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4話 折り紙とシャボン玉(1/4)
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「ボクのことは放っておいてくれ!」
と、お怒りのニディアを部屋の隅に置いたまま、俺は家の仕事をこなしつつ、いつものようにリーバのおむつを変えたり、離乳食をあげたり、そうこうしているうちに、おやつの時間になった。
「今日のおやつはゼリーだぞー。あ、じゃなかった。セリーだぞー」
声をかければ、ライゴが大慌てで駆けてくる。
「セリー!? 大好きーっ!」
「先におもちゃを片付けておいで。おやつは手を洗ってからだぞ」
俺の言葉に、ライゴは大慌てでおもちゃを片付けに戻った。
部屋の隅で絵本を読んでいたニディアも、チラチラとこちらをうかがっているようだ。
ゼリー、好きなのか?
昨夜のうちに仕込んでおいた、俺の特製三層ゼリー。
星型のゼリーが入って星空みたいで綺麗だと、向こうでは評判だった一作だ。
まあ、こっちに星があるのかどうかは知らないが。
最初に手洗いまで済ませて来たのは、シェルカだった。
俺はその頭をよしよしとたっぷり撫でて、スプーンとゼリーを渡す。
ふわふわしたピンクの髪を撫でられて、うっとりと目を細める姿が愛らしい。
ライゴもシェルカも、人型になってもやはり撫でられるのは好きみたいだ。
次に、慌ててやってきたライゴにも同じ事をして、それからニディアに声をかけた。
「ニディアも一緒に食べないかー?」
俺の声に、二ディアの小さな肩が揺れる。
もしかして、声かけられるの待ってたのか?
二ディアは読んでいた本をパタンと閉じると、いかにも渋々という雰囲気を醸し出しつつこちらへ歩いてくる。
「…………仕方ないな。お前がどうしてもと言うなら、食べてやらないこともないぞ」
どんだけ素直じゃないんだよ。
いや、ある意味素直か??
「せっかく作ったから、食べてくれると嬉しいよ」
俺は内心苦笑しながらも、笑顔でニディアの席を引き、スプーンとゼリーを出す。
流石に撫ではしない。
二ディアが食べ始めるのを横目で確認しつつ、ラックで待っていてくれたリーバを抱き上げる。
「お待たせ、いい子で待っててくれたんだな」
小さな頭を軽く撫でれば、サラサラとした細い髪が指の間をすり抜ける。
リーバの原型はあんなにぬめぬめしてるのに、人型では白い髪も肌もサラサラしていて、俺はその事実に救われていた。もしこれで、抱き上げた子がヌメッとした手触りだったら、二重の意味で抱き落としてしまいそうだ。
リーバにも、俺の膝の上でリンゴとニンジンのようなものをすりおろしてゼリーと合わせたものを食べさせてやる。
ライゴとシェルカは、二人して代わる代わるに「おいしーおいしー」と連呼しながらもぎゅもぎゅ食べていた。
そんなに美味しそうに食べてもらえると、作りがいがあるな。
「……不味くは無い」
お?
ニディアの言葉にそちらを見れば、ちょっとだけ不服そうに口を尖らせながらも、スプーンを休ませる事なく口元に運ぶ姿があった。
「お褒めに預かり光栄だよ」
俺が応えれば、ニディアは俺をチラと見て不服そうな顔をしつつも弾んだ声で言った。
「ふん。最初からそういう殊勝な態度でいればいいんだよ」
これは結構……会話ができそうじゃないか?
確かに、ザルイルさんも気性が荒い種だとは言ったが、悪い子だと言われたわけじゃないしな。
本人の納得できない環境に無理矢理放りこまれたんだ。そりゃ不服だったよな。
二ディアは、器の中に一欠片のゼリーも残さず完食した。
おやつの後、中々寝付けずグズグズだったリーバをやっと寝かしつけて、慎重に布団に下ろす。
……ぃよし、着地成功だ。
俺は、子供部屋の低いテーブルで折り紙をしていたシェルカの元に早足で向かう。
「お待たせ。どこまでできた?」
最近シェルカは折り紙にハマっていた。
シェルカはライゴの妹ではあったが、人型ではそこまで年齢差を感じないな。
男女差だろうか。小さい頃は女の子の方がなんでも器用にできるしな。
今日のシェルカはふわふわのピンクの髪を左右で緩く三つ編みにしておさげにしていた。
今日も可愛いなと思いながらそのふわふわの頭を撫でると、シェルカは紫色の瞳を嬉しげに細めた。
「ここまでできたのか、早いな。次はこうやって……」
俺の知っている限りの折り方を紙に書いて図解しているが、俺にはそこまでたくさんの折り紙バリエーションがない。
この世界にも折り紙の本とか探せばあんのかな……?
少なくとも、この家の子ども用の本棚にはそれらしき本はなかった。
今夜ザルイルさんに聞いてみるか。
二人でせっせとコマを折っていると、後ろからニディアが覗き込んでくる。
「……なんだこれは……」
なんか微妙に声に動揺がにじんでるな。
もしかしたら、折り紙自体がここにはない文化なんだろうか。
「これは、紙を折って形を作る遊びだよ。ニディアもやってみるか?」
「……やってやらんこともない」
俺は苦笑を堪えつつ、折り紙を渡す。
といっても、色紙を正方形に切った俺の手製の折り紙だから、ちょっとだけ歪んでんだよなぁ……。
風船、船。やっこさんにパカパカ占い……と、ニディアは流石に手先も器用で、教えたら教えた分だけすぐに覚えて次々作ってゆく。
その横で、ようやくシェルカがコマを完成させた。
これは二枚で一つになるやつで、よく回るんだが、折る手順も結構多くてシェルカの歳だとそこそこ難しいんだよな。
「ついに完成だな。よく頑張ったぞ、偉いなぁ」
いつもより力を込めて頭を撫でると、シェルカの「えへへ」という小さな声。
嬉しそうな顔に、俺まで嬉しくなる。
「回してみようか?」
「う、うんっ」
俺が回していいと言うので、若干ずれていた中心をそっと直しつつ回してやれば、勢いよく回るコマに歓声が上がった。
「わあっ」
「すごい……」
二ディアもくるくる回るコマを夢中で見つめている。
二人の声に、ライゴもやってきた。
「なになに?」
そうなると思って作っておいたコマを、ライゴにも渡してやる。
「これ、コマって言うんだ。こうやって持って、回してごらん」
コマ自体は、この世界にもあるだろうか……? 多分、あるよなぁ……?
そんなことを考えつつも、ライゴが回せるようになるまで見守れば、三度ほどでコツを掴んだライゴが「すごいすごい」と連呼しながら、嬉しそうにコマを持ってゆく。
「平らなとこで回せよー」
「はーい」
うずうずしている様子のニディアにも、シェルカが見本にしていたコマを渡してやろうと振り返った時、シェルカのコマは机の上でバラバラなっていた。
と、お怒りのニディアを部屋の隅に置いたまま、俺は家の仕事をこなしつつ、いつものようにリーバのおむつを変えたり、離乳食をあげたり、そうこうしているうちに、おやつの時間になった。
「今日のおやつはゼリーだぞー。あ、じゃなかった。セリーだぞー」
声をかければ、ライゴが大慌てで駆けてくる。
「セリー!? 大好きーっ!」
「先におもちゃを片付けておいで。おやつは手を洗ってからだぞ」
俺の言葉に、ライゴは大慌てでおもちゃを片付けに戻った。
部屋の隅で絵本を読んでいたニディアも、チラチラとこちらをうかがっているようだ。
ゼリー、好きなのか?
昨夜のうちに仕込んでおいた、俺の特製三層ゼリー。
星型のゼリーが入って星空みたいで綺麗だと、向こうでは評判だった一作だ。
まあ、こっちに星があるのかどうかは知らないが。
最初に手洗いまで済ませて来たのは、シェルカだった。
俺はその頭をよしよしとたっぷり撫でて、スプーンとゼリーを渡す。
ふわふわしたピンクの髪を撫でられて、うっとりと目を細める姿が愛らしい。
ライゴもシェルカも、人型になってもやはり撫でられるのは好きみたいだ。
次に、慌ててやってきたライゴにも同じ事をして、それからニディアに声をかけた。
「ニディアも一緒に食べないかー?」
俺の声に、二ディアの小さな肩が揺れる。
もしかして、声かけられるの待ってたのか?
二ディアは読んでいた本をパタンと閉じると、いかにも渋々という雰囲気を醸し出しつつこちらへ歩いてくる。
「…………仕方ないな。お前がどうしてもと言うなら、食べてやらないこともないぞ」
どんだけ素直じゃないんだよ。
いや、ある意味素直か??
「せっかく作ったから、食べてくれると嬉しいよ」
俺は内心苦笑しながらも、笑顔でニディアの席を引き、スプーンとゼリーを出す。
流石に撫ではしない。
二ディアが食べ始めるのを横目で確認しつつ、ラックで待っていてくれたリーバを抱き上げる。
「お待たせ、いい子で待っててくれたんだな」
小さな頭を軽く撫でれば、サラサラとした細い髪が指の間をすり抜ける。
リーバの原型はあんなにぬめぬめしてるのに、人型では白い髪も肌もサラサラしていて、俺はその事実に救われていた。もしこれで、抱き上げた子がヌメッとした手触りだったら、二重の意味で抱き落としてしまいそうだ。
リーバにも、俺の膝の上でリンゴとニンジンのようなものをすりおろしてゼリーと合わせたものを食べさせてやる。
ライゴとシェルカは、二人して代わる代わるに「おいしーおいしー」と連呼しながらもぎゅもぎゅ食べていた。
そんなに美味しそうに食べてもらえると、作りがいがあるな。
「……不味くは無い」
お?
ニディアの言葉にそちらを見れば、ちょっとだけ不服そうに口を尖らせながらも、スプーンを休ませる事なく口元に運ぶ姿があった。
「お褒めに預かり光栄だよ」
俺が応えれば、ニディアは俺をチラと見て不服そうな顔をしつつも弾んだ声で言った。
「ふん。最初からそういう殊勝な態度でいればいいんだよ」
これは結構……会話ができそうじゃないか?
確かに、ザルイルさんも気性が荒い種だとは言ったが、悪い子だと言われたわけじゃないしな。
本人の納得できない環境に無理矢理放りこまれたんだ。そりゃ不服だったよな。
二ディアは、器の中に一欠片のゼリーも残さず完食した。
おやつの後、中々寝付けずグズグズだったリーバをやっと寝かしつけて、慎重に布団に下ろす。
……ぃよし、着地成功だ。
俺は、子供部屋の低いテーブルで折り紙をしていたシェルカの元に早足で向かう。
「お待たせ。どこまでできた?」
最近シェルカは折り紙にハマっていた。
シェルカはライゴの妹ではあったが、人型ではそこまで年齢差を感じないな。
男女差だろうか。小さい頃は女の子の方がなんでも器用にできるしな。
今日のシェルカはふわふわのピンクの髪を左右で緩く三つ編みにしておさげにしていた。
今日も可愛いなと思いながらそのふわふわの頭を撫でると、シェルカは紫色の瞳を嬉しげに細めた。
「ここまでできたのか、早いな。次はこうやって……」
俺の知っている限りの折り方を紙に書いて図解しているが、俺にはそこまでたくさんの折り紙バリエーションがない。
この世界にも折り紙の本とか探せばあんのかな……?
少なくとも、この家の子ども用の本棚にはそれらしき本はなかった。
今夜ザルイルさんに聞いてみるか。
二人でせっせとコマを折っていると、後ろからニディアが覗き込んでくる。
「……なんだこれは……」
なんか微妙に声に動揺がにじんでるな。
もしかしたら、折り紙自体がここにはない文化なんだろうか。
「これは、紙を折って形を作る遊びだよ。ニディアもやってみるか?」
「……やってやらんこともない」
俺は苦笑を堪えつつ、折り紙を渡す。
といっても、色紙を正方形に切った俺の手製の折り紙だから、ちょっとだけ歪んでんだよなぁ……。
風船、船。やっこさんにパカパカ占い……と、ニディアは流石に手先も器用で、教えたら教えた分だけすぐに覚えて次々作ってゆく。
その横で、ようやくシェルカがコマを完成させた。
これは二枚で一つになるやつで、よく回るんだが、折る手順も結構多くてシェルカの歳だとそこそこ難しいんだよな。
「ついに完成だな。よく頑張ったぞ、偉いなぁ」
いつもより力を込めて頭を撫でると、シェルカの「えへへ」という小さな声。
嬉しそうな顔に、俺まで嬉しくなる。
「回してみようか?」
「う、うんっ」
俺が回していいと言うので、若干ずれていた中心をそっと直しつつ回してやれば、勢いよく回るコマに歓声が上がった。
「わあっ」
「すごい……」
二ディアもくるくる回るコマを夢中で見つめている。
二人の声に、ライゴもやってきた。
「なになに?」
そうなると思って作っておいたコマを、ライゴにも渡してやる。
「これ、コマって言うんだ。こうやって持って、回してごらん」
コマ自体は、この世界にもあるだろうか……? 多分、あるよなぁ……?
そんなことを考えつつも、ライゴが回せるようになるまで見守れば、三度ほどでコツを掴んだライゴが「すごいすごい」と連呼しながら、嬉しそうにコマを持ってゆく。
「平らなとこで回せよー」
「はーい」
うずうずしている様子のニディアにも、シェルカが見本にしていたコマを渡してやろうと振り返った時、シェルカのコマは机の上でバラバラなっていた。
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