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4話 折り紙とシャボン玉(3/4)
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俺は作業したまま寝てしまったのか、気付けば布団に寝かされていた。
ザルイルが運んでくれたんだろうか。
まあ、ザルイルからすれば俺なんてさぞ軽い物なんだろうけれど。
軽いと言えば、俺は近頃物を動かす力の使い方に慣れてきて、通常サイズの自分の体なら、大きな自分の両手で掴んで持ち上げるイメージで空中を移動できるようになった。
一見空を飛んでいる感じだ。
パチの一件の後で、ザルイルが俺にこういった応用の使い方を教えてくれた。
この、物を動かす力はザルイルの力を借りて使っているので、あまり重い物を持ち上げようとするとザルイルも疲れるらしい。
だが軽い物……通常サイズのザルイルにとって軽い物ならば、一日中使っていてもそう負担は無いとのことで、俺は小さくなっている間は遠慮なく使わせてもらっていた。
リーバちゃんを預かって、ザルイルを見送って、いつもの朝の家事とリーバちゃんの世話をひと段落させると、子ども部屋でそれぞれバラバラに遊んでいた三人を振り返る。
「三人ともー。シャボン玉で遊んでみないかー?」
俺の声に三人が振り返る。
「「しゃぼんだま?」」「……と言うのは何だ」
ライゴとシェルカの声が綺麗にハモる。その後から二ディアの訝るような声が続いた。
ライゴのブルーグレーと、シェルカのパステルピンクのふわふわの耳が、俺の言葉を聞き漏らすまいとこちらに向けられているのが、なんだか健気で可愛い。
「よーく見てろよー」
言って、俺は昨日作った中でも一番大きな輪を操って、大きなシャボン玉を巣の上空に作ってみせた。
こんな時、屋根が無いってのはいいな。
最初はなんだか落ち着かなかったが、今ではすっかり慣れてしまったファンシーな柄の描かれた空に、七色に輝くシャボン玉がふわふわと飛んでゆく。
「わああああ!」
「すごーーーい」
「綺麗だ……」
三人の心からの歓声を聞けば、昨夜の頑張りも報われるってもんだな。
俺は、特製ブレンドシャボン液の出来に大きく頷く。
「何これーっ!」
「どうやって遊ぶの?」
「中々興味深い遊びだな」
やってみたくてたまらない様子の三人が寄ってくるので、それぞれに一つずつ輪を渡す。
輪の大きさは、それぞれの出来そうなサイズで。
俺のやって見せたのはデモンストレーション用だ、子どもにはこのサイズはちょっとまだ難しいだろうしな。
夢中で遊ぶ三人を横目に見つつ、俺はとっておきの仕掛けを設置する。
「ヨーへー、何してるのー?」
気付いたシェルカがととと。と近寄ってきた。
「うん。これでよし。と。シェルカ、そこの丸の中に立ってごらん」
「? こう?」
シャボン液を張った浅い桶の中央に、洗面器のようなものを逆さに置いて立つところを作っておいた。
そこに、シェルカを立たせる。
シェルカはおっかなびっくりという様子でそこに立つと、少し不安そうに俺を見ている。
「そうそう。しばらくそのままな。ニディア、こっちの丸に入ってくれるか?」
「仕方ないな。入ってやらんこともないぞ」
相変わらず素直なんだかひねてるんだか分からん事を言いながらも、俺の後ろから興味津々に様子を見ていたニディアがスッと丸の中に入る。
「いくぞー」
俺は、大きな輪を動かして、二人の間に虹を描くようにチューブ状のシャボン玉で繋げた。
「わあぁぁ……」「これは見事だ……」
二人の視線が、シャボン玉の内側を辿って交差する。
ちょっとだけ戸惑う素振りを見せてから、シェルカがにっこり微笑んだ。
おっ。えらいぞ。昨日の風呂でのアドバイスが活かせてるみたいだ。
昨日、俺はシェルカに『ニディアが怖いか?』と聞いてみた。
すると、意外なことに『怖くない』と言う。
俺に噛み付いてきた時のニディアは怖かったらしいが、その後、リーバの世話をする間俺にひっ付きっぱなしだったニディアを見て、ニディアは親と離れて寂しいんだなと思ったらしい。
シェルカが『仲良くなりたい』と健気な事を言ってくれたので『それなら、目が合った時には、にっこり笑うといいよ』と伝えた。
ニディアが、シェルカの微笑み……と言っても若干ぎこちないが、それを受けて金色の目を丸くする。
丸くした瞳をゆっくり細めて、ニディアが言う。
「繋がったな」
「うんっ」
シェルカが今度は心からの笑顔で笑う。
そこまででシャボン玉は弾けてしまったが、二人の心はちゃんと繋がったようだ。
「昨日は、コマを壊してしまって、すまなかった」
おおお!?
さすが誇り高いドラゴン族。あ、いやトラコンか。
とにかく、しっかり謝れるなんて偉いな!!
「大丈夫だよ。心配してくれて、ありがとう……」
おおおおっ、シェルカの返しも優しくて可愛いな!!
そこまでで、俺はリーバの泣き声に一旦引っ込んでしまったが、ぐずるリーバを抱いて戻ってくれば、二人は仲良く一緒に遊んでいた。
うんうん。よかったよかった。
それにしても今日はリーバが本当によく泣くなぁ。
朝からリリアさんにも『昨夜からむずがってるから、そろそろ脱皮するかもぉ』と言われていたが、脱皮…………。
脱皮し始めたら、触れずに様子を見ておけばいいと言われたが、そういう……ものなのか……?
『皮の中で引っかかって出てこれないようだったら、めくってあげてねぇ』
と付け足された一言が結構重い……。
なるべく家庭にいる間に脱皮してくれよ……。と願いながら、俺はリーバをあやした。
ザルイルが運んでくれたんだろうか。
まあ、ザルイルからすれば俺なんてさぞ軽い物なんだろうけれど。
軽いと言えば、俺は近頃物を動かす力の使い方に慣れてきて、通常サイズの自分の体なら、大きな自分の両手で掴んで持ち上げるイメージで空中を移動できるようになった。
一見空を飛んでいる感じだ。
パチの一件の後で、ザルイルが俺にこういった応用の使い方を教えてくれた。
この、物を動かす力はザルイルの力を借りて使っているので、あまり重い物を持ち上げようとするとザルイルも疲れるらしい。
だが軽い物……通常サイズのザルイルにとって軽い物ならば、一日中使っていてもそう負担は無いとのことで、俺は小さくなっている間は遠慮なく使わせてもらっていた。
リーバちゃんを預かって、ザルイルを見送って、いつもの朝の家事とリーバちゃんの世話をひと段落させると、子ども部屋でそれぞれバラバラに遊んでいた三人を振り返る。
「三人ともー。シャボン玉で遊んでみないかー?」
俺の声に三人が振り返る。
「「しゃぼんだま?」」「……と言うのは何だ」
ライゴとシェルカの声が綺麗にハモる。その後から二ディアの訝るような声が続いた。
ライゴのブルーグレーと、シェルカのパステルピンクのふわふわの耳が、俺の言葉を聞き漏らすまいとこちらに向けられているのが、なんだか健気で可愛い。
「よーく見てろよー」
言って、俺は昨日作った中でも一番大きな輪を操って、大きなシャボン玉を巣の上空に作ってみせた。
こんな時、屋根が無いってのはいいな。
最初はなんだか落ち着かなかったが、今ではすっかり慣れてしまったファンシーな柄の描かれた空に、七色に輝くシャボン玉がふわふわと飛んでゆく。
「わああああ!」
「すごーーーい」
「綺麗だ……」
三人の心からの歓声を聞けば、昨夜の頑張りも報われるってもんだな。
俺は、特製ブレンドシャボン液の出来に大きく頷く。
「何これーっ!」
「どうやって遊ぶの?」
「中々興味深い遊びだな」
やってみたくてたまらない様子の三人が寄ってくるので、それぞれに一つずつ輪を渡す。
輪の大きさは、それぞれの出来そうなサイズで。
俺のやって見せたのはデモンストレーション用だ、子どもにはこのサイズはちょっとまだ難しいだろうしな。
夢中で遊ぶ三人を横目に見つつ、俺はとっておきの仕掛けを設置する。
「ヨーへー、何してるのー?」
気付いたシェルカがととと。と近寄ってきた。
「うん。これでよし。と。シェルカ、そこの丸の中に立ってごらん」
「? こう?」
シャボン液を張った浅い桶の中央に、洗面器のようなものを逆さに置いて立つところを作っておいた。
そこに、シェルカを立たせる。
シェルカはおっかなびっくりという様子でそこに立つと、少し不安そうに俺を見ている。
「そうそう。しばらくそのままな。ニディア、こっちの丸に入ってくれるか?」
「仕方ないな。入ってやらんこともないぞ」
相変わらず素直なんだかひねてるんだか分からん事を言いながらも、俺の後ろから興味津々に様子を見ていたニディアがスッと丸の中に入る。
「いくぞー」
俺は、大きな輪を動かして、二人の間に虹を描くようにチューブ状のシャボン玉で繋げた。
「わあぁぁ……」「これは見事だ……」
二人の視線が、シャボン玉の内側を辿って交差する。
ちょっとだけ戸惑う素振りを見せてから、シェルカがにっこり微笑んだ。
おっ。えらいぞ。昨日の風呂でのアドバイスが活かせてるみたいだ。
昨日、俺はシェルカに『ニディアが怖いか?』と聞いてみた。
すると、意外なことに『怖くない』と言う。
俺に噛み付いてきた時のニディアは怖かったらしいが、その後、リーバの世話をする間俺にひっ付きっぱなしだったニディアを見て、ニディアは親と離れて寂しいんだなと思ったらしい。
シェルカが『仲良くなりたい』と健気な事を言ってくれたので『それなら、目が合った時には、にっこり笑うといいよ』と伝えた。
ニディアが、シェルカの微笑み……と言っても若干ぎこちないが、それを受けて金色の目を丸くする。
丸くした瞳をゆっくり細めて、ニディアが言う。
「繋がったな」
「うんっ」
シェルカが今度は心からの笑顔で笑う。
そこまででシャボン玉は弾けてしまったが、二人の心はちゃんと繋がったようだ。
「昨日は、コマを壊してしまって、すまなかった」
おおお!?
さすが誇り高いドラゴン族。あ、いやトラコンか。
とにかく、しっかり謝れるなんて偉いな!!
「大丈夫だよ。心配してくれて、ありがとう……」
おおおおっ、シェルカの返しも優しくて可愛いな!!
そこまでで、俺はリーバの泣き声に一旦引っ込んでしまったが、ぐずるリーバを抱いて戻ってくれば、二人は仲良く一緒に遊んでいた。
うんうん。よかったよかった。
それにしても今日はリーバが本当によく泣くなぁ。
朝からリリアさんにも『昨夜からむずがってるから、そろそろ脱皮するかもぉ』と言われていたが、脱皮…………。
脱皮し始めたら、触れずに様子を見ておけばいいと言われたが、そういう……ものなのか……?
『皮の中で引っかかって出てこれないようだったら、めくってあげてねぇ』
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