ぞうさんが先に声をかけた。
玄関で靴を揃えていた咲歩が振り返る。が、そこには誰もいない。
「もう少し下だよ」
咲歩の目が、足元に立つぞうさんを捉えた。
と、思ったけれどそこからさらにキョロキョロと声の主を探し始める。

「話をするのは初めてだね。僕はみことの最初の友達で、みことには「ぞうさん」と呼ばれている象のぬいぐるみだよ」
「このぬいぐるみ、中にスピーカーが入ってるんですね」
咲歩はひょいとぞうさんを持ち上げる。
「わぁ」
ぞうさんの声に、咲歩はにっこり微笑んで「すごいですね、センサーも入ってるんでしょうか、とても自然なリアクションです」と言った。

な……っ、なるほど!?
確かに、今どきこのくらい喋って動く高性能なぬいぐるみも売ってるんだろうなぁ。高そうだけど。

「みこちゃんは私にこれを見せようと、呼んだのですか?」
咲歩が振り返ると、いつの間にか私の背中によじ登っていたうさぎちゃんが飛び出した。
「あたしもいるよーっ」
「きゃっ」
可愛い悲鳴をあげつつも、咲歩はうさぎちゃんを受け止める。
「えへへ、あたしも咲歩ちゃんとずっとお話ししたかったんだぁ」
うさぎちゃんは咲歩の腕の中でぴょこぴょこ飛び跳ねた。
「もう一つあったんですか? こちらはぞうさんよりもコンパクトなのに、重量も軽くて、すごいですね」
「一つって言い方はちょっと傷ついちゃうなぁ。ひとり、じゃなくてもいいから、せめて一匹とか一羽にしてくれない?」
「そ、そうですよね、ごめんなさい」
「あたしは、みこちゃんにうさぎちゃんって呼ばれてるよ。咲歩ちゃんの事はなんて呼んだらいい?」
「私のことはそのまま……いえ、うさぎちゃんのお好きに呼んでください」
咲歩の口元が微笑む。もしかして咲歩はうさぎちゃんの対応を試してるのかな。
「うーん、じゃあ、さほっちとか? さほさほも可愛いなー。あ。みこちゃんみたいにさーちゃんって呼ぶのもいいかもっ♪」
咲歩がポカンと口を開ける。
「す……すごいですね……」

私は咲歩の反応に、ホッとしたような残念なような微妙な気持ちをいだきつつ、口を開いた。
「えっと、それでね、さーちゃん」
「はい?」
「さーちゃんのぷっぷちゃんも、こんな風に動くようにさせてもらってもいいかな?」
「えっ!?」
だ、だめかな、やっぱり。ランドセル横でぴょこぴょこされたら目立つもんね。
「できるんですか!? ぜひお願いしますっっ」
咲歩は私にずいっと詰め寄ると手をぎゅっと握って言った。
「あ、えっと、ただ、ぷっぷちゃんの中を見たりとか……そういう事はしないって約束してくれる?」
「極秘技術と言う事ですか……」
咲歩は真剣な声でそう言った。
「そ、そうじゃないんだけど、ええと……」
「咲歩さん、僕たちは科学の力で動いてるわけじゃないんだ」
ぞうさんの言葉に咲歩が腕の中のぞうさんを見る。
「だから、こんな風にむぎゅっとされると、ちょっと苦しいんだよ」
「あっ、ごめんなさいっ」
咲歩が慌ててぞうさんを床に下ろした。
「ではいったい……お二人はどういった原理で動いてるんですか?」
咲歩がぞうさんとうさぎちゃんを交互に見る。
ぞうさんとうさぎちゃんは、私を見つめた。
咲歩も私を見る。
私はごくりと唾をのんで、咲歩にまっすぐ向き合った。
「誰にも言わないって、約束してくれる?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

人形劇団ダブダブ

はまだかよこ
児童書・童話
子どもたちに人形劇をと奮闘する一人のおっちゃん、フミオ 彼の人生をちょっとお読みください

『空気は読めないボクだけど』空気が読めず失敗続きのボクは、小六の夏休みに漫画の神様から『人の感情が漫画のように見える』能力をさずけられて……

弓屋 晶都
児童書・童話
「空気は読めないけど、ボク、漫画読むのは早い方だよ」 そんな、ちょっとのんびりやで癒し系の小学六年の少年、佐々田京也(ささだきょうや)が、音楽発表会や学習発表会で大忙しの二学期を、漫画の神様にもらった特別な力で乗り切るドタバタ爽快学園物語です。 コメディー色と恋愛色の強めなお話で、初めての彼女に振り回される親友を応援したり、主人公自身が初めての体験や感情をたくさん見つけてゆきます。 ---------- あらすじ ---------- 空気が読めず失敗ばかりだった主人公の京也は、小六の夏休みに漫画の神様から『人の感情が漫画のように見える』能力をさずけられる。 この能力があれば、『喋らない少女』の清音さんとも、無口な少年の内藤くんとも話しができるかも……? (2023ポプラキミノベル小説大賞最終候補作)

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

異世界子供会:呪われたお母さんを助ける!

克全
児童書・童話
常に生死と隣り合わせの危険魔境内にある貧しい村に住む少年は、村人を助けるために邪神の呪いを受けた母親を助けるために戦う。村の子供会で共に学び育った同級生と一緒にお母さん助けるための冒険をする。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

超器用貧乏人の孤独なレシピ

LaComiq
エッセイ・ノンフィクション
衣・食・住・日用雑貨のなんちゃってな作り方の紹介。 好況でも不況でも、自然に流れるまま、そこそこに生きる為、日々慎ましく過ごす生活の細々とした工夫。 他人に搾取されないよう「何事も自分で何とかする」を推進したい手作り・ハンドメイド・クラフト・DIY、参考にするかどうかはあなた次第。 結婚前の給料は月30万円以上、婚姻中の世帯年収は1,000万円越え、離婚後は月15万円…趣味の旅行もできない生活となってしまったけれど、一人でだいたいの事はできるの♪ 年金が少なくて将来が不安だけど、庭のある一軒家の実家があり、そこでスローライフする為の資金を貯めようかと、思いつつ年に100万円ずつ貯金中。 他人を介さず自分でできるだけの事をすると、タダです。「無料」ほど魅力的な言葉は無い!? 「年収200万円で100万円貯金、スローライフを目指す!」と「ダイエット[62kgD→49kgB]サイズダウン↓チートじゃないよチープだよ!」に関するレシピです。 基本的に美味しいでは無く、「楽しい」に特化しております。 美味しいと食べ過ぎてダイエットになりませんし、貯金をする為なるべく安くなるよう、失敗しても無駄にはしない。あれやこれやアレンジして必ず完食、唐辛子を入れればだいたい食べられる。 毎食ごとに「白米美味」「今日も納豆最高」と思う人はいないのと同じ、味覚は育った環境によって違う。 要は楽しく健康的に過ごせればいい、お金がかからなければいい、太らなければいい、味は二の次がコンセプト!

処理中です...